030 閉門超過 で 夜フィーバー
こうなったら多目に購入しておこう、と相成りましてラビの肉の串焼きを三本ほど購入することに致しました。先ほど食べた分と合計すると締めて20ゴールドです。
つまりポーション一本分の売り上げと同等ですね。
そう考えると、ちょっとお薬作成頑張れば稼ぎ出せる金額ではあるのですね。ちょっと感動。
今の所はポーション作成に失敗していないから、言える話ではあるのでしょうけれども。
そのうち調薬時に失敗作ポーションも出てくるのだろうか。
一周回って毒物とかにならないといいけれど。
再びバンダナのお兄さんに串焼き三本の注文を告げつつ、次回ポーション作成への意気込みを新たに致します。
次に作る時は材料全部使い切る勢いで行こう!
【調薬】のレベルも上げて行かないといけませんからね。延々とポーション作り続けるだけでスキルのレベルは上がり続けるのでしょうか。それならそれで楽なのですが。
等と考えている間に、三本の串焼きが乗っている紙のお皿が私の目の前に差し出されました。
勿論購入ボタンは『はい』を選びます。うーん、このままもう一本食べられそうな感じですが。
うん止めておこう。際限なく食べちゃう。
バンダナのお兄さんにペコリと頭を下げますと、屋台前から離れて噴水の辺りに移動します。
えーっと、流石にこのままアイテムボックスに突っ込むのは、落としてしまいそうで危ないですね。
あれ、えー確か……手に持ってるアイテムをボックス内へ送り込む方法が有った様な。えーっとどうやりましたっけ?
ああそうそう思い出した!
手に持ってる状態のアイテムなら【ボックス収納】の宣言で仕舞えるんだっけ。
それでは早速と、串焼きの乗った紙のお皿を両手の手のひらで支えつつ【ボックス収納】を宣言いたします。フワっと光になって消える串焼き。
ほほーなるほどー、こうやって収納されるんだね。
でも採取みたいにモリモリ取得していく場合は、やっぱりアイテムボックス出しっぱなしでねじ込んでいく方が楽な気がします。一々宣言しなくても良いからね。
大きい袋にぽいぽいアイテムを拾っては放り込んでいく感覚と一緒です。
より分けを自動で肩代わりしてくれるアイテムボックスは、やっぱりとても優秀ですね。うむうむ。
片付けが余り得意ではない私にとっては有用な機能です。
ゴミ類は溜め込んだりはしませんけれどね。
どうも勿体無い気がするというか色々取っておいて、後で困るというパターンなのですよね。うーむ。
まぁこのゲームのアイテムボックスは、重量のほうは気にしないで収納してくれるようですし、容量がパンパンになってから整理しましょうかね。
先ほど拾った【石】も入れっぱなしな位ですし。
一息ついて立ち上がると、今度こそ神殿前にいるアレイアさんのところへと向かいます。
神殿前に到着しましたが、男性プレイヤーさんが何かアレイアさんに質問しているみたいです。
お二人の会話が終わるまで、一旦噴水辺りで待ちましょうか。
一分少々の会話で説明は終了したみたいですね。
神殿の中に向かって手を向けつつ、身振りを交えて何やら説明をしていたアレイアさん。男性プレイヤーさんがペコリと頭を下げ、そのまま神殿の中へと入って行きました。
何か施設に関しての説明だったのかな。
いつもの定位置へと戻っていったアレイアさんに、今度は私が声を掛けます。
「こんにちはーアレイアさん!」
「これはこれは、フワモ様ではありませんか! 町の外での目的は達成なされたのですか?」
前回と同様に、声を掛けた後に右手をビシっと上に突き出して、ここにいるアピールを行ないますと。
私の声を聞いたアレイアさんが、ズバっと音がしそうなキレのある動きで此方に振り向き、ちょっと驚いた様な顔をして私に声を掛けてきます。
相変わらずアレイアさんの動きに追随してバサっと棚引くマントがカッコイイ。
それにしても一日中立ちっ放しでしょうに機敏な動きです。非常事態にも即座に対応できますねこれは。やっぱり日ごろから鍛えているのでしょうか。
カイムさんも訓練が日課とか言ってましたもんね。
「はい、御蔭さまで必要な材料を揃える事が出来ました!」
「それは良かった。それで今回はどうなさいましたか?」
私の言葉を聴くために、毎度おなじみの跪くポーズで私に話しかけてきたアレイアさんが、此方の言葉を待っています。この光景って他の人から見たら何事って思われそうなんですよね。
うう、身長低くて申し訳ない。
こんな事になるならアバター作成の時に、延長できる限界の+5センチを身長に上乗せしてしまえばよかったかなぁ……
まぁそれでも160センチ行かないんですけど! ええチビっ子ですよ。
そりゃもう小脇に抱えられても違和感無いですよ。
良いんです、どうせもう身長伸びないだろうって諦めてますし!
