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074 お好み焼き で 荒ぶる尻尾

 軽く勢いをつけて石造りのベンチから腰を上げますと、中央通りへと足を進めます。


 恐らくは何かしらのギルドっぽい建物に、人が激しく出入りしている様を横目で眺めつつ……アイテムボックスから中身の少ない方のポコ豆を取り出して歩き食いです。ぽりぽり。


 さて、先ほどの昼食で空腹度を回復する為の食べ物が尽きてしまいましたので、何処か食物を売っている所でアイテム補充をしないといけませんですね。

 土日の週末で朝からゲームログインしているプレイヤーさんが多いと思いますし、お昼時の今なら噴水周りに食べ物を販売している露店が乱立しているのでは? と個人的に予想しております。


 玄人なプレイヤーさんなら、こういった売り上げアップのタイミングは見逃さないですよね。


 次はどんな美味しそうな食べ物と出会えるかなー、等と考えつつ中央通りを北上しておりますと、安寧の女神様の神殿から、昨日の夜に聞いた覚えのある澄んだ鐘の音が辺りに響き始めます。

 昨晩ログアウト前に聞いた鐘は日没? のお知らせでしたし、これはお昼になった事を知らせる為かな?


 周りを見回すと、プレイヤーの皆さんが私と同じように立ち止まり、鐘の音に耳を傾けておられました。


 こう聞いていると、あまり大きい音には感じないのですが、何故だか遠くまで綺麗に聞こえてくる感じの音色なのですよね。なんと言いますか、遠くまで通る音と言えば良いのか。


 神殿から聞こえる鐘は、昨日と同じ回数の合計10回分響きました。

 見当たらない時計の代わりに、お昼と日没を鐘でお知らせしているのでは。


 まぁ昨日の夜の鐘の後みたいに、何かしら目に見えて街に変化が起こる事はありませんでした。


 そうこうしている内に、毎度お馴染み胃酸魚君の噴水前まで帰還いたしました。

 相変わらず激しく水を噴出していますね。


 食べ終わって空っぽになったポコ豆の袋を、両手でビリビリと破っていきます。数センチ幅まで破った時点で袋は光になって消えてしまいます。うむ、ゴミ箱要らず!


そういえば今まで気にしていなかったのですが、噴水から噴出している水って地下水か何かなのでしょうかね。

 見たところ、噴水内の水を循環させている訳では無さそうなのです。

 噴水の東西南北にあたる四方に、見えづらいですが排水溝? の様な穴が目立たないように隠されて設置されている様なので。


 こういう疑問なら、ガルドスさんなら一発で教えてくれそうです。コレも後で聞きましょう。


 噴水の縁に腰を下ろして周りを見ると、私と同じように噴水前をログアウト場所にしている人が多いようで、噴水前にログインして出現するプレイヤーさんが結構な人数見受けられました。


 見た目のインパクトもあって、目印に良いですよねココ。


 さて、ログアウトする前に食べ物の補給を済ませてしまおう! と意気込んで噴水の縁から立ち上がり、辺りに視線を向けますと……まぁ予想通りと言いますか、案の定と言いますか。


 ぎっしりという擬音がぴったりな程、噴水周りの路肩に乱立している露店でございます。

 まさに、前後左右ミッチリと隙間を埋め尽くさんばかりの露店量ですよ! なかなか壮観です。


 この場に入り乱れているプレイヤーさん達を眺めていると、今現在ゲームをしているプレイヤー総数はどの程度なのか、ちょっと気になる所ですね。

 ここにある露店の半分以上が、多分ですがプレイヤーさんが営んでいる店っぽいですので。


 さて、考え込んでいないでお買い物を済ませてしまいましょうか!


 色々とお腹を刺激してくる香りが当たり一面に漂っておりますが、気になる物を片っ端から購入するわけにもまいりません。幾らアイテムボックスのお陰で保存が効くと言っても、所持金の方は有限ですので。

 いつお金が必要になるか判りませんので、衝動買い等の無駄遣いは極力避けねば。


 大胆かつ慎重に物品を見極めるのです!

 まぁ基本は胃袋と相談しつつインスピレーションで!


 昨日のようにラビの串焼きを購入しても良いのですが、折角ですので違う食べ物に挑戦してみても良いかもしれません……と考えつつ噴水の回りをゆっくりと一周する感じで移動します。


 人口密度が高い……流石に時間帯も相まって凄い事になってます。


 ふと、昨日串焼きを購入した場所辺りに目を向けますと。

 なんと……同じ場所に居ましたよ、昨日の手際の非常に宜しい、ワタクシ命名『串焼きお兄さん』が!


 もしかして、昨日からずっとプレイしている訳では無いですよね……まさかね?


 少し離れた所から爪先立ちで手元を覗き込んでみますと。

 今日は串焼きではなく、何やら平べったい形状の焼き物を販売していらっしゃる様です。

 使用している鉄板も昨日より一回り大きくなっていて、その下に設置されている魔道コンロも大きいサイズの物を使っている模様。うわーあのコンロ高そう。


 しかし、この胃袋を刺激してくる香りはソースか何かでしょうか。

 じゅうじゅうと良い音と共に、ソースの焦げる香ばしい匂いが私の鼻腔をくすぐります。

 さっきお昼食べたのにまたお腹が……ぬぐぐ。


 しかし、ココからでは何を売っているのか良く見えないので、購入するかどうか迷っていますと、丁度良いタイミングで、串焼きお兄さんの売り物を購入した男性プレイヤーさんが私の隣に。


 そのまま私の横でお箸を使いつつ、モリモリと立ち食いを開始しましたので、一体どんなモノを販売しているのか確認する為に、失礼にならない程度に横目でコッソリと覗いて見る事にしました。


 ふむふむ……紙のお皿の上に乗せられたソレは、形状は丸くて厚みは1センチ程度。

 上にはソースらしき液体が掛かっておりまして。


 ……うん!? どう見てもお好み焼きだコレ!


