076 不人気時計 と 加速時間
その後色々と時間についてのお話がその場所で行われていたようなので、経過時間の差異について以外の事も判るかもしれない、と思って目を通してみる事にしました。
まず時計についてですが、一応携帯用の時計は売っているという情報を得る事ができました!
表示時間が大分大雑把で、大体10分刻みで表示が進む物だとか?
しかもそこそこの装備が一つ購入できてしまう位には値の張るもので、攻略重視のプレイヤーは装備を後回しにしてまで購入するほど重要な物ではないな、という結論が出てしまっているみたいです……
手に入るなら便利だね、といった感じでしょうか。
あと電池の様な感じで動かす為に必要な動力として、私も数個所持している【魔石】が必要だとか。
この【魔石】は様々な魔道具の動力源として使用される物らしく、他の素材と同じように金銭で売買されている物のようです。しかも中々のお値段とか。
ガンガン攻略を進めているプレイヤーさん達曰く、時計なんていう『ただの便利アイテム』に【魔石】を使うのは勿体無い、という結論に達しているというお話もありました。
時計というその機能上の問題もあり、アイテムボックスに仕舞っておくと動作しないという欠点があるらしいです。つまり常に何処かに身に付けていないと駄目という事。
あと戦闘を行なう際は邪魔になったり、破損したりする危険性があると言うことも書かれております。
ふむぅ……サイズもちょっと大きめ、と。
私的には結構欲しいと思うアイテムなのですが、【魔石】の燃費も悪いらしく評判は宜しくないのですね……ブラシ購入ついでにお値段だけでも確認して、金額如何によっては一応購入を検討という方向で。
他にも安寧の女神様の神殿に、この地域の標準時を表示している道具というか、そのまま置き時計の様な形状の遺物があるらしいです。
神殿といえば門前にいるアレイアさんにお会いする為に何度も足を運んでおりますが、未だ中に入った事は一度もありませんでした。
その様な近場に時間を確認できる物があったとは……なんとも迂闊でした。
お昼と夜の区切りに鐘の音を鳴らす位なのですから、時刻がわかる何かが配置されていたとしても全く違和感無いじゃないですか。何故そこに考えが到らなかったのか……私だからか、ぐぬぬ。
その後は時計を自作してみた、という書き込みがあったり食事効果をつなげていけば時間なんぞ余裕で判別できるだろ、等の凄腕プレイヤーっぽい書き込みがあったりもしました。私には無理だよーぅ……
あと他に気になる書き込みがもう一つ。
一人の方が『ログインの時に軽い車酔いみたいな感覚があって気持ちわりぃ』という書き込みを行った後に、他のプレイヤーさんも、ログインやログアウト時に少々気持ち悪い感覚がある、という意見がずらーっと並んでおりました。
良かった、あの妙な感覚を感じていたのは私だけでは無かった様です。
数十行に渡ってその事で色々書いてあったのですが、なにやら詳しそうな方のご意見によりますと。
ログイン時に感じる『気持ち悪さ』は『加速酔い』という物だそうです。
ゲーム内と現実の間での経過時間に差異がある場合に発生するモノ? だという事。
元々加速時間を採用しているゲームをプレイしていた方だと、この感覚に慣れている様で全く感じることが無い感覚だそうで。
今現在気持ち悪いと感じている人も、慣れてくると問題なくログイン出来るようになるよ、というお言葉も書かれておりました。
なるほどそういう事だったのですか……『ふわもこファーム』での時間の流れは現実と等速でしたから。
慣れていない私は、それでログイン時に気持ち悪い違和感を感じたのでしょう。納得納得。
大規模イベント時には、超圧縮時間加速処置? とやらがある可能性が高いから、今のうちに慣れておくとイベント参加時に楽にプレイ出来るようになる筈、といったご意見もちらほらと。
イベント……楽しそうな響きです!
『ふわもこファーム』でもイベントという物は幾つもありましたが、基本的に箱庭でプレイするゲームですので。
大体は何かを集めて数を揃えるとアイテムが貰える! とか、イベント専用の『メェ』を一定期間でどれだけフワモコに出来たかを競う! とか全部一人で黙々と作業する感じのモノばかりでしたので。
このゲームなら大人数の方々とワイワイお祭り騒ぎする感じですよね!
私も端っこの方で参加できれば良いので、楽しい空気を味わいたいものです!
