089 ラビに 不意打ち 蜘蛛から 不意打ち
フラグ乱立で、あの方とばったりご対面。
活動報告のほう書きましたので、良ければ適当に目を通して頂ければ幸い。
森の中で頭を抱えて、蜘蛛の脅威に対して恐れ戦きつつ唸っていた私でしたが、北部山脈へ向かう予定を立てておりますし、ここで尻込みしていても仕方ないと覚悟を決めました。
出来れば、あまり見た目の凄い魔物に出会いませんように……ラビ君位の相手でお願いします。
そんな事を考えつつ、両手は的確に採取目標へと伸びて行き……そして毟り取っていくのです。
ゲーム内3日目ともなると中腰状態での採取作業も慣れたもので、屈んだままで膝から下を激しく稼働させる怪しいカニ歩き移動も切れ味抜群で、その動きは非常に冴え渡っております。ふははは!
……傍から見た印象はプライスレス。カサカサカサ。
今日はキノコの採取量が多い気がしますね。黄色いキノコのみでなく、一応赤い毒なキノコさんも毟っておりますが。魔物に対して何かしらの攻撃手段に使用できるかもしれませんので。
魔物の好物とかに混ぜ込んで毒のエサとか作ったら、何処かで有効活用出来たりしないかな。
というか、未だに食べられる、という事以外に赤キノコの用途を調べられてないのですよね。
多分そのまま毒っぽいアイテムを作る事が出来ると思うのですが、普通に考えるとそういった毒性薬物を個人で作成して良いのかどうか、ちょっと悩む所でもあります。怒られそう。
その辺りの法律っぽい何かが存在したりするのかどうかは、今回採取した分で作成予定のポーションを売りに行った際に、詳しくメディカさんにお伺いしてみよう。お薬の事ならメディカさんですよね、うんうん。
まぁアイテム詳細的には、赤キノコはお料理に使うアイテムなのかもしれませんけれど。
毒抜きの方法が判らないので、自分で食べたりは出来ないです。でも味は気になる。
赤キノコと黄色キノコを一本づつ両手に持って眺めつつ、そんな事を考えておりましたが。
いったん曲げていた腰を伸ばして背伸びをし、付近の様子を確認する為に辺りを見回します。
チラホラとパーティぽい方々が戦闘行動をしているのが視界に入りますが、私のように採取専門で動いている人が全然見当たりませんね。
やっぱり森の中は、採取のみを目的にしている人は少ない感じがします。視界が悪いからかな?
パーティを組んで魔物と戦闘しつつ合間に採取する方が効率も良さそうですし、安全そうですし……
よし、周りで戦闘している方々の邪魔にならない様、森の奥地で採取をする事に致しましょうか。
きっと、きっと良いものがあるに違いないと信じて! 普通の素材でも嬉しいけどね!
さて早速奥地へ進みましょうと思ったのですが、流石にアイテムボックス開きっぱなし状態で採取しつつ歩くのは魔物との遭遇的な意味で危ないかなーと思いましたので……ボックスは閉じ、腰の武器を右手に持った状態で移動する事にします。
それにしても私の身長くらいの高さがある茂みや、生い茂った草の中に根っこが隆起して地面から飛び出ている感じの、不可視の天然トラップやらが点在していて非常に歩きにくいですね。
躓いて転ばないように気をつけないと……転倒したらライフは減るのでしょうか。転倒死……とか。
地面に攻撃された! とかそういう感じで減るのかな。
高い所から落ちて地面にビターンした時とかも、そんな感じでダメージを負うのでしょうか。
なんて事を考えつつ、ゆっくり周りを見回しながら進みます。
……転びませんよ? フラグじゃないですよ?
早朝だからなのか、森の奥の方は微妙にもやがかかっていて視界の悪さに拍車をかけていますが。
いちおう突然敵に出会う可能性を考慮して、アイテムボックスからカットしたエピルを取り出し、口にポイっと放り込み器用度を底上げです。
実際は空腹度回復ついでのツマミ食いな感じで美味しくいただきます。うん、美味い!
ついでにアクティブスキルの【武器付与】で棒の威力も底上げです!
こういったときに魔法を使っていかないと、ついつい【支援魔法 付与・劣化】の存在を忘れてしまうのですよね。使わないとレベルが上がらないというのに……気をつけないと駄目だね。
生産の時に使ってもレベルは上がるのでしょうかね……多分上がると思うんだけど、頻繁には使えませんよね。
魔法付与に失敗すると、作ったものが壊れちゃう可能性があるという話ですし。
あれかなぁ、簡単に作れるものを山盛りで作成して、壊すつもりで練習するとかした方が良いのかな。
そうなるとラビ君を乱獲せねばいけませんね……! 棒で叩いて倒すのです!
