082 やっぱり 不明な 謎の能力
激しい雑貨屋さんに対する営業妨害(なお無意識
とりあえず『識別化』の方はしていただいて全く問題ありませんし、了承のサインを出しておきます。
リアさんが覚書を添付していてくれていたので、素材その他ある程度の詳細は判明しておりますが、大半の部分が歯抜け表示になっていたり『不明』表記になっていた筈ですので。
品質や破損度も全く判別できない状態ですので、何時壊れてしまうかと思うと不安になりますよね。
まぁリアさんのお言葉によると、破損部分があっても時間経過で自然に修復されるとの事でしたが……どれ位傷んでいるのか確認出来る様になっても悪い事はない筈です。
修復が間に合わずに、完全に壊れてしまう事も考慮しないとね。
私からの了承を受け取ったリーナさんは、一度頷くと【緑石のペンダント】を両手で挟みこんで、目を閉じた状態で何やらブツブツと呟いております。
どうやら鑑定の内容を再度確認しているような感じみたいですね。
今度は数秒程度の短時間で目を開いたリーナさん、笑顔で私に【緑石のペンダント】を返却して下さいました。非常に満足そうな表情をしております。
まぁ喜んでいただけたのならば、アイテムを貸し出した甲斐もあったという物です。
「はいどうぞ! しっかり『識別化』出来てるか確認してみて!」
「はい、判りました!」
『識別化』が正常に行われているのかチェックする為、アイテム詳細を確認して欲しいと促されましたので、一旦アイテムボックスへ【緑石のペンダント】を収納したしまして、詳細を表示させて見ます。
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アイテム名 【緑石のペンダント】
等級 遺物級
品質 ☆☆☆☆☆☆☆☆
破損度 問題無し
属性 ※装飾品『物理』 ※自動修復『微』 ※加工不可
※宝石『緑楔石』 ※金属『心応鋼』
付加能力 ※因果調律『生産 5増加』 ※使用者限定『特定条件』
※落下制御『定員 2』 ※遺失技術『少』 ※成長装備
※『●●●●』
効果待機時間 5カウント
詳細 楔の姫巫女【アグヘイリア】の加護を象徴する品物。
いち早く【楔の島】に訪れた冒険者達への褒賞として授けられる。
アップグレード不可 祝福済 祭具
【鑑定者】『ノアスリーナ=ディレアム』
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おお……殆どの項目が判明してるじゃないですか!
でも毎度お馴染みの謎能力である※『●●●●』部分はリーナさんでも判明させる事が出来なかった模様。
本当になんなんだろうかコレ。
アイテム詳細が表示されているメニュー板を滑らせて、リーナさんと一緒に覗きこんで確認出来るような位置へと動かして、件の※『●●●●』部分を確認してもらいましょう。
「おおー! やっぱりアイテムボックスの加護って便利だ! こうやって詳細内容の共有がその場で瞬時に出来ちゃうんだもんなぁ」
「あらぁ! コレは便利ねぇー!」
私が中を滑らせてリーナさんの前へメニュー板を持っていくと、それを指でツンツンしながらリーナさんが感心したように声を上げておられます。その隣で興味津々な感じで一緒になってメニュー板を撫でているエスメラルドさん。
あーそういえば、プレイヤーっていうか祝福の冒険者以外は、基本的にアイテムボックス持っていない人ばかりの筈でしたよね?
それなら普通の方々は、どうやってアイテムの詳細を共有したりするのでしょう?
疑問に思って聞いてみた所、アイテム情報を読み込んで紙に印刷できる魔道具があるらしいです。
基本的に商売をしているお店ならば一つ保有している筈の物で、ある程度高価な物なので常時持ち歩いたりはしないとの事。
なんと、リーナさんはその魔道具を個人で一つ所有しているらしです! お金持ちだ!
なくさない様に、仕事場にある金庫代わりの箱にしっかりと保管してあるみたいです。
その魔道具は一体どういった物なのか、ちょっと気になったので詳しく聞いて見ましたら、説明好きなリーナさんが嬉々として教えてくださいました。しまった、迂闊な話題だったか!
色々と細かく説明して下さいましたが、掻い摘んで言いますと何やらT字の形をしていて、片手で持てる程のサイズの魔道具で……T字の上の横棒の部分をアイテムにくっ付けて情報を読み取るらしいです。
うん……多分形状から察するに、ハンディのバーコードリーダー的な何かかな?
