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216 買取 カウンター 珍事件!?

それを うるなんて とんでもない!

悪目立ちっぷりが激化。

 用事も済んだようですので、コーメェと私で繰り広げられていたイベントについての打ち合わせを切り上げます。


 ……とは言っても、どういう風に活動しようか、こうしようかああしようか? 何て事を私がほぼ独り言っぽい感じでコーメェに伝えていただけですけど。


 コーメェも『メッ!メッ!』と相槌をうってくれていただけですし。ははは。


 何やらじーっとコーメェを見詰めていた制服の女性に見送られる形で待合席を立った私は、再度女性に頭を下げると、腕の中にコーメェを抱きかかえた状態で、ギルドの建物でいう所の入り口より左方面……買取カウンターが存在する方向。


 つまり未知の領域へとゆっくり歩を進めます。

 ううう……それにしても何と言いますか。


 あれですよ、お役所独特の雰囲気と言ったら良いのでしょうかね。

 ある程度会話している声は聞こえるのですが、あまり騒がしくしたら怒られそうと言うか。

 こういう雰囲気苦手なんですってば。判りますかねこの気持ち。


 そんな、普段感じる事のない空気に少々落ち着かない心の動きを感じつつ、俯き加減で入り口正面カウンターの前を横切って先へ進みます。視界が狭いと多少は落ち着きますね。衝突事故だけは警戒せねばなりませんが。


 ゆっくりと移動している際、すれ違った人たちがヒソヒソと内緒話でもする様な小声で、私の方を見ながら何か会話をしている気がして……被害妄想甚だしいですが不安指数がうなぎ上りです。


 と言うか、十中八九気のせいでは無くて……普通に複数の視線を感じるんです。

 何か禁止されているような行動を取っている、という訳では無いと思うのですが。


 これはやっぱりあれでしょうか、私の腕の中で静かにお行儀よく周囲を見回している、珍しい毛玉物体コーメェを見て、一体その究極生命体と何処で出会ったのか知りたい! モフりたい! 詳しく教えてくれ頼む! と思っている人達が居ると言う事で良いのでしょうか。


 いやでも、唐突に話しかけられてもお教えできない可能性が高いですハイ。


 でもまぁ……前回イ=ヤッハーさん達と一緒に移動していた際に、他のプレイヤーが知り得ていない様な貴重なゲーム情報は簡単に教えない方が良いぞ、と言われておりますけれども。


 そのうちですが、コーメェと出会ったあの辺りにも確実にプレイヤーさんが到達するでしょうし、メェと出会う人も確実にいるでしょう。それに関して何かしら知識を教えて欲しい! とお願いしてくるプレイヤーさんが目の前に! 何ていう状況になったら……情報隠蔽等はせずにある程度ですが聞かれた事は教えてあげる事にしようと思ってます。


 そもそも同士(モフリスト)が増えるのは歓迎すべき事柄でありますし。

 それに、目の前に情報を求めて私を頼ってくれている人がいる何ていう状態で、知らぬ存ぜぬを決め込むのは……私の精神衛生上とても良くないので。心が疲弊する。


 それに、情報関連で起こる厄介事は正直勘弁願いたいですから。

 そう、あくまでもフレンドリー優先で。


 それに教えたからと言って、悪い事ばかりではないと思いますからね!


 そういう情報を得ようとしている、と言う事は……基本的に相手も私と同じ嗜好を持つ同士(モフリスト)である可能性が高いわけです。


 そうです、コーメェとの劇的で素晴らしい出会い話を通じて『ふわもこファーム』等のお話などを絡めつつですね、良い感じに相手と会話を続けるのを目標に定めて……そこからこう、アレでナニですよ、うん。


 何となーく良い感じに相互情報を交換するというニュアンスで、有益なフワフワ生命体についてのアレコレを相手からも引き出す流れに繋げる事によってですね? つまりはですね?


 君も私もわーい嬉しいな!

 私も相手も有意義会話、やったね最高!

