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229 フワモコ テロ と 暴走 お嬢様?

なんという万能毛玉。

話があって来たはずが、毛玉に魅了されるとは情けない。

 多数のプレイヤーで賑わっている噴水前広場を何とか抜け出し、中央通りへとその足を向けた私は……そういえば、折角串焼きお兄さんことゲンジさんの露店付近にお邪魔したにも関わらず、何も食べ物を購入していないじゃないですかぁ! という驚愕の現実に今更ながら気が付いて……少々凹んだりもしましたが。

 拝啓、私は元気です。食べ物をくれたらもっと元気になります、敬具。


 いつも通り、基本的に迂闊ですのでソコの所は平常運転ですからねハハハ。


 まだ食べる物は残っている筈だし大丈夫な筈、と少々自分に言い訳気味な意見で悲しみを相殺し、中央通りの周辺で立ち止まって会話したり、道の両脇にたっている建物を眺めながら、周りを見回したりしている第二期プレイヤーさんっぽい方々を視界に収めつつ……公園へと移動するために、何時も利用している路地へと身体を滑り込ませようと、頑張って中央通りを移動する私でしたが。


 これは駄目だぁ一筋縄ではいかない状況! 中央にそびえる噴水の胃酸魚クンから東西南北に伸びる通りは、人が多すぎて移動通路として活用するには適さない環境に成り下がってしまっている!


 そもそも、私が人ごみの中を無理矢理に移動すると周囲が良く見えない!

 周囲を行き交う人の壁が、生きた壁が私の行動を阻害するのだ!

 ……やはり、靴底が物凄く分厚いブーツでも購入しないと駄目ですかね!?


 歩き辛さ100点満点な気がしますけれど。


 そこは、VRゲーム内なら凄い画期的なアレっぽい技術運用で、実は何とかなったりするんじゃなかろうか!? なんて希望的観測を滲ませてみたものの。


 自分で想像してなんですが、余りにも怪しい風貌になりそうでちょっと運用を控えたい気持にも。


 厚底ブーツと安全行動の間で、激しく前後に揺れ動く私の乙女心。


 言ってしまえば、足りない身長部分を如何にして数値的に巧妙かつ大胆に捏造するか、という建設的ではない物事に関してですが。シークレットに身長延長精神増長。あなたのアイテムボックスにも一足。


 きっと、身長が適切な方には判らないお悩み。平均身長とは。

 多分ですが、背の高い人に相談した場合、稀な身長ゆえの悩みと言う部分での共感は得られると思いますが、対策的にはほぼ焼け石に水。この背丈は恐らくお母さんの遺伝……ならば仕方ないと悟るしかないのか。


 身長に関しての考察も程ほどに、ならばここは強引に! と気合を入れて手足に力を籠めて、観察する様に周囲を興味深げ見回しながら移動する、沢山の新規プレイヤーさん達にぶつからない様に。

 その一点にだけ気をつけて、肩を竦める様にしながら稀に見える人と人の隙間に、肩から身体をぐりぐり捻じ込んでいきます。ひーぃこりゃ大変だぁ!


 ふと脳内で、百戦錬磨の奥様方が犇くバーゲンセール現場の様相を夢想します。


 セールに関しては実際に体験した事は有りませんが。あくまでも想像の域を抜けない考えではありますけれど、出来れば皆様方にはニュアンスで感じて想像して欲しい所。そんな感じ。


 有り体に表現すると、目的の為に多少の強行接触も已む無しという訳で。


 先程設定したハラスメントの機能が暴発しないと良いけど……と少々不安に思いつつ、そんな私の状況を見て、何やらコーメェが私の腕の中で身体をモコモコ動かしてやる気? を出し始めたので、何事だろうかと聞いてみます。


 ……え!? コーメェの身体を緩衝材に利用しろと!?

 楔のように人と人の間にぶち込んで進めと!?

 そんな事して大丈夫なの!? えっ大丈夫なんだ!?


 私の不安を他所に、微妙にドヤ顔で四肢をワキワキと動かし、凄まじいやる気を表現しているコーメェ……うん、それなら活用させてもらおうかな?


