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092 門外 露店で 通じ合う

 抱えた布袋の上からモッコリと飛び出ているメリアの毛を、モニモニと揉んだり顔を押し付けたりして柔らかい感触を楽しみながら、そういえば町の東側は公園以外まだ見回った事がなかったなぁと考えつつ、町の東側外壁にある門へと向かって足を進めます。


 この辺りは町を囲う壁の外にも関わらず、魔物が全然見当たらない感じですね。

 先ほどの丈の長い草が生い茂っている平野の辺りまで行かないと、魔物は出てこないのかな?


 ちらほらと薬草が残っているのが目に入りましたので、精神的な疲れも先ほど癒された事で大分回復しましたし、素材採取を再開しつつ進む事にします。

 んー、やっぱり町の近くだから数は余り残ってないかな……?


 何時も通りアイテムボックスを開きつつ、道中見かけた素材を収納していきます。

 やっぱりそれ程残っていない様ですね……


 イモムシの居る草原へ向かう途中、道すがら他のプレイヤーさんが採取していってるのかな。

 やはり短時間で沢山採取するには前人未到と云うか、町から離れた所へ向かわないと駄目ですね……近場で採取できるならそうしたい、と考えるのは皆同じでしょうから。


 【雑草】に紛れて残っていた【薬草】を引っこ抜きつつ、今日採取できた素材の量を確認します。


 【薬草】だけはたっぷりありますね! 余裕で100個突破と言った所でしょうか。

 キノコ2種と【魔力の花】も大分確保できています。


 キノコは毒のやつとスタミナポーションの素材の物、大体同じ量採取できていました。

 うーん、この毒キノコの方をどう活用するか早く決めないとね……


 昨日採取した分もそのまま全部残っている状態なので、アイテムボックスの中身が毒キノコまみれになってしまっています。

 そのまま敵に投げつけたりして、攻撃に使用出来たりするなら意外と強そうなんだけどな……

 キノコのままじゃ駄目だよね。弾き返されるよね。


 よーし、毒キノコはとりあえず置いといて、早く町に戻ってお薬作成に取り掛かりましょう!

 そしてきょうもガッポリと稼ぐのです。私の快適なゲーム生活の為に!


 進行方向から歩いてくるプレイヤーさんが見えたので、顔に浮かんでいたニヤニヤ笑顔を引っ込めて、すれ違い様に軽く会釈をしてご挨拶。

 そして、ようやく遠くに見えていた町の門へ到着致しました! いやぁ意外と遠かった。

 さて町の中に戻ろうかなー、と思いながら何気なく辺りを見回してみたのですが。


 開いた門の脇の城壁横辺り……即ち防壁の外で露店を開いている人がチラホラと見受けられますね?

 こんな場所で商売していても大丈夫なのでしょうか。


 牧場が有る位ですし、やっぱりこの辺りは魔物が出ないっぽい?


 食べ物以外の露店にちょっと興味を惹かれましたので、何を売ってらっしゃるのか拝見してみようと思い、近寄って平台の上に並んでいる商品を見てみます。


 基本的には素材関連を販売している露店みたいですね。あとポーションも少々。

 他に数人の方が商品を眺めながら、アレコレと手にとって眺めています。


 あっ! 私がさっき拾ったものとソックリな、恐らく装備の出る箱だと思われる四角い物体も幾つか置いてあります!


 ええーっとお値段は? ……箱が一個5000ゴールド!? 高い!


 あの箱ってそんなお値段で売れるほど、性能の良い装備品が出てきたりするの!?

 それとも、私の金銭感覚がおかしいのでしょうか……?


 いやでも、一番最初にゲームを始めた時に5000ゴールド貰える、って思うと無茶苦茶な値段設定でも……ないのでしょうか。

 比較対象が無いし相場なんて全然判らないから、私の頭で幾ら考えても駄目だ。


 ああ、『結論』の文字に足が付いて走り去っていく光景が脳裏に浮かぶ! まってください結論!


 ……私が露店の前で突拍子も無い考えを巡らせつつ、無駄にウンウン唸っているのに気が付いた店主さんが……怪訝な顔でこちらを見ているのに、まさに今気が付きました。


 ぬ……ぬぬ! ここは戦略的撤退を! 


 店主さんに声を掛けられてしまう前に、素早く露店前から逃亡を図りましょう。

 私は悪くないのです、悪気はなかったのです。営業妨害ではないのですスミマセン。


 この露店から距離をとるために……俯き加減で左右を見まして……

 いま拝見していた露店は開いた門の右側に設置されておりましたので、今度は門の左側にある露店を拝見する事に今決めました。


 何事も理由付けは大事です。よーし唸れ私の早足!


