表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/256

090 餌で 逃亡 メリアに 遭遇

蜘蛛>イモムシ

 全く持って待ち望んでいなかった来訪者である巨大蜘蛛さん。


 グリグリと顔を左右に捻りつつ、私の顔を覗き込むようにしてコチラに一歩近づいて来ます。

 その口の部分からは、ギチギチと嫌な音を立てております。


 一目散に逃げたい。駆け出したい。

 でも大きすぎる蜘蛛が気持ち悪くて身体がうごかなーい!


 ……待って! 待つのですよ私! 思い出すのです、ガルドスさんのお言葉を!


 そう、私の記憶が確かならばフンワリ素材の話を聞いたときに、この大きな蜘蛛『ディスパイダー』のお話を聞いたのです!

 その時ガルドスさんはこう仰っていた筈!


 『近寄らなければ襲ってこないタイプの魔物』だと!


 つまり気が付かないうちに私は、この蜘蛛さんが反応してしまう範囲に侵入してしまっていたという事! そして、背後に蜘蛛さんが寄ってきていたという事は……つまりは、このまま刺激しないように泉の横を抜けるようにして、ゆっくりと後ずさりして行けば。


 ……恐らく戦闘を回避できるのではなかろうか!? いや、そうだと信じたい!


 自分の考えを信じて私はゆっくりと一歩、後ろに下がります。


 蜘蛛さんの方は特に目立った反応は無く、相変わらず何処を見ているのか判り辛い8個大小の瞳を私の顔に向けて、ギチギチと音を立てておりました。


 撒き餌になるか判りませんが、使い道の無かったラビのお肉をそーっとアイテムボックスから取り出して、離れ際に今まで居た場所の地面に静かに設置してみました。


 どうぞーどうぞー贈り物ですよーお納め下さーい。という念を籠めて蜘蛛さんを眺めます。


 ……やった! 反応有りました! 視線がお肉の方へ向いてくれましたよ!


 蜘蛛さんが私から視線を切ってくれましたので、コレ幸いと、急がず騒がずでも素早く、ムーンウォークもかくやと言った感じの勢いでその場を脱出します。


 もちろん私の視線は蜘蛛さんに釘付けです。目を離してなる物か! 恐ろしやー!


 泉を回りこんで更に後退し、岩陰に隠れることに成功した私は、そこで漸く大きく深呼吸をしてかいても居ない汗を拭う様にオデコをゴシゴシとします。いやぁー……生きた心地がしませんでした。


 他の女性プレイヤーさん達は、あの蜘蛛さんとかどうやって対応してるんでしょう。

 そもそも会わないように行動しているのかな。

 私も見習いたい所ではあります。時既に遅しですけど。


 そんなこんなでガックリと力の抜けた私は、蜘蛛の視界に入らないように、コッソリと岩の隙間から餌に食いついた蜘蛛を確認します。

 おお……お肉を蜘蛛の糸で包んでるよ。持って帰るのかな。


 真っ白い糸でぐるぐる巻きにされたラビの肉を、前足2本で摘むように持ち上げた蜘蛛さん、私が居なくなった事に気が付いたようで周囲を見回しておりましたが……

 呆気なく諦めるとその場を立ち去ってくれました。はぁー助かったぁー!


 私は初の【死に戻り】を体験する事もなく無事脱出できた今の状況に、ほっと一息つきます。

 この場所は危険です。デンジャラスです。


 でも進んできた方向へ戻ると、漏れなく先ほどの蜘蛛さんのテリトリーに、再度侵入してしまう流れになってしまうのですが……!?

 これは森の中を突っ切る形で、ぐるーりと回り道して戻らないと駄目ですね。


 とりあえず出発する前に、岩場に腰を下ろして水筒から先ほど汲んだばかりの湧き水を一口飲みます。はぁー生き返る。ついでに落ち着きを取り戻す為にアイテムボックスから【ふわふわブラシ】を取り出して尻尾の手入れもします。ふー、今日もバッチリふわふわ尻尾です。


 お水で喉の渇きを、尻尾の手入れで心を潤した私は、メニューを呼び出して地図を開き、大まかな現在位置を確認する事にしました。


 進行方向を少し東に向けて移動していけば、そのうち森を抜けて町の東側の草原に抜ける事ができるようです。あれですね、ガルドスさんに聞いたもう一種類の魔物であるイモムシ君が居る所ですね。


 蜘蛛よりはイモムシのほうがまだ良いような気がしますが……

 いや、ココで安心してはいけません。

 あの【黄昏の大神】(プログラム主任)様の事ですから、無駄にクオリティの高い可能性があります。


 普通の青虫みたいな感じだったら大丈夫なんだけどなー……どうなんだろうー?