 コーメェに関しては撮影に関しての設定しか弄っておりませんし、他のプレイヤーさんに触れても何か自動で防衛する機能的なものが暴発する恐れはないと思います。


 それでは早速と、人と人の隙間にコーメェをギュムギュムと押し付けつつ、植物を掻き分けるような気持で人気の少ない路地へと歩を進めます。隙間に打ち込む楔の様な気持ちを持ってして押し付けるべし。


 というか……この人ごみの凄まじさ、多分ですが同時に接続しているプレイヤー数が多すぎる事が原因でこんな状況になっているのでしょうかね。事前に取れるような何か有効な対応策は無かったのかな……むしろここまで大人気なのが、運営さんからしたら予想外だったのか……その辺りは想像に任せるしか有りませんが。


 それにしても、コーメェバリアー(この場で命名)を使用し始めた直後から、体感できる程度に移動がしやすくなりました。これもコーメェの弾力による効果なのか。


 接触時は優しく、かつフワリと相手を押し退けつつも、その柔らかさで相手を労わる気持ちも同時に発していると言っても過言ではない。凶悪な生物兵器。だがお子様にも安心。


 私の両手に挟まれた、何時も通り頼りになる白い背中とその勇姿。毛玉ですが。


 左右から『おっ弾力が!?』『フワフワする!』『柔らかい……!』『新感覚!?』『あふん!?』等の様々な声が聞こえてきますが、そちらに意識を向けている時間も余裕もありません。おりゃぁー! このまま突撃ぃ!


 両手にコーメェを持った格好で、スポリ! という音がしそうな勢いでもって人ごみから何とか脱出した私は、その勢いのまま周囲の流れに半ば逆らう形で路地へと身を躍らせます。ふぃー! 良かった良かったぁ! うむ、予想通り基本的に細い裏道は大分空いている感じです。


 数回深呼吸をした私は、ここはVRゲームの世界なので汗は吹き出したりはしませんが、何となーく気分で額を腕で拭います。はーくたびれた。

 いやぁー色々と消耗したねぇまいったまいった。


 人をかき分ける為の防壁というお役目を頑張ってくれたコーメェの背中を、心の底から労いの気持ちを籠めてポンポンします。お疲れ様。

 あれだねぇ、キミは柔らか緩衝材っぽい機能も有してるんだね。強すぎる。


 ……正直コーメェって絶対私より強いんじゃないかな? と思ったりする場面が多々あります。実際問題、例の森の中での戦闘は、私が2割でコーメェが8割位の戦力分担だった気がしますから。


 私も、もうちょっと頑張らないとな……なんて、腰に提げてある棒武器に手を添えつつ戦闘方面の鍛錬について考えましたが、どうやったら戦闘に関しての技術が向上するのかがイマイチ。スキルを育てれば良いのかどうなのか。


 まぁ取り合えず、もう少し路地の奥へと移動することが先決でしょう。

 ……だって何だか背中に視線を感じるんです。見られてるんです。

 あれか、コーメェバリアの効力が高すぎたのか。


 人ごみ内での移動中に、ずり落ちそうになっていたフードの端をグイグイと下げ直し、シャカシャカと超高速(自分的には)移動を開始して、人の視線を感じない程度には奥まった場所まで急いで移動しつつ曲がり角を折れる事数度。周囲の人影が疎らに。


 ふぅー、と息を吐いて背中を近隣にある建物の壁へと預けます。コレで安心かな。


 それにしてもあれだねぇ、戦闘その他の事に関しては、私としては技術と言うよりは精神的なモノが多大に影響している気が致しますので、スキルだけ育てても余り影響が無い様な気がします。


 そりゃデコピンで叩くだけでラビ君が光の粒になって消滅する! という位のパワーを、スキルを育てる事により入手出来たならば、私も凄く強くなったよ! って口に出して言う気にもなれそうですが……うん、余りにも現実離れしすぎてて逆に胡散臭くて想像出来ない。アニメの最強キャラクターみたいな印象だ。


 せめて、お魚にスネを突かれてもHPが減らない強さは必要だよね。

 コーメェもそう思うよね?


 なんて感じで、先日体験した余りにも貧弱な肉体ダメージによる、驚愕の事実発覚時の光景を思い出して意気消沈……悲しみと共にコーメェと会話しつつ、そのフワフワな背中を汚れを落とす様な感じでパタパタと平手ではたきます。


 私の腕の中で、そうだ柔らかさと強さは大事だ、と言わんばかりに『強さ』の部分に力強い肯定の頷きを返しているコーメェに対し……あれだねキミの強さを分けて欲しいよ、何て返事をしつつ移動を再開します。


