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225 例の飛行 と サイズ の 恐怖

ファンタジーといえば、こういう魔物も定番ですよね。

好き嫌い激しそう。

 突然上空から降り立った見覚えのある存在により、非常に柔らかい災厄に見舞われた私でしたが、被害としては豆を求める激しい動作により少々揉みくちゃにされている程度で、まぁ大事には到らず命に別状は無さそうなので良しとしましょう。


 コーメェも一緒に被害にあっていますが、自慢の毛で防御できている様ですので安心でしょうか。


 それにしても……一体何処からどうやって、私が座っているこの場所を発見して鳥さん達は出現したのでしょうかね。唐突に頭上から正面の山道へ降り立ってきたので驚きました。


 やっぱり、空中を速い速度で飛翔しながら、地形や外敵の存在を確認しなければならない生き物ですし、そういった理由で視力も物凄く発達していたりするのでしょうか。


 鳥の視界と言って良く聞く話ですと、鳥目が何だという感じの話を耳にするのですけれども。

 あれは暗い所で視界が通らないとかでしたっけ? 確かそうですよね。


 そんな事を考えつつ、現在進行形で羽毛系災害の被害にあっている私でしたが、少々動きを阻害されつつも目的のアイテムであるポコ豆の袋を、アイテムボックスから無事取り出す事に成功しました。


 途端に鳥さん達の視線が袋へと集中します。

 ようやく鳥の津波から解放された私とコーメェは、息を吐いて深呼吸した後、先程腰を下ろしていた岩の上へと再度お尻を落ち着けます。


 コーメェの全身に付着した小さい羽毛をポンポンと左手で払い落としつつ、中身が詰まった袋を秘宝の様に頭上へと掲げ左右に動かしてみますと、これまた前回と同じ感じで袋の動きにつられて首を左右へ傾け始める鳥さん達。


 ふふふふ、いやぁ良かった良かった!

 今回の様な鳥的な被害及び非常事態時に即座に対応できる様に、先日メディカさんのお店でポコ豆を注文した際に、ちゃーんと二袋購入してあるのですよ!


  一袋目の中身はリーナさんの所にお邪魔した際に大分消費してしまいましたけれど、もう一袋分は完全体として残留しているのです!


 コレを彼らに対しての捧げ物としてお納めしましょう。

 一応は、先日コーメェと運命の出会いと再会を果たした、ファーム跡地に送り届けてもらった際のお礼も兼用と言うことでココは一つ。


 とは言っても、今現在私の手に所持されているポコ豆の袋をジーッと眺めている彼らが、先日私の事を空中でお手玉して遠方まで運んでくれた鳥さん達と同じ相手なのか、といわれると判断が付かないのですけれどね?


 だって全員、見た目が物凄くソックリですし。

 正直言いますと私の鑑定眼ではボス鳥さんとその他諸々の方々、という二つの種類でしか判別できません。


 流石に鳥の表情を読め、といわれても断念せざるを得ない訳で。

 ポコ豆は確実に差し上げますので、この辺は是非ともご勘弁願いたい所。


 もしかして、リーナさんだったら見分けが付くのかな。


 私には到底無理だなぁ……なんて事を改めて思いつつ、羽毛を落とし終わったコーメェを太ももの上へと置いて、両手でガサガサと新品のポコ豆入り紙袋を開封し、中に手を突っ込んで前回と同じ様に中身をゴソリと掴むと足元にパラパラとばら撒きます。


 途端に前回同様、再度私の周囲に殺到しながら我先にとポコ豆へ群がる鳥の大群!

 だから君達、ちょっと落ち着いてお食事したらどうかね!?

 ぬわぁー!? また羽毛の津波がぁ!


 いやまぁ苦しかったり痛かったりはしないけど、今回も良い感じに羽毛モコモコだけどもちょっと!


 だぁー! だから! 袋から直食いしようとしない!


 余り強引に動くと攻撃と判定されそうで強気に出れない私は、仕方なく周囲に鳥さん達を群がらせつつも、第二投目を投射するべく右手にポコ豆を握って補充し、なるべく離れた所へ投げます。


 まぁ周囲の鳥さんの動きに考慮して行動し、若干所か全くもって腕の振りが微妙なので、殆ど正面の足元と言っても過言では無い程度の距離しか飛ばせなかった訳ですが。


 そんなこんなで、半ば荒波に揉まれる事に対しての抵抗を諦めた私は、フワフワと空中を舞う羽毛が綺麗だなー何て呟きつつ、袋の中身を順次周囲の鳥へ投射する物言わぬ機械として動く事を決めるのでありました。


 ソウ ワタシハ ゼンジドウ エサヤリキナノダ。


 その後、何処からか追加で鳥さんが降りて来たりもしましたが、一袋分まるまる残っていたポコ豆の偉大なるその力で被害回避に成功しました。


 あれ、そういえば今日はボス鳥さんが降臨しませんね?

