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006 チュートリアル進行中 『一番ボール君』

なにやら自分の予想より一桁多い閲覧数にびっくりしております。恐縮です。

『それでは戦闘チュートリアルを第二フェーズへと移行いたします』

「はい、了解しましたー」


 稚拙な目論見を看破されて玉砕した私は【ガイド】さんのお声に逆らう事などいたしませぬ。

 ちょっと手触りよさそうな見た目だったのになぁあの数字。


 ゲーム内部でどこかに売ってないかな、丸々ダメージ君(勝手に命名)


 などと戦闘と関係のないことを考えていたら、2メートルほど先の空中にバレーボール程度の大きさの丸いボールが出現しました。こいつ、浮いているぞ。


『そちらの接触ダミーをフワモ様の腹部へ移動、接触させますのでそのまま動かずにお待ちください』

「!?」


 これはあの真っ白くて中央に①って描いてあるあのボールが、私の貧弱なボディに直撃するという事ですか? と把握したのも束の間、ボスンと腹部にボールが直撃。ぐはっ中身でるぅ!

 なかなかの速度で衝突してきたため大げさに悶絶してみたものの、大きめの衝撃があった程度で痛くも痒くもなかった。


 なんの効果があったのだろう? と首をかしげる。


『ただいまのボールの接触は、仮想敵の攻撃として設定させていただきました』

「えっと、魔物におなかをボコっとやられると今みたいな感じ、ということですか?」

『はい。compound world onlineに搭載されております痛覚エンジンは、法律規定内出力設定に換算しても20%と大分抑えられておりますので、殆ど痛みはございません』

「ほー、判ったような判らないような?」

『痛みを気にせずに戦闘を行える、と理解していただけると』

「なるほどー」


 そりゃ例えば、デッカイドラゴンとかにボカっと殴られたりしたら普通なら痛い! どころの騒ぎじゃないものね。中身出るぅ! くらいじゃ済まないよね。爪とかでバッサリだよ。


 でも、これなら私でも魔物と戦って色々成長とかできるかもしれない。

 半分どころか八割がた諦めてた戦闘方面も、すこしはどうにかなるかも。


 楽しめる内容が増えるのは良いね!


『二十歳以上の方のみ痛覚エンジン出力を設定を変更する事で、最大75%まで上げることも可能です』

「ええ!? わざわざ痛いほうが良いって人とかいるんですか!?」

『プレイングがリアル志向な方などに共通して、ある程度の痛みがあったほうが緊張感があり面白い、というアンケートの結果があるそうです』

「もれなく私は今のままで大丈夫です!」


 まだ十七歳だから変更したくても変えられないけどね!


 わざわざ痛くするつもりもないけど。俺に痛みをくれぇ! っていう感じなのかな。

 それとも相手がイテッ! ってなってるのを見るのが良いのかな。謎だ。


『いまのダミーによる攻撃で、フワモ様のライフが少量減少していますので、次はライフの回復を行なってみましょう』


 【ガイド】さんのお声とともに、またもや目の前に赤い色の水が入っている試験管? が出現しました。これはあれでしょう、お薬ってやつですね、ポーションってやつです、知ってますよ私!


 ためらいなく試験管を掴んで、振ったり眺めたりしていると【ガイド】さんからお声が掛かります。


『ライフ回復には、魔法の一種である回復魔法や現在フワモ様がお持ちになっているライフポーションを使用します。他に食事効果や特殊な装備の効果、特殊なスキルなどでも回復する事ができます』

