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079 雑貨屋さん と ふわふわブラシ

THE 買い物


やっとブラシ購入だよ! どうなってんだこの小説!?(自虐

 それでは、現在欲している魔物に関しての情報はある程度得ましたので、次は必要な物をそろえる為に買い物を済ませる事と致しましょう。


 ガルドスさんのお見送りと声援を背中に受けつつ、まずは目的の一つであるブラシ購入を果たす為に、雑貨屋さんへと移動しなければなりません。

 一旦わかりやすい場所まで移動しよう、という事で中央の噴水広場へと足を進める事に致しました。

 お話によると薬品店の傍にあると言うことでしたので、薬品店の軒先を眺めることの出来る噴水前からならば、雑貨屋さんも視界に入るのではないでしょうか。


 噴水前まで戻りますと、露店を利用しているプレイヤーさん達の邪魔にならないように、路肩の方へと移動しつつ辺りを見回します。

 薬品店から少しはなれた場所に中身がパンパンな布の袋? のマークが描かれている看板が入り口脇に設置されているお店を発見いたしました。これが雑貨屋さんかな?


 薬品店に比べて、まったくプレイヤーの出入りがないみたいですね。

 やっぱり趣味に偏ったアイテムばかりが置いてあったりするのでしょうか。


 ガルドスさんが仰るには、冒険や出先でのキャンプ等に役立つ道具も色々と揃っている場所だから、しっかり購入して山登りの準備をすると良いぜ! といった感じでお勧めされたのですけれど。


 メニュー一つでログインログアウト出来るプレイヤーには、野宿用のキャンプ関連の商品は余り必要の無い物なのでしょうかね。


 さて、お店の前で考え込んでいても仕方がありません。

 取り合えず店舗の中に入って店員さんに色々とお聞きしながら、どの商品を購入するか検討すると致しましょう! お値段と相談もしないといけませんので!


 出入り口の扉は押すだけで開くタイプの物でしたので、ぐいっと押し込んで店内へと進入致します。

 カラカラン、と来店を知らせるためのベルが音を立て、私の鼻腔にふわっと漂う嗅いだ事のない香りが広がります。お花か何かの匂いかな? やっぱり外とは色々と空気が違いますね。


 商品を購入しに来たお客様だと思われる方が(フードを被った女性かな?)出入り口から入った正面に置いてある商品を両手に取って、なにやら『ん゛ん゛ん゛ー!』と凄い唸り声を上げつつ購入を吟味している様を視線の端で眺めながら、店内をグルリと見回して建物内部の構造を確認いたします。


 恐らくは清算する場所だと思われる、出入り口脇に設置されていたカウンターのそばで、にこやかな笑顔を浮かべながら立っていたガッシリとした身体つきの男性が、私と視線が合うと首を軽く傾げつつペコリと一礼して下さいました。

 その方のオデコの辺りに、数センチの長さがあるツノが一本……ツノ!? そういった種族もいるんだ!?


 た、たぶん雑貨屋さんの店員さんでしょうか?


 落ち着いた青い色合いのエプロンの様な物(肉球マーク付いてて可愛い!)を身につけた方ですね。

 色々と大量の商品が並んでいて何処に目的の物があるのか判りませんし、取り合えず声を掛けて聞いてみましょうか。


「あの、すみませんー」

「はいはいはぁ~い! 何かお探しでしょうか!」


 私の言葉に対して両手をこすり合わせながら、素早い癖に空気を乱さない感じのヌルリとした動きで、私の正面まで移動してきたエプロンの男性が、凄い迫力のある笑顔で私の顔を上から覗き込むようにして声をかけてきます。

 離れた場所からだとあまり判らなかったのですが、体格がガッチリしている以外に身長も高い人だった……でも何だろうか、威圧感より親近感があると言うか……動きが柔軟と言うか。


 見下ろされている状態なのですがプレッシャーを余り感じませんね。


 何だろう、この奇妙な形で直立している無駄に統一感があるオブジェを見ているような、違和感が凄そうで、でも全体的に見たら程よく調和している様な……自分で何いってるのか判らなくなってきた。


 ひ、ひとまず思考の渦から意識を脱出させましょう。私はお買い物に来たのだ。


「えっと『ふわふわブラシ』を探しているのですが」

「それならオシャレグッズの棚にございますぅー! どうぞどうぞ! ご案内いたしますー!」


 目にも留まらぬ速さで店員さんは私の背後へ移動しますと、ふんわりと私の両肩をその手で掴んで程よい強さで押してきます。あっあっこっちですか!?


 入り口から右奥の方にあった棚の前まで到着いたしますと、店員さんが先ほどと同じように凄いスピードでスルリと私の横へ移動し、壁の中央部分の棚をビシッと右手で示してニコリと笑顔を下さいました。

 何というかいちいち動きが濃い人だ。


「こちらの棚がー『ふわふわブラシ』コーナーとなっておりますぅ!」

「あ、ありがとうございます……」


 その場から動く気配を見せないエプロンの店員さんは取り合えず気にしない事にして、商品を吟味してみる事にします。えーっと、コーナーって位だから種類が幾つかあるのでしょうか。


 棚を左から右に向かってざっと確認して見ますと3種類の『ふわふわブラシ』があるみたいです。


 一番右にあるのが【ガイド】さんにお借りした記憶のあるブラシですね……えーっとお値段はー1500ゴールド!? 凄い高い!?


