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060 邪神召喚!? 武器獲得

ラティアちゃんとキャッキャウフフしているのは。

『ガールズラブ』に入るのでしょうか(苦悩

「ラティアちゃんの前で、人聞きの悪い事を言わないで頂きたいデス。要するに、この度の背後からの言動による精神的な不意打ち、ならびに砂場に対する冒涜に関しまして、遺憾の意を表明いたしますデス」

「なんじゃ、唐突に小難しい事言い始めおったな!?」


 いつの間にか背後に忍び寄っていたカイムさんが、非常ーに謂れの無い誹謗中傷を私に容赦なく射出してきましたので、取り合えず適当に難しそうな言葉で返答しておきます。

 政治家風味で煙に巻く感じな。


「砂山が生け贄の象徴で、木の棒が儀式に使う短刀に見立てとるんじゃないのかの? 徐々に生け贄の魂を削り取っていく様を表現しとるんじゃろ! つまり邪神召喚じゃな!」

「ええええ!? どうやったら、これがそんな物騒な遊びになるんですか!?」


 私とカイムさんが非常にためにならない無駄話をしている間にも、意を決した表情のラティアちゃんが真剣な目付きで、慎重に大胆に、そしてゆっくりと砂山を削り取っています。

 だが無常にも、砂山の中心に突き刺さっていた木の棒は、砂の量の減衰に耐え切れずパタリと転倒するのであった。私の勝利です。


「にゅわぁー! たおれたぁー!」

「ふふふ、ラティアちゃんはまだ始めたばかりで、色々と慣れてないから仕方ないよ!」

「もうちょっと手心と云うかなんというか、そういう心温まるモノは無いのかの!?」


 手加減無用でラティアちゃんを負け越しさせていた私に、カイムさんが微妙な視線を向けておりました。


 こういう遊びなのですから、仕方が無かったのです。

 やる気はありましたが悪気はありませんよ。


 ションボリした表情で、ゲーム開始時に比べ半分ほどの大きさになった砂山の上から、木の棒を指で摘んで持ち上げたラティアちゃん、ようやく私の後ろにカイムさんが立っている事に気がついたようです。

 何とも集中力がスゴイです。


 本当に生産スキルとか覚えたら凄い腕前になるんじゃないかな、ラティアちゃん。

 恐らく私よりも。才能って素晴らしいですね。うん私も頑張ろう。


「あれぇ おじいちゃん! もうたんれんおわったの?」

「ほっほ、ざっと基本の型をなぞった後に、軽く素振りをやっただけじゃからの」


 ラティアちゃんの言葉に、そうカイムさんは返答すると、左の腰あたりに吊り下げてある棒をポンポンと叩きます。あれで素振りとかしていたのでしょうか。

 というか、その武器の棒を収納する形になっているベルトみたいな装備品は!


「カイムさんカイムさん! 折り入ってお願いが御座いますっ」

「なんじゃ!? いきなり改まって!? 朝飯に変な物でも食べたかの!?」


 私の唐突な豹変振りに、驚いてズザっと一歩分後ずさったカイムさんが、何か残念なモノを見る表情で私の顔を凝視してきました。


 と云うか何故に原因に食べ物関係を推してきますかね。

 一応私は腹ペコキャラじゃないはず。


 いやいやそうじゃなくて、とりあえずその装備の事を聞いてしまいませんと。


「その腰に装着なさってる、棒をこう、収納する装備? は何処で手に入るんでしょうか!」

「うん? ああ、これの事かのぅ?」


 カイムさんが自分の腰に巻かれているベルト状の装備品を、左手でパシンと叩きます。

 そう! その装備ですよ!


 自作できるものであれば作ってしまっても良いのですが、高価な物で無いのであるならば、購入した方が早いですからね! ポーションを買い取ってもらえればお金も手に入りますし。


