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059 元気補給 と 棒倒し

友との邂逅。

そして戦いの火蓋が切られる(誇大表現

 臀部への強打からのモゴモゴ言語発声から、大体10秒程経過した頃でしょうか。

 私のフワモコ尻尾に顔面を埋めていたラティアちゃんが、ズボっと顔を毛の中から引っこ抜いて、見上げるようにして私へと視線を向けてきます。


 色々と満足した表情ですね。お役に立てたのなら何よりです、まいふれんど。


 思う存分に、私のキツネ尻尾を堪能していたラティアちゃんを眺めていますと、一つの切実な思いが……私の心の中に浮かんで来るのでありました。


 そう、すんごい羨ましい! と……

 何かしらの手段を用いれば実現可能だ、と云うのであれば……私もキツネ尻尾に思いっきり抱きついて顔面を埋め込んでグリグリしてみたい。

 ああ何処かに、キングサイズのフワフワ尻尾は落ちてないでしょうかね。

 私の身長程の抱き枕サイズだと、なお良しです……うん無いですよね、しょんぼり。


 え、狐人の知り合いを作って頼んでみたらどうだ、ですって? ははは何時になるやら。


 妥協して自前の尻尾で挑戦しようとしても、どうやったって両手でギューっと抱きついてモフる事は出来ません。

 腰から前に回して、頬ずりしたり手触りを楽しむ事は可能なくらいで。

 友人の尻尾という事で、ラティアちゃんの尻尾を触らせてもらうとしても、抱きつくと言うよりは尻尾の先っちょ辺りで、くすぐって貰う位しか出来ませんし。


 うん、想像すると色々と危ない絵面。


 愛しの『ふわもこファーム』で主役を張っていた『メェ』サイズの、お手頃感満載なフワモコ不思議生物が何処かに居ないものでしょうか……

 そうしたら、その身体に全身でダイビングしてフワッとして貰うのは勿論の事!

 更に毛を少々ムシリ……いや拝借する事により、将来作りたいな、と思案していた上質なクッション素材も入手出来て、正に一石二鳥! いや『一石二メェ』(言い辛い)だと思うのですけれど。


 今の所は柔らか素材っぽい魔物や生き物は発見できておりませんよね。ラビだとちょっとパンチが弱いのです。もう一声。

 やはり、もっとゲームプレイの行動半径を広げた方が宜しいのでしょうか。


 たとえ珠玉の毛玉成分を求めた旅路の果て、志も半ばに地へと倒れ伏してしまったとしても、目的のモノが発見出来たのならば、それはある意味完全勝利といっても過言では無いのでは。


 要するに『死に戻り』覚悟で進めば何も怖くない! 無駄に冗長。


 そう! 今現在、様々な生産作業が何故か運良く、上手い具合にバッチリと軌道に乗ってきた……そう、今だからこそ! 不足しがちなフワニウム(柔軟的毛皮存在成分)をどうにかせねば……!


 何としても今日のプレイ時間中に、ポーションその他の知識は勿論の事、魔物やその他動物(柔らかそうな)についても、ある程度で良いので知識を仕入れなければ!

 目標へと邁進する決意も新たに、グッとガッツポーズです!


 そんなこんなで、激しいレッツ読書行動に対しての指針を胸に、何度も頷いておりますと。

 いまだに私の尻尾に抱きついたまま、ホンノリと首を傾げた状態で、私の顔を見上げていたラティアちゃんが、ピョンピョン飛び跳ねつつニコニコ笑って私に声を掛けてきました。


「フワモおねえちゃん! フワモおねえちゃん! おはようございまーす!」

「うん、お早う御座いますラティアちゃん!」


 すごい元気だ。パワーが有り余っている感じがします。分けて欲しい。


 取り合えずラティアちゃんに、何故に出会い初手に完璧な不意打ちからの、身体ごと突撃してくる激しい尻尾抱き付きへと到ったのか、詳しくお聞きしてみる事にしましょうか。

 普通にご挨拶して下されば、バッチリお返事しましたのに。


「えーと しっぽがふりふりっ てしてたのみたら むぎゅーってしたくなっちゃった!」

「なるほどぉ」


 うん、ちっちゃいニャンコさん的な狩猟本能が、視覚情報によって刺激されたのでしょうか?

 つまり、私は哀れな獲物だったのか。


 いえ、むしろ私がラティアちゃんをむぎゅーしたい。ああ石を投げないで下さい。


 それにしても、何時の間に私の尻尾はフリフリしていたのでしょうか?

