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032 飲み物無料 と 光るお尻

ウマイ! もう一杯!

 向かった先には幾つかの扉が並んでおりました。デザインは全部同じですね。

提示された扉の上の方には大きめの表示板が貼り付けてあり、そこに丸っこい文字で『こちら大部屋スペース』と書いてありました。


 この扉で間違いないようですね。


 というか……他の扉とこんなに近い場所に大部屋へ向かう扉がある事に、なんだか非常に違和感を感じるのですが。他の場所へ繋がっている細長ーい通路が、実はこの先に続いているのだろうか。

 まぁ、考えても仕方ありません。気にせずに突入する事と致しましょうか。


 刻一刻と、無駄に制限時間が過ぎていっている可能性が否定できませんですからね。50ゴールドが目減りして行っている様を想像すると、心の奥底で悲しみが産まれそうです。身体に染み付いた貧乏性。

 ドアノブを掴んで扉を開くとそこには長い通路がー……とは行かずに、何をどう考えてもこの建物の中にあるのはおかしい広さの、巨大なホールでした。うんうん……うぅん?


 ……ええ!? これ一体どうなってるの?


 思わず扉を閉めて、受付回りの広さを確認します。

 うん、さっき見た外観と今目の前に見えてるこの受付スペース的に考えて、この建物の敷地より扉の向こうに広がっていた、さっきのホール空間の方が恐らくでっかい。流石の私でも間違わない。うん。

 こう、特殊な技術を用いたりしつつ目の錯覚を利用したトリック、でもないと思う。


 扉の前で俯いてちょっと考え込んでいますと、何やら頭頂部に視線を感じたので顔を上げます。

 視線の先では……カウンターの一番右側に座っていた受付のお姉さんが、にっこりと笑いつつ数回頷いておられました。


 ……あ! もしかして、受付終了から扉を開けて驚く事までがセットなのですか!

 密かに水面下で進められていた目論見が的中ですか!? ぬぐぅ恥ずかしい!


 っていうか『判っていますようんうん』風味なその笑顔を見るに、やっぱり『大部屋スペース』のほうが此処より広いの確定なんですね!? 一体どういう仕掛けなんだろう?


 あっと、扉前で立ち止まって悶絶していては、他のプレイヤーさんの迷惑になっちゃいますね……

 兎にも角にもスペース中に入らない事には始まらないので、受付のお姉さんの微笑みになんとなくペコリと頭を下げると、もう一度ドアノブを掴んで扉を開け放ち、今度こそ内部に進入いたします。


 見た目と違う広さをもった場所。絶対に別の空間というかある意味で危険な所に突入している……筈なのですが。ですが。

 危惧していたような事態は全く起こらず……体の調子が悪くなったり妙な違和感を感じ取ったり、なんて事も無いようですね。


 流石に、お金を払って使用する場所で危険な事は起こらないかな。起こらないよね?


 どういった理屈でこうなっているのか判りませんが、ある意味凄い便利な場所ですね。

 スペース節約術……いや、ファンタジーなら節約魔法?


 現実にもあったら便利だなー、等と考えつつ辺りを見回していると。

 私の後ろの扉が自動でバタリと閉まります。


 何の変哲も無い木製のドアなのに勝手に閉まるんだ?

 あれかな、見えない所にバネでも仕込んであるのかな。


 その後、改めて広大なホールを見渡してみた感想ですが……全体的に簡易的な間仕切りのような物で、きっちりと個人スペース毎に区切られている、白を基調とした清潔感溢れる場所でした。


 数回訪れた事のある、某所のネットカフェになんとなーく似ている様な感じもします。

 一つ一つのスペースに扉もしっかりと付いているようなので、人目を気にせずに落ち着いて作成に励む事が出来ますね。


 しかし『大部屋スペース』という名前から私が想像していたモノとしては、もっとこう何と言いますか……仕切りとか存在しなくてですね? デッカイ台がドカンと設置されたところでですね? ワイワイ大勢の方々が色々なものを所狭しと作っている広い場所! と言った光景だったのですけれども。


 意外とキッチリ綺麗に整理整頓されていてビックリ。


 あっ、入り口左の壁際辺りに『フリードリンク』と書かれた案内板とドリンクサーバーが設置されてる!? うん……この場所のモデルって、やっぱりネットカフェなんじゃないですかね!?


 そんな事を思いつつ考え込んでいたら、後ろから次のプレイヤーさんがお部屋に入ってきました。

 うわわ、いかんいかんお邪魔でしたねすみません!


 通り道の真ん中でキョロキョロしている状態で立ち止まっていたので、邪魔にならないようにとりあえずフリードリンクエリアの方へ移動します。


 そういえばドリンクサーバーで思い出したのですが、水分ってゲーム開始してから全く摂取してない。

 リアさんの所で頂いたスープが食べ物であり水分でもあったから、今まで大丈夫だったのかも?

 流石にあの神様の事だから、喉の渇きは大丈夫! 空腹度しか設定してないよ! なんて事は無さそうだよね。無料だって言うし折角だから一杯頂いていきましょう。


 ドリンクサーバーの横に積み重ねられていたコップを一つ手に取りますと、三つ並んでいるドリンクサーバーの吟味に入ります。

 うーむ、どれにしようかな。あー無料だし適当でいいかなぁー?

