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213 増える 毛玉 と 例の箱

真打登場。

アイテムボックスのご利用は計画的に。

 アルさんのコーメェに対する不可抗力な魔道具誤解事件からの流れで、その手に鎮座している柔らかい魔道具改めコーメェが私の従魔である! という事の説明を開始した訳ですが。


 私の説明を受けたアルさん、首を傾げて頭の上に『?』を浮かべている様な雰囲気の表情を浮かべ、右手に持ったコーメェを器用にクルリと片手だけで向きを変更し……その結果正面からコーメェと見詰め合う事に。


 コーメェからの視線を受けたアルさん、ビシっと数秒硬直した後に『うぉう!?』と叫び声を上げて右手を引っ込め、支えを失ったコーメェが陳列台の上へと落下します。


 少し高い場所から陳列台の上へとダイブしたコーメェでしたが、持ち前の柔らかさでもってフワリと空きスペースへ華麗に……多分華麗に? 着地したので大事には到りませんでした。

 

「ああっと済まない、びっくりして投げちまった! 生き物だったのか……こりゃ申し訳ない事を!」

「いえいえ! そもそもコーメェが誤解されるよう場所にいたのが悪かったので!」

「いやぁしかし……従魔を連れてるなんて凄いなぁフワモお嬢さんは!」

「あー……聞いた話だと、何だか最近では珍しいらしいですね」


 コーメェの背中を撫でつつ『落としてすまなかったなぁ』と謝罪の言葉を告げているアルさん。


 そのお言葉に反応して、コーメェは斜め上にあるアルさんの顔を見上げるような体勢で、元気な声で『メッ!』と返事を返しています。心なしか撫でられて嬉しそうです。


 まぁコーメェの強靭な弾力パワーなら問題ないでしょうし、実際問題あの程度の高さ位ならば、コーメェ自身の力だけで飛び跳ねても到達できるからね。華麗に着地するのも楽勝ですよ。


 そんな事を考えつつ、親交を深めるコーメェとアルさんを眺めておりましたが。

 アルさんが唐突に大きい声を上げました。なっ何事でしょうかね!?


「あっしまった! 拭きが甘かったか……綺麗な毛皮に汚れが付いちまった!」

「汚れ……? あぁー、ちょっと煤けてるくらいじゃ無いですかね?」


 コーメェの背中の部分、アルさんが撫でていた所がちょっと埃で煤けて灰色になってしまっているのに気が付きました。


 作業中に手に付いた汚れが残ってた感じみたいです。

 さっき何かの布っぽい物で拭いていましたけれど、完全には落としきれていなかったのかな。


 でも、コレ位の汚れなら軽く叩けば落ちるんじゃないかな?

 あっそうだ、ふわふわブラシで整えれば一発じゃないかな!


 アルさんが、手の甲の部分でポンポンとコーメェの背中に付いた汚れを落とそうとしているのを眺めつつ、アイテムボックスを開いてブラシを取り出します。


 そういえば、コーメェの毛に対してブラッシングを敢行するのって初めてだっけ?

 特にお手入れをしないでも、凄く最高に素晴らしくフワフワだったから気にしていなかった。


 それでは早速、このエスメラルドさん謹製ふわふわブラシでもって、わが相棒毛玉であるコーメェの背中その他諸々を整えて差し上げましょう。


 きっとさらにフワフワになって、世界がトンでもない事になるに相違ありません。


 時空を歪めるほどのフワモコパワーが発生するのです。

 主に私に対してだけ。最高か。


 アルさんの汚れ駆逐作業に一旦区切りを付けていただきまして。

 ……それでは! 初めての!

 ブラシ攻撃を開始しましょう! 喰らうが良い!


 勢いだけは凄まじく、しかし右手の動きは緩やかに……サクサクとブラシが毛を整えていく感触を楽しみつつ、まずは汚れが見える場所を重点的に攻めていく作戦で、この度勃発した汚れとの戦いを進めて行こうと思います。さあ私の攻撃の味は如何かね汚れ君よフフフ。


 案の定といいますか予想通りといいますか、あっというまに綺麗な純白の毛並みに戻っていくコーメェの背中の毛。おお素晴らしい、素晴らしい戦果ではありませんか!