 この辺りは見覚えのある場所なので、マップを開かなくても迷う事はありません。

 なんだか町の北東部分に関してばかり、詳しくなっている気もしますが。

 個人的な重要拠点が多いので。公園とかラティアちゃんの家とかメディカさんのお店とか、つまり諸々その他です。


 まぁマップ確認しつつ各所を散策する、といった感じの地形把握に関する行動を殆どしていませんからね。思いつきでアチコチに足を伸ばす位はしましたけど。微妙ですよね。


 町の西方面に関してなんて、遠目から眺めた程度でほぼ未確認です。


 山岳地帯へ移動中、馬車で出会ったマークさんのお話から、馬車を停める場所があったり、きり出した木材みたいに大きい品物を取引したり出来る場所がある、という事だけは覚えてますけれど。


 そのお言葉から考えると、多分私には必要の無い場所なんですよね。

 ある程度のサイズが必要な木材、とかを入手する場合は利用しそうですが。


 スキルがあれば、プレイヤー謹製の家具とか、さらには建造物なんてのも作れたりするのかな。

 置く場所や建てる場所なんて、私には想像付かないし用意も出来ないけれどね?


 あれだね、私は手元でチマチマ作業できるものだけで十分だね。

 自分が大きい物作ってる姿が想像出来ないし、自分でやるよりは見てる方が性に合ってるや。


 でもそのうちで良いから、掘っ立て小屋程度のクオリティで構わないので、コーメェと二人でノンビリゴロゴロ出来る様なパーソナルスペースを確保したいなー、なんて感じの……取らぬ狸の皮算用的な思考を展開しつつ、初っ端から第一ステップの資金面問題で躓く様を幻視して、セルフ想像で絶望を味わっておりますと。


 無事に、見覚えのある公園の入り口が見えてきました。おお我が作業場よ。


 此処も混んでたりしないよね? と少々不安に思いつつ、入り口付近から公園内部を見回して見ましたが、この辺りは流石に人通りが少ない印象を受けます。やっぱり新規プレイヤーさんは、最初は町の外へ出てラビ君とかイモムシ君をボコボコ叩いているのでしょうか。


 さてさて、ポーション作成作業に取り掛かる前に、軽く公園内を周回してカイムさんやラティアちゃんが居ないか確認してみる事にしましょう。何時も通りならば砂場の辺りでワチャワチャしていると思うのですが。


 コーメェを頭の上に乗せ、軽いストレッチや屈伸をした私。

 ウーンと伸びをしてから、見慣れた公園内を周囲を見回しつつ移動します。


 あっあれは、前に邪神召喚の儀式(棒倒し)をしていた男の子達だ。


 何か棒みたいなものを持ってワイワイやっています。

 あれかなチャンバラゴッコかな。棒で怪我しないように気をつけてね。


 『てりゃー!』とか『くらえ!』何ていう感じの掛け声が聞こえてきます。

 見た目だけは激しいバトルですね。武器は折れそうな細い棒ですけどね。


 そんな光景を視界の端に入れつつ、笑顔で歩みを止めずに移動を続け……そのままの流れで、なんとなーく視線を正面に向けますと……何だか緑の多い公園の中に目立つ色が。


 あそこは確か……砂場がある場所の脇に設置されているベンチです。

 歩いて近寄っていくと、徐々にはっきりと見えてくるそれは。


 眩い金色の髪の毛でグルグルなロールの非常に特徴的な見た目。

 そして、私にとって見覚えのある外見でもあります。


 そりゃもう、初めて出会った時のインパクトが強すぎて、迂闊で忘れっぽい私でもそう簡単には忘れられない存在感のお方です。


 何やら物凄い笑顔で砂場の方を見ている、その眩しいお嬢様オーラを発する件の人物。


 そうです、何時ぞやの盗撮の人、改め。

 私の第一フレンドリスト登録者である、金髪くーるくるヘアな魔法使いキサラさんです。


 今日も完璧お嬢様フォームで眩しい。金髪眩しい。

 見ていると、何故か恐れ多い気持まで湧き出てくる。


 何やら楽しげな凄く良い笑顔状態で、かすかに身体を左右にゆっくり揺すりつつ、じーっと砂場の方を眺めていらっしゃる様子。


 何を見ているのかな? とベンチに近寄って同じ方向を眺めてみますと。


 視線の先にある砂場ではラティアちゃんが、何かお城の様な建造物を砂を材料にして建立中でありました。


 ……いやいやちょっと、ラティアちゃん凄くない!?

 砂で作ってて、普通にお城って判るのがまず凄くない?