 何処かにお出掛けしてたり。何か仕事でお忙しかったりするのかな。


 周囲に居る鳥さん達に聞いてみようにも、深い絆で結ばれているコーメェとの会話と違って、彼らと私とではそもそも意思疎通の方法が違うでしょうし、ましてや当然の如く言葉も通じませんので無理ですね。


 まぁ私がボス鳥さんの動向を気にしても、仕方がない事でしょう。


 食べ尽くされて空っぽになったポコ豆が入っていた袋を、ひっくり返して鳥さん達の正面で振って見せておきます。


 ほら、もう無いですからね!

 欲しいって言っても無理ですよ!


 食べかけのが一応残ってるけど、あれは私とコーメェのオヤツですから駄目です!


 コーメェを頭の上に乗せた私が岩から腰を上げ、バサバサと袋を逆にして振っている様子を、周囲の鳥さん達が首をクリクリと動かしつつ眺めています。


 ううむ、ちゃんと理解してくれている感じでしょうか。


 出会った直後に比べると、大分落ち着いた様子を見せている鳥さん達に、一応ですがお別れの挨拶を投げかけて、ふもとの森へと移動を再開する事にします。


 そんな私とコーメェの後姿を眺めつつ、ヒョロヒョロと鳴き声を上げながら見送ってくれている感じの鳥さん達……あっそうだ! 鳥さん達で思いついた!


 ここから徒歩で下山していくと、例のゴーレム大量地帯を抜けないといけないから危ないよね。

 というかむしろ途中ですれ違う可能性のある、他のプレイヤーさん達の方がある意味で危険度が高いというか。


 でも例の移動方法……そう、あの傍から見たら確実に胡散臭いあの空中移動を行使すれば、他のプレイヤーさん達とすれ違う事も無く安全安心に、麓に広がる自然豊かな森へと着陸する事が可能なのではないかと思いついた訳です。


 先日と違って、今回はたっぷりと前払い気味にポコ豆を贅沢かつ大胆に振舞っておりますし、きっと快く私のお願いを聞いてくれるのではないかと!

 一度使用した移動方法ですし、きっと今回も何とか活用できるはず!


 それでは早速と、例のボス鳥さんの尾羽をアイテムボックスから取り出し、周囲を見回して発見した崖の近くにあった私の腰ほどの高さがある出っ張りへと登りまして。


 ピョンとジャンプしつつ、尾羽の風を背中に当てて例の空中移動を再現してみせます。


 元の位置へと戻った私は、前回と同様に山頂で鳥さん達相手に行なった飛ぶモーションや羽ばたくジェスチャー等を交えつつ、自分の顔と麓に広がっている森の中央部分を交互に指差して見せます。


 んーちょっと判り辛かったかな? とも思ったのですが、何やら20羽近い鳥さんの団体から、数羽が素早く手馴れた感じで私の背後に来て羽ばたき、フワリと風を当てて数メートル移動させてくれました。


 あっ! もしかして、君たち先日お手伝いしてくれた子達かな?

 後ろを振り向いて、並んでこちらを見詰めてきている鳥さん数羽に対して、ビシリと親指を立ててコブシを突き出し、ニッコリ笑顔で『いいね!』のサインを送ります。


 ソコからはあっという間に意思伝達が進み。


 コーメェに今から空中をフワフワ移動するよ、という情報をしっかりと伝え、念の為尾羽を右手に掴んだ私は両腕でぎゅっとコーメェを抱きしめ。


 首を動かし後ろを振り向いて、準備万端の状態で此方を眺めている鳥さん達御一行に対して一度力強く頷きます。よろしく頼むよ君たち!

 高い所からの空中移動に対して少々ドキドキしつつ、崖の縁に立った私の背中の方から……ブワリと強い風が吹き付けられます。


 いくぞーとりゃー! あいきゃんふらーいあげいんー!


 一瞬の浮遊感と共に空中へと飛び出す私の身体。前に空中遊泳した時と同じ様に断続的に強い風が私の背中を押します。


 そうそう、これこれ!

 このフワンフワンと、定期的にお尻と尻尾の辺りを風でプッシュされる移動方法!


 歩いている際には大分遠い場所だなぁ、なんて思っていた山岳地帯麓に広がる森林が、空中移動を使う事によってあっという間に眼下に近づいて来ます。

 うひゃー! やっぱり空を飛んで移動するって物凄い便利だね!


