表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/256

097 不審人物 悶絶じじい

不審人物を不審がる不審人物(何

あと黒歴史カイムさん。

 そんなこんなで色々とエルフの大森林の事を詳しく聞くことが出来て、私としては非常に有りがたい立ち話だったのですが、そういえば何故にカイムさんはメディカさんのお店まで、一緒に付いて来ているのでしょうか。なにかメディカさんに御用事があるのでしょうかね。


 それともこの後何処かにお出掛けする算段なのでしょうか。

 気になったのでその辺りの事を質問してみますと、予想外なお返事が。


「いや、ちょっとおぬしに伝えておく事があったので一緒させてもらったんじゃが。ついついリーナの話を聞いて色々と長話してしもうたわぃ」

「ん? 私に御用だったんですか?」


 それなら公園で話してくれれば良かったと思うんですが、一体なんでしょう?

 私が疑問に思っているとカイムさんは腕を組んで少々考え込んだ後、おもむろにヒゲを擦りながら言葉を発しました。


「それがのぅ……ほれ、先ほど公園で野暮用だーといって少し離れたじゃろ?」

「ええ。その時に何かあったんですか?」

「あったというか会ったというか。奇妙な視線を感じたものじゃから確認しに行ったんじゃよ」


 ん? 奇妙な視線って何でしょう?

 むしろ視線を感じる事の出来るカイムさんに違和感を禁じえないのですが。

 何でそんなに達人っぽい感じの事をサラッとやっているのでしょう。


 いや、実際に凄いお爺様なのでしょうけど未だ慣れません。

 あれですか『これは……ヤツの気配を感じる……!』的な第六感っぽいアレですか。


 いやいやそうじゃなくて! 一体何方がこちらに視線を送ってたのですか!?

 多分そんなにジロジロ覗き見られる様な事はしていない……と思うんですが。


 あれですか、最近公園の休憩場で毎日ポーション作ってる妙な女がいるぞ? って感じで監視されてたのでしょうか!? つまりは公園のご近所から繰り出された刺客!?


「そ、それで何があったんですか!?」

「まぁ何と言われても、茂みの後ろから凄い笑顔でワシらの方を見てた人物が居ただけじゃよ」


 ふむふむ……ふむぅ!? それは何がどうなって茂みの後ろから私達の方を見つつ、凄い笑顔になっていたんですかね!?

 ……あっ!? まさか最近さらに可愛らしさに磨きの掛かってきた、マイフレンドであるラティアちゃんを見ていたのでは無かろうか!?

 ……まさかラティアちゃんファンクラブなの!? 非公式なの!?


「いやいやいや! あからさまに不審人物じゃないですかそれ!?」

「他の人から見た場合の不審度で言ったら、オヌシも中々の物じゃと思うぞぃ!」

「ぐはぁ!? そのお言葉は私に効きますよ!?」


 何の前触れも無く非常にサラッと酷い事を言われた気がします。いや、確実に言われた!


 でも強く否定できない所がまた私の心に悲しみを誘うのです。


 ゲームを始めてから今現在までで、普通ーな感じの出来事って何がありましたでしょうか。

 多分思いつく普通プレイングは、屋台の串焼きお兄さんから食べ物買ったとき位じゃないでしょうか。

 それとラビ君との初戦闘も普通だったかな……


 おかしい、別に奇抜な動きをしたくてゲームしている筈じゃないと思うんです、自分的には。


 やっぱりこういった、多数の人と交流をしながら遊ぶゲームというモノに慣れていない弊害なのでしょうか。慣れれば改善される筈! 出来ればそうだと信じていきたい。


「一応警戒しつつ、こちらを見ておったヤツに背後から声を掛けてみたんじゃが」

「普通に声掛けたんですか?」

「別に武器を構えとった訳でもなかったからの。ただ後ろから見ても判る位にはご機嫌じゃったが」


 茂みの後ろでご機嫌な感じで人を盗み見ている人物……だめだ、もうアウトな人にしか見えない!

 一人でそんな人に遭遇したら、絶対に一目散でサヨナラー! しますよ私なら!?


「しかもオヌシと同じ祝福の冒険者でのぅ やっぱり変わり者が多いんじゃのぅ」

「……あれ? 私とその人を同系列と見なしておりませんデスカ?」


 流石にそこまで変わり者じゃないですよ! ……ですよね?


 あれ……いや待ってくださいよ?

 でも今思うと、コッソリと視線を他プレイヤーさんや町の人に向けて、近くで立ち話しているのを盗み聞きしたり、周りにバレないようにプレイヤーさんの後ろから、メニュー画面を密かに覗き込んだりした記憶が蘇りました……


 ぬぁぁぁ! 気が付かないうちに前科があるじゃないか!