 現実ならば確実に嫌な汗をじっとりとかいている精神状態です。前門の蜘蛛後門のイモムシとは。


 もう一口水筒から水を飲み、深呼吸します。

 よし、このままここに居ても仕方がありません、意を決して進みましょう!

 大丈夫、立ち止まらずに進み続ければ何とかなるはず!


 流石にこの状態で採取をしつつ進むのは無理だったので、武器を右手に持って森の中を早足で進みます。


 その後追加の蜘蛛に出会う事も無く……時間にして10分も立っていない頃合でしょうか?

 周りに生えていた木々が徐々に疎らになって行き……ついに到着致しました。

 そよそよと気持ちの良い風が吹く、背の高い草が生い茂った草原です!


 右のほうを見ると、遠くに始まりの町の城壁と門が見えます。

 ああー良かった、思ったとおりの位置関係だった!

 もう採取は切り上げて町に戻りましょう! 精神的疲労が凄いです。


 げっそりとしつつため息を吐いて、そう決めた私は遠くに見える町の門へ向かって歩みを進めます。

 途中で戦闘をしている人がチラホラと見受けられましたが、相手のイモムシは……良かった、普通の青虫っぽい緑色のイモムシでした。蜘蛛さんに比べれば可愛いものです。


 途中で正面にイモムシが一匹出現したので、ものは試しと棒で攻撃してみましたが。


 大体ラビ君と同じくらいの強さなのでしょうか、数回攻撃するとゴロリと横になった後に光になって消えてしまいました。動きも遅いですし、途中で一回糸を吐きかけられた位で全く危険は無さそうでした。


 あの糸を浴びてしまうと大変なのかな?

 イモムシを正面に捉えている時に吐いてきたので、上手く避ける事が出来ましたけれど。

 不意打ちで死角から飛んできたら厳しそうですね。油断しないように気をつけましょう。


 その後アイテムボックスを確認、ありましたよー【虫の糸】というアイテムが!


 移動しつつ試しに取り出してみると、ご丁寧にも棒に巻き取られた状態の糸が出現しました。

 やっぱりあからさまに加工された状態だ。ラビの肉とかと同じだね。


 扱いやすい状態で出てきてくれるのは助かりますし、問題はないですけど。こういう所は気にしちゃいけない所なのかな。ゲーム的処理という事でココは一つ。


 あとは先ほど森の中で倒したラビ君の毛皮とお肉が一つづつ増えています。

 そしてずっと気になっていた箱の名称が判明しました。


 その名も【装備箱 ラビ】と云うなんとも判り易いお名前のアイテムでゴザイマス。


 アイテム詳細も確認してみましょう。


=====================


 アイテム名 【装備箱 ラビ】

 等級  良質(アンコモン)

 品質 ☆☆☆☆☆☆

 破損度 問題無し

 属性 ※物品『物理』 ※抽選『装備品』 ※品目『ラビ』

 付加能力 ※色彩『白』

 効果待機時間 10カウント

 詳細 大陸全域で魔物のドロップから入手出来る、色々な装備を取得出来る箱。

    開封時に属性品目ごとに決められた種類から、ランダムに決定され排出される。

    主にドロップした魔物にまつわる装備が出る。


=====================


 うん? これはつまりラビっぽい装備品が出る箱って事かな?

 しかも何が出るのかは開けてみてからのお楽しみっていう感じのアイテムだね! 後で開封してみよう! 楽しみだなー!


 色々と大変な目にあったけど、ちょっと元気出たぞー!


 そんなこんなで無事生還を果たした私は、草原地帯を抜けてなにやら柵や建物が幾つも建っている地域へと、突入するのでありました。


 ツノの生えた、ふわふわっとした感じの毛で覆われた生き物がたくさん柵の中に居ますよ!


 これがガルドスさんの言ってた『メリア』という生き物でしょうか?

 やっぱり見た目はヒツジっぽいですね。撫でてみたいなぁ癒されたいー

本日は3話更新です。

89話はいつもの朝6時に更新しております。

次の閑話は18時に更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