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066 図書館来訪 で マッタリ司書さん

 おおよそ祝福の冒険者らしく無い購入履歴を頭に思い浮かべ、一人苦笑する私です。

 まず初期所持金が0ゴールドだったのが、ヘンテコ購入品目の理由だとは思うんですが。


 セオリーから大幅に外れている行動をしたのだから仕方がありませんよね。

 あえて、故意にそういうセオリー通りプレイスタイルは嫌いだ、と決意を持って進めていた、等と言うのであれば、全く問題はなかったのでしょうけれどね!

 チュートリアルで採取したい! という己の欲望と不測の事態が渾然と混ざり合った、だが人が聞いたらエーと声を上げるような行動をしてしまったが故の苦悩。大袈裟すぎる。


 喩えるなら、初任給を打ち捨てて登山開始するくらいの勢いで。的確に命に別状。


 【#03 懲戒必罰 ギランステルム】を無事使用できるようになった喜びで、変なテンションで妙な事を考えてしまいました。

 程よく何時も通りな思考パターンだとも思う部分も少々。現在突っ込み役は居ないのでセーフという事で。


 それでは、路地裏から脱出して当初の目的である、国営図書館への移動を再開いたしましょう。

 先ほどの武器屋さんの前を通り過ぎて、中央通りを更に南下いたします。


 暫く歩くと、付近に建っている建物の雰囲気がガラッと変わってきました。この辺りの建造物は一体どのような用途なのでしょうか。マップを拡大して建物の詳細を見てみますと。


 大きい建物は各種ギルドのようです。ざっと名称を確認して見ると、中には生産ギルドなる物も存在しておりましたよ!

 これは、ひとまず位置だけマップにチェックを入れておきましょう。

 後ほど何か来訪する理由が出来るかもしれません。


 というか、恐らくカイムさんが言っていた専門知識書的な本は、こういったギルド内部に各種保管されていたりするのではないでしょうか。生産ギルドなら生産系統の本とか。

 それにしても、この辺りは北門周辺と遜色無い位には、プレイヤーらしき人たちの動きが活発です。

 確かまだ午前中だと思うのですが……皆さん元気に動き回っております。ギルドに御用事がある方達なのでしょうか。


 皆さんちゃんと睡眠は取られたのでしょうかね。

 徹夜明けのハイな気分でプレイしている可能性も有ったり? お体壊さない程度でどうぞ。


 さて、取りとめのない事を考えつつ、周りを通り過ぎていくプレイヤーさんを眺めながら歩いていますと。目的の国営図書館が視界の端に見えてきました!

 おお……マップで見た感じだと良く判りませんでしたが、なかなか大きな建物です。


 形状的には二階建て構造なのかな? 蔵書の総数が気になる所ではありますが、まずは中に入らない事にはお話が始まりません。

 入り口らしき回転扉をグイっと押しまわして、初図書館来訪!

 建物内部は、外に比べると何やらひんやりとした空気が流れていました。おおー……涼しいぞー?


 つまりこれって、空調が効いてると見て良いのでは無かろうかと? エアコンとか存在していたりするのでしょうか。

 思わず周りを見渡して、どこかにエアコンぽい物体が設置されていないか、探してしまいました。


 ソレっぽいものは見当たりませんね? でも冷やされた空気が動いている感じがするので、何かしら類似した機能を持った、機械なり道具なりが存在するのは確定だと思います。

 多分魔法っぽいパワーで冷やしているのかも。きっと風か水の魔法辺りでしょうか。


 えーと、何故に図書館に来たのに、エアコンについての考察を始めてしまったのでしょうかね私。違う違う、そうじゃない。私は読書を堪能しに来たのだ。


 改めて顔を上げ、周りを見回してみますと。

 受付っぽい半円状のカウンターが、向かって左に設置されているのが見えます。


 とりあえず、目的を果たす為に焦らず騒がず、静かにそちらへ向かう事にしましょう。

 図書館内ではお静かに。の標語はこの世界でも有効であると信じております。実際とっても静か。


 出入り口周辺のツルリとした石タイルから数歩踏み出すと、足が沈み込む感触が私に襲い掛かります。  凄い贅沢な床だなー……生産用スペースの床とは比べ物にならない程、感触の柔らかいカーペットに少々驚きつつ、ゆっくり歩いてカウンターへ到着しますと。


 眠そうな目で椅子に座って、何か書類の様な物を眺めていたお姉さん……司書さんかな? が開いているのか閉じているのか判らない細目を、私の顔へ向けてきました。お仕事中だったのかな?


