表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/256

212 聞きたく なかった その名前

普段よりちょっと短めです。


 楽しそうにミョンミョンと良い具合の弾力でもって弾んでいるコーメェを横目に、次の目的であるゲイルさんの営むお店へと移動を開始する事にします。


 コーメェは、ゲイルさんのお店に行くのは初めてだよね。

 私が先導して移動してあげないと、道が判らないでしょう。


 私の横にくっ付いて移動するように、とコーメェへ念押ししておきます。

 私の指令を受けたコーメェは了解! と言う感じで頷くと、私の移動する方向へ一緒について回る感じで行動を開始しました。


 えーっと確か、ゲイルさんのお店の場所はギルドの建物にあった、裏口っぽい場所から出た後にたどり着いた所だから……この辺りの道からこうやって進めば良いはず。


 一度しか通っていない場所なので少々記憶が曖昧な所もありますが、大きいギルドの建物を目印としてその周囲に有る、という非常に判り易い目標がありますので問題はないでしょう。


 コーメェに道に迷うご主人様と思われる訳にも行きませんので!


 威厳と言うには少々微妙ですが、ある程度頼りになるご主人である! という所をこの忠実な相棒に見せねばなりませんな! むふぅ!


 人通りの少ない裏通りでフンス! と気合を入れなおした私の鼻腔に、先日嗅いだ覚えのある鉄の焼ける匂いが漂ってきます。うんうん、方向的には間違っていないようで一安心です。


 こっちの方であってるのー? という感じの疑問を浮かべた感じで私を見上げ、右隣に位置する辺りで毛玉弾力移動を行使しているコーメェにその通り! と一度頷きを返して、何となく見覚えのある裏通りを進みますと。


 周囲を見回していた私の視線の先に、確かに見覚えのある店構えを発見しました。


 でも何やら……前回見た時の店舗前より、さらに物が増えている気がします。


 先日は大きい物というか建物内で使うような、例えば一定の場所に設置して使用する感じの、あからさまにご家庭用商品と言う雰囲気の品物ばかりが並んでいた気がしますが。


 でも今日の店先を見ると、ゴンドラというか陳列台の様な物が店舗の前に幾つも設置されていて、その上に見たことも無い様な商品が整然と並べられています。


 うわー何だろう!? 見ただけで何だか面白そうだぞ!?


 コーメェに見える様にゲイルさんの店舗を指差した後アソコへ移動するよー、と告げて足早に移動を再開します。ちょっと早めの時間だったけれど普通に営業時間だった様で安心しました。


 鉄の焼ける匂いが強くなっていくのを感じつつ、店舗前まで到着した私は、コーメェに商品に気をつけてね? と念を押した後、お店の前に設置された台の上に並べられている、数々の大小様々な金属商品を眺めます。


 陳列台の上にはフワリと柔らかい布の様な物が敷いてあり、その上に四角かったり丸かったり三角だったり、用途が良く判らない物が等間隔で置いてあります。

 その陳列台の横には『営業中 御用の方はお声をお掛け下さい』と大きく書いてある看板が。判りやすくて良いですね。


 さて、このアイテムは売り物でしょうか。

 見やすいように置いてあると言う事は触っても良いのかな。ちょっと拝借。


 私がガチャガチャと品物を手にとって、グリグリと縦横に傾けつつ眺めているのが気になったのか、石畳の上で私を見上げていたコーメェが、ポーン! と高く弾んで台の縁へフワリ……と器用に着地しました。


 うわあ!? ちょ、商品壊さないようにしないと駄目だよ!?


 私の心配の言葉を他所に、コーメェは台の縁からその短い足で移動を開始し、台の端の方に置いてあった金属の箱の様な物に顔を近づけて、フンフン匂いを嗅いだり前足で側面をペシペシし始めます。


 うん……その箱なんだろうね?

 手の平に丁度乗せられる大きさの、サイコロみたいな見た目だけど。


 取り合えず、コーメェが商品を壊すような動きを見せていない事に安心した私は、手に持った丸い商品をグリグリと回転させて眺めます。


 底の部分が平らになっていて、テーブルの様な平たい場所になら置ける様になってるものですね。

 用途の方はさっぱりですけれど。


 何かが書かれた小さい紙切れの様な物が貼り付けてあったので、気になった私は何となく目線をそこへ向けてみます。ああ、これはお値段表記かな?


 書いてある数字を見てビックリ……このサイズで8980ゴールドなの!?


