207 公式 ページで 悶絶です
ご飯は落ち着いて食べましょう。
情報は大事ですね。
そうと決まれば行動は早いものです。
次回ログインした際、すぐ各種の行動を再開出来る様に、今現在立っているこの場所でそのままログアウトする事にしました。
右手でコーメェを抱えなおして壁に向かった状態でメニューを開き、システムの項からログアウトを選択します。
グースカ寝込んだままのコーメェが、私の右腕に抱えられた状態でスッと消えるのを確認した後……何時も通り周囲の景色が流れていくような感覚を経て、問題なく私は現実世界へとその意識を戻しました。
さてさて! あとはご飯を食べて寝るだけですので、素早く行動して明日の活力へと繋がる睡眠時間の確保へと勤しむ事に致しましょう。
HMDを取り外して取り合えず枕元にポイっと放り投げた私は、ベッドから身を起こしてキッチンへと一直線に移動します。いや、道なりだから一直線じゃないか。
ふむ……部屋の中が暗いままという事は、お父さんはまだ帰宅していないという事でしょう。
そして、ゲーム内時刻が大体お昼前位だったと言う事は。
……うんうん、やっぱり現実での時間は夜の9時前くらいだね。
脳内で予想した通りのログアウト時間に一応満足です。
そして今更ながらお腹の空き具合メーターが、相当危険な状態になっている事に気が付いた私は、お父さんが作り置きしていてくれた、美味しそうなオカズ類をササっと素早く文明の利器である電子レンジでチン! して、ご飯と一緒に胃袋へと叩き込む作業へと従事致しします。
何か汁物があったら良かったんだけどなー何て思いつつ、ソコの所は贅沢を言わず我慢する事にしました。
んーこのほうれん草のお浸し美味しい。
鰹節だって掛けちゃうぞ! ちょろっとお醤油も! 緑黄色野菜万歳だね。
瞬く間に消費し尽されたオカズの乗っていたお皿と、同じ様に空になったお茶碗を前に……満腹感で人心地ついた私は、事前にコップへと注ぎ込んでおいた麦茶をゴクゴクと飲み干して、口の中をスッキリさせます。うむ、麦茶美味しい。
うーん、微妙に食べ過ぎた感じがしますけれど、どうせこの後はやる事をやって気持ち良く寝るだけなので大丈夫でしょう。
食べてすぐ寝ると太るぞ! とか言われそうですけれど……えー軽いストレッチ運動位した方が良いのかな。面倒くさいな。年頃の乙女の言う台詞じゃ無いですかね。
テーブルの上から使用済みの食器とコップを流しに運んで、そのままゴシゴシとスポンジで洗浄を開始しつつ、この後の予定をどうするか脳内で計画を立てていく事にします。
えーっと……折角早寝早起き出来そうな時間帯な訳ですし。
何時までもだらだらーっと起きていたら勿体無いでしょうかね。
と言う事は……まず、先ほど思いついたままに、例の攻略サイトとやらを自分で検索して確認する作業が一つ。
もう一つは、公式ページで発表されている可能性の高い、新規プレイヤーさん参入記念として週末に開催されるという、何かしらのイベントに関しての詳細を確認する作業。この二つです。
食器を洗い終わった私は食器乾燥機へとそれらをぶち込んで、手を拭いて二つの作業を開始する前に、やり残した事は無いか簡単に確認します。
あー……生産用スペースにあった、乾燥する壺が現実にもあったら便利だったね。
食器も手も一瞬でスッキリになりそう。
しかも生き物には効果がない安全仕様。お子様の居るご家庭にも安心。
あんな装置があったら、きっと一般のご家庭にも売れに売れまくるだろうなー、なんて事を何となく思い浮かべつつ、洗面所へ移動して考え事をしつつ歯を磨き、VRゲームの為の調べ物をする作業を開始するべく、HMDを再稼働させる為に自室へと戻る事にします。
うー……暖房が届いていない廊下は、流石に夜になると肌寒いですね。
ゲームイベントに参加する前に、風邪を引いたりしない様に心掛けねば。
体調不良で参加出来ないとか、不本意にも程がありますし。
やる気だけではゲームは出来ないのだ!
