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033 なめし革作成 『紅茶な玄米茶は光茶』

風評被害(魚

 残り時間もあと50分しかありませんし、取りあえず手始めに軽ーく周りに置いてある機材が、どういった用途で使う物なのか確認してみようと思ったのですが。

 見回したり触ったりしてみても、どういった時に使うのか全く判りません。


 見た目は普通の壺だったり、木製の箱だったり、魚の置物だったりとバラエティに富んでいるのですけれども。


 うーんと? 側面とか底面に説明文とかは書いてないのかな……?


 ぬぐぐっ……ぐはっ重くて持ち上がらない!

 盗難防止で重くしてあるのか、床にくっ付いているのか。


 仕方ないので何か案内板のような物がないか探してみようと、機材周りの壁や床を見回してみます。

 すると、壁に薄っぺらい冊子が紐を通された状態で吊り下げてありました。


 うん、あからさまにコレが怪しいですね。


 恐らく、この冊子が取扱説明書というか……生産スペース使用マニュアルみたいな物でしょうか?

 では早速と、手にとって表紙と中身を確認してみます。


 じっくり読んでいる時間は無いので、パラパラと流し読みをするだけに留めました。

 ふむ! やっぱりここに設置されている機材の、簡単な説明が書いてある物のようです。


 カラフルで可愛い挿絵入りで読みやすいですね。一体著者はどなた様でしょうか。


 本を作成するみたいなスキルも存在するのでしょうかね?

 写本業でお金を稼ぐのはちょっと厳しそうですが。


 でもこの冊子、どう見ても印刷機械で刷られている感じがするのですが。

 ファンタジーっぽいこのVRゲーム世界ですが、印刷技術があるのでしょうか。まぁ、何となくありそうだなぁとは思うのですが。


 なにせ受付のお姉さんが、現実で売っているような黒インクのボールペン持っていましたし。


 流し読み途中で目に付いた、先ほど確認した機材の用途だけ簡単に確認してみるますと、壺は【乾燥の壺】と言って、水分を飛ばす工程を行なう場合に、その材料等をここに放り込むと超短時間で乾燥が終了するらしいです。


 【乾燥の壺】使用方法が書かれたページの一番最後に、装備や服その他色々な成分には作用しますが、生き物には効果がありませんのでご注意ください、と赤い文字で書き記されております。

 そりゃそうですよね、腕突っ込んだらミイラみたいに干からびた! とか洒落になりません。


 乾燥させたりする素材って言うと、漢方薬とかそれっぽいですかね。


 薬草も水分飛ばして凝縮させたりしたら、色々と効能が上昇したりしないかな?

 試してみる価値はありそうですが、取りあえず今回はなめし革を作りに来ている訳ですので、また今度にしましょう。


 パッと見て木の箱にしか見えない機材は【加速の収納箱】という物らしいです。


 効果は単純で、この箱の中に収めた物の時間の進みが凄い速くなるらしいです。

 こちらの機材も、生き物には使用出来ないのでご了承ください、と書いてありますね。


 稚魚なんかを放り込んで成魚に変化! とかは無理ですか。

 無理やり成長とか、定番設定ですと突然変異して大変な事になったりするかも知れませんしね。


 まぁ時間の進み、となると何か食品を発酵熟成させたり、ポーションを煮出した後に薬液を急速冷却したりする場合等に、これを使うと便利かも知れません。

 箱の側面についているタイマーで、経過時間の設定も可能という至れり尽くせり加減。

 タイマーダイヤルと相まって、木製の電子レンジのような見た目です。


 深夜の通販番組とかで紹介されていたら、思わず注文しそうになりそうです。


 箱の隣に設置されているのは、どこかで見た事のあるようなデザインの彫像? のようなものです。

 これ、完全に噴水の胃酸魚さんの変形バージョンというかご兄弟? みたいなのですけれど。

 説明を見るとそのまま【水湧きの魚像】という名前でした。


 口の部分が真上に向いていて、しかもグワッと大きく開かれています。

 そして提灯アンコウのように、頭頂部からミョーンとCの字に金属の棒が伸びていて……先っちょに提灯ならぬ青い宝石がはめ込まれていました。

 この宝石を突っつくと水道の蛇口が如く、綺麗な水が出るらしいです。ふむふむなるほど。


 そのまんま、キッチンシンクと水道みたいな感じですね。


 何故この形にしたのかは知りませんが、無駄に細かい細工の入ったオブジェなので、こういった場所に設置されているには少々芸術性が高すぎる気もしますけれども。

 まぁ美術館等に行ったことが無い私には、芸術とか良く判りませんけどね。


 シンク&水道として使用するだけですし、形は気にしない方が良いのかな?


