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062 鑑定スキル は 苦行です

 なんというか……激しい苦行の様なスキル成長秘話を聞いてしまいました。

 流石にそのようなお話を聞いてしまった後ですと、勢いだけで【鑑定】スキルを取る訳には行かないですね。成長させる時間が取れなそうですし、結局他のスキルに切り替えてしまったりして、習得ポイントが無駄になってしまう可能性が大です。


 そのスキル能力自体は凄い惹かれる物があるのですが。


 私には使いこなせなそう、というか成長させる事が出来なそうです。

 鑑定はその道のプロな方にお任せしましょう。適材適所。


 しかし、その道のプロになるには非常に大変な道が待っているモノですね……

 私も生産スキルを嗜んでいる身、スキル成長の大変さ、しっかりとこの胸に刻んでおきましょう。


 でも、わざわざ【鑑定】スキルの為だけに、そのための遠征なんてする必要があるとは……同じ物を頑張って何度も【鑑定】したりは出来ないのでしょうかね。


 気になったのでカイムさんにお伺いしてみた所、中々ヘビーな現実が判明致しました。


「一度【鑑定】をした物は、丸一日分の時間が経過しないと再度【鑑定】出来ぬ様になっとるんじゃよ」

「うへー……つまり遠征の目的は、常に新しいアイテムなり何なりを鑑定し続ける事にあると……」

「うむ、そうじゃよ。しかも行きに【鑑定】した物は、帰途につく頃にはもう一度【鑑定】出来るんでの。一回遠征で2度美味しいわけじゃ」


 空中で、人差し指をつつーっと右に滑らせて、そこから左側へと戻すジェスチャーをしつつカイムさんが説明して下さいます。

 スキルの使用は頻繁に出来るけど、アイテムや魔物の方に設定されてる【効果待機時間】が一日に設定されてるって事か。


「えーと、美味しいというか、苦行再びと云うか……マナポーション満載でお出かけ、と云う事は【鑑定】はマナを消費するスキルという事ですよね」

「その通りじゃな。リーナは精霊族じゃから、その豊富なマナを武器に【鑑定】を頑張って成長させておる感じじゃな。副業は何か持っておったはずじゃが、基本【鑑定】専門で仕事をしとるような奴じゃよ」


 精霊族! あのドワーフとかエルフみたいな感じの方々の総称ですよね!

 プレイヤーの方で何度かお見受けした記憶があります。


 魔法が得意なのであれば、あのエルフな外見の種族でしょうか。

 にしても、やっぱり【鑑定】一本で進めないと駄目な位には成長に難があるようですね。 


「とりあえず【鑑定】スキル取得は見合わせることにします……私には荷が重そうです」

「うむ、それが良いじゃろう」


 私は生産に生きていけば良いのですよね。うん。

 或いは、もうちょっとは成長を手加減してもらえるスキルを取得するようにしましょう。


 そうだ、鑑定のお話をしていて思い出しました!


「カイムさんカイムさん! この町に、本を読めるような場所ってないですか?」

「なんじゃ? 生産のお勉強でもするのかの?」

「それも有るのですが、この世界に関しての基本的知識さえ全然足りてない状況ですので、もう片っ端から本を読んで調べてみようかなーと」

「なるほどのぅ、こちらに来るようになって、まだ日も浅いし仕方あるまいてな……それならば、専門的な書物が置いてある、各ギルドの資料室よりは……国営の図書館に行ったほうが良かろうて」

「図書館! そんなのあるんですか」


 図書館……読書好きな私にとって、心踊るお名前ですね!

 元々VRゲーム内で読書しまくっていたという経緯を持つ私です。図書館があると云うのであれば、たとえ少々遠い場所にあったとしても、全く問題ありませんですよ!