「なるほどなるほど。コレは飲み込めばいいのでしょうか?」

『一般的なポーションの使用方法として、試験管上部を指で2回叩くと蓋が消失しますので、そのままお飲みいただくという形になります』

「味とかはあるんでしょうか。苦いとか甘いとか」

『基本的にポーション類は無味無臭となっております』


 よかった、変に味が付いてたら飲み込むときに大変だもんね。

 見た目的には激しくイチゴ味ぽいんだけど。スイカ味でも可。


 凄い駄菓子っぽい色合いなんだよねー。


『もう一つ、魔物との戦闘中に自分やパーティメンバーに対してポーションを使用する方法がございます』

「ああ、そうですよね、敵が目の前に居る状態でゆっくり飲んだり出来ませんよね」


 敵にボコボコっとやられながら、試験管の蓋を開封してグビっと一本。とかできないよねそりゃ。


『方法は簡単で、試験管に封入されたポーションをそのまま自分や相手に叩きつけるだけです』

「ええ!? ガラスとか刺さったりしないんですか!?」

『はい。薬液は防具の上でも素肌でも頭髪でも、ヒットした部分へ即座に吸収され、試験管はダメージ判定や衝撃判定も無く、直ちに発光エフェクトとともに消失しますので安全安心です』

「投げつけたポーションが、見当違いの方向に飛んでいったりはしないんでしょうか……」


 果たして私が他のプレイヤーさんに、回復ポーションを使ってあげる機会に恵まれるのか……そこが今だ謎のままですが。

 どう贔屓目に見ても私では、5メートルくらい離れた人間サイズの的にでさえ、試験管サイズの物をブチ当てられるような投擲コントロールは持ち合わせておりませぬ。女の子ですもの。苦しい言い訳。


『回復を意識して投擲なさればシステムの補正が入りますので、大体前方の視界180度内に相手がいらっしゃるのなら100%命中します。どうぞご安心ください』

「システムすげぇ」


 ポーションを眺めつつ思わず唸りをあげる程の有能っぷり。


 声に出して、誰々さんポーション回復いきます! みたいに宣言してから投げると、さらに安定して飛んでいくらしいです。土壇場で名前間違って投げたりしたら、笑い話にもなりませんね。恐ろしい。


『それでは現在ライフを確認いたしますので、メニューを表示させてください』

「はーい、了解いたしましたー」


 即座に指を二本揃えてスイっと滑らせます。この動作にも漸く慣れてきました。

 ゲーム内で沢山行なう動作でしょうから、どんどんメニュー練習していきますよー。


『メニュー内の左上に表示されております、赤い棒状のゲージがフワモ様のライフとなります。その下にあります青いゲージが魔法使用に消費するマナ、その下にある黄色いゲージが行動で消費するスタミナになります』


 メニュー内の左上に【フワモ】というアバターネームが表示されており、その下に3本3色の棒グラフが表示されていました。赤いグラフがちょっとだけ凹んでいます。これがダメージというものか。


『ではポーションを飲んでみましょう』

「いただきます」


 試験管の蓋の部分を人差し指でトトンと二回叩く。

 どういう原理なのか判りませんが、蝋のような白っぽい樹脂でされていた封がフワっと光って消失。まぁゲームですからね。

 実はなにかアイテム的な裏設定があったりするのだろうか。


そのままゴクリと一口で飲み干します。うん本当だ、なにも味がしないです。


『はい、ライフを確認してみてください』

「おお、赤いバーが端まで伸びてます!」


 こんなにお手軽に回復できたら、敵になんてやられないんじゃなかろうか。

 ゴツンゴツンとポーション叩きつけながら戦闘すれば絶賛無敵INGな感じになっちゃうのでは?


 お金が掛かりすぎるから無理とか、そういうのもあるのかな? お金こそパワー!


『ポーションには再使用可能になるまでの待機時間が設定されており、待機時間内に同じカテゴリのポーションが使用されても、効果を発揮いたしません』

「ああー成金プレイはできないんですね」

『その際に使用されたポーションは効果が発揮されず、手元にも戻らず、消失いたします』


 つまり色々な種類の回復方法を準備すれば、安全安心に強い魔物とも戦えるよ! っていうことか。一人でのんびりやるには、強い敵が出ないところをゆっくり回るのが良さそうだね。あせりは禁物。


「ところで、この果敢にも私に一撃をいれてきた一番ボール君は」

『記念品として、でよろしければ取得可能オブジェクトに設定変更いたします』


 やったぜ。

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