「前鬼様、勝負しませんか? 」
「前鬼様、勝負しませんか? 」
「うん? 何するの? 」
突然の後鬼ちゃんの呼びかけに、何をするのかと聞いてみる。
「はい。見つめ合って先に恥ずかしがった方が負け……という勝負です」
「にらめっこ……? みたいだね」
要はにらめっこの恥ずかしがってはいけない版だ。と、ここで気になる。
「あ、勝負ってことは何か賭けるの? 」
当然、負けた時に何をされるのか……私が勝負に真剣に挑むか大切なこと。
「いえ、特に何かを賭けたりはしないですよ」
「何それ。変なの」
勝負、なのに何も賭けない。くすっと笑いながら返した。
「じゃあ始めましょうか」
後鬼ちゃんが顔を合わせてきたので、私も彼女の顔をまじまじと見る。
顔を見る。よく考えないで顔を見ると人は相手の目を見てしまう。後鬼ちゃんもまた、私の顔を見ているので彼女の目と目がしっかりと繋がってしまう。
目と目。意識した途端、顔の表情が崩れそうになった。負けてはならないと、後鬼ちゃんの鼻に目を逸らす。
「あ、今目を逸らしましたね」
「えっ、ばれた? 」
「もちろん。私は前鬼様をしっかりと見つめていますので」
確かに私の目をしっかり見ていたのであれば、目を逸らしたことなんて簡単に分かってしまったであろう。それに、と彼女は続ける。
「一瞬、にやけそうになった顔。とても可愛かったですよ」
「むーっ!」
それすら見透かされていたことを指摘され、今度こそ顔が崩れそうになったので、咄嗟に頬を膨らませてそれを隠す。
「これは前鬼様の負けですね。もう一回しましょうか」
「今度は負けないもん」
先に攻撃を仕掛けてみればどうか、と秘策を思いついた。
「はい、始め! 」
今度は私の声で開始する。攻撃を仕掛けた時に彼女の表情がどう変化するか。その思いでしっかりと目を合わせたまま、顔を崩さないように意識する。
ずーと目を合わせたまま。しばしの沈黙。いわばこの沈黙は攻撃の布石。
後鬼ちゃんの顔をまじまじと見つめる。攻撃の為にただ見つめる。
よし、今だ!と口を開く。
「後鬼ちゃん、大好き」
「私もです」
「ふぇっ」
攻撃をそのまま返された私は、抵抗することが出来なかった。思いもよらない反撃に、思いっきり顔を赤らめてしまった。
「はーい。前鬼様の負け~! 」
「むーっ! 」
今度ばかりは、咄嗟に顔を戻すことができず、頬にも力が入らない。攻撃を見透かされていたのも恥ずかしい。
「前鬼様」
「なに? 」
「私に大好き、って言う時。すでに前鬼様はにやけてましたよ」
「ーー! 」
声にもならず、そのまま顔を隠すことしかできなかった。
「ありがとうございました。とても楽しかったです」
ああ。これは……つまり。そもそも後鬼ちゃんがただ楽しむだけのワンサイドゲームだったのだ。悔しくても何も返す言葉が見つからなかった。




