表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/117

「後鬼ちゃんも寝ないの? 」

「後鬼ちゃんも寝ないの? 」

口に手を当て、ふぁ~とあくびをする前鬼様。

「私は居眠りが好きですので」

そう返すと彼女は再び身体を倒し、丸くなった。


太陽の力を身体全体に浴び、自然の匂いを胸いっぱいに吸い込む。

凍りつくような冬を乗り越え、小枝の蕾は花開く。

これでもかと、あちらこちらに生える若草。

そんな、生命の源を感じる外ですることと言えば……お昼寝。

お外でお昼寝。


隣ですやすやと寝息を立て、完全に寝てしまった前鬼様。

心地良さそうに眠る寝顔はとても可愛らしいのだ。


私は……眠くなるまで、ぎりぎりまで横にならないのが好きだ。

ぼーっと景色を眺めて、徐々に睡魔がやってくるのだ。

うつらうつら。意識が浮き沈みする。

ふっと意識が沈みそうな感覚。そのまま一気に沈み込んでしまいたい。


でも、私は自分から眠ろうとはしない。むしろ起きていようとする。

それでも、閉じてしまいそうな瞼をなんとか開ける。

暖かい日差しに、ぽかぽかとする身体は、とても心地よい。

これに抗うことができるものなど、いないだろう。


ふと、目に入る若草がある。細い茎の先に穂。猫じゃらしだ。

思考力が落ちている私は、変な事を思いついてしまう。


一本、猫じゃらしを引き抜く。そして穂の部分だけにする。

穂を手の中で握り締めれば、もぞもぞと動くのだ。手がくすぐったい。

その穂を……前鬼様の背中に入れる。首筋。服と肌の間。

布越しに存在を感じられる猫じゃらしを指で何度も押す。押す。押す。

ゆっくりと服の中を猫じゃらしが進むのだ。


「あ、失敗……」

まだ肩甲骨の辺りだというの、脇腹の方へ曲がってしまった。

首元から入れた猫じゃらしが、服の隙間からから出てこないかしら。

心地よい眠気と戦いながら、この遊びがとてもおもしろく感じていた。


何度も、何度も挑戦するが、出てくる前に動かなくなる。

何度も、何度も挑戦するが、行き止まりになってしまう。


これで何本目だろうか……と首元から新たに入れた途端、前鬼様が起きた。

「えっ? 何してるの? 後鬼ちゃん」

背中や脇腹。まれにお腹の方まで到達した猫じゃらし。

彼女の身体をくすぐるには十分ほど過ぎた。

「もー! なにこれ、くすぐったい! 」

違和感に気付いた前鬼様が、身体をもじもじさせる。

しかし、身体を動かせば動かすほど……猫じゃらしは身体をくすぐる。

「いやっ、くすぐったい。いゃぁ……」

徐々に彼女は身体の動きを止める。


なんとも言えない表情でこちらを見つめる彼女の目には涙が。

寝起きの涙か、それともどうすることも出来ない悲しみの涙か。


助けて。と懇願する前鬼様の表情がとても可愛らしい。


そして、限界が来る……私の。

ごめんなさい……そう言い残し、私の意識は完全に落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