 私の隣でコーメェを眺めていたアルさんも、私と顔を見合わせて思わず力強く頷いてしまう程度には素晴らしい汚れ落ちです。


 やっぱりエスメラルドさんのお店で販売している商品は最高だね!

 ついでに私のクッションもよろしくお願いします!


 等という風に、自分の都合も織り交ぜつつ脳内広告を張り出しておりますと……ブラッシング開始から10秒程経過した辺りで……ブラシに返ってくる手応えが変調しているのに気が付きます。


 何か、こう、うん、硬い感じというか。

 コーメェらしからぬ手応えと言うか。


 何だろうか、まさかブラシがもう壊れてしまったとか!?

 そんな回数使っていないんですが!

 汚れを落とす際に耐久度がモリモリ減るとかそんなですか!?


 最悪の事態を想像した私は、軽快に動かし続けていた一旦ブラシの動きを止めて、ブラシの様子を確認したところ。


 ……ブラシに大量の毛が付着していて、ブラシの滑りを阻害していたようです。

 ホラー映画の様相さながらに毛まみれのブラシ。


 ……えええ!? これ抜け毛なの?

 っていうかコーメェの体積と比例しない量の毛が付着しているんですけれど!?


 こんなに抜けたらコーメェ丸裸だよ!? R18になっちゃうよ!?


 私は17歳だから、法律上コーメェとお別れしないといけない事態に陥っちゃうよ、どうなってるの【黄昏の大神】(プログラム主任)様!?


 私は半ば錯乱状態でブラシを当てていた部分を確認しますが……あれ? コーメェの毛は全然減ってない。


 左手を伸ばしてコーメェの背中を優しく揉んでみましたが、全然全くもって完膚なきまでに何時も通りにフカフカのフワフワだ。


 あっれぇー!?

 質量保存のナントカカントカはアレでナニだから物理的にソレがコウなって!?


 更に混乱した私は、一旦ブラシに付いた毛の塊をズボリ……と引っこ抜いて手の平に乗せます。


 うん、見事な毛玉。ソフトボール位の大きさの毛玉。

 でも、コーメェの身体サイズというか直径はバレーボール位。おかしくない?


 えーと……あれだ、VRゲームだからその辺を気にしないでも良いのかも知れません。

 というかこのブラシが凄すぎるのかも。

 いや逆にコーメェの存在が究極なまでに凄いのかも!


 強引かつ個人的感想ではありますが、一応考察に決着をつけたつもりになった私は、出来上がったコーメェの分身たる毛玉ボールを、そっと陳列台の空きスペースへ一時保管させてもらいまして。


 数回深呼吸をして心を落ち着けた後、汚れの無いわき腹の部分やお尻の方もサクサクっとブラッシングをします。


 毛が抜けまくっている当の本人というか本メェであるコーメェは、特に痛くも痒くも無いよ? といった感じで4本の足を使って陳列台の上を踏みしめ、私のブラシアタックを受け止めておりました。


 左右のわき腹をブラッシングで1個。


 お尻のほうをサクサク整えてもう一個。


 あとコーメェを引っくり返してお腹の辺りもブラシで整えると更に1個。


 増える、増える、増える!

 何かがおかしい位に毛玉が増える!


 でもコーメェの見た目に変化はありませんし、手触りを確かめても毛が抜け落ちてスカスカになっている様な感触はしません。


 やっぱり何処からとも無く増えている毛。

 謎が謎を呼ぶ。いや謎が毛を呼ぶ、か。


 一列に並んで4個、同じ大きさの毛玉が陳列台の上に並びます。

 コレは……コーメェ由来の素材、でいいのかな。多分。


 改めて一つ手に持って、握ったり頬っぺたに押し付けたりして柔らかさや肌触りを確認したりしてみます。


 うん、コーメェ本体に頬ずりした場合よりは少々荒い感触ですが、それでも素晴らしい。

 化学繊維では表現できない天然素材の温かみ。

 贔屓目に見てコーメェ最高。


 私の行動を見て、カウンターの方から手を拭くための布を持参して、強めにゴシゴシとその両手を念入りに拭いていたアルさんも、その手に一つ毛玉を持って感触を確かめ始めました。


 どうぞどうぞ、自慢のコーメェの毛ですよ!


