096 エルフ の 国 は 観光地?
『古代王国』とか凄そうな呼び名が残っている位ですし、何か観光名所みたいな場所が沢山あるに違いない、と自分勝手にエルフの大森林とやらの想像をしている私であります。
やっぱり樹木の上に住居建てたり、大木の中くり貫いたりとかしてて暮らしているのでしょうか。想像すると物凄いメルヘンですね。交通の便が非常に悪そうですけど。
カイムさんに住居関連その他も質問してみた所、別に高いところに住む習慣は無いとの事。
「普通にレンガや木造建築の住居に住んでおるぞぃ? エルフの大森林にはワシも結構な回数、訪れた事があるからのぅ」
「ご旅行でいったんですか? それともお仕事で?」
「結構昔の話で、一応は仕事での訪問じゃよ。大体はリーナの里帰りを護衛するのにつき合わされた感じじゃな。知り合い同士だから都合が良かろうという話での」
おお、という事は噂の王都とやらからのご依頼という感じでしょうか?
というか里帰りって親類の冠婚葬祭的な行事とかでしょうかね。都会で働いている一人娘が呼ばれて田舎に帰省するみたいな。
他のエルフの方々もあのリーナさんの様な感じだとすると、物凄い事になりそうですけど。
流石に全員が全員あんな風に『特徴的』な筈はないですよね。
やっぱりこんな大森林いやだ、都会に出る! と言った感じで外に出奔しているのかな。
エルフのイメージだと色々と伝統を重んじるとか、アレコレ堅苦しいっていう感じがしますものね。
むしろ是非そういった感じの種族であって欲しい。私のイメージ重視でお願いします。
その辺どうなのかお話を伺ってみますと。
「まぁ年寄りは堅苦しい感じがしとったなぁ。ウン百年も生きとったら偏屈にもなろうて」
「頑固オジイチャンっぽい感じですね」
ここは想像通りだった様です。その後の話によると若いエルフ(それでも3桁)はそれほど堅苦しい感じはしないらしく、意外とフレンドリーな対応をしてくれるとの事でした。
色々商品を持ち込んだりすると結構喜ばれたりもするとか。
大森林を訪れた外の人々用のお店も存在するらしく、お土産等も売られているようです。
何だかすっごい観光地っぽい様相を呈しておりますね?
若いエルフさんがフレンドリー対応なのはあれですかね、来訪した観光客に愛想を振りまく地元の人々みたいな感じなのかな? やっぱりそのうち行ってみたいなー!
手続きが厳しくて面倒って先ほどカイムさんが仰ってましたけれど、どういった感じなのでしょう。
パスポートの様なアイテムが必要なのかな? そもそもお役所? が何処にあるのか。
「エルフの大森林に入国するには、どんな手続きが必要なんですか?」
「なんじゃ? いってみたいのかの?」
「はい、お話を聞いてたらちょっと興味が」
それに珍しい素材とかも手に入るかもしれませんし、一度は訪れてみる価値はあると思うのです。
そして私の想像の中エルフと、実際に大森林で暮らしているエルフ。双方がどの程度の食い違いを発生させているのかを確かめる為でもあるのです。
現在の私の脳内的エルフが、例のお二方で埋まってしまっていますから。
いろんな意味で脳内データを書き換えておかないと、マズイ気がするのです。
「有権者や国からの招待状があれば、他に許可書等の発行は必要ないんじゃが……もしも入国時に関所以外から進入してしまうと、駆けつけた警備隊に一時拘束されるから気をつけるんじゃぞ?」
「うへぇ!? 逮捕ですか! 前科ですか!?」
「いやいや、その辺は問題ないから安心せぃ! 最寄の関所まで連行されるだけじゃよ!」
良かった、逮捕からの前科一犯にはならないようです!
物見遊山でエルフの大森林を訪れたプレイヤーは、確実に拘束されるんじゃないですかねコレ。
やはり事前に色々と調べておくのは大事ですね! 私の快適なゲームプレイ生活の為にも!
「それで、招待状というのは何でしょう? 何処でもらえるんでしょうか?」
「うむ、まぁ一応ギルドで審査を受ければ発行してもらえるぞぃ! 期限も一ヶ月持つ代物じゃよ」
「なるほど! 審査ってどんな事をするんでしょう?」
言葉的には中々大変そうなイメージなのですが、やっぱり筆記テストと面接官との会話とか色々とソレっぽい事をしなければいけないのでしょうか。想像しただけで面倒になってきた……テスト怖い。
そもそもエルフの皆さんって独自の言語を持っていたりはしないんでしょうかね?
外国くくりなのであればエルフ語? みたいな物もあるのかなーと想像していたのですけど。
アルシェさんとリーナさんのお二人と普通に会話できてましたよね……? 共通言語なのかな。
そんな事を考えつつ頭を捻っていたら、カイムさんから審査のお話が。
「審査といっても、この世界での一般常識のテストみたいなのじゃよ」
「一般常識ですか……法律とかその辺りのお話も出たりとかしますか?」
「うむ、そうじゃな。まぁ基本的に普通に生活しておるならば、まったく問題無い簡単なモノじゃよ」
アイテムボックスを開いちゃいけない場所があるよーとか、ログアウトの時に気をつけないと駄目な場所がありまーす! みたいな、この世界特有の知識をちゃんと持っている人ならオッケー! って事かな?
私は事前に国営図書館でちゃんと調べてあるから、その点は大丈夫ですね!
ほっと胸をなでおろしていた私に対して、カイムさんがこう言葉を続けます。
「もう一つの問題は、その審査を受ける為に推薦状が必要な所じゃなぁ」
「……えー!? お役所たらいまわし的なものを感じますよ!?」
これはあれでしょ!? 『その手続きは●●の記載が必要です』からの『こちらの窓口には▲▲が必要になります』になって『申し訳ありません▲▲の発行は先に■■を発行していただかないと』ってなって結局あっちこっち回る羽目になるヤツですよね!?
最悪時間切れで明日になるやつですよね!? うわぁ!
「まぁおぬしならば、その辺の問題は恐らく関係ないんじゃないかの?」
「え!? それは一体どういう事でしょうか?」
「そりゃあれじゃよ、リーナに直通許可書を一筆頼めば良かろうて」
うん……うん? 直通許可書ってなんだろう?
でもカイムさんの言い方から推察するに、リーナさんにお願いすれば問題解決っていう事は何となく判りました。
あれですね、また一番ボール君に接待をお願いしてご機嫌状態になったリーナさんに、そのままの勢いで直通許可書とやらを一筆したためて貰えば完璧と云うことですかね!
いやぁー凄いご利益だねぇ一番ボール君! 【ガイド】さんに感謝しないとね!
「その直通許可書? とやらがあるとどうなるんですか?」
「そりゃー関所だろうが国境だろうが直通出来るって事じゃよ」
「え!? そんな勝手にリーナさんの意思だけで、サクっと許可出して良いモノなんですか!?」
「そりゃリーナは、エルフの大森林で議員やっとる偉い人の一人娘じゃからの!」
あ、あんなアイテムマニアの残念美人なのにお嬢様だったー!?
その後メディカさんのお店前に到着したのですが、立ち話をする感じで会話を続行してました。
先ほどカイムさんが仰っていた『リーナさんの里帰り』というのも、リーナさんのお父さんが見繕ったお見合い相手に、お断りの挨拶をする為にブツクサ言いながら帰郷していた感じらしいです。
リーナさん曰く『贈り物に【伝説級】持ってきたら考えます』との事。
なんという無茶振りですか。かぐや姫かなにかですかね。




