004 アバター作成完了
ほんのり短め。 キャラ作成ようやく完了です。
「もちろん、物作りを中心にゲームプレイしていきたいので、ステータスボーナスは器用さで!」
「はい、了解いたしました……これにてフワモ様のアバター作成に関する情報入力作業、滞りなく完了いたしました」
私の目の前に浮かんでいたA4サイズのアバター作成メニューが、すすーっと『システマ』さんの前に滑っていきます。
内容を目視で確認しているみたいですね。念のためというやつでしょうか。
じっくりと確認されると、どこか間違って入力していないかと不安になってくるのは何故でしょうか。うん問題ないはず。
「選択漏れ等ございませんので、本登録に移らせていただきます」
「本登録ですか……わわっ!?」
『システマ』さんがA4サイズのメニューを両手の手のひらでぎゅぎゅっと圧縮したかと思えば、メニュー板は四角い箱のようなものに変化していました。
唐突な手品かな? そんな場違いなことを思いつつ、箱の行方を見つめていたのですが。
箱がススーっと私の方向へと滑ってきました。この箱を頂けるのでしょうか。
「そちらの情報ボックスを手でお持ちになってくだされば、現在のリアル基準アバターがゲーム用アバターに書き換えられます」
説明された通りに、箱を両手で挟んで持ちあげてみますと。
あら不思議、体がピカーっと光り輝き、私の姿が先ほどのA4メニュー横に表示されていた決定後の完成映像と、寸分違わぬ見た目となったではありませんか!
といっても見えるのは手と、肩越しに背中のほうに首を曲げて尻尾があるのを確認しただけですが。
鏡とかありませんですので、そこの所はご了承ください。
「宜しければ、ゲーム内で購入できる家具に姿見が御座いますので、アバター確認作業用に此処へお出ししましょうか?」
そういうが早いか『システマ』さんが右手の親指をパチンと鳴らします。
すると地面というか床から、すぃーっと全身が問題なく確認できる大きさの姿見が出現しました。画期的な植物か。
というかですね。本当に普通に仕草や動きがカッコイイですよ『システマ』さん。
絶対メガネとか凄い似合いそう。個人的妄想。
「やったー『システマ』さん有能!」
「あまり褒めて頂いても、私には好感度や名声度などといった心理固有パラメータは設定されおりませんので。いささか申し訳なく存じます……」
そう言いつつ『システマ』さんの眉毛がすこしションボリします。
ギャップ攻めか。
無意識に私に対しての好感度イベントを敢行してしまったようですね。にくい事を。
え? そんなつもりは毛頭御座いません? そうですか。などと無駄なことを思考の端っこで考えながらも、くるくるとアバターを動かしつつ見た目を確認いたします。
「おお、耳と尻尾すごい! なんというかまさにファンタジーですねー、凄いかっこいい!」
「フワモ様、とても良くお似合いですよ」
そういって、人差し指を頬に当てつつにっこりと微笑む『システマ』さん最強説。発案者は私です。
異論は出来れば認めたくない。
そんなことを思っているうちに、手に持っていた箱がスルスルっと手のひらに吸収されていくではありませんか。
あれ、箱は一体どこに行ってしまわれたのだ。栄養になったのかな?
「そのボックスは、第一期募集プレイヤーの方に配られる初期装備セットとなっております」
「というか、箱は一体どこに消えてしまったのでしょう」
「キャラクターメニューのアイテムボックスの中に『初期装備箱』というアイテム名で保存されております」
「取り出すには一体どうしたら?」
「右手か左手の人差し指と中指を揃えてから、指先を目線の高さまで上げ、上から下にスッと滑らせてみてください」
説明された通りに右手の指二本を揃えて振り上げ、下にスイっと滑らせて見ます。
ピンっという音とともに、A3サイズを横にしたくらいの透明な板状のものが目の前に出現。おおぉーなんだか感動!
先ほど設定した名前とか、色つきの棒グラフみたいなのとか色々表示されています。
ああ! 『アイテムボックス』という文字表示もしっかり書いてありますね!
「アイテムの出し入れ等の細かいゲームプレイに関する操作方法は、此処でご説明するには少々不都合がございますので、ゲーム開始後に移動できるチュートリアルフィールドにてアナウンスとご一緒にご確認ください」
「あら、ここで説明してもらえるのではないんですね……」
もう少し『システマ』さんとお話できるかと思っていたのですが、本当にアバター関連の事柄全般を受け持っていらっしゃるだけのようです。
またお会いして色々お話したいなぁ。
でも先ほど聞いたお話を思い出すに、アバター削除やゲーム権利放棄? をする時にしか会えないといっていましたし。ゲームプレイ的には再会できないほうがいいのでしょう。とても残念です。
運営さんのサイトから『システマ』さんに他のお仕事あげて! 的な要望メール送ってみようかな。
うんそうしよう、よーしなんだか元気出てきたぞ。
「実際にアバターを動かしながらのご説明になりますので、アクティブ行動不可領域であるこのアバター設定フィールドではプレイチュートリアルを執り行うことが出来ないのです」
「室内で騒がずにちゃんと運動場に出て身体を動かしましょう、ということですね」
「非常に判りやすい喩えありがとうございます。他のプレイヤー様の説明に使わせていただきますね」
「わ、わかりました。それでは『システマ』さんともコレでお別れになるのですね」
「はい。非常に楽しいお仕事をさせていただきまして」
そういって笑う『システマ』さんは、やっぱり此処で埋もれるにはもったいないね。
そうだね当然だね。一押しだね。
「運営さんに『システマ』さん有能説を要望メールで言い含めておきますので、アライヤダ、久しぶりね! 再会チャンス! が到来するかもしれません。乞うご期待です!」
グイっ、と親指を立てつつ宣言した私のその言葉に『システマ』さんはびっくりした表情を浮かべると、クスクスと口に手を当て笑う。
笑顔どうもありがとうございます。
それではいってきます、と『システマ』さんに声をかけようとした瞬間、体がふわっと浮くような感覚に襲われ。
私の意識とアバターは『システマ』さんが管理するアバター作成空間を脱するのでありました。
「……フワモ様。compound world onlineの世界へようこそ」