228 色んな 設定 講習です!
色々と設定。
細かく弄れるようになったのはアプデ後から。
その後、アイテムボックスから小さい椅子を取り出し、石畳の上に置いたイ=ヤッハーさんの勧めに従って、椅子の上に腰を下ろした私の正面に陣取った皆様から、先程聞いた『ハラスメント調整項目』とやらに関しての色々なご説明を受ける算段となりました。
私の正面に膝を曲げて腰を落とし、顔を突き合わせて小声で何かを相談中な皆様の反応をみて察するに、恐らくゲームプレイヤーとしては物凄い基本的な設定に関しての知識っぽい? という新事実が否応無しに窺える状況な訳ですが。たはははは。
うん、あれだ、もしかしなくても、実は非常に判り易い場所や普段良く見る何処かに、詳しい説明等が記載されていたりするモノに関しての常識問題だったりするのでしょうか。
先程聞いた時点で、全く持って見覚えの無い事柄についての発言でしたので、何か特殊な条件化で判明する感じの難しい事だとばかり思っておりましたけれども……これは違うな、うん違う。
私が何かアレな感じだったのだ。くそぅ! 迂闊ぅ!
お三方のご相談事が終わるまでの待ち時間、椅子の上に座って膝の上で大人しくしているコーメェを此方向きにひっくり返し、顔を見合わせて自分の迂闊さ加減について聞き上手なファンシー毛玉に向かって愚痴っておりますと。
メニュー板を表示させてアレコレ弄っていたお三方が会話を終了させて、私の方へと向き直りました。ご相談は終了しましたでしょうかね?
コーメェの向きを元に戻し、姿勢を正した私にイ=ヤッハーさんが声を掛けてきます。
「よし、取り合えず最初から説明していく感じで行くぜ!」
「はい! よろしくお願いします!」
「良い返事だ! まずはメニューを開いてシステムの項目を選択してくれ!」
「らじゃーです!」
普段通り手を動かしてメニューを開き、ログアウトの時に選択するシステムの文字を選択、ページをシステムの項目表示に切り替えます。普段このページにはログアウト時にしか用事が無いので、余り深く確認した事が無いですね。
大分前にざっと全体的な表示を見たくらいでしょうか。
何時頃に確認したんだっけかなぁー? なんて事を何となく考えていますと。
イ=ヤッハーさんから次の指令が私に下されます。
「それでだ、えーっと、システムメニュー上部に切り替えタブが表示されてると思うんだが、そこにあるタブをタッチして、専用ページに表示切り替えしてみてくれ」
「えーっと……あっ! これですね!」
「そうそう、そいつよ……そこをポチっと触るとページ表示が切り替わるからよ!」
イ=ヤッハーさんのお言葉に従い、システムのメニュー上部に視線を向けると、確かにソコにありました『セキュリティ』の項目が!
多分恐らく初期の頃には無かったと思うんですが……いや、記憶が定かではないと言うか興味がない事柄についての記憶が曖昧だというか。
ラティアちゃんの眩しい笑顔とか、カイムさんの光り輝く頭とかはよく覚えているんですけれども。
地味に嫌な記憶が混じっている。何故だ。
記憶のフィールドの中で、降り注ぐ陽光を反射し無駄に神々しく照り輝いているカイムさんの頭部の無駄な記憶と、今まさに眼前で私の為に色々と知恵を授けて下さっているザコーダさんの、ツルリとした頭部が重なり合う光景が脳裏に湧き上がり。
違ーう! 頭部の話をしたいのではなーい! と必要の無い記憶を吹き飛ばすため、眉間に皺を寄せブンブンと頭を数回振って気合を入れなおした私は、小声でよし! と掛け声を上げ……改めて指示通りにそのタブの部分へと指を伸ばし、システムの表示を切り替えます。
ソコに現れたのは多数の選択項目。
うへー結構沢山ありますね。
何処から触ったら良いものか……と首を傾げておりますと。
イ=ヤッハーさんから次の指示が提示されました。
「そこに表示されてる奴で、一番上にある『プレイヤーからの接触に関する設定』ってのをタップするんだ」
「ふむ、これですね! うわぁ……何だか更に大量の項目が現れましたよ!?」
「おうよ、ソコからはアレだ、フワモちゃんが良い感じだと思う数値を設定していって、調整していくってな感じだな!」
「良い感じ……こう、自然ーな感じで曖昧な具合の、至極当たり障りの無い風味でー、そこはかとなーくアレな範囲を加味しつつ、それとなーく微妙で適量な平均値の調整をしたいのですが、それっぽいオススメ設定値とか、はあるんでしょうか……?」
上から下までズラリと並んだ数値を入力する設定フォームを眺めて、軽い眩暈を興しそうになった私は、色々とお三方に丸投げ……ご相談する形でご意見を求めてみましたが。
「あー、俺はプレイヤー相手は接触上等かかってこいよ! の精神でやってるから、その辺りの数値はほぼ弄ってないんだよなぁ……ザコーダはどうよ?」
「俺は召喚モンスターとの兼ね合いがあるからソコソコ弄ってるが……それでも初期設定と殆ど変化なしって感じだなぁ……モヒは?」
「俺もそんな感じだなぁ……役にたたねぇな俺達!」
お三方が笑いながらバシバシお互いの肩や背中を叩きあっている光景を眺めながら、つまり自力で丁度良い感じの設定ラインを見極める必要性がある、という事実が眼前に提示されたわけで。
果たしてどうなるのか。
少々不安ですが……いやむしろ不安しかない。
いやいや、今ならお三方からのご意見を参考に設定を進められますし、一人公園のベンチで悶々と頭とコーメェを抱えつつ、奇声や唸り声を上げながらメニュー板をポチポチする様な状況よりは、確実に絶対に100倍程度はマシですよね! うんやる気出てきた!
