「後鬼ちゃんも寝ないの? 」
「後鬼ちゃんも寝ないの? 」
口に手を当て、ふぁ~とあくびをする前鬼様。
「私は居眠りが好きですので」
そう返すと彼女は再び身体を倒し、丸くなった。
太陽の力を身体全体に浴び、自然の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
凍りつくような冬を乗り越え、小枝の蕾は花開く。
これでもかと、あちらこちらに生える若草。
そんな、生命の源を感じる外ですることと言えば……お昼寝。
お外でお昼寝。
隣ですやすやと寝息を立て、完全に寝てしまった前鬼様。
心地良さそうに眠る寝顔はとても可愛らしいのだ。
私は……眠くなるまで、ぎりぎりまで横にならないのが好きだ。
ぼーっと景色を眺めて、徐々に睡魔がやってくるのだ。
うつらうつら。意識が浮き沈みする。
ふっと意識が沈みそうな感覚。そのまま一気に沈み込んでしまいたい。
でも、私は自分から眠ろうとはしない。むしろ起きていようとする。
それでも、閉じてしまいそうな瞼をなんとか開ける。
暖かい日差しに、ぽかぽかとする身体は、とても心地よい。
これに抗うことができるものなど、いないだろう。
ふと、目に入る若草がある。細い茎の先に穂。猫じゃらしだ。
思考力が落ちている私は、変な事を思いついてしまう。
一本、猫じゃらしを引き抜く。そして穂の部分だけにする。
穂を手の中で握り締めれば、もぞもぞと動くのだ。手がくすぐったい。
その穂を……前鬼様の背中に入れる。首筋。服と肌の間。
布越しに存在を感じられる猫じゃらしを指で何度も押す。押す。押す。
ゆっくりと服の中を猫じゃらしが進むのだ。
「あ、失敗……」
まだ肩甲骨の辺りだというの、脇腹の方へ曲がってしまった。
首元から入れた猫じゃらしが、服の隙間からから出てこないかしら。
心地よい眠気と戦いながら、この遊びがとてもおもしろく感じていた。
何度も、何度も挑戦するが、出てくる前に動かなくなる。
何度も、何度も挑戦するが、行き止まりになってしまう。
これで何本目だろうか……と首元から新たに入れた途端、前鬼様が起きた。
「えっ? 何してるの? 後鬼ちゃん」
背中や脇腹。まれにお腹の方まで到達した猫じゃらし。
彼女の身体をくすぐるには十分ほど過ぎた。
「もー! なにこれ、くすぐったい! 」
違和感に気付いた前鬼様が、身体をもじもじさせる。
しかし、身体を動かせば動かすほど……猫じゃらしは身体をくすぐる。
「いやっ、くすぐったい。いゃぁ……」
徐々に彼女は身体の動きを止める。
なんとも言えない表情でこちらを見つめる彼女の目には涙が。
寝起きの涙か、それともどうすることも出来ない悲しみの涙か。
助けて。と懇願する前鬼様の表情がとても可愛らしい。
そして、限界が来る……私の。
ごめんなさい……そう言い残し、私の意識は完全に落ちた。