 絶賛貧乏暮らしな今現在の私が、コレを万が一にも固い石畳に落としたりすると大惨事なので、慎重にその丸い物体を陳列台の上へと戻しておきます。


 故意に壊す可能性は無いにしても、不可抗力という物がありますからね。

 あり得るべき確率は潰しておくべきでしょう。


 触らぬ高額商品(かみ)に祟りなし、と言いますからね。


 ふと横を見ると、先端を丸く加工して危険度を減らしてあるピラミッドの様な形をした金属物体を、興味深げにジーっと見詰めているコーメェが。


 ソレ何の効果があるアイテムだか判るの?


 熱心に見詰めていたのでそう問い質してみたのですが、知らないという感じで首を振るコーメェ……どうやら、磨き上げられた金属面に映っている自分の顔が気になって見詰めていた様です。なるほど。


 おっと、ここで品物を眺めて楽しんでいるのも一応ありですが、私が今現在達成せねばならない目標は商品で遊ぶ事では無くて。


 そう、外で活動する際に必要になりそうな、金属加工品を入手する算段をつける為に来たのでした。


 お店の方に意識を向けると、店舗内でゴトゴトと何か作業をしている音が聞こえていますので、きっと前回同様アルさんが親方さんに言いつけられて、何か作業をしてらっしゃるのでは? と推測します。


 とにかく、店舗の中にいる方に私の存在をアピールする事にしましょう。


 そう考えた私は陳列台の間を抜け、横開きの扉が開放されていた状態で固定されている店舗の出入口横部分を、軽くノックする感じで右手でコンコンコンと叩き、中に向かって『すみませぇーん』と声をかけてみます。


 私の声に反応して奥でゴトゴトと物音が発生するのを聞きつつ、後ろを横目で確認しますと……コーメェは相変わらず陳列台の上で金属製品と睨めっこ中です。

 先ほどの三角形の物体からは離れ、今度は垂直に立った波打つ棒の様な物体にペシペシ前足を当てつつ、首を左右に傾げながら周囲をグルグル回っている最中でした。


 そのアイテムも何に使うんだろうね?


 見た目で判断できない系統って事は、多分魔法のパゥワァ! で何かしらの現象を引き起こすタイプの物なんだとは思うけれど。未知の物体Xにしか見えない。


 そんな物体Xに果敢に挑む感じのコーメェを眺めていますと『はーい! ただいまお伺いしますー!』と言う声と共に、店内に置いてあった大きい商品の背後から見覚えのあるお顔が出現しました。


 ああ、予想通りアルさんですね!


「どうもです! アルさん!」

「ああ! フワモお嬢さんじゃないですか! スミマセン、今すぐそちらへ行きますんで! 少々お待ちくださいな!」


 再度商品の後ろへ引っ込んだアルさん、ガタンゴトンと周囲の商品を持ち上げて退かしたり棚に積み上げた後、素早い動きで商品の間をスルリと抜け出ると、出入口横にあるカウンターの上に無造作においてあったタオルの様な物で両手を拭きながら、私の方へと笑顔で歩み寄ってきました。


 うむぅアルさん色々と忙しそうですね。商売繁盛ですね。


「お待たせしました! それでーフワモお嬢さん、今日は一体、どのようなご用向きでしょうかね?」

「えっとですね、アウトドア……町の外に滞在して冒険をする際に必要なアイテムを揃えたい、と思ってましてですね」

「なるほど! 冒険で辺境へ遠出する予定でも?」

「ええまぁ、そんな感じ、なのかな?」


 実際には、イベントの際に行く事になる場所がどの様な所なのかは……未だ判明していないのですが。


 それを言ってしまうと、何も準備できなくなってしまいますし。

 大方の予想に基づいて行動しておく位しか出来ませんからね。


 それに外で夜を明かす際に使えるアイテムなら、今後遠出する際にも使える可能性が高いことですし、一度も使わず腐らせる事も多分ないでしょう。


「それならそこの陳列台に虫除けの魔道具がありますよ! サイズと値段もお手頃な人気商品ですぜ!」

「虫!? やっぱり血を吸われたりするんですか!?」

「血ぃ!? いやいや!? 流石に吸血蟲にもなると、魔道具の効果程度じゃ全然撃退できませんですぜ!? 直接手を下しませんと!」


 『大体この辺のサイズまでなら、魔道具で大丈夫ですぜ!』と言いつつ、アルさんが両手を合わせた後、すっと左右に開いて長さを表わして下さいます。


 ふむふむ、多分ぱっと見ですが10センチ位の大きさでしょうか。


 それでも物凄いデカイ気がする。

 そのサイズの蟲が大群で寄ってきたら泣く。

 コーメェ助けてってなる確実に。


 ……いやまぁ、アルさんの口から何か物騒な『単語』が出ていたのを聞き逃した訳じゃないですよ。


 あまり想像したくないと言うか。


 普通に考えて、私の心的状況が嵐の海の如く大荒れになる可能性があるので。

 そう、あえて深く思考したくなかっただけで。


 ……何ですかその『きゅうけつちゅう』ってのは!?