 もちろんギルドにあると言う、専門書の方も気にはなるのですが。

 其方を拝見するのは、また今度でしょうか。


 図書館の詳しい場所を教えてもらう為に、メニューからマップ表示を展開させて、ツィーっとカイムさんの前へと滑らせます。

 やっぱりいちいち紙に書いてもらったり、現物の地図を取り出したりしないで済むのは、非常に有りがたいですね。


「おおーこりゃ便利じゃのー! ええと、ギルド区域がこの辺じゃから……うむ、場所はこの辺りじゃな」


 カイムさんがマップの一点を指差して、図書館の場所を教えてくださいました。

 拡大表示して見ますと、たしかに【国営図書館】という表示が書かれております。


 場所的には【生産用スペース】よりももっと南に行った辺りになるでしょうか。

 この公園とは真逆に位置する所ですね。少々歩かないといけませんが、街中であれば魔物と遭遇する事もありませんし、気楽なものでしょう。


 南門付近の建物確認等を一緒に進めつつ向かえば、無駄も少ないですし全く問題ありませんね。

 では少々名残惜しいですが、公園とはお別れとなりそうです。


「ふむ、図書館に向かうのであれば、今日はココでお別れかの?」

「フワモおねえちゃん もうおでかけー?」


 カイムさんがメニューのマップを私の方へ押し戻しつつ、アゴヒゲを擦りながら問いかけてきます。

 その言葉に、ラティアちゃんも首を傾げて私の顔を覗き込んできました。


 いや、図書館に出発する前に、ひとつ片付けておかねばならぬ事が御座いますね。


「その前に、沢山作成したポーションを、メディカさんの所へ納めに行こうかと思います」

「なんじゃ! もう作り終わっとったのか! ずいぶん朝っぱらから仕事しとったようじゃの!?」

「おくすりつくるの おわっちゃってたから すなばで あそんでたんだよ!」


 ねー! と笑顔で私の右手を握ってくるラティアちゃんに、私も笑顔を向けて、ねー! と答えます。

 ラティアちゃんのお陰で色々と元気が出てきたぞ。今日も一日頑張れる。


 妹とか居たらこんな風なのでしょうかね。

 流石に『直ちに妹をください』とお父さんにお願いする事は出来ませんが。


 思春期の17歳娘による、容赦なき無理難題。


 少し前に、学校で数人のクラスメイトが放課後、何やら妹が欲しい欲しくない等の話題を語っていた時の事が、ふと脳裏に思い出されます。

 私は帰り支度をしつつコッソリ傍で聞いていたのですが。


 本物の妹を3人も持っていらっしゃるらしい、クラスメイトのナカヤさん(席も近いです)曰く『あのねぇ実際問題、妹なんていても手間ばっかり掛かって、可愛げなんてコレっぽっちもないんだから』だそうですが。


 隣の芝生は青い、という奴でしょうか。妹問題、難しい所ですね……無駄に哲学っぽく。


「見かけによらず勤勉じゃのう……そうか、金か! 金儲けの為か! コレが正しき生産者の姿よ!」 

「もー! とりあえずもうメディカさんの所へ向かいますからね!?」


 あまり人聞きの悪い事を、ラティアちゃんの前で吹聴しないでいただけると助かるのですが!?

 金銭に困っているのは事実でありますので、あまり強固に反抗できないのが、非常にもどかしいですよ!


 メディカさんのお店に向かって出発する前に、出来たてホヤホヤ(冷めてますが)のスタミナポーションとマナポーションを、両方一個づつラティアちゃんにプレゼント致します。

 御代は笑顔で結構! 私かっこいい……かっこいい?


「フワモおねえちゃん がんばってー! いってらっしゃーい!」

「はいはーい! いってきまーす!」


 公園を旅立つ私へ向かって、ラティアちゃんがブンブン両手(その両手にはポーション2種が)を振りつつジャンプするという、昨日のダイナミックお見送りを再度してくれました。


 ああ、今日はキュロットスカートだから見える危険は無いですね。

 何がとは言いませんが、ガード完璧です。


 ああ、ラティアちゃんは良い子だね……でも危ないからポーション持ったままで、渾身の力を籠めて両手を振るのはストップね?

 万が一、ビンが飛んでいって何かに衝突しても、回復しちゃうだけだと思うから良いんだけど……

 視覚情報的に凄い心臓に悪いから。


 カイムさんとラティアちゃんの姿が見えなくなるまで、手を振り返しつつ移動いたします。

 流石に大分時間が経って来た様で、チラホラと路地を歩いている方を見かける様になってきました。


 念のためメニューマップを表示、メディカさんのお店の場所を確認しつつ、何となく見覚えのある様な気がする路地を歩いていきます。

 こうやって落ち着いて周りを見てみると、古い建物と新しい建物が混在しているみたいですね。

 リフォーム業者とかあるんだろうか。


 すれ違う方々が、私の姿を見ると一瞬立ち止まった後に、何故か頭を下げてご挨拶してきます。

 ちょっとビックリしましたが、此方もペコリとお辞儀して、お早う御座いますとご挨拶。


 新参者っぽい私にも、何だかフレンドリーです。一体どうしてだろうか。


 程なくして、通路の向こうに見えてくるのは、メディカさんのお店の入り口です。

 すれ違う人と云う人に何故か笑顔で挨拶されて、ちょっと所か、かなり不可思議心境な私。

 何かやらかした記憶は無いのですが。


 メディカさんのお店のドアを押し開けますと、チリンと来店を知らせるベルが鳴ります。

 ふわりと香る薬品や材料の香りで心が落ち着きますね。

 メディカさんはカウンター向こうで、何か本を読んでいらっしゃいましたが、ベルの音で此方に顔を向けて下さいました。


「あらま! 今日は早いのねぇ」

「はい! ポーション沢山作ってきたので買い取り査定お願いします!」

「あらー助かるわぁ それじゃ品物を見せてもらえるかしら?……一杯あるわねぇー ……あらぁ?」


 アイテムボックスから大量のポーションをカウンターに並べる作業をしていますと、なにやらメディカさんが私の方を見て首を傾げます。ん? なんでしょうか?


「その腰に提げてる聖印入りの武器とベルト、もしかしてカイムさんから?」

「あ、えっと、カイムさんが良かったら使ってくれ! と言って譲って下さった物なんですけど……」

「あらやっぱり お嬢ちゃんは祝福の冒険者さんなのにって びっくりしちゃったわ」


 そういって、何やら納得が言ったような表情で数回頷いているメディカさん。

 こ、これはなにか込み入った事情があったりなかったりするのでは。犯罪!? 犯罪の香りなの!?


「ヤッパリ! 横領とか! 着服とか! そんな具合の不味い事だったりするんでしょうか!?」

「ああ大丈夫よ! 神殿勤めの方から装備を贈呈されるって事は、つまりは神殿の方と知り合いですよー という証になるだけだから」


 あー良かったぁ! 犯罪とかじゃなくて、身分証明書を腰に吊り下げてる的な意味合いだった。

 ……あ! わかった! 通りすがりの住民の皆さんが、初対面の私に向かって何故か挨拶してくる理由!


 この武器装備してるからか!

300万PV突破しておりました。

この様な、完熟バナナの様なマッタリモッタリ小説をこんなに読んでいただけるとは。

ありがたい事です。

端折っていける所は徐々に削って、ある程度進行を早くしていける様に頑張ります。

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