「すみません、図書館を利用するの初めてなのですけれど、まずは如何したら良いのでしょうか?」

「あらぁ 祝福の冒険者様ですねぇ 初回のお客様は 入館料に10ゴールド頂きまーす」


 フンワリ薄い笑みを浮かべて首を傾げ、両手の平を胸の前でペタリと合わせ微笑む司書のお姉さん。

 頭の上に、ピンと白くてフワフワの長い耳が2本主張しております。


 十中八九この方はウサギの獣人さんでしょう。

 尻尾も確認できれば種族判定の確実性が増しますが。覗き込んでも見えない。


 入館料としてお姉さんに提示された金額は、懐具合的には全く問題ありませんでしたので。

 躊躇いなく魔法のポーチから10ゴールド硬貨を一枚取り出し、いつの間にか司書のお姉さんが差し出してくれていた、木製のトレイの中央にペタリと置きます。


 差し出された硬貨を確認してニッコリと笑ったお姉さん、お金をカウンター下に保管して、それと入れ替わりで何やら一枚のカード? を私に差し出してくださいました。


 右上に番号が描かれており、中央には『入館者カード』と文字が書かれています。


「それではこちらのー 入館者カードをお持ちになってくださーい 書物の持ち出しは厳禁となっておりますのでーご注意くださいねー」

「えっと、このカードは、図書館を退出する時に返却すれば良いのでしょうか?」

「はいー退館時にご返却くださいませー そのカードをお持ちでない方が書物に触れますとー 私たちに知らせが入るようになっておりますのでー アイテムボックス等には収納しないようお願い致しますねー」


 何かしらの魔法が掛かっているのでしょうか? 防犯ブザーみたいな役割をもったカードの様です。

 それにしても何だかノンビリした人です。


 私も何だかフンワリとした気分になって来ました。

 いかん、なんだか気持ちよく眠れそうな雰囲気に……VR世界で睡眠が取れるか、未だ確認できてないですけどね。


 さて、折角調べ物をしに来た訳ではありますが……ノートや筆記用具を持参していない事に気が付いてしまいました。普段勉強などをする際は確実に準備しているものなのですが。

 流石にVRゲーム内部ですと勝手が違いすぎて、念頭に置いておくのを忘れておりました……

 どうしたものか。


 何か変わりになる様な物がないか、ちょっと司書さんに聞いて見ましょう。


「何か、メモ用の紙とか筆記用具みたいなのは無いでしょうか?」

「はいはーい そんなお客様にだけ、此方の商品をご紹介させていただきまぁーす」


 何だろうか、作動音のするような緩慢な動きで、コトリと首を傾げてニッコリ笑う司書のお姉さん。

 カウンターの右方向に置いてある、大きめのカゴの中身を左手で示して下さいました。


 面白い動きをするお姉さんだなぁ……何故だか気になる。動きの遅い動物をボーっと眺めている気分。


 お姉さんが示してくれたカゴの中には、メモ帳っぽい紙束がモッサリと大量に積み重なっており、カゴの隣に置いてある……

 ええコレマグカップだ!? ……にはボールペンぽい物体がコレでもか、とばかりに突き立てられておりました。なんという大雑把な陳列。

 怒られないのでしょうかコレ。ココって国営な筈なのにね。


「メモとペンのセットで、何と驚きのー……えーっと幾らだっけ……20ゴールドですー」

「……セット一つ下さい」


 この司書のお姉さん見ているだけで面白い感じがしますけれど、本来の目的が果たせなくなりそうですので、ささっとメモとペンを入手して知識を入手する作業へ入りましょう。


 先ほどと同じように、絶妙に先回りタイミングでススーと差し出されるトレイの上へ、ポーチから硬貨を2枚取り出して、ペタリと置きます。

 先ほどと同じ動きで、お金をカウンター下に保管した司書のお姉さん。


 メモ帳とペンを一つづつ手に取ると私に差し出してくださいました。


「はーい 毎度ありがとうございますー 判らない事がありましたらー 私か館内で業務中の司書にお声をお掛けくださいー」

「はい、判りました! 少し見て回ってみようと思います!」


 司書のお姉さんにペコリと頭を下げますと、お姉さんも笑顔で送り出して下さいます。

 入館者カードをポケットに収納いたしまして、と。


 さあ! まだ見ぬ本たちとの出会いへ向けて館内探検へと出発いたしましょう。

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