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029 串焼き食べて もう一本

 ガルドスさんの厳しいご意見をありがたく頂戴しつつ、町の外でのログアウト関連について調べるために中央噴水広場に向かって足を運びます。

 【依り代】(アバター)を作ってこの町に降り立ってから大分時間が経ったからでしょうか、噴水周りの露店が増えていますね。

 人の出入りが多いこの場所は、やっぱりお店を開く場合の人気スポットなのでしょうか。


 ふと神殿横を見ると、なにやらお肉の串焼きを売っている方がいますね……とっても良い匂いです。

 恐らくプレイヤーさんの露店でしょうか。


 匂いに釣られた形で串焼きの屋台に近寄ってみると、食欲を誘う香辛料の匂いが私に直撃。

 それに反応してか、ぐぅーっとお腹が鳴ります。


 ひええ……い、今の誰にも聞かれてない? ないかな!? 


 お腹を押さえて、あからさまに挙動不審な動きをしてしまいました……

 うう、今まで気が付いていなかっただけで大分お腹が空いていた様です。


 リアさんからお芋のスープを分けて頂いたのも大分前ですし、アレだけ動き回った後となると、ポコ豆だけでは私の空腹度を満たす事は出来なかったようです。仕方ないよね、ポコ豆はスナックだもん。


 よーし、串焼き一本位なら今の手持ちで足りると思うし、ちょっと購入して食べてみましょう!


「あの、一本下さい」

「はいはい一本5ゴールドだよ! 今出来るからちょっと待ってなー」


 ゲーム開始以来、初のプレイヤー同士の会話なので少々緊張しつつ声をかけます。

 私の注文を受けたバンダナ姿のお兄さんは、お値段をアナウンスしつつ笑顔を浮かべながら、到底私には真似出来そうにない素早く正確な動きで、小さい鉄板の上で串焼きを五本同時に調理していました。


 うーんなんという手際。ゲーム初日から既に串焼きの匠の域か。


 あれ、あの鉄板の下に設置してあるのは、ポーション作成の時に私も使用した魔道コンロという奴ですね。上にビーカーじゃなくて鉄板を乗せると、ああいった風に焼き物にも使えるのか。便利だなぁ……


 狭い屋台内を動き回るお兄さんの無駄のない動きに感心しつつ、肉を焼いている様を眺めていると。


 此方をみてニヤリと笑ったお兄さんが、手馴れた感じで出来立ての美味しそうな香り漂う串焼きを一本、ポンと紙のお皿に乗せて私に差し出してきます。

 代金を支払わなきゃ、と思ってアイテムボックスからお金の入った袋を取り出そうとした時。


 目の前に見た事の無いメニュー? がテローン! という音と共に表示されました。

 うぇ!? な、なんだろう!?


『【ラビの肉の串焼き】 5ゴールド 購入しますか?  はい  いいえ』

 

 という簡潔な文章が表示されたパネルでした。


 これは、小銭を一々取り出さなくてもワンタッチで会計が済むのでしょうか。

 特に深く考えず【はい】の部分に指を伸ばします。

 チャリーン♪ という軽快な音が響いて、お兄さんの頭の上に『+5ゴールド』という丸っこい文字が表示されました。


 うん? なんだあの文字!?


 気になったので串焼きのお皿を受け取りつつ、自分の頭上にコッソリ視線を向けてみると。

 あ、これやっぱり私の頭の上にも『-5ゴールド』って表示が出てる。なんとも判りやすい。


「毎度あり! 熱いからねー気をつけて食べてなー」

「どうもです」


 他の方が後ろに並んでいたので、邪魔にならないよう急いで串焼きの屋台前から移動します。

 さっきのは一体どうやっていたのでしょう? 屋台の特殊な機能か何かなのでしょうか。

 わざわざお金を取り出してお渡ししないで済むので、非常にパパっとお買い物が終了しますね! 便利だ。


 それでは早速串焼きを食べてみましょう。いただきます。


 ふーふーあむっもぐもぐ。あっ凄い美味しい!

 味付けは良く判りませんが塩と胡椒で味付けしてあるかな? という位の事だけ判りました。

 美食家ではないので細かい表現など出来ませぬ。


 これはラビのお肉らしいですが、味としてはなんとなく鶏肉に似てる感じかな?