 飛ぶといえば、この世界には飛行機とか飛行船みたいな空中移動手段って存在するのかな? 今までそれっぽいものを見た事が無いけど……あれかなぁ、都会って言うか王都だっけ、そういった人の多い場所にはあったりするのかも?


 飛行機が存在したとしても、ガソリンとか燃料っぽいもので稼働するのじゃなくて、きっと魔石燃料で動くんだろうなぁ、なんて事を思い描いていると……徐々に近づいてくる森の木々を視界に捕らえた辺りで、ふと気が付いた事が一つ。


 しまった、良い感じに着地出来そうな場所が見当たらないぞ!?


 大事な事を考えていなかった、と今更ながらに気が付きましたが後の祭りです。


 このままでは葉っぱや枝に激突、とまでは言いませんが衝突事故、もしくは接触事故を起こして葉っぱ塗れのボロボロ状態になってしまうのでは!?


 どうにか打開策を講じる事は出来ないのか、と眼下に迫ってきている森を見回しますと、丁度視線の先に細い川が流れているのを発見しました。あっあそこだ! 木々に突っ込んでボロボロになるよりは我慢して着水して水濡れになった方がきっとマシだ!


 私が着地場所指定の為に川の方を指差すと、吹き付けてくる風の向きが変更されます。


 いやぁ鳥さん達は有能だね!

 ……あああー近づいてきたー川の水が迫ってきたぁぁぁごぼぶがぼぶく!


 たいして水深のある川ではなかったのですが、着水したのが前のめりだった為に顔面を水面に突っ込む形になってしまいました。ついでに抱きしめていたコーメェも見事に水中に埋没しました。


 ふんぐぐぐ、これ現実だったら絶対に鼻の穴に水が入ってアイタタタ! ってなってるよ!


 まず手に持っていたコーメェを水上へ持ち上げ、視界の良く通る澄みわたった水から自分の顔を引っこ抜き、その拍子に尻餅をつく感じでバシャンと水中に座り込んだ私は、ココまで送ってくれた鳥さん達を見送る為に上を見上げます。


 ビシャビシャになった私を笑う感じでヒョロヒョロと鳴き声を上げ、綺麗に編隊を組んで頭上をクルリと円形に一度周回して、そのまま山の方へと戻っていく鳥さん達。


 うう、何とも無様な着地をお見せしてしまいましたよ。


 もっと華麗に着地したいな……等と分不相応な願いを思い描きつつ、小川の流れの中央で立ち竦んで空を見上げていた私でしたが、取り合えずこのまま水に浸かっている訳にもいきませんので、ゴロゴロと沢山の石が転がっている川原へと移動することにします。


 一応魔物が居ないか周囲を確認しながら、水中から足を引っこ抜いた私は、私と同じ様に水に浸かったにもかかわらず、謎の撥水性能を発揮して全く濡れた様子を見せないコーメェを少々羨ましく思いつつも、まずはどの程度の濡れ具合なのか確認する為にメニューを開きます。


 あー、例の水滴アイコンの表示は70%ですね。大分濡れ濡れです。


 ただ濡れただけですから大事には到っていませんが、このまま魔物が出てくる可能性のあるこの森の中で採取を開始するには少々不安がありますね。

 戦闘に不安がありまくる私ですので、常に万全とは言えなくとも出来る事はしておかないと後で後悔する事になりますし。


 確か、お着替えしても水濡れの%はそのままなんだっけ。


 こういった森の中で水に濡れて大変だ! という場合の定番とも言える焚き火をしようかと一瞬思いましたが、こんなに燃えそうなものが多い場所で不用意に火を使用するのも危ないかと思ったので、少し考えた後、暖房具の暖かさ効果に期待してみる事にしました。


 腰に付いた暖房具も私と一緒に濡れてしまいましたので、一応調子を確認する為にベルトから取り外して振ったり叩いたりしてみましたが、特に異常はみられない感じでしょうか。

 しっかりと密閉されている様で、振ってみても中に水が入ったような音はしませんでした。


 ベルトに装着しなおした暖房具のスイッチをカチリと捻り、稼働を開始してみましたが……んー? 余り実感できるほどの効果が無いですね。


 まったく何も影響が出ていない、という訳ではないとは思いますが。


 ……そうだ、ここでゲイルさんから暖房具購入の際に教わった、例の急速限界稼働とやらを使用してみるタイミングじゃなかろうか!