ラビ君たちとの戦闘へ向けて決意も新たに、棒を構えて油断せずゆっくりと森の奥へ進んでいたのですが、なんと私の考えを読んだようなタイミングで、目の前に【ラビ】が出現しました。
へぇー、森の中にも出現するんですね。
毛皮を頂く為にこの子には犠牲になってもらうと致しましょう……
フフフ、私に合ったのが運の尽きなのだよ。覚悟したまえ!
モソモソと周囲を見回しつつ移動を開始した【ラビ】の後頭部を、気づかれないように背後からガツンと一撃!
……現実でこんな事やってたら正に猟奇殺人犯だよね! 見られてないよね? 完全犯罪だよね?
不意打ちを受けた【ラビ】は、なんと一発でノックダウン! 光となって消え去りました。
これは武器が変わったお陰で威力が増えたのかな? 【武器付与】の効果もちゃんとありそう!
【ラビ】が消え去った後、何かが地面に残されておりました。
何だか箱みたいなアイテムです。っていうか絶対にあれは箱です。白い素材の箱。
うん、何故にウサギから箱が出るのでしょう……何処に隠し持っていたのでしょうか。
拾ってみると何処かで見た事がある様な、そんな雰囲気の小さい箱です。
あれー、何処かでコレと同じような物を手に取った記憶があるのですよ。
……ああーあれだ! ガルドスさんの所で開けた『初期装備箱』だ!
となるとーコレも何か装備品が出てくるのかな?
ひとまずアイテムボックスへ収納しておいて、後でアイテム名を確認してみましょう。
左手に箱を持った状態で【ボックス収納】を宣言、無事に箱は私の左手から姿を消し、アイテムボックスへと保管されました。すぐに確認してみたい気もしますが、今は未探索地域へ採取しに向かっている途中ですので、我慢我慢。
ラビとの戦闘終了後も慎重に回りを見つつ、足を進めて数分後。
開けた所に、ちょっとした大きさの池というか泉の様な場所を発見しました。
岩肌が隆起していて、側面にあるひび割れから湧き水が結構な勢いで流れ出ていまして。
澄み切ったお水が地面にある岩の窪みに溜まっています。
アレですよね、岩清水! 登山口とかでよくありそうな湧き水ポイントです!
器材を取り出してここでポーションとか作れそうな予感!
……でも作ってる最中に背後から蜘蛛が来たり……いかんいかん! ホラーチックな想像をしてしまった!
折角綺麗な景色なのに! セルフ台無しにしてしまった! 消え去れ不穏な想像!
頭を振りつつ、気分を切り替える意味も籠めてお水を手で掬い取って一口飲んでみます。
おおぉ……冷たくて美味しい。さすが湧き水……硬水とか軟水の区分けはあるのだろうか。口当たり的には多分このお水は軟水だと思います。さらりとして飲みやすい。
ココまで移動するのに消費したスタミナが、お水で回復したような気がします。
一応メニューを開いて確認してみましたが、やっぱり回復しているみたいです。効果絶大。
折角なのでエスメラルドさんの所で購入した水筒に、この湧き水を汲んでおこうと思います。
購入した水筒が何時までもカラッポのままは寂しいですからね。これで何時でも美味しいお水が飲めます。しかも無料です。自然万歳ですね。
一息ついて落ち着いたので、素材はないかなー? と泉の周りをぐるりと見回してみますと。
おおーあります、ありますよー!
期待していた様な珍しい素材では有りませんが、この辺りにも薬草や魔力の花が幾つか自生しているのを発見しました。
折角見つけた泉ですので、一応地図を開いてマークを付けておこう!
しっかりと泉の場所をマーキングした私は、周りに競争相手も見当たりませんし、ゆっくりのんびりと採取を開始します。
……こう、他の方と交流できるゲームなのに、一人でプレイしている状態である現在の状況は……少し寂しいと感じる事もありますが。
今のこういった感じで、マイペースに作業できるのも一人でプレイしているからなんですよね。
私のプレイスタイルと趣味が合う、ゲームお友達が何時か出来ると良いのですけれど。
高望みは致しませんデス。一人だけでも出来たら良いなーと、そう思ったりするのです。
なーんてシンミリ思いながらも手は動き、あらかた採取を終えたので立ちあがります。
さあ戻りましょうかねー、と軽く腰の運動をして後ろに顔を向けたのですが……ですが。
……ああ、神様仏様【黄昏の大神】様。
やっぱり私の【死に戻り】フラグは立っていたのですね。
あれほど会いたくないと連呼していたその相手が……
8個の瞳をこちらに向けて、8本の足をワキワキさせて……あー何だか毛もフサフサしてますね……
そう、例のあのお方……巨大な蜘蛛が私の背後にいつの間にか……ご来訪しておりまして。
……近くで見ると超でかーい! うわぁー!! スミマセーンお近づきになりたくなーい!
本日は3話更新です。
次話はお昼の12時に。