日ごろ冷凍食品ばっかり食べてるから栄養が足らなかったんじゃないのか? とかお父さんに言われた事があります。かといってお父さんは180を超える長身なんですよね。
私と大して食生活部分は変わらないはずなのに。忙しい癖に。憎い。
他にも、お前母親似だから遺伝の線もあるかもなぁ、とも言っておりました。
写真などで見るに、お母さんも小柄だったようです。
等と脳内で思い出して嘆息し、ついでに何度見ても流れるような動きのアレイアさん的な跪き加減にも嘆息です……いかんいかん! 全く関係の無い事に思考をとばしておりました。
ささーっと聞きたい事を聞いて、生産用スペースに向かいませんと!
さっきみたいに神殿の事で質問したい人がまた来るかもしれないし。
「あの、ちょっと町の外でのログアウトについて詳しいお話を聞きたくて。加護関係のお話だろうから、神殿で質問した方が詳しく聞けるんじゃないかと知人に言われたので」
「……なるほど。神殿の加護外で【依り代】から離脱する場合のお話ですか」
アレイアさんが口元に手を当てて少し考え込んでいます。
うむ? なにか不味い事でも聞いちゃったかな?
雰囲気的には何かに悩んでいる様な、そんな感じですが。
「な、なにか私には話してはいけないような事だったでしょうか……」
「ああいえ、その様な事は無いのですが、神殿の加護で守られた町の敷地内や、楔の守りが施されたエリア以外での帰還行為は余りお勧め出来る物では無いので……」
ん? 楔の守り? リアさん関係の場所とかかな?
というか、アレイアさんがお勧めできないって言うくらい面倒な事なのか。
安全なところ以外でのログアウトって。
「大丈夫です! 万が一の時のために知識だけでも持っておこうかな、と思っただけですから!」
「なるほど、備えあれば、という事ですね。ならばしっかりとご説明しなければなりませんね」
アレイアさんが頷いて、何やら納得した表情になっております。
興味本位で試してみよう! みたいな考えで聞いたと思われたのでしょうか。
余り深く考えないで、適当ーに質問してしまっただけなのですアレイアさん。
いやはやちょっと申し訳ない気持ちになりますね。無駄にご心配をお掛けしまして……
「神殿の加護外、及び楔の守り外での帰還ですが、メニューの力を用いても即座に帰還することが出来なくなっております」
「ログアウトを選択してから暫く時間が掛かると言う事でしょうか?」
「そうですね。安全な場所であれば選択後即座に【依り代】を収納、帰還することが可能なのですが、それ以外の場所ですと一分の待ち時間が必要になります」
一分間位ならそこまで問題無さそうだけれど、アレイアさんがあそこまでお勧めしたくない、って言う位だし厳しいペナルティなのだろうか。
「ここで問題になりますのは、安全区域外での帰還選択後の待ち時間中は、移動や攻撃はもちろん生産スキルなど様々な行動に制限が掛かり、待ち時間中にそれらを行使してしまうと、帰還が阻害されます。何かしらの理由でダメージを負った時もですね」
「えーっと、取り合えずログアウト終了まで動いちゃダメ! ってことでしょうか」
「はい、簡単に説明いたしますとそういう事になります。その場で動かない状態で出来る行動なら帰還待機中に行使しても問題ありません。メニューを開いてアイテムを確認したり、マップを見て現在位置を確認したり、知り合いにメッセージを送ったりする、等の行動ですね。待ち時間が経過した後に、帰還の了承を求めるメニューが出ますので、『はい』を選択しますと【依り代】を格納し帰還する事が出来ます」
ああ、つまり町の外やダンジョンでログアウトする場合は、回りに敵がいる可能性のある状態で、一分間その場から身動きとっちゃいけない、ってことなのか!
ラビみたいに此方から攻撃しないと反撃してこない相手なら問題無さそうだけれど、白ラビみたいに向こうから先制攻撃してくる魔物がいると、何時まで経ってもログアウト出来ないって事だもんね……
これはアレイアさんのいう通り、気軽にお外でログアウトは試さない方が良さそうだ。
つまり、閉門時間に間に合わなかったら……基本的に徹夜フィーバータイム確定だね……




