表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/256

061 ツッコミ自粛 で 横領疑惑

コネで装備を手に入れるフワモさん。

お金なんて要らなかったんだ!(大いなる偏見

 カイムさんの巧妙な策略に嵌ってしまった私は、次こそは完全スルー出来る様に心掛けねば、と決意も新たにするのであった。

 まぁ装備品を無料で頂いてしまいましたし、装備ありがとうございます、というご祝儀的なツッコミだと思えば、まだこの敗北感も薄れるでしょうか。カイムさんのネタ振りに厳しい私。


 物凄くご機嫌な表情で、アゴに蓄えられたヒゲを擦っているカイムさんは一先ず置いておいて。

 無料で譲っていただけた、棒を収納できる鞘の様な物が付いたベルトと、それに付属でくっ付いて来ました、なにやら見たことの無い白っぽい金属製? の棒武器の両方。


 一度アイテムボックスへ収納する許可を貰って、能力の詳細を確認させていただきましょう。


「身につける前に、色々と詳細見させていただきますね! 主にどの程度の価値があるのか怖いので!!」

「ほっほ! 能力の確認かの? 確かリーナの奴に『識別化』させておるんで、お嬢さんでも色々と詳しく確認できるはずじゃよ。あまりの出来にビックリして目ん玉ひん剥かんようにな!」

「おめめ ぱっちりになっちゃうの?」


 なにやら自信満々なカイムさん。何だろう、嫌な予感しかしない。

 そしてクリクリしたお目目をパチパチしているラティアちゃん。可愛い。


 しかし、カイムさんがご機嫌状態! という事は……恐らくとんでもない事実が待ち受けているのでは無かろうか。実は呪われている装備じゃないでしょうね?


 悩んでいても仕方ありませんので、取り合えず(?)左手でラティアちゃんの頭をナデナデしましょう……ああ落ち着く。

 では、アイテムボックス内に収納した先ほどのアイテム2品の名称を確認していきます。


 えーっと、まずは【聖騎士の帯刀ベルト】……えーと。名前からしてヤバそうですが。


 武器の方の名称は【#03 懲戒必罰 ギランステルム】……フムフム何デスカネコレ?


 目ん玉ひん剥く前に、思考が追いつきません。ええい取り合えず詳細! 詳細だ!

 精神安定の為にナデナデしておりました、ラティアちゃんの頭から左手を離しまして。


 いきます! と心の中で意を決し【聖騎士の帯刀ベルト】の部分を突っつきます。


=====================


 アイテム名 【聖騎士の帯刀ベルト】

 等級  名工傑作(マスター=グレード)

 品質 ☆☆☆☆☆☆☆★★★

 破損度 問題無し

 属性 ※装飾品『物理』 ※武器収納 ※革『下位炎竜 腹部』

    ※金属『上硬鋼』 ※耐寒『中』 ※炎『中』

 付加能力 ※強化『炎 中』 ※使用者限定『書換 可』

      ※付与『スタミナ 微』 ※製作『ウェイドルズ=ギルンダルグ』

 効果待機時間 10カウント

 詳細 ベース【神殿騎士の帯刀ベルト】

    アップグレード強化 装備限定 カスタム仕様

    【鑑定者】『ノアスリーナ=ディレアム』


=====================


 はっはっは、当然のように製作者さんの名前入りですよね、ええ!

 しかも 名工傑作(マスター=グレード)って何でしょうねコレ!

 更には聞いた事の無い様な素材名が幾つか見受けられますが、市場価格で如何ほどの物なのでしょうかね! ああもう笑うしかないです。


 これ本当に無料で進呈しちゃっていい装備品なんですかねカイムさん?

 正直返却した方がいい気がするんですけど。

 

「どうじゃ? 中々の出来じゃろう。そいつを弄ったのは知り合いで、結構腕の良い職人なんじゃよ。まぁ少々年代ものじゃから、ある程度品質は落ちとると思うんじゃが……まだ十分現役で使えるじゃろ!」


 そんな私の葛藤をよそに、カイムさんといえば、この装備には特に何も思い入れは無いようで。至極気楽に語って下さいました。まさに元護衛騎士総督。ブルジョワですか。

 受け取った装備の詳細を確認し、表示されている内容のトンデモっぷりに眉間に皺を寄せている私に向かって、終始ご機嫌なニコニコ顔です。

 取り合えず、コレって私が頂戴しても良い装備なのかどうか……


 だってこの【聖騎士の帯刀ベルト】とやらは、恐らく【神殿騎士の帯刀ベルト】という装備品を元に色々と改造? されて作られている物の様なのです。

 つまり、神殿騎士様の為に作成された装備とかじゃないんでしょうか。


 お国のお金で購入された官給品だったりするんでは無かろうか? という疑問が脳裏に。


 ……そうか、横領か! またこのオジイサマは横領ネタで来るのか!

 そこの所は、一体どうなってるんですかカイムさん! しっかり教えてから渡して下さいよ!