 私が例としてあげたのは『蚊』ですよ!?


 えーっと、そういう、何ともクリーチャーっぽい雰囲気のある名前をもった危険生命体の事を指した訳じゃないんですけれど!?


理想と現実は得てして乖離している物で、即ち諦めが肝心であると言うことなのか!

 いや! 今回ばかりは例の【黄昏の大神】(プログラム主任)様に物申したい!


 そりゃー虫っぽい魔物とか定番中の定番でしょうけれど、女子相手には手加減して欲しい今日この頃であると!


 女子を全力で依怙贔屓してくれても構わないですよ!

 むしろ推奨しますので是非何卒! お代官様!


 脳内スクリーンに映し出される、超巨大な蚊が人の腕に吸い付いてチューチューしている光景を想像して身震いしておりますと、そんな私の様子に首を傾げ不思議がりつつ、アルさんがその虫除け魔道具とやらを陳列台から持って来て見せてくださいました。


「えーと、こいつがその魔道具ですよ! 天辺の部分がボタンになってましてね、ソコをぐっ! と強く押すと効果が発揮される仕組みになってますぜ!」

「なるほど……これが」


 さっき私が撫で回して確認していた、丸い金属物体がソレだったようです。


 おお、ある程度虫から私を守護して下さるという尊きお方のお姿!

 崇め奉りますとも! お値段相応ですけど!

 手持ちのお金が全部飛びますよウン!


 購入するとまた所持金2桁になる可能性を秘めた、その魔道具をじーっと見詰めます。


 ……でも例のイベントページにデデンと表示されていた森の中っぽい画像を見ると、恐らく虫という脅威は確実に存在しそうです。


 あからさまに、あの画像からイベント内容を色々推察してね、っていう感じのヒントでしょうしアレって。


 【黄昏の大神】(プログラム主任)様の手の平の上で踊らされているんでしょうね。


 きっと楽しい踊りになる筈でしょうけれど、楽しむために準備が必要なのであれば、ソレを惜しんではいけないでしょう。


 でも個人的にはお金を惜しみたい。

 ちょちょいと何かすればウン万ゴールド手に入る! とかだったら、そりゃもう湯水の様に消費するんですけどね。


 ああ、私の財布の内容物はまさに夢幻の如くです。

 はじけて消えていく。金銭の流れという面では正解なのかな。

 たははは……世知辛い。


 そんな事を考えつつ、その丸い虫除け魔道具を両手で持って見詰めます。

 構造がどうなっているのかも把握できません。匠の技ですねコレは。


 どうにかお値段のご相談を出来ないものか、と考え込む私の横で……何やらアルさんが首を傾げながら、陳列台から白くて丸い魔道具を手に……魔道具? いや……何かがおかしいぞ!?


「うん? おかしいな、こんな白くてふかふか柔らかい魔道具、ウチで取り扱ってたかな……見覚え無いんだけども……親方に聞いてみるかな?」

「あっ!?」


 手の平の上に白い魔道具というか……ある意味で私の心を掴んで離さない、魅惑の魔道具と言っても過言ではない可能性もある、コーメェのふんわりお尻を……首を傾げつつ左手を顎に当てて考え込む様にジーっと見詰めているアルさん。


 持ち上げられているコーメェ、特に暴れたりせずに『ん?』と言った感じでキョロキョロしています。


 『あれ動いた、稼働してるのか?』と呟いて顎から手を離してモフモフ……とコーメェの背中を揉み始めたアルさんへ、慌てて言葉をかける私なのでありました。

 それは私の相棒です! と。

月曜お休みさせていただきました。


今後もチョイチョイあると思います、ご容赦いただければ。

『しっかり書かんかい!』というお叱りのお言葉もあると思いますが何卒(何


もうアレですかね『その後! 色々ありまして! イベントの日!』とやれば、読者様をお待たせさせないで済むんじゃないでしょうかね(錯乱

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