 そして二人はWIN-WINの関係になるわけです。


 ああー素晴らしきかなVRMMOの世界よ。

 この世界は福音に満ち満ちています。主に柔らかさという感じの。


 私の脳内だけで繰り広げられる、胡散臭い会話映像に無駄に期待を寄せ……思わず抱きかかえているコーメェの背中を両手でモミモミ、フードの奥に隠された自分の顔がニッコリ笑顔になるのを阻止できませんフフフフ。


 うん、唐突にニヤリとして両手で毛を揉み始めるとか……傍から見たら確実に気持ち悪い。

 私だってそう思う。だが止められなかった仕方ないんです。

 周囲に顔が見えない状況でよかった。


 あれですね、個人妄想世界だけで幸せになれるなんて、何と言うリーズナブルさ加減でしょうね私。

 激安インスタント製品よりもコストパフォーマンスに優れていそうです。


 日頃お世話になっている冷凍食品達も好きですけどね……なんて事を思っている最中に、確か『あなたと私のフワフワ事案』について深く考えていた筈なのに、何時の間にか『日頃私の生活を助けてくれている冷たい食品についての考察』に摩り替わっている……と、自分自身で自己の思考が進んでいる方向に関して疑念を持って首を傾げつつ。


 ……少々足早に移動を終わらせて、先ほど教えてもらった看板の辺りに到着します。

 ふー、この建物大きくて広いから、移動も地味ーに時間が掛かります。


 フードの端から覗く様に周囲を見回して見ますと、買取カウンターの脇に数人のプレイヤーさんらしき人が列を作っていました。


 列の流れを目で追い、最後尾だと思われる場所へ私の身体を捻じ込みます。


 あーうん、こうやって改めてプレイヤーさん達が集まっている場所に来ると、やっぱり皆さん様々な服や鎧っぽいものを身につけていて……こうやってコッソリとその装備を見ているだけで、何かファンタジー映画を見ているような気分になって非常に楽しいですね。おっと列が進んだ詰めなきゃ。


 それにしても皆さんは一体どういう方法で、その見た目素晴らしいファンタジー風の衣服を購入しているのか。謎が謎を呼ぶわけではないですが、不思議な訳です。


 あと頑丈そうな雰囲気が迸っている金属製の鎧とかも見た目凄い。

 もしかして一部、もしくは全部自作アイテムなのでしょうか。

 他のプレイヤーさん達凄すぎ! と言わざるを得ない。


 私のデザイン感性を司る部分は人並み以下、つまり装備の見た目を考える能力とか皆無ですので、ああいったファンタジックな雰囲気を醸し出すデザインを考えられる人は凄いなぁと思います。

 そこ、装備品くらい自分で作れといわないでね。無理無茶無謀の3拍子揃うから。


 あれだ、私は大人しくクッションを沢山作成していれば良いでしょう、うん。


 規格が定められている製品の作成ならば私でも安心です。

 デザインで冒険するつもりは全然ありませんし。


 そのせいで、材料が無駄になるのが悲しいですからね。

 大量のラビ君達に犠牲になってもらえば大丈夫だとは思いますけど、まぁそこは。

 ラビ君撲滅大作戦を決行すると、また大量の肉に悩まされる羽目になりますので。


 んー、やっぱり他のプレイヤーさん達って、毎回ギルドまで不用品を売りに来ているのかな。


 ……それにしても、コレだけ大量にお肉その他を持ち込む人が増えたら、色々な場所の物価とかに大きい影響が出て、普通は大変な事になっちゃうんじゃないのかな。


 この世界の物価その他は、私たちの存在があっても大丈夫なのだろうか。

 ……うん、私一人が気に病んでも意味なんてなさそうだけどね。

 対応は、この世界の行政にお任せしておきましょう。


 あーラビ君といえばあれだなぁー、撮影機の為にも頑張って毛皮集めて金策クッション作成しないとなー、何て事を考えていましたら。


 意外にもサクサクと列が進んで、私の買取順が迫ってきました。流れが速い。


 うほぅ次だ次ですよ順番!

 うう、メディカさんの所以外でこうやって本格的に買い取りしてもらうのって初めてだから、流石に緊張してきた。エスメラルドさんの所でのクッション買取は、女子力の高いエスメラルドさん相手だったから物凄く気軽に出来たんだけどな。


 ふむぅ……えーっと、アイテム売るときはどうやれば良いのかな。

 ……よし、私の前に居る方の動きを見て勉強しておこう。


 先人の知識を得るべく、私の前に並んでいたパーティの方々が、それぞれのアイテムボックスから沢山の品物を順番にカウンターへ並べているのを、フードの端からこっそり覗き見る様にして観察します。