と言うことで、簡単なご意見を伺いつつも自分の意志と決意を持ってして、様々な項目に関する数値その他を調整する流れになりました。
えーっとうーむ。
こうやって、数値変更のスライドバーを指で動かすだけで変更できる訳ですが。
……どれがどうなって影響を及ぼす形になるのかが、イマイチ判りません。
お三方に見える感じでメニュー表示板を移動させ、その場で弄ってはみたのですが……中々難しいですねぇこれ。あれです、関係ないですがポーション作ってる方が物凄い気楽で良いです。
一応イ=ヤッハーさんの勧めに従う形で、今の所は取り合えずの仮設定としてですが、全体的に数値高めで反応が強めの設定? という感じに決定する流れとなりました。
これで何がどう変化しているのか、正直な所実感が全くないので判りませんけれど。
最後に『設定を保存する』のボタンを押してメニューを閉じます。
これで……色々と大丈夫なのかな? 多分そうだよね。
少々不安だったのでお三方に顔を向けて、コレで大丈夫でしょうかね? という気持を籠めた視線を投げかけてみたのですが。
顔を見合わせて何か話し合っていたお三方でしたが……何やらザコーダさんが他のお二人に視線を向けた後、何かを決意した様に一度頷きまして、急にその右手を伸ばして私の肩をガシっと掴みました。
「ふぇ!?」
「フワモちゃん、ちょっとだけ動かずにこのまま待っててな」
「は、はい判りました!」
この肩を掴む行為には、きっと私には窺い知れない様な何か深ーい意味があるのだろう! と気が付き、特に痛くも痒くも無く普通ーに私の左肩を掴んで離さない手を眺めて、じーっと座った状態で待って……大体5秒後程経過したでしょうか。
唐突にバチン! と私の耳元で何かが弾ける様な大きい音が響き渡り、ザコーダさんの右手が何か勢いのある物体にぶつかって吹き飛ばされた様に、上へと跳ね上がります。
わっわっわっ!? 何々なんですか!?
「おーおー! きたきた! 始めて喰らったけど結構な衝撃だな!」
「ザコーダ初めてのセクハラか……そんな初体験貰っても嬉しくねぇな?」
「おま、うるせぇよモヒ!」
「はぇ? 今のは……一体?」
ブンブンと跳ね飛ばされた右手を振り子の様に振りつつ、笑いながら左手でモヒカーンさんを小突いていたザコーダさんが、私の方に向き直って今起こった現象について説明して下さいました。
「いまのが『ハラスメント防衛反応』ってやつだな」
「ハラスメント防衛反応……ですか」
「まぁあれだ、さっき色々と設定した数値を元して、例えばウザい輩から嫌がらせを受けた際に、自動で防衛反撃してくれるシステム防御機構みたいなモンだ」
「システム防御……特に私が意識しないでも良い便利機能みたいな感じですか?」
「そうそう、そんな感じで!」
余りにも頻繁に誤作動するようなら数値を調整すると良い、という感じで皆様からの御講義が終了いたしました。
それにしても私の知らないこんな機能、何時の間に実装されたんですか……何ていう事を、先程つかまれた左肩を確認しつつ呟いておりますと、そんな私に対してイ=ヤッハーさんから予想だにしていなかった一言が。
「ハラスメント防衛反応自体は、このVRMMOが開始した直後から、ちゃーんと実装されてたみたいだぜ? 初期の頃は数値の調整が出来なかったみたいで、それについて苦情が来たから調整出来るようにアップデートの際に手が加えられたらしい」
「ほーそうなんですかー! あまり他のプレイヤーさんと接触する機会がなかったので、そういう裏事情とか全然判りませんでしたよー!」
「うんまぁ、そりゃハラスメント事案なんて発生しない事は、正直良いことだとは思うよ、うん」
何やらイ=ヤッハーさんが苦笑いしつつ『ちょっと肩をポンポンって感じで叩く位の接触なら、全然大丈夫なんだけどな』何て事を仰っておられます。
なるほど、だから先程のプレイヤーさんもイ=ヤッハーさん達も、私を呼ぶ際に肩ポンポンしてたんですね!
