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「後鬼ちゃん、なにか捕まえたー! 」

「後鬼ちゃん、なにか捕まえたー! 」


家の庭近くを散歩していた前鬼様。どうやら何かを捕まえたようで、ちょうど縁側で休んでいた私にそれを持ってくる。

「うさぎ、ですね」

「うさぎっ!? 」

とても臆病で、人前に現れることが珍しい動物。ひょこひょこと可愛らしく動く大きな耳を持ち、その身体はふさふさの毛に覆われた生き物。

「うさぎ、うさぎ」と楽しそうに呟きながら、前鬼様は初めて見るうさぎに目を輝かせていた。

私も今まで数度しか見かけたことがない。それが今目の前で、前鬼様の腕の中に収まっている。捕まえようものなら暴れて逃げる印象があったが、彼女がうさぎの頭を撫でるたびに耳を寝かせ、気持ちよさそうにしている。このうさぎ、あざとく「捕まっちまったぜ! 」と言わんばかりの顔をしているような気がする。


もふもふの毛を心地良さそうに触る前鬼様に、私はつい生唾を飲む。

触りたい! 撫でようと正面から手を近づけると、うさぎが暴れる。

「正面からは、びっくりして暴れるよ! 」

前鬼様がうさぎの頭を撫でると、すぐにおとなしくなるうさぎ。とてもなついているのか、はたまた彼女の才能か。「よしよし~」と撫でるだけで耳を寝かせる。

うさぎが落ち着いたので、今度は背後からうさぎを撫でようと、どうしたものかと考えていたら、最終的に私の膝の上に腕にうさぎを収めた前鬼様を座らせることで解決した。

「ほら」と前鬼様に誘導されるようにうさぎの頭を撫でる。手が違うことに気付いたのか、一瞬警戒したうさぎであったが、撫でられれば抗えず気持ちよさそうにしている。

普段体験することができないうさぎの温かさと、普段体験している前鬼様の温かさを比べながら、私は悦に浸っていた。


「うさぎって何を食べるのかな? 」

「草食ですので、野菜とかでしょうか。用意しましょうか? 」

「うん、お願い」

生の野菜を長めの棒状に切る。あまり口が大きくなさそうだし、長ければ持ちやすいだろう。

私が切った野菜をうさぎの口の前に持っていくと、少し確認したあとしゃくしゃくと音を立て食べ始めた。

「私も! 私も! 」

「はい」と前鬼様に切ってきた野菜を渡す。恐る恐る口の前に持っていく前鬼様。今度は確認もせず食べ始めるうさぎに彼女ははしゃぐ。

「食べた! 食べたっ! 」

その食べる様がとても可愛らしく、前鬼様と二人で切った野菜がなくなるまで楽しんでいた。


「なんだか…眠くなっちゃった… 」

しばらくうさぎを抱いていたところ、前鬼様がうとうととし始めた。それに合わせてか、うさぎも眠そうな顔をしている。

うさぎを抱きしめたまま、彼女は縁側で横になる。まるくなったうさぎを抱いて、まるくなった前鬼様。なんだか親子の様で微笑ましい。

風邪を引かれては困るので、薄めの毛布を一枚その塊に掛けておいた。


「いなく、なっちゃった……」

しばらくして目を覚ました前鬼様。突如訪れた別れに泣きそうな顔をしている。

「後鬼ちゃん、ひざまくら」

急な彼女の申し出に面食らいながらも、膝を差し出す。

「違う、逆! 」

「逆? 」

「何か撫でてないと、落ち着かないの」

「あぁ……失礼しますね」

私は身体を倒し、前鬼様の膝の上に頭をのせる。うさぎを撫でていたように彼女に撫でられる。少しだけけもの臭さが残る、彼女の膝で。


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