 お外の噴水で口から水を噴出していた魚さんは、今度は姿を変えて際限なく水分を飲み込んでいくわけですね。ううむ……業が深い。


 生産作業で水が必要な場合は、このお魚から取得して下さいという事らしいです。

 余分な液体はお魚さんの胃袋? に流し込めば問題ないとの事。


 なんと、失敗した危険な薬品等もここに廃棄して良いらしいです。一体何処に繋がっているのだろうか。近隣の住民様に怒られたりしないのかな。それとも強靭すぎるお魚の胃袋に驚くところなのだろうか。


 まだ他にも幾つかの機材が置いてありますが、これ以上確認に時間をとってしまうと、なめし革の製作に影響が出る可能性があります。


 というか識別札から出ている時間表示を確認すると、すでに制限時間が15分程減少してる。危ない。


 他のモノは次回訪れた時にでも確認しましょうか。


 機材説明の冊子を元の場所に引っ掛けてから、据え付けられているテーブルの横に置いてある丸椅子に腰掛けるます。


 えーっと、なめし革作成にも薬草加工したときと同じでキットが必要だよね。

 メニューを呼び出して、アイテムボックスから【初心者用革細工キット】を取り出します。


 やはり調薬キットと同じように、色々な機材がセットでモリっと出てくるみたいですね。

 ありがたい事です。


 まずは【革細工】スキルを宣言、製作物のリストを表示させ、作業工程を確認します。


 えーっとまずは。毛皮を水で簡単に洗う、と。


 早速胃酸魚さんの出番ですね。いや、ここのお魚は出しているのではなく飲んでいく魚ですから、飲みすぎ魚でしょうか。どちらにしろお魚の扱いが酷い。


 椅子から立ち上がって飲みすぎ魚の口の中を確認しつつ、アイテムボックスから【ラビの毛皮】を4枚取り出します。

 ウサギから剥ぎ取った形状の毛皮が出てくるのかな……血まみれだったりして!? 等と思ってちょっとドキドキしつつ取り出したのですが。綺麗に四角く切り取られた形で毛皮が出現しました。


 そう、どうみても何かしらの手段である程度加工済みの毛皮の状態で。


 毛皮の大きさ的にも、あのラビの体格と少々合致しない様な気もするのですが。

 それに一体誰が何時の間に加工したのだろうか。

 アイテムボックスさんが気を利かせてくれたのかもしれない。


 まぁ気にしても仕方が有りません。色々と手間が省けた事は素直に嬉しい事ですので、とりあえず洗浄を開始する為、魚さんの口の中へ4枚の毛皮を放り込みます。


 今現在進めている行動としては、台所のシンクに物を置いてから、その上に水道水を掛けていく。

 という作業なのですけれど……なのですけれど。


 知らない人から見るとウサギの毛皮4枚を、デカイ魚の石像の口に捻り込んでいる光景になっていると思われます。

 なんというかとてもシュールです。魚への餌やりの様で。


 先ほどペラい説明書で読んだ事を思い出しつつ、青い宝石部分を指で突っつくと、ジョボジョボと透明な水が宝石から魚の口に降り注ぎます。

 ほーこれは凄い。どう見ても水道管に繋がっているようには見えませんし、確実に魔法関連のアイテムですかねーこの青い宝石。


 何処からとも無く湧き出ている水に感心しつつ、わしゃわしゃっと毛皮を魚の口の中で混ぜながら揉み洗いします。洗剤とかは使わなくても良さそうなので助かりました。


 実は使った方が良いという可能性もありますけれど、一先ず今回はパスで。


 ざっと洗浄し終わりましたので、水を止めて簡単に水分を搾り取ります。

 捻って絞ると毛皮を痛めてしまいそうだったので、折りたたんで上から両手の手の平を乗せ、ギューっと体重を掛けて圧縮してみました。


 私の体重50キロも無いので、余り効果が無さそうな気もしたのですが。

 おお! 結構な量の水がざぱーっと絞られて出てきますね!