 中央にあるのは右のに比べると少々ブラシの毛の部分が少なく、大きさもちょっと小さめの物ですね。

 此方の商品は980ゴールドでした。これも中々のお値段……私がお金持って居なさ過ぎなのだろうか。

 思わず考え込んでしまいそうです。これからも地道に生産活動してお金を捻出せねば!


 最後に左の商品、ブラシの毛は中々の量でしたがサイズが非常に小さい。

 手のひらにすっぽり入る位の大きさでゴザイマス。

 この商品は480ゴールドでした。ううむ、どれにしたら良いのだろうか……


 私が悩んでいる事に気が付いたのか、棚の商品を指差しつつエプロンの店員さんが説明を開始して下さいました。


「こちら右の商品が高級ふわふわブラシ! フンワリ仕上げの効果の程は勿論! 耐久度や品質もさる事ながら、汚れ落とし効果や乾燥効果までついた非常ーに便利な一品でございまぁす!」

「な、なるほど……!」


 見覚えのある右のふわふわブラシを眺める私。汚れ落としと乾燥までしてくれるアイテムなのか。

 一本あれば凄い活躍してくれそうな凄いアイテムですね! お値段だけがネックです。


「次に中央のこちら! 一番の売れ筋のこの商品はフンワリ仕上げ効果も中々のもので、耐久度の方もしっかりとしております! とりあえず初めて使う方ならばコチラの商品をお勧めしております!」

「んー980ゴールドかぁ……」


 中央のブラシを一つ手にとって眺めます。定番商品と云う奴でしょうか。

 でも一応私は右の商品の絶大な効果を知ってしまっておりますので……

 でもお値段的にはこっちも良いなーどうしようかなぁ


「最後にこちら左の商品! お子様向けのブラシとなっております! お子様用と銘打ってはおりますが、効果はシッカリとしたもの! お値段も手頃ですので、動物などのブラッシングにも気軽にご利用になれますよー!」


 左の小さいブラシの見本品を手にとって毛並みを確かめてみます。


 安いからと言って粗悪な商品じゃないみたいですね。

 これって魔物の毛皮で作った装備とかに使ってもフワモコっ! になるのかな……生き物限定なのだろうか。気になります。


 あと耐久度は使っていると減っていく物なのでしょうけれど、修理とかは出来る物なんでしょうか。

 その辺りまとめて質問してみますと、詳しいお返事が返ってきました。


「もちろん毛皮装備等にもバッチリ効果は発揮されます! 装備のお手入れ用なら左の小さいブラシがお勧めですヨ! 修理のほうは、お手間と費用効果を考えますとぉ……何か思い入れのある品で無い限りは新品をお買い直しいただいたほうがお得かと!」

「詳しい説明ありがとうございます!」


 うん、ブラシは壊れちゃうまで使い倒した方が良いって事ですね。


 説明を聞いて、どれを購入しようか少しだけ悩みましたが、やはりここは右のブラシを購入する事にしました! 【ガイド】さんお勧めのブラシだものね! お金はまた頑張って溜めよう!


 右のブラシを買う旨をエプロンの店員さんに告げると、素早く一つ商品を手に取り、クネクネと流れるような動きでカウンターまで戻っていかれました。私もその後に続きます。

 通りすがりに手頃なお値段(100ゴールドです)の水筒が売っているのを発見しましたので、いろいろな種類の中から店員さんのエプロンにプリントされてある、可愛い肉球マークと同じ絵が描いてある物を一つ手に取り、一緒に清算してもらう事にしました。


 水筒を手にカウンター横を通り過ぎた際に、今だ商品を吟味している女性のお客さんが違う商品棚のアイテムを両手に持って『ぬぐむごぐむぅ……!!』と妙な唸り声を上げているのが聞こえました。

 ……何をそんなに悩んでらっしゃるのだろうか。


 カウンター向こうで私の選んだ商品を袋に詰めて下さっているエプロンの店員さんに、水筒を差し出して一緒に清算を頼みつつ、それとなく女性のお客さんの事を目線で示してみましたが。


 水筒をブラシと一緒の袋に入れながら、私の顔の横に口を寄せてギリギリ聞こえるくらいの小声でエプロンの店員さんがおっしゃるには『何時もの事ですので気になさらないでぇ』との事。

 えええ、いつもの事なの!? 何だか風変わりな人だなぁ……


「それではお会計が1600ゴールドになりまぁす!」


 エプロンの店員さんの声に反応して、露店の串焼きお兄さんのところでお馴染みになっている一括お支払いメニューの表示が目の前に出現いたしました。

 ああ! これってプレイヤーだけのシステムじゃないんだ!?


 勿論『はい』のボタンをプッシュ、1600ゴールドのお支払いを済ませます。

 やりました。無事にブラシ(水筒も)をゲットです!


「ありがとうございましたぁ! どぉぞまたのご来店をお待ちしておりますぅ!」

「こちらこそ商品の丁寧な説明、ありがとうございましたー!」


 両肩をキュっとすぼめつつ両手を可愛い感じで振りながら、私をお見送りして下さるエプロンの店員さん。

 私も笑顔でペコリと頭を下げて雑貨屋さんを出ます。


 ……こういう女性っぽい感じの男性ってどういう表現をしましたっけ。


 ……ああそうそう! オネエ系の人だ!

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