 全部混ぜて闇鍋ならぬ闇ドリンクを作る事も可能なのだろうか。味は保障出来ない危険物。


 三つのサーバーにはそれぞれ『エピルジュース』『光茶』『黒炭酸水』と書いてあります。


 ……『エピルジュース』っていうのは恐らく【エピル】という名の付く原料を用いて加工された飲料なのは何となく判ります。


 次の『光茶』ってこれコウチャって読むのかな。駄洒落ですかね。

 液体が眩しい光を放っているのだろうか。

 それとも飲むと私が燦然と光り輝くのだろうか。どっちも嫌だ。


 『黒炭酸水』って、これ多分恐らく私の想像通りであるならば、アレですよねアレ。

 また例の神様が遊び心を出して設定なさったのだろうか。


 とりあえず名前の胡散臭さが無い『エピルジュース』とやらを頂いてみる事にします。


 コップを設置してボタンをプッシュ、ドボドボと注ぎ込まれる液体は……あ、この色と香り、これ林檎ジュースだ。濃縮還元系ではなかろうか。お料理スキルか何かで恐らく自作できるんでしょう。

 自動で程よい量で停止したドリンクサーバーからコップを取り出して、ジュースを口に含んで見ます。


 ごくごく……うん、完全に林檎ジュース。


 あまり酸味も強くないですね。すっぱい系はちょっと苦手だから良かった。美味しい。

 水分を取ったからでしょうか、体の調子が良くなったような気がします。ごくごく。


 やっぱり空腹以外にも喉の渇きゲージ的なものもあるみたいですね。まぁあの神様なら当然といえば当然なのですけれど。しかし喉が渇いた、という感覚が無いのでどうにも確認しづらいですね。


 今度どこかで水筒とかも準備した方が良さそうだ。

 まぁ暫くは遠出したりしないだろうし、公園のお水飲んでいれば問題ないかな? ごくごく。


 あからさまな貧乏人生活スタイル。


 まぁたまにアイテム作成でこの場所を使えば、このフリードリンクで水分頂けるし大丈夫かな。

 ぷはーご馳走様。


 さっぱり後味で何杯でも飲める気がします。というか確実に何杯でも飲めるでしょうけれど止めておきましょうね。此処に来た理由はジュースを際限なく胃袋に注ぎ込む事ではなく、生産スペースでのアイテム作成を試す為ですので。


 あまりここで足を止めているわけには参りません。参りません……でももう一杯だけ。

 他の二種類も気になりますが、あまり冒険したくないので二杯目も『エピルジュース』にします。


 ドリンクサーバーのボタンを押し、コップの中をジュースで満たすと右手に掲げます。

 さあ、今度こそ自分の行くべき場所を探す事に致しましょう。


 えーと、この識別札って言うのに書いてある『257』っていう数字が場所の番号なのかな?

 ひとまず入り口辺りに戻って、もう一度周りを見回してみますと。


 ドリンクサーバーの更に奥の方に『200』と表示された立て看板が置いてあります。そこから順番に此方へ向かって進むように、10づつカウントが進んでいる感じですね。

 となると私の行くべき場所は……ありました、『250』の看板。


 一列毎に10スペースという区切りで並べられているようです。判りやすいですね。


 『250』の立て看板の横から大部屋の奥へと進みます。数人余裕で歩ける位の幅がある通路をゆっくりと進みますと……『257』の表示が付いているドアを見つけました。ここですね。


 あっと、右手にジュースのコップ、左手に識別札でドアノブが捻れない。

 ひとまず識別札をポケットに突っ込んでおく事にしましょう。


 お尻部分についている大き目のポケットに【識別札257】を仕舞いこみ、ジュースを零さない様に気をつけつつドアノブへ手をかけると。


 ガチャガチャ音がするだけで一向に回りません……あっれー!?


 如何したら良いのか判らず首を傾げていたら、先ほどの【識別札257】がふんわりと光りました。お尻の所で。蛍かな。

 この【識別札257】とやらがキーカードみたいに鍵の代わりになっているのかな。

 自動読み込みキーレスエントリー的な?


 光り輝くお尻が落ち着いた後、ノブは何の抵抗も無く回りました。

 中を覗き込むと、普通のサイズのテーブルが中央に設置されており、その周りには様々な機材が置いてあります。うわー見た事無いような物体が沢山ある! 楽しそう。


 ドアを開けた状態で立ちっぱなしでいても仕方ありませんので、ささっとスペース内部へと進入。

 バタリとドアを閉めますと、お尻の識別札が入っている辺りからポン♪ と音が鳴って、一枚の半透明のメニュー板が出現いたしました。何事だろうか。


『 お時間終了の五分前にアラームがなります  現在残り時間 52分 』


 首を捻って透明板を確認します。ああなるほど、判りやすい。

 この識別札はカードキーでありアラーム時計でもあるアイテムのようですね。

 残り時間を見るに、50ゴールドで一時間って感じです。


 とりあえずジュースのコップをテーブルにおいて置きまして、と。


 それでは、折角なので置いてある機材を確認しつつ、その後なめし革作成と参りましょう!

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