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239 お父さん には バレバレでした

毎度ながら朝に弱い女。

母親似だなー、と言う感じでお父さんは半分諦めてます。

内容が全然進んでないぞ!?

 聞きなれた目覚まし時計のアラーム音が、寒い空気で冷やされた私の両耳の穴を、抉じ開ける様な感じで飛び込んできます。そう、眠くて仕方がない状態な私の脳ミソを震わせる為に。ぷるぷる。


 じっくりたっぷり10回程のアラーム音を確認した私は、両目半開き状態で唸りつつ枕元に置いてあった目覚まし時計の頭を叩きます。お勤めご苦労様目覚まし君よ。勤勉だね眠い。


 通常の私的生活リズムにおいて、土日に訪れる休日の朝に目覚ましをセットするなんて事は、本来ならば何か重要な用事が待ち受けている予定でもない限り、有り得ない事なんですけれども。


 今日はある意味で重要な私事があると言うか。まぁゲームですけど。


 勿論アラーム開始時間は普段より大分遅くしてあります。

 学校に出発せねばならない平日と同じ時間に起床したら、起きるのが早すぎて何もする事がありませんし。ベッドの中でウゴウゴする位しか出来ませんから。


 流石に、寝起きの意識覚醒も覚束無い寝ぼけ脳ミソのまま、スポリとHMDを装着してゲーム開始を宣言したりはしませんけど。そう、つまり保険として一応お父さんの動向を確認してからでないとね。悪い一人娘はココです。


 お外で悪事を働いてくる感じの悪い子ではないので、お許し頂けると幸いですお父様、なんて感じの休日早朝のこの時間に考える理由のない事を、ボケーっと布団の上で半身を起こした状態で、カーテンの隙間から差し込む日の光を見詰めながら思い悩み。


 考え込むのは止めにして、まずは取り合えず部屋着に着替えようそうしようと、全身に力を入れて思い切り伸びをした私は、気合の小さい掛け声と共に、勢いをつけて掛け布団を自分から引っぺがし床に降り立ちます。うーむ肌寒い。


 素早く寝間着を脱ぎ捨て、室内で動きやすいラフな部屋着へと着替えて、流石に寒いので上着をもう一枚羽織ってから自室を出てキッチンへと移動します。まずは適当になにか飲み物でも。


 お腹は……減ってない気がする。多分。

 寝起きだから胃袋も寝ぼけてるのかね。


 毎度お馴染みの慣れた動きでコップを手にし、冷蔵庫を開けて野菜ジュースを注いで胃袋へと叩き込みます。ごくごくうん、目が覚めてきた!


 ちゃちゃっとコップを洗って食器置き場へ転がした私は、恐らくもう起床しているであろうお父さんの姿を探しにリビングへと足を運びます。


 私の予想通りに、リビングのソファーに腰を据えて見慣れた携帯端末を操作している、既に出掛ける準備万端状態な、お父さんの後姿を確認する事が出来ました。


 私より遅く休んだ筈なのに、私より早く起きているというこの謎。

 24時間戦ってないよね?


 睡眠時間大丈夫なのかな。

 私なんて出来るなら一日12時間寝たって良い位の気分なのに。


 そりゃもうコーメェ位の睡眠状況スタンスで、生活して行きたい所存ですよ。基本グータラしたい。


 という、お父さんの日常とは全く関係のない事を考えながら、お早うの挨拶をビシっと決まった格好の背中に投げかけ、微妙に猫背な状態でリビングの扉を開いて中に入ります。


 朝も早いというのに、お父さんのパリっと決まった姿格好に大して何となく眩しさを感じつつ。


 何となく思いつきで、適当にソファーの後ろ側へと移動する感じでお父さんの背後に回りこみ、腕を伸ばして目の前にある両肩に手を添えてグイグイと解す様に揉んでみます。


 むっ結構硬い、気がする。恐らく。


 唐突に何をしているのかと?

 まぁ、ふと思いたった刹那的スキンシップ欲と言うか。

 思春期に於ける突発的親孝行症候群です。もみもみ。ほぼ無意識。


 しかし、自他共に認める私の類稀なる貧弱握力では、状態改善を見込める程のマッサージ効果は得られないであろうと予想は付きますけれどもね。


 多分焼け石に水滴、くらいの変化はあるかな。

 それって、変化と呼んで良いのか少々憚られますが。

 水が水蒸気になってはいるのは変化かな? でも意味無さそう。


 唐突な私の行動に対して、驚いて私の方に振り向いたお父さん。


 ぱっと笑顔になって『ありがとう花乃枝、いやぁ最近肩が凝るんだよね』と言いながら、私の無免許マッサージを受けている状態のまま、端末へと視線を戻しました。


 両手の親指を駆使して、凝り固まった筋肉を解そうと四苦八苦しつつ、何となく私もお父さんの正面に置かれている携帯ネット端末の画面へ視線を向けます。


 ふむふむ、何かのニュースサイトかな。


 画像つきのニュース記事が、ズラリとページに詰め込まれている感じで表示されています。私は普段こういう場所は見ないので少々新鮮な感じですね。まさに文字だらけな感じで。