 笑顔なキサラさんの横に座った私も、砂場で真剣な表情を浮かべつつ、城門の様な物をペタペタと両手で固め始めたラティアちゃんを笑顔で眺めます。癒しですね。


 そして、恐らく私がベンチに座って10秒程経過した辺りで、気配か何かでベンチに誰か座ったのを感じたらしく、チラリと一瞬一度だけ此方を見たキサラさん。


 ……その後、普通に一度ラティアちゃんのほうへ視線を戻しましたが。

 直後に、驚愕の表情でグワっと勢い良く私の方に向き直りました。


 あれですね……完全に完璧なお手本の様な二度見でした。

 美しささえ感じるような。二度見の教本に写真で掲載したい位の。


 でもその、激しい動きと表情での完璧な二度見は、知らない人が見たら絶対に恐怖映像!? と思われる可能性が高いので、もう少し落ち着いて動いて貰えませんでしょうか。


 そんな私の気持ちには気が付かなかった様子のキサラさん。まぁ当然ですけど。


 ガシっと音のしそうな勢いで、私の手を両手で包むように掴んでブンブンと上下に振ります。


「フワモさん! やっと会えた! 実はお話があってお待ちしてました!」

「へ!? お話、ですか?」


 ニッコリ笑顔で会話を切り出したキサラさんの口から飛び出したのは、予想していなかった一言。何か私に関係のある用事でもあるのかな?


 話がある、といわれて少々考えてみたのですが、特にキサラさんに対して影響がある事を予想できる感じの事件なんて、思いつく限りでは無い様な気がします。んーなんだろう?

 首を傾げて考え込んでいた私でいたが、私の手を離したキサラさん、早速何かを言葉にしようとして口を開いた瞬間、私の方に視線を向けたまま何故か硬直してしまいました。


 ……いや、これは私の顔と言うより頭上。

 ……あー、コーメェの事ってキサラさんに紹介してないんだったっけ?


 ああそうか、前に此処でキサラさんから美しささえ感じる土下座謝罪を受けた際は、コーメェは毛玉然とした状態でベンチの上で白い物体と化していたんでしたかね?

 試しに頭の上からコーメェを取り外して膝の上に乗せますと、キサラさんの視線がそれに追随する形で下に。


「そ、そ、それは……いえ、その子は一体!?」

「えっと、この子は私の相棒でコーメェって言います。メェっていう生き物で、柔らかくてフワフワで弾力があって可愛いんです」


 私の言葉に続いてコーメェも『メッ!』と一声鳴いて右前足をビシリ! とキサラさんのほうへ向けて斜め上へと突き出しました。


 その前足に吸い寄せられるようにキサラさんが震える右手を伸ばし、その指でモニュっと握手する感じでコーメェの足を摘むと、コーメェがお返しと言う感じで握手しているように前足を上下に軽く振ります。


 その反応を受けて、プルプルと震え始めるキサラさん。

 えー大丈夫なんだろうか。よだれをたらしそうな勢いですけど。


「ふひゃぁ!? はうぁ!? どどどど動物なんでしゅか!?」

「えーっと、そのーその辺は説明すると色々とややこしくてですね」

「はぁっ! しゅみましぇん! 貴重な情報を無粋な態度で、しかも無償で強引に聞き出そうとするなんて! もーバカバカ私のバカ! ラビに蹴られて死んでしまえ私!」


 コーメェの前足から唐突に右手を離したキサラさんが、ガシっと両手で頭部を抱えた形でグワングワンと頭を揺らして唸り始めました。落ち着いていただきたい。


 あれですね、自分よりも壮絶に焦ったりオロオロしている方が目の前にいると、相対的な効果で逆に私の精神は落ち着いてくるというか。


 コーメェ由来による質量保存の法則と言うか。

 精神論な話題内容に適用されるのかは知りません。

 適当な事いってるなコイツ! とか思っていただいて結構ですハイ。


 まぁあれです、第一フレンドのキサラさんなら、コーメェと出会える場所くらいなら普通に教えても差し支えないのではないかな? と思うのです。


 信頼できる人になら云々の話題で言えば……キサラさんならば、可愛かったりフワモフな存在についての精神理念に基づく行動指針に関してなら、例の盗撮事件の件を除くのであれば、ある意味強い信頼を寄せれる感じがしますし。あの事件も可愛さあまってという流れでしたし。


 と言うことで、コーメェと何処で出会ったのか、という部分をキサラさんに教えてあげる事になりました。とはいってもあの場所へ到達するルートを説明できないんですが。大丈夫だろうか。


 そんな私の心配を他所に……コーメェと出会った場所を表示したマップを指差しつつ説明した後の、キサラさんの私に対する感謝の念といったらもう。


 でも此処まで喜んでいただけたなら悪くないかなウン。


 キサラさんから『コ、コーメェちゃん触っても良いですか!?』という質問に、本人からの了承を得てオッケーのサインを送り返した私は、コーメェをキサラさんの手の上にモフリ……と差し出します。


 そんな感じでドタバタやっていると、私たちが発生させる怪しい騒音に気が付いたラティアちゃんが、砂のお城建築を停止させ、此方に視線を向けた後に笑顔で砂場から立ち上がったのを確認しました。


 テテテーという擬音が似合う動きで素早く走り寄ってきたラティアちゃん、毎度お馴染みな感じで私の尻尾にモフリと抱きつくと、パァーっと周囲を照らす眩しい笑顔で私の精神に蔓延る不安を払拭します。眩しい浄化される! ライフ回復する!