 カイムさんのご意見に対して、強い否定の言葉を発する事が出来ないぃ!


 私が頭を抱えて唸っていますと、カイムさんの楽しげな笑い声が聞こえてきましたよ。

 ぬぐぅ! 今日はカイムさんに負け越ししている気がする! 何の勝負だと言われると困るけど。


「別に悪人と言っておる訳じゃないじゃろう? ワシだって騎士をやっとった頃は、周りから変わり者扱いされておったしのぅ」

「今現在も十分変わり者だと思います」

「褒め言葉として受け取っておくかの!」


 くっ! 流石カイムさん打たれ強い……じゃなくて! その不審人物の事をですね!?

 私が話の続きを促すと、何やら思い出すように首を捻りながら語り始めるカイムさん。


「最初はワシが後ろに音も無くたっておった事に驚いておったが、振り向くと別に害意は無いと両手を上げて降参のポーズをとっておったな」

「後ろから問い詰めてホールドアップって感じですね」

「まぁ手出しするつもりは無いという意思表示じゃろうな、それで何をしていたか聞いてみたんじゃが。ただ見ていただけなんですー等と言って、物凄い謝罪しつつ走り去って行ったわぃ」


 やっぱりそうだ! 絶対ラティアちゃん非公式ファンクラブだよ!?

 いつも公園で遊んでるって、今日砂場で遊んでる時に言ってましたし……いかん! 危ない危ない!


「あと後ろから見ている時に、ブツブツと聞き慣れん言葉を発しておったのぅ……『えすえす』がどうとか『きゃぷちゃ』がどうとか。あれかのぅ祝福の冒険者特有の言葉かのぅ?」

「あれ、何か何処かで見た事ある単語のような……なんだっけ?」


 確か【ふわもこファーム】をプレイしているときに何処かのメニューで見たような、見なかったような……覚えてないって事は私が必要としなかった単語って事ですよね。


 うーん、後で調べてみようかな。

 じゃなくて、不審人物なのにそのまま逃がしちゃったらマズイんじゃないですか?


「それ大丈夫なんですか? その筋の人とかに報告して、どうにかしてもらった方が良いのでは?」

「うむ、それでオヌシにこの事について説明するついでに警備の詰め所まで足を伸ばして、こう言う輩が居った、と説明して注意を促しておこうかと思っての」


 そういってニヤリとドヤ顔をするカイムさん。

 うん、流石に通報ですよね! 私もいろいろな場所で通報一歩手前な、微妙に怪しい動きをしていた覚えがありますけれど、全部一応不可抗力でしたし!


 でもその茂みの後ろにいた人は確信犯っぽいですので、ほぼ確実にアウトという名のアウトだと思います。もう凄いアウトですアウト!

 ……何だかアウトがゲシュタルト崩壊してきた。


「そうだ、ラティアちゃんって一人で公園にいったりする事はあるんですか?」

「大体ワシと一緒じゃよ、お散歩ついでに公園へ向かう感じじゃから安心して良いぞぃ!」

「一応『笑う鬼神』とか言われてる凄い人ですもんね!」

「なぬぅ!? おぬしその名前何処で聞いてきたんじゃ!? そうかリーナのヤツか!? ぬぉぉ!」


 私がニヤニヤしながら『笑う鬼神』のお名前を告げると、物凄い勢いで詰め寄ってきたカイムさんが頭をガシガシと擦り始めました。


 やっぱり恥ずかしいんだ!? 若気の至りってヤツですね!

 よし、コレで今日は戦績イーブンくらいには持っていけたのではないでしょうか、うむ。


「リーナさんからも聞きましたけれど、その前に神殿護衛騎士のアレイアさんという方からも、逸話をお聞きしたんですよー! 騎士をやっていた頃のカイムさんがどれ位凄かったのかーとか聞きました!」

「そ、そうか……あの神殿前で任に就いている若い騎士達かっ……いやな、あの頃は逆らうものすべてが敵に見えておったんじゃよぉ! 色々と調子に乗っておったんじゃ……今思い返しても色々とやりすぎ度満点の青春じゃったわぃ……おお恥ずかしい!」


 カイムさんが両手で顔を覆って悶絶しております。

 実物はここに居られますけれど、実際の活躍がどの程度のものだったのでしょうかね。


 調べたら判りますでしょうか。カイムさんはヤメローって言いそうですけど。

 でもアレイアさん達には大人気でしたよ? 本人すっごい恥ずかしがってますけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