 その後お父さんの肩を雑にモミモミしつつ、意識半分程度の興味度でもって一緒にニュース記事を読むと言うか眺める感じで父と娘のスキンシップを継続。


 まぁニュース記事サイトを見ても、正直な所よく判らない所で何か事件があったーとか、何方かがご病気でお亡くなりになったーとか、そういう私の私生活には余り影響のない出来事が網羅されているだけなんですけども。


 普段私がこういった情報サイトで確認する事なんて、天気予報くらいですよ多分。


 もっと世間一般で発生している出来事に対して意識を向けろ! と怒られそうですが、正直17歳女子高生に影響のある事件って言われても首を傾げる感じで。候補としては、通り魔事件とか教員がらみの事件とかでしょうかね。うちの学校は平和なものですよ。


 そりゃまぁ、普段から事件その他に興味がない自分だと自負しております。


 一応ですが、防犯意識その他色々はしっかり考えとして持っているつもりでは、あります。

 普段はしょっぱい私一人で生活している訳ですし。

 近隣の方々にお世話になっている感じでもありますけどね。所詮小娘よ。


 そんな事を考えながら表示の切り替わっていく端末画面を眺め、ほぼ無意識で目の前にある両肩を揉んでいた私は、ふと場所を変更してお父さんの後頭部から首筋の辺りへと両手を伸ばし、親指をグイグイと押し当てる感じで揉み解すマッサージ方法へと移行。


 手馴れた感じでニュースサイトページを操作している、お父さんの手元と画面を再度眺めます。

 ほー、色々と載ってるんだねー……スポーツ関係とか全然判らないや。


 取り合えずお父さんから今日の予定を聞き出すため、凝っているのかよく判らないお父さんの首の後ろあたりを両手を使って継続でグニグニしつつ、軽い感じで聞いてみました。


「今日は何時ごろ出るの? もう出掛けたりする?」

「うん、もう少ししたら出発するつもりだよ」


 視線は端末の方へ向けたまま返答を返してくれるお父さん。


 これは! ある程度早い時間からVRゲームを開始できそうな予感がしてきましたよ!

 朝からゲーム三昧とか何て悪い子だ!

 反省はしませんよハハハ!


 『へーそーなんだー』と言う感じの微妙ーに棒読み風味な返答を返す私。


 胡散臭い発音になってしまったのは仕方が無い事だと思います。

 後ろめたい部分が多々ありますので。


 でも休日ですし好き勝手したい!

 イヤッハー♪ したいんです! したいよね?


 そう思いながら、誰にでもなく自分自身の心の奥底に問いかけるよう数度頷く私。


 つまり私の事を一番理解して上げられるのは私。

 何だか哲学じみてきたよ。


 でも最大の敵は己の心とも言うよね。

 昨日の友は今日の敵みたいな。いや違うかな。


 何て感じで、自分の心について微妙に為にならなそうな無駄思考を脳内で繰り広げ。


 その後、ある程度解れたかな? と自分勝手な診察を繰り出して適当なタイミングでマッサージを終えた私。


 その後、何となくお父さんの隣に腰を下ろして、ダラダラーっと朝のテレビ番組を眺めていたら……お父さんが出掛ける時間になりました。あれ、まだ9時過ぎ位だと思うけど随分早いですね。


 昼食用にサンドウィッチを作ってキッチンに準備しておいたから食べるように、という通常時は欠食児童さながらな私に対しての、慈悲深さ溢れるお言葉を投げかけて玄関を出て行くお父さんの、その輝かしい勇姿を見送ります。気をつけていってらっしゃーい!


 笑顔を浮かべて手を振る私に、玄関の扉を閉める直前のタイミングでお父さんが言葉を投げかけてきました。


「花乃枝ー? ゲームしても良いけれど、長時間遊び過ぎないようにね?」

「むぐっ! わ、わかった!」

「それじゃ、行ってきます」


 バタンと音をたてて閉まる玄関のドア。くっバレバレだったか。

 でも悪いこな私、臆面も無くゲームプレイしちゃう! だって楽しいし!


 一応は、お昼ご飯食べるタイミングで一度ログアウトするとして。

 それ以外は、頑張れるだけ頑張っちゃおうかな!?


 うわーなんという親不孝者でしょうか!

 でも、普段は良い子にしてるし、今回は大目に見てもらいたい!