「お嬢さんは『棒』を武器にしとるのかの? 中々見所があるのぅ」

「いえその、武器が刃物系統だとちょっと扱いが大変そうだったので……あまり固い決意を持って決めた訳では無いんです、はい」

「ふむぅ、何じゃったらワシのお下がりで良ければ無料で進呈するぞい?」

「ええ!? 良いんですか?」


 まさかの無料提供の申し出です。

 持つべき物はお知り合いですね。お下がりとはいえ無料で進呈して下さるとは……其処まで高価なものじゃないのでしょうか。


「何かお礼できるものが有れば良かったんですが……」

「いらんいらん! ジジィの話し相手になってくれとる、それだけで十分じゃよ。どうせ置いておいても埃を被るだけじゃしの!」

「やったー! カイムさんかっこいい!」

「おじいちゃん かっこいい!」


 私の格好いい宣言に釣られて、ラティアちゃんがご唱和して下さいました。

 百人力ですね。思わず頭をナデナデしてしまいます。ラティアちゃんの耳とサラサラヘアーの吸引力に負けた。この案件は不可抗力ですよ。


「ふぉっふぉ! それ程でもあるわい!」


 ダブル褒め殺しに対して、物凄いご機嫌なカイムさん。眉毛がグイグイと動いております。

 なにやら私が棒使いだった事が嬉しいようですね。


 同じ武器を使っているという事が其処まで嬉しいものなのでしょうか。

 お気に入りの装備ならそういった考えもあるのでしょうかね。私も一応ですが、使いやすいなーと思って選んだ武器が棒だった訳ですし、ある程度思い入れもあります。


 他の方の戦闘を見ていても流血表現等は無いようですので、刃物でも大丈夫だったかな、という思いもちょっとはあるのですが。


 でも、大分武器として『棒』が手に馴染んできた感じがしますし、もうこれ以外は使えそうに無いですよね。新たに武器を選択するなら、それに見合ったスキルを再度取得しないといけない、という別の理由も有りますけど。


「それではひとっ走り行って持って来てやるからの、ついでに煙草も持ってくるわぃ!」

「……ええ!? 今すぐ取りに行ってくれるんですか!?」


 そしてまさかの即配達すぐお届け!?

 あまり無茶しないで下さいよカイムさん。まぁ大分健脚なご様子ですし、大丈夫なのかな。


「今まさに攻め時、思いついたときがその時じゃ! 先手必勝じゃよ!」

「いやいや、微妙に四字熟語の用法がおかしい気がしますけれども!」

「ラティアちゃんと遊んで待っておってくれのぅ!」


 止める間も無く、ご老体とは思えぬ速度と動きで、カイムさんが公園から駆け出して行ってしまいました。どういう身体能力をしているのだろうか。

 絶対私より気力体力時の運、全部高いよね。流石の元騎士総督様。


「じゃあカイムさんが戻ってくるまで、遊びながら待ってよっか」

「うん! こんどはまけないぞー!」


 それから数回の棒倒しを敢行、遂に初の勝利をラティアちゃんにもぎ取られてしまいました。

 くっ、遂に私を超える時が来たのか……等と無駄に荘厳な感じで。


 主に私が砂山を削りすぎたのが敗因ですが。

 しかし、負けは負けなのです。だがラティアちゃんの嬉しそうな笑顔が見れたので良しとしましょう。


「やったーかったー!」

「ぬふぅ、負けましたー」


 ご褒美(?)に尻尾でワサワサして差し上げました。ラティアちゃんも私の尻尾が結構お気に入りになったらしく、嬉しそうにモフモフしております。

 二人きりでキャッキャウフフしていますと、出ていった時とほぼ変わらない勢いと速度で、カイムさんが公園の入り口から突入してきました。


 一体どういった体力をしているのだろうか。鍛えすぎじゃないかな。


「ふぃー到着じゃ! ほれ、ついでに昔ワシが護衛騎士やっとった頃の武器もオマケにつけといたぞぃ!」


 尻尾にラティアちゃんをぶら下げたまま、カイムさんから先ほど拝見したベルト状の装備品、それにキッチリと納まっている棒状の武器を受け取りました。えええ、棒収納ベルトだけでも非常に有り難いと思っておりましたが、ついでに新たなる武器までくっ付いて来ましたよ!?


「いやいやいや!? 流石に受け取れませんよ!」

「うっ! ごほごほっ! こっこの老い先短いジジィからの形見分けだと思って、受け取っておくれ……」


 完全に取って付けた様な咳からの、あからさまに演技であるヨロメキまで追加しつつ、このお言葉である。いやいや……カイムさんのお家まで結構な距離がある、って判ってますからね? 


 アレだけの距離走ってこの装備とってきた割には、全く動悸息切れしていないみたいなんですが!

 つまりは、むちゃくちゃ元気と云う事じゃないですかね。私は騙されませんよ。


「元気じゃないですか! スーパー胡散臭い!」

「やった! 初ツッコミがきたぞい!」


 私の返答に対して、むちゃくちゃ笑顔でバシバシと膝を叩いて喜ぶカイムさん。

 数秒ほど動きを止めた私でありましたが……


 あっ! しまったぁあ! くそぅ騙された! 目的はそっち(ツッコミ)だったか!

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