「フワモおねえちゃんおはよう! メェちゃんも!」

「うん、お早うラティアちゃん!」

「あっ……すなばであそんだてで フワモおねえちゃんのしっぽ さわっちゃった……ごめんなさい」


 走り寄った勢いそのままに、砂で汚れた手で尻尾を触った事に罪悪感を感じているラティアちゃん。

 その様子を見た私の脳内に、鋭く光る稲妻の様に一つの閃きが浮かび上がります。

 そう……それならば、ラティアちゃんに汚れてしまった尻尾お手入れをお願いすれば良いではないかと。お詫びという事にすれば合法ではないかと。

 アイテムボックスからブラシを取り出して、ラティアちゃんに今思いついたお願い事に聞いてみます。


「ブラシ……うん! がんばって ブラシできれいにする!」


 罪悪感でションボリしていたラティアちゃん、私の提案を受けた後、ぱっと花が咲くような笑顔を浮かべて素早く数度頷くと、水場の方へと手を洗いに駆け出していきました。

 今日も元気なラティアちゃん、やっぱり可愛いね。


 私も笑顔でラティアちゃんの背中を見送っていますと、ソレとすれ違うように、見覚えのある眩しい頭部を晒したカイムさんが此方へ歩み寄ってきます。


 眩しいけど浄化はされないかな。

 でも今日も良い輝きですねカイムさん。


「お早うさん! 今日もポーション作りかの?」

「お早うございますカイムさん! はい、取り合えずお薬は作りますよー」

「その後、今日も棒術の訓練してやるからの!」

「了解です!」

「うむ……それにしてもその隣の……名前はなんじゃったか」

「キサラさんですか? ……あー違う世界に旅立ってしまっていますね」


 カイムさんと一緒に、ベンチに座ってだらしない笑顔を浮かべつつコーメェに頬ずりしたり、ギュムっと抱きしめたりしているキサラさんの、余り知らない人にはお見せ出来ない雰囲気満載の行為を眺めます。


 外見が綺麗でお嬢様然としているので、あれです色々な意味で倒錯的です。


 でも本人が楽しそうにしていますし、正気を取り戻すまではこのまま楽しんでもらいましょうか。コーメェの表情を見るに嫌がっている素振りはありませんし。


 と言うか、こういう事をされている時のコーメェは何故か凄いドヤ顔風なんですよね。

 こう自信満々な感じといいますか。


 やっぱり見た目通りに、メェ一族にとってフワフワ柔らかさや弾力で相手を魅了する事は、普通に推奨されるべき行為なのでしょうか。肉体美を見せ付ける感じの。どうなんだろうか。


 その後、お手手を洗い終わったラティアちゃんも合流し、賑やかになってきたベンチでそんな事を思いつつ、ブラシを手にしたラティアちゃんと顔を見合わせ、お互いに毛並みを整えるグルーミングなキャッキャウフフ! を開始する私なのでありました。あははは楽しい!

 そうそう、メェに無事『コーメェ』と言う強そうなお名前を付けてあげた事も、ラティアちゃんに教えてあげましたよ!

※ お知らせ ※


すみません、どうにも体調が安定しないので、10日程度の長期お休みを頂きたいと思います。

正直な所、色々とあって睡眠不足なのが第一の原因だとは思うのですが(何

展開の遅いこの小説で、長いお休みを貰うのは心苦しいのですが、是非どうかご容赦頂けると幸いです。


あっ……でも更新したくなったら休み期間中でも投稿しますので……(小声


※追記※ 


判りづらい部分等を、手直ししました。文章も少々追加。

ご指摘いただいた誤字を修正しました。


※2017.11.29 追記※


更新についてのお知らせを、活動報告の方に記載しました。

チラリと見ていただければ、次回更新が何時頃になるか判明致します……(平伏


※ 追記2 ※

ご指摘いただいたラティアちゃんとコーメェについての部分を修正しました。

少し弄って説明部分を挿入しただけですので、内容に変更は御座いません。

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