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226 虫 が 多いよ へるぷみー!

意外と頑丈で柔軟性が高く有用な素材。

見た目は別として。

空中にいる相手に強いコーメェ。

 大分不安が募る状況ですが、巨大な虫に襲われて町へと不本意の帰還を果たすのであるならば、せめてこの場所へ来た目的である採取物の入手だけでも終わらせなければ、此処に到るまでに消費した全てが無駄になってしまいます。


 そもそもお父さんが帰宅してくるまでに作業を終了させねば、違う意味で私の冒険は終わってしまうと言う訳ですし。そう、時間を有効活用するのだ。


 幸か不幸か先程水没しかけた川のお陰で、植物が生い茂っていない川原周辺ならば視界も通りますし、魔物からの先制攻撃を許してしまう可能性は低いのでは? と思われます。

 まぁあれです、私が持っている拙い地形把握能力による判断なので、その辺は余り信用してはいけないとは思います。


 むしろ水中から突然魔物に襲撃を受けるかもしれない、という別の危険性を孕んでいる感じでの水辺行動ですのでね。


 見回した感じでは小川の水は透明度が高く澄んでいますし。

 水中で何か不穏に動くものが居たら、すぐ判るとは思いますけれど。


 そもそも、ちょっと湖に生息する小魚の口で突かれただけで減少する私のライフポイントが相手では、どんな魔物や生き物が突撃してきても、そりゃもう悲しむ間も無く確実にお陀仏しそうですけどね?

 自分で言ってて悲しくなってきたよ。どうなってるの。


 ええい! やられてしまった時はその時だ、と半ば諦めの極地に到り始めた私は、ある程度の警戒心は持ちつつも、命大事にと言う行動指針を捨てて採取の方を主目的として行動する事にしました。


 しゃがみ込んで蟹歩きしながら薬草とお花を毟っている私と一緒に、足元で周囲を見回しつつシャカシャカと移動してくれているコーメェの頼もしさに心を支えられつつ、本格的に材料集めを開始して1分程。


 私の切なる望みも虚しく、先程と同じ様な感じで左正面の茂みがガサガサ! と音を立て始めました。

 これはヤツがくるのか……それとも新手の相手か!


 このまま茂みの近くで戦闘を開始する事になると、身動きを取り辛いと思いますので、蟹歩きモードを解除して武器を抜きつつ素早く立ち上がると、コーメェと一緒に地面の開けた場所まで急いで移動します。


 そして待つ事数秒。現れたのは……なんだろう?

 堅そうな甲殻に覆われた、何と表現したら良いのか……そりゃ物凄くTHE 虫! って感じのヤツです。


 日の光に照らされてキラリと黒光りしてる感じの甲殻です。

 うんうん。こういう見た目の相手ならバッタよりは忌避感が薄いですね。

 ちょっとだけですが安堵しましたよ。


 でも確実に魔物っぽい感じの相手ですので、警戒を解かずにコーメェと並んでじーっと相手の出方を窺っていたのですが。


 10秒程にらみ合った後、相手の虫は方向転換して何処かに去っていってしまいました。


 ……あれ? もしかして魔物じゃなかったの?

 それとも、通常のラビ君みたいに、此方から手を出さないと反撃してこないタイプなのかな。

 ガサガサと茂みに戻っていく大きい甲殻虫の背中を見送って、数十秒程。


 うん、普通ーに此方を気にせず離れていったみたい。


 まったく驚かせてくれちゃってもぅ……出来れば私たちが採取行動している付近で歩き回らないで、遠くで活動してくれると嬉しいんだけども。


 虫言語なんて全然判りませんので、そのへんの意思疎通は無理ですが。

 コーメェと顔を見合わせて頷きあい、再度素材の採取を再開するのでした。


 それから数分おきに茂みから音が発生して、そのたびに採取を中断させられるという流れが続きまして。そして判った事は、やっぱりこの辺りは昆虫っぽい魔物が生息していると言う事。


 積極的に攻撃してくる相手以外は、此方からは基本的に手出ししないで穏便に事を運べるように考慮する事にしました。無駄に戦闘回数を嵩ませ、時間を費やして倒すほどの理由が無いですし。


 身を守る為の戦闘行為であれば吝かでは有りませんが、そもそも此処にきた目的は昆虫素材を集めるためではありませんのでね。


 ちなみに攻撃的な虫の魔物は、一番最初に戦闘を行なった巨大バッタ以外は出会う事がありませんでしたよ。初っ端が一番危険な相手だったとは。どうなのよそこの所。


 巨大バッタ(にくいやつ)はあれからも結構な頻度で出現して、私の平穏を待ち望む心をかき乱していった訳ですが。

 毎度毎度、飛び掛り攻撃を仕掛けてきたタイミングでコーメェが弾き飛ばしてくれたので、精神的な疲弊を省いたら、という条件付ではありますが、全く被害を被る事も無く素材だけを入手する事が出来ました。


 そして……全く嬉しくないのですが、ピクピクっているバッタ足も何故か数本入手しましたよ。


 と言うかね? なんでモゲルのコレ?