「おおー……コイツぁ中々の感触……良い素材ですねぇコレは!」

「アルさんもそう思いますか!?」


 思わず二人とも、両手に一つづつ毛玉を所持して握ったり頬に押し付けたり。


 傍から誰か知らない人が見ていたら怪しい儀式にしか見えないと思います。

 だが私のモフリを止められる人は今この場所に存在しないのだ。


 この毛でクッション作ったら最高じゃないかな。今度挑戦しようかなうんうん!


 二人で毛の柔らかさを十分堪能した後、アイテムボックスへ大事に毛玉を収納します。


 もしかしたら、まだ追加で毛玉を入手できるかも? と思いついて、再度ブラシでワシワシとコーメェのお尻を梳いてみましたが、残念ながら毛玉は発生しませんでした。


 流石に取り放題とは行かないようです、残念。

 まぁ流石に無限に入手できたらマズイよね。


 そうそう、アイテムボックスに投入して判明した毛玉の名称は、そのままズバリ【メェの毛】という非常に判り易いものでした。


 入手数は4個というカウントになっていましたので、あの毛玉1個でアイテム1個という計算でしょう。判りやすくて良いですね。


 多分ですが、コーメェのサイズが巨大になったら、一度に大量の毛が入手出来るのかもしれません。


 先ほどの経験から予想するに、恐らくブラッシング出来る面積に応じてアイテム出現、とかかな多分。


 そんなこんなで、コーメェの毛についてアレコレとアルさんと一緒に会話しつつ、金属鎧の緩衝材に詰めれば効果が高そうですよ! なんていうアルさんの防具談義を聞いていたタイミングで、お店の奥からガタゴトと物音が。あっもしかして。


 そちらに視線を向けますと、予想通りゲイルさんが見覚えのある金槌を手にして、顔を乱暴にタオルの様な物で拭いつつ店舗の奥から出てくる所でした。


 ふぅー、と息をついたゲイルさんがカウンター横に置いてあった木箱の上へと腰を下ろし、ゴトリと金槌の頭を床においてカウンターに立て掛けると、タオルをバサリと放り投げて身体を解す感じでグリグリと右肩の関節を動かし始めました。


 そんな運動の最中、ふと顔を上げたゲイルさんの視線が私の視線とかみ合います。

 パチパチ、と数回瞬きしたゲイルさんが笑顔を浮かべて声を上げました。

 

「おお! フワモさんじゃぁないか! こりゃ気が付かず申し訳無い!」

「いえいえ! お邪魔してます!」

「今日も何かお探しで? ふぅー、スマンがアル公、水を一杯持ってきてくれ」

「へい親方! ただいまお持ちします!」


 素早く店舗内へと駆け出していったアルさんの背中を見送りつつ、お店に来た理由をゲイルさんに説明します。とはいっても非常にアバウトな説明になってしまう訳ですけれど。


 私からの無茶振りとも言えるような曖昧な商品探しの要望に対して、アルさんが持ってきたコップの水を一気に飲み干したゲイルさんは、暫く考え込むように両目を閉じ……たっぷり10秒程経過してからその目を開きます。


「商品云々は置いておくとして、何はともあれ予算から伺おうかの」

「えっと、そのー実は、あそこに置いてある虫除けの魔道具を購入するのがやっと位の状態で……最悪なにか森の中で使う用の刃物? というのを購入したいなぁと」

「ああ、森林で使うとなると鉈じゃな……ソレほど高価な物じゃないし、確か在庫があったはずじゃから大丈夫じゃよ」


 しかし予算が厳しいのぅ……えーっと……何て呟きつつ、何かを勘定するように左手を顎に添え、目を閉じて右手の指を一本づつ曲げながら思案するゲイルさん。


 ああ……本当に貧乏ですみません。

 お金じゃなくて現物その他なら沢山あるんですけどね。


 ……なんて事を特に気にせず口に出した途端。


 ゲイルさんがクワッと両目を開き、表情を変えてこちらにニヤリという擬音がピッタリの表情を向けます。


「素材とな? そういえば山岳地帯にいったという話じゃったが」

「え、ええそうですけど……」

「ならば、金属素材をもっとらんかの?」

「金属……えーっと、上級鉄鉱石なら……ある程度」


 私の返答を受けたゲイルさんがバシリと自分の膝を手で叩きます。うわぁビックリした!