 ではでは、まず現実の方でやる事を済ませてしまおう!


 気合を入れるために、マッサージで微妙に疲労感の漂う両手でペチペチと自分の頬っぺたを叩きます。余り痛くない強さで。


 取りあえず、お掃除お洗濯を完了させておけば大丈夫かな?

 ご飯はサンドウィッチがあるって言ってたし、問題ないよね!


 そうと決まれば後は動くのみ!


 と言う訳で、やる事を済ませて自室に戻るまで30分も掛かりませんでした。早い、早いよ私!

 普段から、これ位の行動力を持って活動出来れば良かったのですがね!


 VRゲームという化学燃料が投入された場合に起きる、爆発的なエンジン出力上昇ですから。常用すると私の寿命を縮める危険性が有ったり無かったり。無いか。


 お洗濯作業に対する乾燥機の効果は絶大だなー、なんて文明の利器に対しての敬意を再度確認しつつ、HMDを装着するとゲーム内へログインする為の準備を完了させます。


 えーっと……ログインしたらまず、昨日と同様にゲイルさんの所に足を運んで、依頼してある品物の進捗状況を確認する所から開始しようかな。


 途轍もない無理難題である『金属にフワモコ属性を付与する』という、私個人の我侭で追加された部分はきつ過ぎる為に保留しましたし、その後行われたであろう金属加工作業は、ゲイルさん本来の力を発揮できる部分でしょうから、品物の出来栄え自体には不安は全く有りませんけど。


 昨日見たあの様子だと、今日も睡眠時間を削って作業している可能性が高いですからね。最高のクオリティを目指して作製してくれる事に対しては感謝の念を禁じえないのですが、身体を壊す勢いで無茶をしている様子を見てしまうと、現物支給とは言え報酬を前払いしている身ではありますが、大丈夫なの!? 倒れたりしませんか!? と心配になってしまう訳ですよ。


 でもですよ、アレほど頑張っているゲイルさんに対して『ほどほどの出来栄えで良いですよ』と伝えるのも、ソレはそれで職人さんのお仕事に対して失礼に当たってしまうのでは、とも思える訳で。


 難しい所ですね。

 取り合えず今日はアルさんに顔見せと確認だけ済ませて、早々にお暇する方向で行きましょうか。


 わざわざ作業を中断して工房の奥から出てきてもらうのも、何だか申し訳無いですので。

 その後の行動はー……まぁ流れとノリで適当にいきましょうか。何時も通りです。


 よし! と声を出して頷いた私は、ベッドに横になると軽く深呼吸、風邪をひかない様に布団を整えてHMDを起動、すっかり見慣れた白い空間での入力を終えてログインを完了させます。


 自分が出現した見慣れぬ景色に一瞬戸惑いましたが、そういえば昨晩はイ=ヤッハーさん達とお話してそのまま屋台の横でログアウトしたのを思い出して納得。


 そんな感じで周囲の状況を確認しておりますと。

 少し遅れて、私の足元に相棒の白くて丸い勇姿が出現しました。

 やぁおはようコーメェ!


 私を見上げて『メ!』と鳴き声を上げるコーメェを、いつも通り持ち上げて抱きかかえます。このあたりは人通りが多いから、小さいコーメェが歩き回ると踏まれたりする可能性があって危ないですからね。


 おっとそうだった、昨晩イ=ヤッハーさん達に、暫くはフードを深めに被って表情や顔を見られない様に行動した方が良いかも、って言われたっけ。


 コーメェ大人気事件のお陰で、隣にいた私もついでに目立ってしまったからね。

 中身はいたって普通の女子なんですけれども。ふわもこ好きな。


 素早くフードを引き上げて目深に被った私は、腕の中で私を見上げているコーメェに、申し訳無いけど人前では暫く大人しくしていてね? とお願いしておきます。


 数度頷いたコーメェは、いつも通り私の胸にめり込む感じでくっ付くと、あっという間に寝始めました。早い、早すぎる!


 メェって『ふわもこファーム』でも良く寝てたけど、あれは特殊能力だったのか。


 気持ち良さそうに夢の世界へと旅立っている、見た目はただの白い毛玉になったコーメェを抱え直し、改めて噴水周りを見回します。うむー流石は土日だけあって朝から人通りも多いですね。


 イ=ヤッハーさん達は……何時もの所にはいらっしゃらない様子。


 あれから継続してプレイするーって仰っていましたし、きっとまだ、寝ている可能性が高いでしょうか。

 何時もの場所に視線を向けましたが、ゲンジさんの屋台も今朝はまだ出ていませんね。


 よし、それじゃ当初の予定通りに噴水から中央通りを南下して、ゲイルさんのお店へと様子見に向かいましょうか!

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