 ふむふむ、一気に物を出すのではなくて、ある程度順番に取り出して計算してもらう形ですね。


 まぁ、大きさ重さ問わず大量かつ多種に渡って物を収納できますからね、女神様の加護バンザイなアイテムボックスは。規格外の性能。


 カウンターにいる職員さんの後ろで、あっちこっちへ足早に行ったり来たりしながら売りに出されたアイテムの数を数えていたり、取っ手の付いた箱の様な入れ物にアイテムを詰めて移動させている方々等、沢山の職員さんが活動していらっしゃいます。


 やっぱり物凄く忙しそうだ。そもそもアイテム量が凄い。

 一人頭での持ち込み量が半端ないでしょうからね。


 ご愁傷様です、とヒィヒィ言いながら作業している職員さんに目を閉じて応援を投げかけておきます。

 申し訳無い、どうか頑張ってください。他人事で良かったなーと、思わず言ってしまう程にはハードな職場ですね。


 きっと祝福の冒険者が現れる前と後で、仕事の総量が劇的に変わったんだろうなぁ……と容易に想像がつく部署ですよねココ。


 そもそも買い取ったあの量のアイテムを、保管できる場所があるのか。

 アイテムボックスから出した生もの系統は、放って置くと痛んでしまいますよね。

 色々と無事じゃない気がしてきた。腐臭とか漂ったら大問題だ。

 

 ぶっちゃけ、私が所持しているお肉だけでも大分量がありますし、数日程度じゃ食べきれる分量じゃないと思うんですが……あれです、ギルドの運営って大丈夫なのかな。

 プレイヤーなら満腹にならないから幾らでも食べれますけれど、この世界の住民さんはそうは行きませんよね。


 まさか、神様の指示でこの世界へ来てるプレイヤー相手だからって、頑張って無理して必要ない分まで買取してたりはしないよね?


 汗をかきつつドタバタとお仕事をしている職員さん一同を見ていると、何だか大量に物を売るのが申し訳なくなってきますね……ほんとすみません。


 でもお金が欲しいので売らせてください本当スミマセン、と心の中で謝罪しておりますと、私の前に並んでいた方達の査定が終了したらしく、例のワンタッチ清算メニューでお金を受け取ったパーティさん一同は私の横を抜けて逆側……アイテム鑑定カウンターの方へと行ってしまいました。


 きっと、残したレアなアイテムを鑑定ですかね。お楽しみタイムですよ。

 その後姿を見送りつつ、さあ来ましたよ本番。やってやりますとも!


 キッチリと2歩分足を進めて、先ほど見た入り口前カウンターとは全然違う、アイテムを置く為に広々としたスペースの取られた買取カウンターの前へ到達します。


 髪をビシっと整えた男性職員の方が私にペコリと頭を下げ、カウンターの上に手を向け声をかけてきます。


「アイテムをこちらへご提示下さい。買取結果が不服の場合はお申し出下さればアイテムは返却いたします」

「わ、判りました」


 よーし、売り払いたいアイテムを出せば良いんだよね、えーっとコーメェを一旦置いてアイテムボックスを開かねば。


 そしてカウンター上に出す物は、主に生もの系統全般です。

 お肉やお魚の切り身です。


 山岳地帯で入手したその他魔物素材は、一括で全部ゲイルさんの所へと納めてしまいましたので。

 鉱石類も全部ですね。


 ああ、あのボス鳥さんから頂いた尾羽は便利ですし、レアっぽいので確保してありますよ。尾羽そのままでも振れば特殊効果が使用できてお得ですし。


 でも、確か使わずに残った素材で必要な物があるなら返却します、なんて言ってたっけ。


 正直な所、ゲイルさんに全ての素材を買い取ってもらう形で良いと思うんですよね、うん。


 正直加工費で余剰でお金が必要です! っていわれた場合を考慮すると、全部売却な方が安心と言うか。物々交換と言うかそんな感じで。


 等と言う事を、買取カウンターに肉を並べながら考えておりましたが、無事アイテムボックス内に残っていた生ものな材料アイテムを全部出す事ができました。


 数を勘定して計算機を叩いているカウンター職員さんの横で、もう一人の職員さんが私が提出したお肉とお魚を、何かの植物の蔓っぽい物で編まれた大きい籠の中に綺麗に詰め込みつつ、カウンター横の空きスペースへ並べ始めました。