 思い返してみても、その辺りは全く記憶に御座いません、というか恐らく尻尾の意識的な制御が出来ておりませんね。感情の働きに対して勝手に追随して動いているのでしょうか。


 まぁ【フワモのウエストポーチ】が無事完成して、ご機嫌ルンルンで尻尾ブンブンだった可能性は否定できませんのです。


 でも、こうやって尻尾をギュっと抱きしめられていても、ちっちゃい両手で触られている感覚とか、ギューっと締められる事で伴う筈の圧力? などが殆ど感じられないのですよね。

 やっぱり現実では存在しない器官だからなのかな。

 でも触覚や圧覚の方も時間や特訓で如何にかなるかも? 期待を持っておきましょう。


 練習次第で、尻尾を動かす方法は何とかなりそうな予感がありますし。触覚や圧覚も何時の日か、ちゃんと判別できるようになれると良いですね。


 あれ、そういえば付近を見回してみても、今朝はカイムさんの姿が見えません。

 となると、ラティアちゃんは公園まで一人でお出掛けしてきたのかな?

 早朝の路地裏一人旅とか、治安的に大丈夫なのだろうか。携帯用防犯装置みたいな物とかあったりするのならば良いのですけど。ファンタジー世界の世相が判らず心配です。


 取り合えず、一人でここまで来たのか聞いてみましょうか。


「ラティアちゃん、今日は一人で公園に来たの? カイムさんは?」

「あっ おじいちゃんは あっちのひろいところで たんれん? するって!」


 そういって、ラティアちゃんが公園の奥の方を指差してくれました。

 ああ、今日は日課の鍛錬の後じゃなくて、鍛錬前に公園に到着したのですね。もしかしなくても私の顔を見に来てくれたのでしょうか。あはは、ちょっと嬉しいですね。


 でも、確かラティアちゃんのお家と、ボケマイスターカイムさんの御住まいは、少々離れた所に位置していたような記憶があるのですけれど。

 どちらか片方が、もう一方をお誘いして来てくれたのかな?


 その辺りのお話もラティアちゃんに質問してみますと、お返事が返ってきました。


「あさごはんのあとに おはなにおみずあげてたら おじいちゃんが こうえんいこうって!」

「ほほぅ、カイムさんの方からですか」


 カイムさんからラティアちゃんにお声を掛けて下さったみたいです。

 私の和みパワーの燃料であるラティアちゃんを、わざわざ公園まで連れてきて下さるなんて、なんと素晴らしいお方でしょうか。見直しました。


 だからと言って、ボケ担当&突っ込み担当のペアとして組む可能性は、今の所ありませんけれども。


「フワモおねえちゃん きょうは おくすりつくってないの?」

「今日作る分は全部終わっちゃったの。さっきまでは、この腰の所に付けてるポーチを自分で作ってたんだよ! ほらほら触ってみて!」

「わぁーすごいすごい! あっ! しろくてふわふわしてるのが ついてるね!」


 ふふふ……ラティアちゃんが私の腰に装備されているポーチの、白ラビの尻尾部分を両手でモフモフしておりますよ。

 うんうん、ここに装着したのは間違いでは無かったようですね! 私は勝った!


 しかし、わざわざ朝から公園まで来てもらったと言うのに、ポーション作成の作業をお手伝いしてもらう事も出来ませんし、渾身の作である魔法のポーチも既に完成済みですので、ポーチ作成作業を見て楽しんでもらう事も既に叶わず。


 こうやってまた無事に出会えたというのに、流石にそれでは申し訳ない……


 という事で(?)折角ですので、暫くラティアちゃんと一緒に、砂場でワイワイ遊ぶ事にしました。

 公園の砂場へ突入とか、一体何年ぶりでしょう。


 その後、砂山を作って適当な棒を天辺へブスっと突き刺し、交互に砂山を削っていって棒を倒さないようにして遊ぶ、確か……山崩し、とか棒倒しって言ったかな?

 を、バトル条件としてラティアちゃんに提案、ざっと簡単にやり方を説明してから、レッツ一緒にプレイングバトル!

 していたら、すっかりハマってしまったラティアちゃん。


 目が真剣です。ふふふ……全力で掛かってくるが良い、まいふれんど。


 このゲームは手の大きいプレイヤーの方が、一気に戦況を動かしやすいのです。

 私が有利であり、棒転倒確率的には不利でもあります。


 手加減など致しませんよ! 全力で遊ぶのです。

 ラティアちゃんのイヤイヤしている様も可愛いですね。和みます。


 さて、私の番ですね? ……ふふふなるほど、此処は一度でゴッソリとこれ位の量を削って、次のラティアちゃんに激しいプレッシャーを与えておきましょう。


「あーん! だめぇ! つぎでたおれちゃうー!」

「ふふふ……私の猛攻にいつまで耐えれるかな!」

「二人して、一体なにやっとるんじゃ!? 傍から見ると怪しい儀式じゃぞ!?」


 ボケマイスターカイムさんから珍しいツッコミが来てしまいました。

 お早う御座いますカイムさん。

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