 店主さんの不思議そうな表情に気が付かない振りをしつつ、適当にウィンドウショッピング(?)している雰囲気で他の露店へカサカサと移動します。ちょっと位不自然でも今は逃亡する事が先決。


 視界の端で怪訝な表情を浮かべつつ軽く首を傾げていた露店の店主さんは、他のプレイヤーさんから声を掛けられた事で私への興味を失ったようで……

 他の露店前にたどり着いた私は、ほっと胸をなでおろします。


 これはアレですよね……そうアレです。

 露店前で商品も買わずに、無言で変顔を晒してるから怪しまれるんですよね私……


 お面とか売ってないかな……売ってたら買っちゃうんだけどな……心の防御力が上がりそう。


 よく和風なお話で見かけるような、白塗りのキツネのお面とかなら、この自前のキツネ耳にもぴったりでしょうし。


 でも顔を隠した状態で街中を歩いていたりしても良いのだろうか。

 警備の人に呼び止められたりするかな……


 ホッケーマスクを被った殺人鬼的な感じで……どうだろうか。うーん。


 おっといけません! また露店前に棒立ちでお店に関係のない事で悩み始めてしまう所でした。

 折角見に来たのですから商品を拝見しなければ。


 こちらのお店の店主さんは女性のプレイヤーさんでした。

 コレだけでちょっと心が落ち着く。なんと言うチキンハートですか私。頑張ろう。


 置いてある物は、あちらの露店と同じような素材関連が幾つか、紐の様な物で束ねてある【薬草】も置いてあります。自分で使わない人は採取した物は売るしかないですものね。


 そのまま食べてもやっぱり回復量は少ないんでしょうか。

 というか見た目がそのまま草! って言う感じだから余り口に入れて咀嚼したくないですよね……

 【薬草】そのまま齧ると何味がするのでしたっけ。


 アイテムボックスの【薬草】の詳細を見てみると……ああ、やっぱり苦味が強いって書いてあります。


 ポーションは無味無臭だからどんな方でも気にせず使用できますけど、苦いのって苦手な人も居るでしょうからね……ちなみに私は物凄い苦手です。


 ピーマンはまだ行ける……ゴーヤは調理されてもかなり厳しい。ブラックコーヒーは劇物です。

 いいのです! フルーツ食べましょうフルーツ! 私は果物で生きるのだ!


 ちなみに【薬草】の束は10個セットになっていて、一束45ゴールド! お買い得?


 他にはイモムシ君から出る糸が置いてあったり、ソレに似た感じの糸っぽい商品がもう一種類置いてありました……違う糸……まさか。


「あのーこの糸は何処で取れるんですかぁ?」

「はいはーい! ああ、その糸はでっかい蜘蛛から入手できる糸ですよー」


 私が糸を見詰めて考え込んでおりますと、隣で商品を物色していた女性が店主さんに問いかけ……

 帰ってきた答えは、私の想像通りのもので御座いました。


 やっぱりこれが噂に聞く蜘蛛の糸ですか。

 お姉さんが自分で倒して手に入れたのでしょうか……


 一体どうやって倒したんだろう……まったくもって凄い。


 適当に薬草束を手にとって眺めつつ、横で会話している店主さんと女性の声に耳を傾けます。

 こっそりお話を聞いて情報収集です。


 色々と会話に花を咲かせていたお二人でしたが、蜘蛛を倒したのは店主さんが知り合いと一緒にパーティプレイをしていた時らしく。

 苦笑いしながら『一人だとあんなでかい蜘蛛とか近寄れないし触れませんよぉ!』と女性のお客さんに言いながら、両手を左右にブンブン振っておられます。


 で、ですよねー!! あんなおっきいの無理無理ですよねー!


 私は会話に参加していないにも関わらず、思わず店主さんに顔を向けてぎゅっと両こぶしを握り、強く頷いてしまいました……あっ! しまった!


 ……私から予想外の反応を受けた店主さん。

 ちょっとビックリして此方に顔を向けてこられまして。


 硬い笑顔を浮かべつつ硬直した私を見て、色々と納得した表情を浮かべた後に笑顔で頷き返して下さいました。通じ合う心と心。


 ……良かった! でっかい蜘蛛がアウトな人は私だけじゃなかった!

 あの半分の大きさ……いえ、4分の1くらいの大きさならばっ!

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