 うーむしっかりとした流れ作業ですね。

 それでも業務処理が微妙に追いついていない風なのが、また哀愁を誘います。


 ……人員を増やした方が良いのでは。


 いや、スペースの広さ的に余り増やしすぎても逆に邪魔になるのかな。

 難しい所ですね。買取カウンターのスペース自体を増やさないと駄目って事かな。

 それはそれで手間になりそうで怖いですね。


 何て事を思いつつ、ぼんやりと金額計算中の職員さんを見ていますと。


 ……アイテムボックスを操作するときに、一旦カウンターの端っこへ退避してもらっていたコーメェを、職員さんが両手で掴んで籠の中に詰め込もうとしている現場に遭遇しました。


 あーしまったぁ!? いやいや!?

 すみませんソレ売り物じゃないんですぅ!


 持ち上げられた際に、手の中でモコモコと動き始めた毛玉にビックリした職員さんが『おわぁ!?』と声を上げてパッっとコーメェをカウンターへ開放してくれました。


 か、勘違いさせてしまった! すみませんすぐ退かしますので!


 急いでコーメェを持ち上げてお腹の辺りにくっ付けます。危なかった!

 人身売買ならぬコーメェ買取されちゃう所でしたよ!?


 というかですね、ギルド買取カウンターって生き物の売買もありなのでしょうかね!?

 いや多分ここじゃ駄目だよね?


 コーメェと一緒にギルド入場した時、ちゃんと入り口で警告っぽいアラームがなる仕様だったし、基本的にお断りな筈だよね生き物の入場。


 そもそもコーメェを売るとか考えられませんし。

 毛玉なら生成可能で売れますけど。


 でも本体は売れません! なんて事をコーメェ回収に成功した安心感と共に息を吐きつつ考えておりますと、コーメェが動いた驚きから復帰した職員さんが、手に持っていた計算機を少し操作した後、向きを反転させる形で私の方へ差し出して、計算結果を見せつつ声を掛けてきました。


「えーはい、全部でコレだけになりますが、宜しいですか?」

「はい大丈夫です! お願いします! あとお騒がせしました……」

「いえ、問題ありませんよ」


 笑顔でそういって下さった職員さんの計算機に提示された金額、なんと2200ゴールド! お肉とお魚でそんなに貰えるんだ!?


 私的には特に問題も有りませんでしたので了承の言葉を返しますと、例のワンプッシュ簡単清算メニューが眼前に表示されます。


 迷わず『はい』をプッシュ、無事所持金に2200ゴールドが加算されます。

 おお……所持金が10000ゴールド程度まで回復しました。ありがたい。


 メニュー操作後に職員さんから小さい紙を一枚差し出されましたので、特に何も考えず受け取ります。あー、これレシート? っていうか買取金額の詳細なのかな? ありがたく頂きます。


 ヨジヨジと肩の辺りまで登ってきていたコーメェの背中を軽く撫でて、先ほど職員さんから貰った手元の紙に書かれた内容を確認。


 よーし次はリーナさんの所にでも行こうかなー! なんて思いながら後ろ振り返ると。


 ……先ほど勃発したコーメェについてのドタバタを一部始終見ていたと思われる、後ろに並んでいたプレイヤーさん達から私へと注がれる、物凄く熱い視線を全身に浴びる羽目に。


 う、うわぁあぁあああ! め、目立ってるぅ! にげ、逃げなければ!


 お騒がせした事に対しての謝罪として勢い良くお辞儀をしつつ、肩に乗っかっていたコーメェを安定した頭の上に乗せ、この場を素早く小走りで去ります。


 うう、買取アイテムを乗せるカウンターの上に、無警戒でコーメェを乗せた私が悪かったのだ……次からは気をつけないと駄目だぁ……そう、こうやって失敗を重ねて人は覚えていくんです。

 という感じに、良い話風に記憶しておけば忘れないよね。多分!


 焦りと後悔でグルグル状態になっている脳で、正直あまり意味の無い事を考えつつも、他の人に衝突しないよう気をつけながら、リーナさんがお仕事中な筈の鑑定カウンター方面へと移動する私なのでありました。

※ お知らせ ※


29日金曜日の更新は確定でお休みになります。

少々立て込んでいまして……申し訳無い。

水曜日はいけるようなら更新します!


※ 追記 : ちらっと見えた誤字脱字を修正しました……まだありましたらご一報を。寝不足が祟ってるのかな……orz

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