 虫魔物だからなの? 【黄昏の大神】様(あのひと)の嫌がらせなの?


 この世界の神様(開発の人)だからといって悪乗りのし過ぎでは無いのか、とコーメェに意見を求めつつ一人憤慨しておりましたが。

 そういえば危険な虫魔物といって思い出す相手と言えば、この付近にあの毛がフッサァ……している巨大な蜘蛛が居なくて良かった! と今更ながら思う訳で。


 まぁ運良く出会っていない、もしくは今時分はこの付近に生息していなかっただけで、ある程度場所を移動すると何処かでバッタリ! なんて感じで出会ったりするかもしれません。ええ正直ご対面どころか遠くから見るのもノーサンキューですので、積極的に出会いを求めたりはしませんよ。


 えーと、それでバッタ以外に出会った虫の魔物としては、カサカサとその辺を移動しまくって何か餌でも探している感じの例の黒い甲殻虫と、全長がコーメェの直径より大きい蝶を見かけました。


 どういった強さを持った相手なのかは、一切此方からは手出ししていないので全然判りませんけれど。

 何かを作るために虫達の素材が必要になったら、その時は此処に来て戦闘するかもしれません。


 多分あの甲殻を加工したら鎧とかになるのかもしれないなぁ……なんて事を思いつつ、ちょっと離れた所に出没した、何度目かの遭遇になる甲殻虫が去っていく背中を立ち上がって見送ります。


 作業を開始してから、ずーっとバッタの迎撃としゃがみ込み蟹歩き式採取を交互に行っていた為か、何時の間にかスタミナゲージが危険な水域に突入しておりまして。

 ……この状態で攻撃的な魔物と遭遇すると危険だと思いまして、今もまさに隣で飽くなき採取魂を燃やしつつ周囲を見回して、使える素材を探しているコーメェに一声かけてから抱きかかえ、移動することにします。


 落ち着いてスタミナを回復する為にしっかりとした休憩を挟むべく、川原に転がっている丁度良いサイズの岩に近寄って、どっこいしょー! と掛け声を上げてその上にお尻を落ち着ける事にします。

 ふむ、中々お尻の据わりが良いねこの岩。


 いやぁーあれだねーうんー疲れたねー。


 正直な所、VRな仮想現実身体を酷使して作業いただけですので、首肩腰が疲労でガチガチに凝り固まっているとか、そういうのは全然無いんですけどもね。

 ほら、精神的にですよ、うん。虫の相手とかもしましたし。


 そんな感じで仮初めの肉体を使って活動していた私と違って、コーメェの方はやっぱりある程度疲れていた様子で。


 私と一緒に休憩を開始した直後に、私の太ももの上でゴロリとお腹を上に向ける体制に移行して、両目を閉じてつぶれた大福の様な感じで力を抜き、ふんわりマッタリとし始めました。


 うむうむ、しっかり休んでくれたまえコーメェ君。


 モフモフとコーメェのお腹を揉んで癒された私は、気分で軽く腕や肩のストレッチをしたりしつつ、アイテムボックスから水筒を取り出して水分補給をすることにします。


 食事の方は……どうしようかな?

 ゲンジさんに調理してもらった大学フワ芋がまだ残ってるけれど。


 絶賛お芋咀嚼中に、お構い無しに虫魔物が来て戦いが開始されそうな場所だし、落ち着いて食事出来そうな時までは胃袋への物資補給は止めておこうかな。


 とはいっても食べ物の事を考えてしまって少々口寂しくなり、少し考えてカップに注がれた水を飲み干した私は、水筒を収納した流れでアイテムボックスに残っていたポコ豆の袋を取り出し、一粒づつ自分とコーメェの口にポイポイと放り込み、一緒に咀嚼しますぽりぽり美味しい。


 天気の良い日に水の綺麗な川原で腰を下ろして、コーメェと一緒にノンビリお菓子を摘んでいる、という何とも長閑な雰囲気に。


 まぁ一歩森林に踏み込めば、恐らく大きい虫が沢山その辺を闊歩してますが。

 無闇に想像したくない光景ですよ。ムシムシ天国。


 そういえば、虫魔物で思い出しましたけど……ゲイルさんのお店の陳列台で販売していた虫除けの魔道具を使用すれば、此方から手を出さなければ襲ってこないタイプの魔物なら、穏便な対応で追い払ったり出来るのかも? なんて今更ながら思ったりもしまして。


