「後鬼ちゃん、大丈夫?」
「後鬼ちゃん、大丈夫?」
痛みでぎゅっと目を閉じたままの私に、前鬼様が声を掛けてきた。
目を閉じたまま私は顔を上下に振ることで大丈夫であることを表す。
じわりじわりと引く痛みに対して、目には涙が溜まってきた。
口内炎、口の中の炎症。痛い。簡単に言えば、地獄。
不摂生……ではないし、徹夜でもない。ちょっと荒れた程度のはずだった。
どうせ数日すれば治るだろうと油断していた。
先程、夕食を作る途中。ちょっと味見をして気づいた。腫れている。
頬の端の方に、ぷくりと膨らんだやつがいる。
明日朝一にでも薬を貰いに行こう。そうしよう。そう考えていた。
さて食事だ。
口内炎も患部に当てなければどうということはない。口を開けようとして、口を開け……られなかった。なんせ開けようとすると痛むのだ。
ちょうど頬の肉が引っ張られて歯に擦れる感じだ。ほとんど口を開くことができない。まさか口に入れる前からここまで辛いとは。
思わぬ関門に涙目になる私に、前鬼様はものすごく心配している。
幸い口を開けなければ痛くないので、ものを噛む分には問題はなかった。
だが、口を大きく開けられないので少しずつ食べることになる。それこそ前鬼様の一口分より少ない量だ。なんだか恥ずかしい。そうは言っても、口を大きく開けれれないのだから仕方ない。患部に当てないように、ちまちまと食べることしかできないのだ。
なんとか食べ終わる頃には、前鬼様が心配そうに私を見つめていた。
いつもの悪戯好きの彼女なら、当然一口が小さいことを弄ってくると思ったのだが……なんだか寂しいなと思いながらも、そんな自分に対し、先程まで口を開けることに苦戦していた私はきっと文句を言ってくるだろう。痛くてそんな余裕はないと。
そんな事を考えていたが、食べてしまえばこちらのものだ。今は放ってさえいれば、じんじんと多少痛む程度だ。あまり喋りたくはなかったが、なんとか喋れる程度。我慢できる。
寝ようという時。部屋を暗くして布団の中へ。意識は当然一点に向かう。
起きている分には痛みは気にならなかったが、寝ようとすると口内炎のことばかり考えてしまう。何と言ってもじんじんと痛い感覚しか感じないのだから。
気を紛らわしたい。気を紛らわしたい。なんとか気を紛らわせないか。
ふと横にいる前鬼様と目が合う。
「眠れないの?」
はい、と頷く……そこで閃く。手でこっちに来てとお願いする。
「うん?」
首を傾げた彼女であったが合点がいったのか、私の布団に潜り込んでくる。
私は彼女をやさしく抱く。痛みを紛らわすために。
ほんの少しだけ痛みが引いた気がする。でもこれならなんだか眠れそうだ。
髪を撫でたり、背中を触ったり。そっちに集中している間は大丈夫だ。
気がつけばそのうち眠っているのでは、と甘い考えではあるが。
意識が遠退いていくその時まで……彼女の頭を撫でよう……