 意を決した私は、温度調節のつまみを限界まで捻った後……さらに強く摘みを捻ってガチリと手応えのある場所まで回します。


 前にゲイルさんから説明を受けた際と同じ様に、何やら不穏な稼働音が聞こえ始め。

 身体を包み込む様にブワリと温かい空気が広がります。おおーこれは良い!


 コーメェも一緒に温まれないかな、と思い川原の石の上でゴロゴロしていたコーメェを両手で持ち上げてぎゅっと抱きしめてみますと。しっかりと範囲内に入ってくれたようでした。


 心地よい暖かさに身を包まれ、あ゛あ゛あ゛ー……と思わず湯船に浸かった際に発する様な唸り声を上げつつ、フワフワ気分で付近に転がっていた手頃な岩に腰を下ろしました。

 んんー流石ゲイルさん、良い仕事をしますね!


 暖かさを堪能するのに夢中で、何故に暖房具を急速限界稼働させたのかをすっかり忘れていましたが、途中で思い出してメニューに表示された水濡れアイコンの%を確認します。


 おお、良い感じに数値が減って行っておりますよ!

 コレなら数分で乾燥終了するんじゃないかな!


 ほっと一息ついた私は、暖まったせいなのか普段よりもフワフワになったコーメェを地面に下ろし、一足先に採取の方を開始していてもらう事にしました。


 足元で私を見上げて力強く頷いたコーメェが、ミョンミョンと飛び跳ね移動をしつつ、周囲の木々の根元や茂みの辺りをウロウロと移動し始めます。


 念の為に腰へ提げていた棒武器を装備しておきます。前回この森林を抜けた際は魔物その他に全然遭遇しませんでしたが、今回もそうなるとは言い切れませんので。

 しっかりと視界が通る範囲を見回して警戒しつつ、採取作業中であるコーメェの非常に頼りになる後姿を眺め、じりじりと減少していく水濡れ数値を視界の端で確認します。


 そんな感じで、特に魔物の被害にも合わず、数本目になる薬草をコーメェが私の元に持ってきたタイミングで、右正面あたりに生い茂っていた立木の辺りでガサガサと物音が発生します。


 むむ! 魔物? それとも他のプレイヤーさんか住民さん?


 武器を握って岩から腰を上げた私は、足元で警戒体制をとっているコーメェと共に音の発生源をじっと見詰めます。


 数秒後そこから出現したのは……うん、あれだ、バッタだ。


 そのバッタの全長がコーメェの数倍あるとしても。


 足も無駄に逞しくてなんというかその、表現に困るというかその。

 拡大表示したバッタ、ですねうん。


 正直言ってキモイ。

 いや別にバッタは嫌いじゃないですよ。


 草むらに居るのを指で摘んだりしても、別段に嫌な気持になったりする訳では無くてですね。


 ああジリジリ寄ってくる……うん、あのサイズがやばいと言うか微妙にトゲトゲしてるというかそのうわぁああぁぁ跳んできたぁあああ!


 見た目どおり俊敏な跳躍行動によって。


 私の方へ飛び掛ってきた巨大バッタ。


 キモイ、主にキモイ、ギチギチ言ってる、へるぷみー!


 一瞬の内に脳内でキモイを連呼しつつ硬直した私の目の前で、飛び掛ってきたバッタが白い物体に接触し、仰向けになりながら右正面へ吹き飛んでいき、地面へバタリと下腹部を見せて転がる光景が……スローモーションの様に間延びした感覚で展開されます。


 巨大バッタが吹き飛んだ原因は。

 ……私の足元から勢いよく飛び跳ねた、コーメェの背中を使った体当たり攻撃。


 それが飛び掛ってきたバッタの下腹部辺りにヒットして、その弾力を持ってカウンターっぽい感じで巨大バッタをボヨーンと跳ね飛ばした感じです。


 ……すごっ! コーメェすごっ!


 思わずしゃがみ込んで全力でコーメェを賞賛してしまいました。

 頼もしい背中を見せていたコーメェが振り返ってフンス! と鼻息も荒くドヤ顔を披露。流石は私の相棒だ強いぞ! そして可愛い!


 おっと、コーメェの格好良さに惚れ惚れしている場合ではなかった!

 まだ巨大バッタが健在な筈!


 素早く立ち上がって武器を握りなおし、巨大バッタが吹き飛んだ方に目線を向けると、片足をピクピクさせながら未だに地面に仰向けになっている状態。目を回してるのかな?


 不用意に近寄って、突然起き上がって飛び掛られたら絶対に嫌なので、遠距離から【風の刃】を飛ばして攻撃する事にします。その辺を飛び跳ねまわられる状態だと魔法なんて当てられる気がしませんけれど、ああやって地面に転がっている状態ならば簡単です!