多分ですが【黄昏の大神】の仕業だよねきっと。
あの人ならばきっとやる。
色々と悪い意味で信頼の置ける方だという事が、今までの経験で判明しておりますので。
でも、嫌いじゃないですよ。近所の悪ガキポジションみたいな可愛げがありますし。年上に失礼。
おっと、変な所に思考を飛ばしてないで謎能力の部分についてお聞きせねば。
「この付加能力の所にある判明していない所って、せめて何かしらの断片的な情報とか、手に入ったりはしなかったでしょうか?」
「うん、そこ判明はしなかったんだけど……他の部分とはちょっと手応えが違った」
手応えが違う? 早朝確認した【緑石のペンダント】の詳細内容を頭の中に思い浮かべて見ますが、ちょっと良く判りませんでした。
リーナさんの方も、どう説明したら良いものかと言った風に首を捻って唸りつつ考え込むと、話しづらそうに私に説明を始めて下さいます。
「んー何ていうかー……素材の『緑楔石』部分に表記されてた『■■■■』と、謎の能力ってフワモさんが言ってる『●●●●』は根っこが違うっていうか……あーなんて説明すればいいんだろ?」
「……んん? そういえば何かちょっと違いがあった様な?」
リーナさんに釣られて私も首を傾げつつ、今朝確認したアイテムの詳細内容をもう一度思い出します。
ああ、そうだ! 微妙だけど表記っていうか伏せ方? が違っていた記憶がある!
「『■■■■』の方は【鑑定】で問題なく判明したけど、『●●●●』の方は手応えが全く無かったっていうか、判明させる条件が基本的に全く違うもの? なんじゃないかなと思うんだ」
【緑石のペンダント】の詳細に表記されている【※ 『●●●●』】の部分を指で撫でながら、リーナさんが私に説明するというよりは、自分に言い聞かせて再度確認をしている感じで呟きました。
カイムさんのお話から察するに、どの様なアイテムにでも効果を発揮して詳細を判別できるのが【鑑定】だったはず。その万能であるはずのスキルが効果を及ぼさないって事は……?
「もしかしてまだ正式に運用されていない項目とかなのかな……」
「お!? なにか理由に心当たりがあるの?」
思わず口に出して呟いてしまった私の予想の言葉に対して、過敏に反応して物凄いニンマリ顔で詰め寄ってきたリーナさん。近い近い、顔が近いですよ。
『落ち着きなさいな!』と言いつつエスメラルドさんが、詰め寄りすぎのリーナさんの襟元をソフトに掴み、私の眼前から引き剥がして下さいました。
あ、ふわりと靡いたリーナさんの髪から、なにかお花っぽい香りが。いやいやそうじゃなくて。
「あーえーっと、多分なのですが時間が解決してくれる可能性が」
「ぬわぁーラルド離してぇ……時間? ……もしかして祝福の冒険者に対しての『神託』待ちってこと?」
「ああー……はい、恐らくそうだと思います」
首根っこを摘まれて脱力中の子猫状態なリーナさんが、両手をブラブラさせつつ私が聞いたことのない単語を口にしてきます。
なるほど、プレイヤーに対しての運営から届くメッセージって、住人の方に言わせると『神託』って表現なんだね。
さっきお昼に『長時間のプレイは健康を害しますので、適度にご休憩する事をお勧めします』っていきなり目の前に表示されたヤツも、この世界の住人からすると『神託』って表現になるんでしょう。ユーザーフレンドリーなご神託ですね。
まぁとりあえずリーナさんでも確認出来ない能力なのであれば、ゲーム開始2日目である今現在、この謎能力を判別できる住人さんやプレイヤーは近場に存在しない、ってことで良いと思います。
「んむー……それなら【鑑定】が出来なくても仕方がないか! 『神託』が下ったらまたアイテム詳細みせてもらっていい?」
「はい、勿論良いですよ!」
「ぃやったー! 約束ね!」
ようやく床に着地させてもらえたリーナさん、ウヘヘと可憐な見た目とは裏腹な怪しい笑い方をしつつ、私の両肩をポンポンしてきました。
遺物級である【緑石のペンダント】でこんな状態になるのであれば。
マイフェイバリットアイテム! である【※ 一番ボール君 ※】を見せたら一体どういった事態に陥ってしまうのでしょうか。
その場で卒倒しちゃうんじゃなかろうか。不安だ。
あ、そういえば一つ気になる事があった。
「リーナさんリーナさん、チョットお聞きしたい事が!」
「んぅ? ほいほい! スリーサイズ以外ならお答えするよー」
「いえ、あの……【鑑定】のレベルはお幾つなんでしょう?」
「あ゛あ゛ー……えっとねぇ、ここ10年位はほぼ変動無しで……レベル299で止まってるんだぁ……成長ラインっていうかそう言う感じの所らしくて、突破が中々出来なくてねー」
……予想を超えた【鑑定】の無茶苦茶レベルっぷりに、思わず私が卒倒しそうですよ……
月曜日の投稿、時間が無くてちょっと間に合うか怪しいです。
何時も通り、間に合えば投稿いたしますので……どうかご容赦の程。