086 進物入手 と コミュニティ
エスメラルドさんにご進物を売っているお店の場所を聞いた後、今度こそ雑貨屋さんをお暇致します。
いやー買い物に来ただけなのに、気が付いたら大分話し込んでしまいましたね。
リーナさんも懐から今度は時計を取り出して確認し、そろそろ休憩が終わる時間だー! との事で、職場である総合ギルド本部へと戻ると言っておりました。
ギルド内の鑑定部門で一応最高責任者っぽい事をなさっているとか。
あのテンションで作業をする人に責任者という肩書きが付いている様を想像すると、非常に違和感が。
オフと仕事は完全に切り分けるタイプなのかもしれません……そうだと思いたい。
お店の前でエスメラルドさんとリーナさんに手を振ってお別れをしつつ、歩いて一分も掛からない場所にあるご進物類を販売しているというお店へ移動します。
目の前にそびえ立つ大きな建物……何やらご立派な店構えですね?
豪華な仕立ての扉をゆっくりと押し開けると、正面にカウンターが設置されており、そこに女性店員さんが座っております。左右を見回すと物凄い色々な商品が所狭しと並べられておりました。
ココは一体何屋さんなのでしょうか。デパート的な品揃えなのかな……よく判りません。
私が周囲を見回して思案していると、素早い動きで制服っぽい服装の男性が近寄ってきて、私に声をかけてきました。
「いらっしゃいませ! なにをお探しでしょうか?」
「あ、そのー友人の家を訪ねる際に何かご進物でも持っていこうと思いまして……」
「それでしたらコチラの棚に見本が並んでおります! お好きな物をお選び下さいませ!」
男性店員さんが指し示す方向に、蓋が開いた状態で並ぶ進物っぽい箱の山。
よく見ると、全部何かしら違う素材で作られた展示用ダミーみたいです。よく出来てるなぁーこれ!
見た目は凄い美味しそう。カッチカチだけど。素材は何なんでしょうね?
ぐわーっと見回してみましたが、どの商品が良いのか等全く判らないので、ここはプロである男性店員さんに決めてもらうと致しましょう。
「相手は一人暮らしの女性で、ある程度日持ちする焼き菓子なんかが良いなーと思ってるのですが」
「はい! それでしたら売れ筋のコチラ、あとこの商品もお勧めです! コチラなどは少々お値段が張りますが、王都で有名なお菓子工房の焼き菓子で、非常にお勧めで御座います!」
数種類の展示ダミーを紹介しつつ笑顔で説明してくれる男性店員さん。
なるほど……売れ筋系のは200ゴールドか……王都の有名工房のは480ゴールドもする!
ちょっと金欠気味なのでココはリアさんには悪いけど、売れ筋でお勧めのヤツに決めよう!
私が売れ筋の焼き菓子詰め合わせをお願いすると、ありがとうございますー少々お待ちを! と元気にお返事してくれた男性店員さん。
ささーっと奥へ引っ込んだかと思うと、1分も経たない内にその手に紙で包まれた箱をもって戻ってきました。素早い。
「商品はコチラになりますー! お会計はあちら、購入カウンターにてお願い致します! 表書きや名入れ等も承っておりますので、カウンターでお申し付け下さい!」
「はい、助かりましたーありがとうございます」
箱を受け取った私は、教えられたとおり購入カウンターに向かいます。
私に視線を向けてニコニコ顔でペコリとお辞儀をしてきた女性店員さん、私の差し出した箱を受け取ると、表面に貼り付けられていた紙をペリっと剥がして、そこに記載されていた値段を確認しています。
ちょっとしたプレゼント風味なノリで渡す物なので、熨斗とかはいらないよね。
特に何も手を加えなくて良いですとお願いすると、笑顔で頷いた女性店員さんが例のお金を取り出さないでもいい、ワンプッシュ一括支払いのメニューを表示してきました。
清算を終えた後に袋に入れるかどうか聞かれたので、祝福の冒険者なのでアイテムボックスに入れますーと返事をした所、女性店員さんは進物の箱の右上と左下の辺りに、小さい判子を押して下さいました。
ちょっと目を凝らしてみて見ると、細かい魔法陣の様な模様を描いている判子です。
一体何なのか気になったので女性店員さんに聞いてみた所、カウンター前でアイテムを収納しても、防犯システムが反応しないようにする為の判子らしいです。
メニューを開かないでコマンドワードでの収納でお願いします、と言われました。
ふむぅ、なかなか興味深いですね。
アイテムボックス持ちのお客さんってそんなに来店するんでしょうかね?