 クセも無いですし全然食べれます、毛皮もお肉もくれる、ラビ君は偉大ですね。


 私は串焼きの屋台から少しはなれた建物の壁際で、落ち着いてゆっくりとお肉を咀嚼します。

 うむ、お肉はお腹に貯まる感じがするね。このお料理の食事効果はなんだろう。

 元気になってるような感じはしないから、体力とか筋力とかじゃ無さそうだけど。


 ウサギっぽい思考で行くと……足が速くなるとかジャンプが高くなるとかかな。安直。


 それにしても一本5ゴールドとかで儲けは出ているんでしょうかね。一個のお肉から一杯作れるのかな。ポーションは薬草一個で薬一本なんですけれども。どうなのでしょうか。


 疑問に思った所で、お料理に関しては自分では試せませんが。


 なんとなく屋台で機敏な動きを見せている串焼きお兄さん(命名)の背中を眺めつつ、次々と肉を口に運びます。もぐもぐ。

 あっというまに食べ切ってしまった。ごちそうさまでした。


 お腹が一杯になってきた事により、何だか身体にパワーが戻ってきたような、そんな感じがします。

 結構動き回りましたから、やっぱり空腹状態だったのでしょうか。お腹の減り具合メーターみたいな物はどこかに表示されたりしていないのだろうか。プレイヤーなら幾ら食べてもお腹破裂したりしないし、大量に食いだめしておいてね! って言う事なのだろうか。


 過剰に食べた分は消えてしまっている可能性が大ですけれど。お腹周りに保存されるよりはマシですが。


 恐らく満腹度の数値は、歩いたり話したり適当に行動しているだけでも勝手に減るのでしょう。

 表示が無いようであれば、感覚で把握するしかなさそうですね。

 今度からお弁当代わりに、ポコ豆以外のお腹に貯まりそうな食べ物を携帯するようにしよう。


 しかし、このゲームって食事を取らないとそのうち餓死する、とかあったりするのでしょうか? いざとなったらその辺のキノコとか草とか、無理やり胃袋に放り込んで生き延びたり出来るんだろうか……なるべく実行したくはありませんけれども。

 森には毒キノコもあるってガルドスさんが説明してくれましたし。


 毒キノコでも背に腹は変えられぬ、と達観しつつ我慢して食べる選択肢も……? うーむ。


 毒を消す薬とか携帯していれば、なーに毒キノコでもイケルさ! ってなるのでしょうか。


 何処で聞いたか忘れましたが、これは毒キノコだが旨味成分がたっぷりで食べると美味しい! みたいなお話を聞きかじった記憶があります。このゲームの事ですから、無駄にその辺り再現されていそうで地味に嫌ですね。

【黄昏の大神】(プログラム主任)様ならやりかねない。


 それは謂れの無い風評被害だ、とも言い切れないこの怪しさ抜群の感覚。

 なんとも胡散臭い神様ですね。嫌いじゃないですけど。


 本当に美味毒キノコがあったとしても、さあ美味いから食べてみろ大丈夫! っていう運営からの挑戦でしょうね。毒を食らわばキノコまで。


 でもプレイヤーならアイテムボックスの加護がありますし、そうそう食糧難に陥りそうにもありませんけれど。戦闘前の準備に夢中になって、薬や装備品は万全だが食事の準備を忘れた! なんて可能性は否定できませんが。


 まあ、私は食い気重視ですから大丈夫ですハイ。


 串焼きのお肉を完食し終わりお腹を擦りつつ、壁際でノンビリとそんな思考を垂れ流していたのですが、この手に持っている串と紙のお皿、この後どうしたら良いのでしょうか。


 あれー? ゴミ箱ってどこかにあったかなぁ?


 とりあえず周りを確認してみようと辺りを見回します。

 ふと、先ほどの屋台の横を見ると、横にちゃーんと丸くて大きいバケツのような、あきらかにゴミバケツ! といった風体の物体が設置されていました。

 流石に商売をしている方ともなると、しっかりと準備していらっしゃるようですね!


 他のお客様もガツガツと肉を胃袋に叩き込んだ後に、そのバケツにゴミをポポイっと放り込んでいらっしゃいます。うむ、間違いない。あれだ。


 壁際から立ち上がると、ゴミをバケツに放り込みに向かいます。

 あー、もう一本買おうかな? でも無駄遣いしすぎるとお金がすぐ無くなりそう。

 それでなくても他の方々よりお金持ってないのですからね。


 斜め後ろからコッソリと屋台に近寄りつつ、ゴミバケツの中を覗き込んでみると。


 あれ? 何も入っていませんでした……どうなってるんだろ? 皆さん此処に串とか入れてましたよね?

 とりあえず自分の持っている串と皿を中に放り込んで見ます。

 すると例の七色の光になって、フワっと消えてしまいました。


 ゴミ処理時に発生する有害廃棄物が無いとか、このバケツ凄いな!? どこかで売ってるのかな?


 ポーション作成で危険な失敗作とか出来ちゃう可能性を考えて、こういう安全に廃棄物処分できる様な、便利アイテムがあると非常に良さそうですね。やっぱり高いのだろうか。

 商売関係の事だし、お店やってるメディカさんに聞いてみれば判るかな?


 ポーション売りにいった時に聞いてみましょう。

 あー屋台後ろ辺りにいるとお肉の香りが凄いなー……


 ……やっぱりもう一本串焼き買っておこう。

 あれです。これは食糧確保なのです。無駄遣いではないのです。

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