あれ、でも先程の方々に尻尾や耳を触られた時や、前に生産用スペース利用時に並んでいた際に、例のウルフェンさんに尻尾を触られた時は何も起こらなかった様な?
不思議に思いつつも、その辺はまた何か事情があったりするのかも!? と察した私は、正面で何か納得が行った様に頷いていたイ=ヤッハーさんに質問してみました所。
「聞いた話によると、獣人についてる耳や尻尾ってのは現実には無い後付け部位なんで、身体に直接触られる場合と比べて初期設定が大分緩いらしい」
「あぁなるほど! そういう理由があったんですか!」
「そもそも、触られてもその感覚が殆ど無い部位って話だし、逆に耳と尻尾を意識的に操作するってのも凄く難しいらしくてなぁ……そんな理由もあって、耳と尻尾のハラスメント感度を高く設定しちゃうと人の多い所で不意に発動し過ぎてヤバイ! ってのがあった訳よ」
「ほほー興味深いです!」
つまり、街中を歩くだけで周囲の人達を右へ左へ強烈に弾き飛ばす存在になってしまう訳ですね! なんと言う歩く災害指定! 目立ちすぎるという意味合いでもヤバイ!
イ=ヤッハーさん曰く、先程のハラスメント設定調整で、狐耳と尻尾の判定も誤作動しない程度で強めに設定したという事でしたので、取り合えず安心? との事でした。
周囲との折り合いをつけつつ、良い具合に調整するって難しいね。
空気の読める人間に私はなりたい。頑張ろう。
設定云々で思い出しましたが、写真の撮影についての設定はどうやるのか? と流れで聞いてみましたら、ザコーダさんから的確な返答を頂く事に成功いたしました。
「それもさっきの『ハラスメント設定』のタブから調節できるから、弄ってみると良いよ。友好魔物に関しての設定も調整出来るから、コーメェの写真撮影時に関しての調節もやっておくと良いぜ」
「判りました、ありがとうございます!」
「俺その辺の設定は、召喚魔法で呼び出した奴らとの記念撮影! なんて場合のために色々と弄ったからな!」
そうザコーダさんは仰ると、ニヤリと笑顔を浮かべてビシっと親指を立てた右手を突き出しました。思わず私も親指をビシっとたててご返答。
なるほどねー、そういう部分も弄れるんだねぇ
……あれです、運営さんも頑張っていらっしゃる様ですね。
と言うことで、ザコーダさんに指示を頂きつつ、写真撮影に関しての設定も変更する運びとなりました。こちらも項目が沢山ありましたが、ザコーダさんのオススメ設定をある程度取り入れつつ、私が女の子である、という点を踏まえた調整を施す? という事になりましたよ。設定調整は奥深いですね。
ザコーダさんの勧めに従う形で、まずコーメェに関しての撮影事項ですが……ご主人様である私からの撮影以外は完全モザイク全面禁止? という感じの設定となりました。
強烈な画像遮断補正でレアな情報の漏洩を防ぐ? とか何とか。
何かが撮影されているという事は判る、程度の隠蔽具合になるとか?
逆に胡散臭くなるんじゃないかな、とも思うのですが色々と謎です。
そして、私本人のアバターに関しての撮影設定はといいますと……ザコーダさんやイ=ヤッハーさん、モヒカーンさんと色々会話した結果、フレンドリストに登録された方だけには許可する! という感じで行く事になりました。
それ以外の場合はモザイク画質になる様にしたとか。
逆に怪しい気もしますがそこはソレで。
でもこの設定の人が多いという話も聞きました。皆さんガードが固いですね。
次点でフレンドとパーティメンバーのみ、という形が多いとか? なるほど。
あとこの撮影の設定は、運営さんに関連する方々に対しては効果が無い、という注意書きが赤い字で記載されております。GMさんとかそれに類するシステム側の方々に対してですね。
まぁ当然といえば当然なのでしょうけども。
ああ早く写真機が欲しいな。
景色とかラティアちゃんとかコーメェとか撮影したい。
自撮りはする予定が無いですので大丈夫です。ははは。
こうして、お三方に色々と知らないゲーム知識を教えていただく事に成功した私。
そうなると次は……そうアレです、イベントについて!