図書館で聞いた話によると持ってる人皆無だっていう事でしたけど。
そこの所が疑問だったので聞いてみましたら、私達のような祝福の冒険者がたくさん現れるまでは、魔法のポーチに対しての使用が主な用途だったみたいですね。納得納得。
色々と教えてくれた店員さん方にペコリと頭を下げつつ、焼き菓子を仕舞って後ろから見送られつつお店を後にします。ドアが閉まる際に、またお越しくださいませー! という男性店員の声が聞こえました。
さて、ゲーム内時間は大体お昼過ぎで3時のオヤツ前と言った所でしょうか。
今から早速北の山岳地帯へ遠出するという流れで行くのもどうなのかな……
何時もの癖でポーション類ガッツリ売り払ってしまいましたからね。
途中で戦闘があった場合に困った事になる可能性が大です。
素材集めてもう一度作るとしても、町の周囲に自生している植物関係はほぼ収集されてしまった後でしょうし……やっぱり狙い目は素材が復活する早朝ですよね。
うーん、ゲーム内時間速度が2倍であるのならば、ゲーム内で明日の朝、現実で今日の夕方位までちょっと休憩してからの方が良いかな?
このまま出発したらオールナイト山登りになりそうだよね。
無理無茶無謀すぎる。
今まさに思い出したのだけれど、そもそも照明代わりになる様なアイテムを持っていないですよね私。
あれか、暗くなったら結界使ってログアウトしちゃえって事か。大雑把過ぎる。
そんな事を考えつつ、半ば癖の様な感じで中央広場の噴水へ向かって歩いていた私。
うん、やっぱり一旦ログアウトしてちょっと仮眠でも取ろうかな。
いやー我ながらこのゲームに嵌ってるなぁ……
プレイしすぎてお父さんに怒られない様に気を付けないと。
ある程度の成績を修められる様に、お勉強もしっかりね!
噴水横まで戻ってきた私は、ログアウトするためにメニューを呼び出して……そういえば国営図書館で装備変更したままだったという事に今更ながら気が付きました。すっかり忘れてたですよ。
ここなら装備変更の光を出しても驚かれないだろうと思いますので、ぱぱっと例の【冒険者装備】に戻してしまいましょう。
毎度お馴染みの装備変更手段を用い、付け替えを完了した私の脇で、女の子プレイヤーさん数人が一つのメニューを覗き込みつつ、ワイワイ会話しているのが見えました……なにを見ていらっしゃるのだろう。
会話内容から察すると……どうやら初対面の人とパーティを組む為に待ち合わせをしている模様。
どういった感じでパーティ結成をするのかな、とか少し気になったのでチラっと会話を楽しんでいるプレイヤーさん達が見ているメニューを見てみたのですが。
そこに映し出されていたのは、見覚えのある文字の羅列。
……ええ!? 何ですと!?
公式の掲示板ってゲーム内からでも確認できるの!?
……そう、女の子プレイヤーさんたちがワイワイキャッキャしながら見ていたのは、公式サイトにある掲示板でPTを募集している方の書き込みだったのです。
早速私もメニューを開いて、何処から掲示板を参照できるのか探してみることにしました。
普段使っているメニュー部分には、掲示板の存在を確認できていませんので……恐らくはこの項目……そう、パーティなんて組んだ事ありませんし、今現在プレイヤーの知り合いも居ないので全く触れていなかった……『コミュニティ』という項目。
試しに選択してみますと、思っていた通りにパーティの結成や解散、フレンド各種の設定やブラックリストの設定メニュー、他プレイヤーから届いたメッセージを保管、自分から知り合いにメッセージをおくったりする為のメール機能、他にも選択するとクラン? とやらに加入した場合に選択可能になります……と説明が出てそれ以上先に進めない項目がありました。
そして一番下の部分に『公式掲示板を開く』という項目が。
……ありました、ありましたよ。
必要ないとか言ってないで、ちゃんと中身だけでも確認しておきましょうよ私!