 軽く水をきる為に、魚の口のふち部分に毛皮を引っ掛けて置きましょう。

 見た目が魚形状な御蔭で、なにやら愉快な事になっています。

 魚の口の縁から漏れ出す毛皮。嫌な光景だ。


 ちょっと思いついたので【乾燥の壺】に、腕まくりをしてむき出しになった両手を突っ込んで見ます。ふぉぉぉぉ、お肌がくすぐったい。


 うん、予想通り水で濡れていた両手がスッキリ乾燥。

 トイレで手を洗った時に使う、ハンドドライヤーみたいな感じがしました。


 あの毛皮も突っ込んでみようかな……でもカピカピになったら嫌だなぁ、等と思いつつ椅子に座ると、テーブルへ置いていたジュースをごくごくと胃袋に落とします。うむ、一仕事後の一杯は美味しい!

 この【エピルジュース】は、町のお店で買ったとすると幾ら位するんだろう。今度探してみようかな。


 ああ全部飲んじゃった。ちょっと補充してこようかな。

 無料だもんね、無料! ここ大事。


 そのまま、使用済みのコップを持ってスペースの外へ出ようと思ったのですが、識別札を置きっぱなしにするのは危ないかな? と思ったので一応ポケットに収納して出発します。


 これを置いて行っちゃうと、ドアを開けたまま部屋の中にその鍵を置きっぱなしで出かけるのと同じだものね。


 時間も勿体無いので、椅子から立ち上がってササっとドアから表に出ますと。

 後ろ手で閉じたドアからキン! という金属音が鳴りました。うん? 何の音だろう。


 振り返ってみて見ると、ドアノブの辺りにメニューの透明板が一枚表示されています。


 『257 ロックされました』


 おお!? これはスペース内から識別札を持ち出すと自動でロックがかかるのかな?


 ハイテクだなーと思いましたが、魔法関係の事柄でもハイテクで通じるのだろうか。

 高度技術というような意味だったような記憶が有りますし、この世界では魔法もいわゆる技能である『スキル』として認識されているから、総合的に見てハイテク! で通じそうですね。


 ……おっと、また無駄な思考を繰り広げてしまった。


 でも、とりあえず防犯意識の高さをみて安心です。


 ここまでやっているとなると、実は識別札も他のプレイヤーさんには手に取ったりする事の出来ないアイテムなのかも? 簡単な間仕切りに見えて強靭な防犯機能があったり! いや、過信は禁物かな?


 微妙にふかふかな足ざわりのカーペットを踏み付けつつ、先ほどのフリードリンクのコーナーへ到着致しました。さて、前回と同じものでも問題は無いでしょうけれど、折角ですので今回は【光茶】を試してみようかな。


 どうかお茶も私も発光しないでおくれよ。


 使い終わったコップを使用済みコップ置き場に戻し、新しいコップを【光茶】のサーバーへセット。ボタンをプッシュします。

 注ぎ込まれた液体は。光っていませんでした。良かった良かった。


 って……あれー? この香り何処かで……


 あっ! 思い出した! そうだ私このゲーム世界に来てから水分全く取ってなかった、と思い込んでいたけれど、此処に来る前に一回水分頂いてるじゃないか!

 これリアさんの所で飲んだ『紅茶風のポットに入った、香りは玄米茶だけど色合いは紅茶』なアレだ!


 『紅茶な玄米茶』は『光茶』だったのか。

 自分で言ってて良く判らない! まぁいいや頂きます!


 ごくごく。うんうん、あの味だ。


 前飲んだときは温く暖められていたけど、これはしっかり冷やされている感じですね。

 冷たくても美味しいや。


 いやー此処に着てよかったなーあのお茶の正体が判明したよー!


 ……まぁ、本来の目的は、なめし革作成の為なんだけどね!

 良いんです知識が広がる事は良い事です、ウン。

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