 腰を下ろしていた箱から立ち上がったゲイルさん、ちょっとその鉱石類を見せてくれんかの! と私に詰め寄ってきます。

 迫力に押されるように腰を下ろしていた木箱から立ち上がった私は、メニューを開いてアイテムボックスからザラザラーっとソレっぽい素材を取り出して、大量にカウンターへ並べる事に。


「なんじゃなんじゃ! コレだけ素材があれば加工の手間賃だけでいけるわぃ!」

「えっと、それってお安く出来るってことで良いんでしょうか?」

「その通りじゃよ!」


 『つまりワシの右腕に対する代金のみって事じゃな!』と、笑顔でバシン! と逞しい力瘤を発生させている自分の右腕を左手で叩くゲイルさん。黄金の右腕ですね。


 手間賃の方も現金でなく素材で払ってもらって大丈夫、という至れり尽くせりのご提案をゲイルさんから頂いた私。


 渡りに船とはこの事でしょうか!

 金属加工にゲイルさんでも可。新しい諺に登録したい。


 余りにありがたいご提案に調子に乗った私は、取り合えずもう全部出しちゃえ! という感じの勢い任せな思考の元に、アイテムボックスから数々の半分死蔵されていた品々を勢いで取り出して並べます。


 そう……本当に調子に乗ってたんです。


 特に確認もせず、魔素迷宮で入手した宝箱をアイテムボックスから出してしまった後……あっしまった! と気が付いたまでは良かったのですが。


 その、後の祭りとは良く言ったモノで。


 ええまぁ……言ってしまうと、再度収納するのに失敗しまして。


 ……取り出してしまった箱は重力の影響を受ける様になり、床へとズズンといきまして……アイテムボックスに収納する手段が今現在の私には存在しない状況に。


 ゲイルさんに持ち上げてもらっても、多分収納できないよね……少し前にラティアちゃんの持った物を収納できないか試した記憶があるけど、出来なかった筈だし。


 無駄にスペースを食ってデデン! と鎮座なさっている綺麗で大きい箱を前に、思わず膝を折って地面に突っ伏したくなる自分の心のバランスを、それでも何とか強引に立て直します。


 アイテムボックスから大きい箱が出てきた事に驚いたアルさんが『いやぁ流石凄いなアイテムボックスの加護ってのは!』と呟きながら、箱の縁をコンコンと手で叩いています。

 


「……この宝飾箱は何処で?」

「えっと、山岳地帯に生成された魔素迷宮の最奥で拾ってきました……」

「なるほど魔素迷宮産か……良い素材と付与じゃのう」

「そうなんですか……? 何か今回の依頼の足しになりますでしょうか……」


 見た目的にはちょっと綺麗な箱、って感じなんですけれどどうなんだろうか。

 ……そんな私の不安を他所に、楽しそうな笑顔を浮かべて宝箱の横をバンバンと平手で叩くゲイルさん。


「足しになるともさ! コイツには見事な【条件隠蔽】の付与が付いている様じゃし、貴重な品を多数持ってる貴族サマ辺りに売りつければ、中々の値段が付くはずじゃよ!」

「その【条件隠蔽】というのは?」

「そのまま条件によって隠蔽できる箱って事じゃな。大事な品物を守る為にはもってこいじゃよ。よければ手間賃の代わりとして引き取らせてもらうが、どうじゃろうか?」


 判っていた事ですが、やはり持ち運んで使うような代物じゃないって事で良いのかな。

 

 あれですね、拠点と言うか自宅と言うか……そういう物を持っていない私にとっては無用の長物なのかな……内部のふかふか具合は好きだったんだけど、背に腹はかえられないよね。


 ゲイルさんの提案に了承の返事をした私は、残りの素材でナニが作れるのか、あとお勧めの品物はどんなものがあるのかを詳しく聞くために、ゲイルさんの近くへと寄るのでありました。

※ 質問と言うか疑問と言うか愚痴 ※


最近というか、少し前から投稿済み小説の管理ページにアクセス完了するのが、物凄い遅いのですよ。

これって小説の文字数が多いからでしょうかね? まさか自分だけじゃないですよね?(不安


何かエラーでもあるのかと思って少々不安に……(豆の心臓

いや、凄い遅いだけで何か変になってるとかは無いんですけれど、気になったので(汗

……大丈夫ですよね?(しつこい

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