 たっぷりの不安を籠めて、カイムさんを問い詰めてみます。


「いやいや! そうじゃなくてですね!? この装備品、元の品物が【神殿騎士の帯刀ベルト】とか書いてありますし、オマケに全然聞いたこと無い様な素材が使われまくっているのですが!?」

「ほっほ大丈夫じゃよ! 全部ワシが自分で持ち帰ってきた素材で強化したからの! 出所は全く問題の無いものじゃから、安心してもらって良いぞい!」

「いやいやいや! そういう意味じゃなくてですね!?」

「なんじゃ? 使用者の限定は、もうお嬢さんに書き換えてあるから全くもって問題ないぞい?」


 ああ、もう良いです、武器! 先に武器の方も確認しましょう!

 このままでは私が動悸息切れで昏倒しそうです。


 身の丈に合わない豪華な品物は、持っているだけで緊張です。


=====================


 アイテム名 【(ナンバー)03 懲戒必罰 ギランステルム】

 等級  名工傑作(マスター=グレード)

 品質 ☆☆☆☆☆☆☆☆★★

 破損度 問題無し

 属性 ※武器『打撃』 ※攻撃力増加 ※特攻『不死』

    ※貫通『悪魔』 ※金属『聖刃鋼』 ※耐瘴気『小』 ※聖『中』

 付加能力 ※強化『聖 小』 ※使用者限定『書換 可』

      ※付与『スタミナ 微』 ※付与『行動阻害攻撃』

      ※製作『ウェイドルズ=ギルンダルグ』

 効果待機時間 10カウント

 詳細 ベース【聖刃鋼の懺悔棒】

    アップグレード強化 装備限定 カスタム仕様 聖別済

    【鑑定者】『ノアスリーナ=ディレアム』


=====================


 表示された詳細に……アハハ、と思わず乾いた笑いが出ましたよ! 一体何ですかこの武器。


 普通にこの武器を売ったら大金になるんじゃないでしょうか……何故に質入してお金にしたりしないで、私に無料で贈呈してくるんですかね? コレは何かの陰謀かな?

 むしろ、未だ健在なカイムさん御自身で使用したほうが良いんじゃないですかね。


 先ほどのカイムさんの予言通りに、思わず目ん玉ひん剥いてしまいましたよ。お恥ずかしい。


 色々と突っ込みたい部分は多々御座いますが、まず【鑑定者】っていう見たことの無い項目が存在しているのが、非常ーに気になるのです。カイムさんに、ちょっとお伺いしてみましょう。


「えー、武器性能云々は一旦置いておいてーですね。この【鑑定者】って言う項目とノアスリーナさん? のお名前は、何故にこの場所へ表示されているんでしょうか?」


 アイテムデータが表示されているメニュー板を、カイムさんの眼前に持っていって確認してもらいます。


「ああ、リーナが行った『識別化』の事じゃな? それは【鑑定】スキルを持っている者に品物を鑑定してもらった時、鑑定品の持ち主が許可すれば、鑑定結果を物品に記載登録する事が出来るんじゃよ」

「なるほど【鑑定】スキルですか! 凄い便利そう!」

「本来ならば、アイテムの細かい詳細は、自分が取得しとるスキルに見合った結果内容しか、確認出来ないモノじゃからのぅ」


 【鑑定】なんて、そんな有用なスキルが存在していたのですか! そしてカイムさんのお言葉から判明するもう一つの新事実。

 やっぱり自分の取得しているスキルに対応した系統の部分しか、詳細を判別出来ない仕様だったのか!

 大方の予想通りですね。武器である【硬い木の棒】の詳細が殆ど判らないのも納得です。


 武器作成系や木材加工系ののスキルなんて、持っておりませんのですよ。


 よーし! この際ですし【鑑定】スキルとやらを、リストから確認して取得しちゃおうかな?

 話を聞いている今の時点で、確実に便利なスキルだという事が判りますからね!


 私がスキル欄から【鑑定】の取得をしようとしていると、ラティアちゃんが背伸びしたり、ピョンピョンジャンプしたりして、スキルを欄を覗きに来ておりましたので。しゃがんで一緒に見る事にしました。


 すると【鑑定】スキルを検索している最中に、カイムさんが座り込んでいる私の背中をポンポンと叩きながら、声を掛けてきます。


「お嬢さんや、もしかして加護の力で【鑑定】スキルを取得しようしとるんかの?」

「あ、はい! だって凄い有用な便利スキルだって判りますし!」

「あー……止めておいた方が良いと思うぞい?」


 カイムさんがシブイ顔をしつつ、右手の平をブンブンと左右に振っております。ええ!? あんなにも便利そうなスキルなのに何故ですか!?

 私の『えー!?』という心情が余すことなく表現された顔をみて、カイムさんが【鑑定】スキルについて説明して下さいます。


「それがのぅ、スキルを成長させるのが凄まじく大変なんじゃよ。もしかしたら祝福の冒険者ならば、短時間で育つのかもしれんが……例えばじゃが、その装備の鑑定をしたリーナなんぞ、二十年掛けて今の力量まで到達した感じじゃからの」

「うぇぇ!? 二十年!?」

「そうじゃよ。ほぼ毎日、寝る間も惜しんで頑張って……色々な種類の物品や植物、魔物に人物、地面や空や岩……それはもう、森羅万象ありとあらゆる物を【鑑定】し続けた成果が、そこに記載されておる鑑定結果じゃからのぅ……確か、マナポーションを背負い袋にパンパンに詰め込んで、泊りがけの【鑑定】遠征までしとった位じゃぞ!」


 鑑定遠征!? マナポーション満載!? 何ですかそれ凄い辛そう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