急に心臓の辺りがドキドキしてきた様な気分になってきましたが、VR心臓も緊張で拍動が早くなるんですかね。心持ちの問題なのかな。
いやそんな事はどうでもいいのだ。
今は皆さんのご予定をお伺いする事が先決!
聞くだけなら無料!
今なら3人同時にご予定を聞けて更にお得! 倍率ドン!
『じゃあ、フワモちゃんは何か用事があるんだっけな! そろそろ移動するかい?』何て事をイ=ヤッハーさんが仰ったタイミングで、グっと息を吸ってコブシに力を籠めた私は、イベント参加についての話題を切り出しました!
「あの! 皆さんは週末のイベントの時ってどうなさってますか!?」
「うん? そりゃ勿論、俺達ぁクランメンバーとパーティ組んで参加さぁ!」
「おうよ! 俺の新型杖が火を噴くぜぇ! イヤッハァー!」
「だな! そうそう、ゲンジも参加するんだぜ!」
「そ、そうですかぁ……」
バシリと手の平にコブシを打ち付けて気合十分のモヒカーンさんと、背中に携えた取っ手付きの魔法用杖を構えてポーズを取るイ=ヤッハーさん。
そして、背後の露店で今も何かを調理しているゲンジさんの方に、肩越しに右手親指をグイグイっと差し向けて、ニヤっと笑っているザコーダさんがお二人に追随して返答して下さいます。
そっかぁーもうパーティメンバー決定済みなんですね……残念です。
そうだよねぇ……きっとお知り合いの多い皆さんですもの、既にメンバーが決定していても驚く事ではないですよねそうですよね。
仕方ないうん、ならばなるべく一人で頑張らねば! と何時も通りコーメェをモフモフしつつ決意も新たにしておりますと、そんな私の様子を見てイ=ヤッハーさん首を傾げつつ私に声を掛けてきました。
「それにしたって……なんだって急にイベントの事を?」
「いえその……良かったら一緒に参加出来ないかなーとか、そのー思いましてですね、えー」
「な、なんだってぇ!?」
「ならば仕方ない……あれだ、ヤスの奴にでも『病欠』をとってもらうか」
「可哀そうになぁ……イベント『病欠』になっちまうなんてな……」
「……な、何やら不穏な空気を感じる!? あの駄目なら駄目でその!?」
何やら顔を見合わせて円陣を組み、悪役っぽい笑みを浮かべつつ怪しげな企みを開始しそうな雰囲気を醸し出し始めたお三方。
あのー!? 無茶して捻じ込んで下さらなくても大丈夫ですからぁ!?
その裏を感じる『病欠』って何ですかぁ!?
私の返答を聞いたお三方、顔を上げると笑顔で『冗談冗談!』と仰っておりますが、本当なのでしょうか。いやきっと、私の為に気を使って下さったという事でしょう! きっとそう! うんそう!
無理矢理納得させるように頷いた私に、申し訳無さそうな顔をしたイ=ヤッハーさんがポンポンと私の肩を叩きます。
「一緒してやれないけれど、応援はしてるからさ!」
「そうそう! お互い頑張ろうぜ!」
「自分で使わないような素材が手に入ったら交換しような!」
「は、はい! 頑張ります! 皆さんも頑張ってください!」
視線を合わせて頷きあう4人。よし、お互い頑張ってイベントへ邁進しましょう!
その後、ポーションを作りに公園へと足を運ぶため移動を開始した私を、立ち上がって手を振り見送って下さるお三方。私も途中で一度振り返って、右手を軽く左右に動かす感じで手を振り返します。
よーし、ちょっと時間が掛かっちゃったけど、まだラティアちゃん居るかなー?
※ フワモさんを見送った世紀末三人組の会話 ※
ザコーダ「どうにかして、一緒に参加出来れば良かったんだがなー」
イ=ヤッハー「だなぁ……でも俺達、戦闘イベントの方に参加だしなぁ」
モヒカーン「フワモちゃんは一人で参加だっていう話だし、アトラクションイベントの方だろうから、付き合ってやれないのは残念だな……」
イ=ヤッハー「まぁあっちのイベントも色々と景品が出るって言う話だし、きっと悪くはないだろ!」
ザコーダ「俺達がアトラクションの方にいったら、それはそれで見た目的に面白そうではあったがな!」
モヒカーン「はっは、想像すると笑えるな!」