 非常に見覚えのある食べ物を目にして、ちょっとテンション上がってしまいました。

 マヨネーズっぽいのもかけられてる……普通に美味しそう! めっちゃ欲しい!


 よーし! と気合をいれて、串焼きお兄さんの露店の列に並びます。4つ位購入しようかな!

 リアルお料理スキル壊滅状態の私では、お好み焼きとか冷凍食品以外じゃ食べれませんものね! 出来立てお好み焼きの甘美なる姿を想像しつつ、思わず狐耳がピコピコしてしまう位にはウキウキ気分です!


 並んで1分程で、早速私の番が回ってきましたので迅速に注文をせねば!


「4枚ください!」

「毎度! ずいぶん食べるねぇお嬢さん!」

「うぇ!? か、買いだめですよ!」


 爽やかスマイルでお好み焼きを作りまくっている串焼きお兄さん(どっちだ!)が冗談交じりでそのような事を仰ってきましたので、念のため誤解を解く感じにお答えしておきます。


 どうしてこう、気が付かないうちに食いしん坊キャラになってしまうのか。誤解なのです。


 後ろで並んでいるプレイヤーさん達が『そりゃそうだよな』『ここなら幾らでも食えるけどな!』等と仰いつつ、お兄さんの言葉に釣られてワハハと笑っておられます。

 釣られて私も笑ってしまいました。楽しい方々です。


 照れ隠しに何か言おうと後ろに視線を向けると、いつの間にやらビックリテンションに反応した為か、私自慢の狐尻尾がワサワサ動いていたらしく。

 すぐ後ろにいるガッチリとした体型の鎧姿の方に襲い掛かって(?)いたようで『おおぅ中々の感触!』と笑いながら、私の尻尾を両手でフンワリと押し留めておられました……『おま! ラッキーお触りかよ!』『バッカちげぇよふざけんな!?』等のお言葉が飛び交っております。


 あああ、うちの尻尾ちゃんが大変ご迷惑をお掛けしまして!


 私が焦って後ろの男性プレイヤーさんに謝罪しようとしました所、露店のお兄さんが笑いつつ『うちのお客さんにセクハラしないでちょうだいよー!』等と冗談っぽい感じで紛らわせて下さいました。

 さりげないフォロー……コミュ力高い。


「ほい【オコノミヤキ】4枚お待たせ!」

「わっわっ! あ、ありがとうございます!」


 列の後ろで笑っているプレイヤーさん達に、申し訳ないデスと頭を下げつつ恐縮している間に、昨日見た迅速な手さばきで、4枚のお好み焼きが紙皿に載せられて私の前に並べられたのでした。


 は、速い、速すぎる!?

 絶対お兄さんお料理スキル高いんだろうなぁ……

 きっと現実世界でもお料理スキル高そうな方ですよね。ご相伴に預かりたい。


 おっと後ろの方を待たせてしまってはいけません!

 ささっとアイテムボックスへお好み焼きを収納いたしまして。


 露店で笑顔を浮かべつつお料理を続けている串焼きお兄さんと、後ろで文句も仰らずに待って下さっていたプレイヤーの皆様にペコリと頭を下げて、超スピード(自分的には)で露店の前から移動します。ササササー!


 イメージでは残像を残す勢いで移動している(つもりの)私の背中へ『またのご来店を!』とお兄さんのお声が。

 後ろに並んでいたプレイヤーさん達からも、頑張れよー等と応援など頂いてしまいました。


 振り返りもう一度ペコリとお辞儀。うう、なんて良い人達……皆さんも頑張って冒険して下さいまし!


 お買い物も済みましたので、当初の予定通りに他の人の邪魔にならないよう噴水の横へ腰を下ろし、素早くメニューを開きます。

 ログアウトして現実世界でも軽くお食事休憩!


 もう大分慣れたもので、流れるような動きでシステムの項から『ログアウト』を選択、『はい』をプッシュ、ささっと現実世界へ帰還いたします。

 何時もこう、スムーズに動けるのなら良いのですけどね……


 今日もゲーム内で色々とやらかしまくって失敗続きです……泣いてなんてないデス。


 もう数度目のログアウトですし、VR空間から現実世界へ戻る際の妙な感覚にも慣れてきました。

 『ふわもこファーム』プレイ時は、こんな風にログインやログアウトの時、妙な違和感を感じることは無かったのですけどね……何かしらゲームの仕様が関係しているとかでしょうか。


 そんな事を考えつつ、パチリと両目を開いて枕元の時計を確認しますと。


 現実ではまだお昼になる前の様ですね……うむ、あちらと此方の時間の縮尺が把握できていないので、スケジュール把握の問題でちょっと困ります。

 今日は休日だから良いですけれど、平日にちょっとプレイ! となると、時間の縮尺関係を把握していない状態じゃ色々と予定が狂ってしまいそうです。


 流石にこの事に関しては、ゲーム内で誰かに聞いて判る事柄では無さそうですよね。

 後でまた公式サイトにいって該当する項目でも無いか調べてみようかな……


 いや待つのだ私! こういう時こそ公式サイトにある『掲示板』とやらを覗いてみるのが宜しいのではゴザイマセンコト!?

 食事を済ませたら早速見に行ってみよう!

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