 ピクピクいっている巨大バッタに向かって、マナの残量を気にせず【風の刃】をポンポンと飛ばし続けます。足元ではコーメェが警戒態勢で私を守るように正面に立ってくれています。頼もしい。


 ……うへぇ! 魔法が数発命中した辺りで右足がもげたぁ! いやぁ!!


 更に追撃で数回魔法を命中させると、すーっと七色の光になって消えていく巨大バッタ。

 や、安らかに眠れ……っていうかもげた足が残ってるんですけど。何で?


 足だけで攻撃してくる事は流石にないだろう、と思いたいのですが、余り近寄りたくない。

 ピクピクしてる。もう一度言いますがキモイ。


 残った足に果敢に近寄っていくコーメェ……数回前足でそれをポムポムと叩いて確認し、クンクンと匂いを嗅ぐと……納得した様に一度頷いて口に足を咥え、私の所までそのピクってギザっている、相当キモイ巨大バッタの右足を持ってきてくれました。嬉しくない。


 ナニコレ、アイテムなの? もげた足が?


 折角持ってきてくれたものですし、一応収納しておきましょうか……一生取り出さなくても良い気がしますけど。


 人差し指と親指でバッタ足を摘んでアイテム収納を宣言。

 無事にアイテムボックスへ格納できたという事は……これはやっぱり生き物の一部としての状態ではなく、アイテムに変化していると言う事で良いのでしょうか。


 余り確認したくありませんが、一応アイテム名だけでも確認しておきましょうか。

 うわぁ……【フォレストホッパーの右足】っていうアイテムがぁぁ!


 その他にも倒したときに入手したのであろう【フォレストホッパーの羽根】とか【フォレストホッパーの甲殻】とかが一緒に収納されていました。投げ捨てたい。


 いや、折角だしせめてギルドに持ち込んでお金にしよう、そうしよう。

 それまで取り出さないぞ。私の精神ポイントが減衰するからね!


 まだ採取も開始していないのに大分疲弊してしまいましたよ……いや待てよ!? まさかこの森って、あの巨大バッタが大量に居たりするんですかね!? ちょっと難易度がハードどころの話じゃ無くなって来ましたよ!?


 アイテムボックス表示を前に頭を抱えて唸っていると、私の状態を気にせず採取行動を開始したコーメェが薬草を毟って持ってきてくれました。


 うん助かるよコーメェ……君だけが頼りだ。


 ええい! ここで膝を折ってうな垂れている場合じゃない!

 気合だ、気合を入れて採取をせねば、何のために此処まで遠出してきたのか意味が無くなる!


 気合を入れなおすために、武器を地面に置いてペチペチと両手で頬を叩きます。

 よーっし! 今度バッタヤロウが出現したら棒で叩いてやる!


 武器を掴んで立ち上がった私は、採取活動をしているコーメェと一緒に薬草を毟り始めるのでありました。

 いやその、まぁ、出来れば出て来ないで良いよ? バッタ君? 

※ 山岳地帯を登っている最中の、あるパーティが見た出来事 ※


男1「ふぅ、ゴーレムは硬いなぁ……ん!? あれはまさかあの時の!」


男2「どうかしたか? レアアイテムでもドロップしてたか?」


男3「いやぁ何も見当たらないけど……って空見上げてどうした?」


男1「いやいやアイテムじゃなくてあそこほら! 崖の下の森の上空!」


男3「森の上空がどうかした……何だアレ!?」


男2「どうした? ……えええ!? あれってプレイヤー!?」


男1「あの時と同じだ……やっぱり空中コンボされてる!」


男3「鳥の空中コンボって……タダの噂じゃなかったのか!」


男2「あの時って事は、あんた……何か知ってるのか!?」


男3「おいやべぇよ! 攻撃ヒットの角度変えて新しい攻撃ヒットさせてんぞ!?」


男1「やっぱりやべぇーよぉ! 鳥魔物本気でやべぇーよぉ!」


男3「こりゃ良いネタだ! 例の鳥空コン情報の検証掲示板に書き込んどくわ! ……例の鳥、新たなる空中コンボルート開発に余念なし」


男2「釣り乙って言われんじゃねぇのか……いやでも、どうみても空中コンボだよな……」


男1「あれは、森林に落とされる前に樹木に接触して、激突と落下のダメージで死に戻るな」


男3「鳥魔物を見かけても面倒そうだから逃げたり手出ししてこなかったけど、これからも気をつけよう……」


男1「ああ……そうだな、せめて何かしら対応策がないと無理ゲーだわアレは」

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