 アルさんから説明を受けたサイズ的に、あの虫達はギリギリっぽくて少々怪しい所もありますが、例の吸血蟲とやらで無ければ大丈夫かな。


 そうだね、ある程度自由に出来るお金を入手できたら、あの虫除け魔道具の購入をちょっと検討してみようかな。でも恐らくお金があったら写真機を入手するほうを優先しちゃうんだろうなー、なんて事が簡単に予想出来てしまう訳ですが。


 欲望に忠実な女フワモ。寄って来い可愛い子ちゃん!


 未だ見ぬ、数々のフワモコ生命体たちと触れ合ったり撮影している光景を夢想してニヤニヤしつつ、メニュー画面に表示されている自分のスタミナゲージが、徐々に回復して右に伸びていく光景を眺めます。


 それと同時に、太ももの上で物凄くリラックスした状態でだらけている、コーメェのスタミナゲージも確認してみますと……うむ、しっかりと黄色いゲージがゆるゆる増加しているのが判ります。

 いやー、やっぱりこうやってパッと見て確認出来るのは便利だね。


 あれだねぇ……きっとまだまだ、私の知らない数々の便利機能がこのメニューの中に隠されているのかもしれませんね。まぁそれを発見したとして、私がその機能を十全に活用できるかは別としてですけれど。


 ええ自分の事は良く判っていますともハハハ。


 と言う感じで、不意に思いついた不必要な自問自答で無駄に悲しみを背負い、心なしか周囲の空気まで冷たく感じるなぁ……なんて感じでヨヨヨと呟き嘆いておりますと。


 唐突なタイミングで、太ももの上でひっくり返っていたコーメェがミョン! と跳ね起きてスタッ! と私の揃えられた太ももの上に着地し、何やら私の事を見上げてきます。


 えっなになに!? 何かヤバい魔物でも迫ってきてる!?


 びっくりした私は座った状態で即座に武器を握り、目を凝らして周囲を見回して警戒しますが……たっぷり10秒程待っても何も起こりません。あっれぇー!?


 一体なんだったんだろう? と首を傾げて、騒動元であるコーメェにどうしたのかと声をかけてみますと。


 私の太ももの上を数歩移動したコーメェ。

 何やら私の腰の辺りを、その前足でポムポムしております。


 えーっとそれは……暖房具……あっ!


 コーメェの指示を元に急いで暖房具を腰から取り外し、顔の前に持ってきます。

 ……あああーやってしまった。魔石残量0! 燃料が空っぽに!


 パワー切れを起こした暖房具は、悲しいかなその稼働をストップさせております。

 ……って事は、先程感じた周囲の気温の変化は気のせいじゃなかったと言う事か!


 あれだね、快適な暖かさだったのが普通に戻ったから、違いを感じ取って飛び起きたんだねコーメェは。


 採取中に起こった巨大バッタとの初遭遇で、他の事柄に意識が持っていかれすぎて、今の今まで暖房具を急速稼動させている事すら忘却の地平の彼方へすっ飛ばしていましたよ!


 まぁ忘れっぽいのは何時もの事だけどねハッハッハ! と再度無駄に自問自答で自傷行為を行っていた私は、すっかり冷えてしまった暖房具の摘みを強く捻り、一旦通常稼働の場所まで動かしてから左端の稼働オフの部分まで戻します。


 あーっと、確か魔石はゲイルさんに渡してないし残ってたよね。

 ……あったあった、沢山入れておこう、うん良し。


 こうやって無駄遣いしてたら、あっという間に手持ちの魔石が無くなっちゃいそう。

 冒険イベントの会場で同じ事をしちゃったら補充が大変そうだし、ちゃんと気をつけて行動しないと、本当にあっという間にイベント終了帰還からの、遊園地アトラクションで涙目キャッキャウフフになってしまう。


 水濡れはすっかり乾いて元通りになっていますので、暖かい状態でマッタリしていたコーメェには悪いけれども、暖房具の稼働は見合わせるとしましょうね。

 その後、自分とコーメェのスタミナ全回復を確認した私は、素材がパンパンになるまで採取活動をこなすのでありました。

 あと、現実のバッタには悪いけど巨大バッタ(にくいやつ)の襲撃が多すぎて、バッタ苦手症候群が発症しそうですよ! おのれーこっちくんな!

ちょっと短めです。また寝過ごしましたハハハ……(汗

そして遂に合計100万文字を突破しましたよ……あれですね、喜んで良いものか考え物ですが(何

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