表示されているコメントの最後まで読みきりまして……一番下に更新ボタンがありましたので、何気なく押してみますと。ぐわーっと追加されるコメント群、その数恐らく数百以上!
うわーリアルタイムで物凄い勢いの書き込みがぁ!
これは、じっくり掲示板の内容を読んでるだけで時間がドンドン過ぎていってしまいますね。
取り合えず知りたい事は調べ終わりましたので掲示板を閉じる事にします。
このまま楽しく読み続けていけそうな気もしますが……あまり読み耽っているとゲームプレイの時間が無くなってしまいそうなので。
公式サイトの表示を終了させますと、ゲームのソフトを起動いたします。
チラリと横目で時計を確認してみると、大体1時間近く掲示板と睨めっこをしていたみたいです。
つまりゲーム内ではもう2時間経過しているという事ですね。
こうやって時間の縮尺を把握出来るようになると、今後色々予定を考えられて楽ですね。
さあブラシを購入する為に雑貨屋さんへ向かいますよー!
ゲームの起動を確認、配線を元の場所へ接続しなおしますと、横になってメニューに表示された確認表示の『はい』を選択してログイン開始です。
本日3度目となるIDとパスワードの入力を終了させ、ゲーム世界へと移動いたします。
例の気持ち悪い浮遊感も、そういえば最初の頃に比べれば軽くなってきたのじゃ無いでしょうか?
たぶん気のせいでは無いと思います。
これが時間の加速に慣れてきた証拠でしょうかね。
何かしらのイベント前までには違和感無くログイン出来るようになっていると良いなー
目を閉じた状態でゲーム世界へと帰還した私は瞼を開いて周囲を確認いたします。
うわっとと……噴水の横のヘリにあたる部分に腰かけた状態でログアウトしたので、ヘリに立った状態でログインしてしまった様で……あやうく水の中にポチャンする所でした。
この何かに座った状態でログアウトした後にログインしなおすと、立った状態で出現する仕様はどうにかならないのでしょうか。
これもご意見フォームからメッセージを送っておいた方が良いのだろうか。
それほどゲームプレイに多大な影響がある様な事じゃないのですけれども。
姿勢の保存とかまですると色々と面倒だったりするのでしょうか。良く判りませぬ。
未だに人口密度が多目の噴水前から人の少ない中央通り北側へと抜け出しますと、雑貨屋さんの場所を判明させるべくマップを開きますが……
ガルドスさんにご挨拶ついでで聞いてみたほうが早いかもしれないと思い立ち、北門へと向かう事にいたしました。
毎度お馴染み北門横の詰め所前まで到達いたしますと、何時もの所にガルドスさんが毎度お馴染みの微妙に力の抜けた感じで立っておられます。
近くにプレイヤーさんは居ないようなので、質問攻めは終了したみたいですね。
よーし、話しかけるなら今のうちです!
「ガルドスさーんこーんにちわー」
「おお! おいでなすったな!」
私が来る事が判っていたのでしょうか、ニヤリとした笑顔を浮かべつつ振り返ったガルドスさん。
まぁ先ほど挨拶を交わしてはおりますが。
「今朝すれ違ったときに、何か聞きたそうな雰囲気を醸し出してたからな!」
「ええええ、どんな雰囲気ですかそれ!」
私的には良く判りませんが、今朝の私がしたご挨拶は何やらアレな雰囲気を醸し出していた様です。
おかしい、そんなにバレバレな感じだったのだろうか。
まぁ実際問題、あの時は色々とお伺いしたいと思ってガルドスさんの所へ顔を出したので、大よそ間違っては居ないのですけれども……ソレっぽく表情に出てたのかなぁ?
「それにお嬢さんのお陰で、今日の午前中は仕事が急がしくて仕方なかったぜ」
「うぇ!? 何で私に関係のある感じに!?」
バシバシと私の肩を程よい強さで叩いてきたガルドスさんが仰るには。
昨日ガルドスさんを私が激しく質問攻めにしているのを見かけた人たちが、それなら自分も判らない事を聞いてみよう、みたいな感じで質問に来てたとか……
うへぇ!? 気が付かない内に何処で見られているのか判りませんね!?
ガルドスさんとの会話中に何か恥ずかしい事をしていなかったか、非常に気になります!
そこの所をガルドスさんに聞いてみたのですが、ニヤリと笑って悟ったように頷いただけでした。
……ちょ! あの! 不安になるのでその表情やめてくださいませ!!