まぁ世界は広いですし、体調不良を押して強引に気合でゲームをしている方も多数居る可能性は有りますけど。
真似はしたくないですね。学生の本分は勉強ですしウン。
念の為、パジャマの上にもう一枚着込んだ私は、枕の上に放置しっぱなしのHMDへと手を伸ばして装着、簡易起動してネットの検索を開始します。
よし、まずは検索作業の必要ない筈の公式ページから確認しましょう。
お気に入り登録からVRゲームの公式ページへと移動した私は、流石の私でも気が付く画像の大きさで、トップのページにドドーン! と表示されているイベント詳細についてのリンクを発見しました。
ゲーム起動に公式ページを介さないから、ついつい確認するのを忘れちゃうんだよね。
一応色々なお知らせとか報告フォームとかあるけど、そういった物に用事が無いと見に来る事なんてあまり無いだろうし。
存在感の薄いページだなー……なんて少々失礼な事を考えながら、HMDの機能を通じて浮かび上がった詳細リンク表示へと右手を伸ばしてページを切り替えます。
数秒の読み込み待ち時間の後、目の前に表示されたのは。
……何処か箱庭っぽい場所を、斜め上辺りの空に浮かんだ状態で眺めているような。
そんな感じの見晴らしの良い立体画像。
森と建造物? らしい物が見えますが……一体コレは何処でしょうかね?
指で突いて動かすと、グルグルと回転させて見る事も出来ます。
ほへー良く出来てますね。
でも余りイベント情報には関係のないものなのかな?
一応こういう場所が関係していますよ、っていう事なのかもしれません。
立体モデルを弄りたおした後、表示を下へとスクロールさせて行きますと。
何というか、どばーっ! という擬音がピッタリ当て嵌まるほど、大量の文章が羅列されている場所へと到達しました。
も、もうチョット読みやすい感じで書き記してくれていると助かったのですが。
まぁ文字を読むのは得意ですので良いんですけど、無駄に時間を取られそうですね。
ええい、考えるのは後だ、まず読む! そこからスタートです!
意を決した私は、まずはグリグリと肩や首のストレッチをしてやる気を充実させた後、書き出しの挨拶っぽい部分からしっかりと順々に目を通していきます。
毎度お決まりっぽい、ゲームをプレイしてくれて感謝いたします! 的な文章から始まったソレは、何やら細かい規約の様な物を挟んで文章を続け。
……ええっ!? 『この度開催されるイベントは、政府から正式な認可を受けています』って書かれてるんだけど!?
何々、VRMMOのイベント開催ってそんな大事になる感じなんですか!?
その認可とやらが云々です! といった文章の後に、何かリンクが表示されていまして。
そう……例えば『商取引の規約』だとか『VR法に基づく表示』だのという、どう見てもゲームっぽい情報とは無関係っぽいリンク場所へと繋がるボタンが添付されております。
これはアレかな、表示する義務がありますっていう感じで。
公式ページに書いておかないと、お国の偉い人に怒られるタイプの奴かな?
ちらっと確認してみましたが、どう考えても私には関係なさそうな部分だったので……適当に読み飛ばす事にします。当社がーとか、利用者とはーとか、ソレっぽい事が沢山書き込まれてるページでした。
うん、普通にプレイしているだけの私には必要の無い場所です。
という事で次です次!
難しい事は、そういう事が得意な人にお任せします。
大体1ページ分程、表示を下へとスクロールさせて見ますと……ようやくイベント内容について記載されているっぽい文章が表示された部分へと到達しました。長い旅路だった。
えーっと、なになに? ほほぅ! 開催は日曜日の夕方ね。
体調の優れない方はVR法に基づきイベントに参加できない場合が御座います、という説明も書かれております。やっぱり体調管理は大事だった! 私の直感は間違っていなかったのだ。
そして、イベントは大きく分けて2種類あるようで。
一つは戦闘や冒険に関するイベント、と書かれていて……詳細は開催するまでのお楽しみ! という感じで締めくくられています。なんだろう、強い敵を相手に皆で戦うとかそういう感じの奴なのかな。
もう一つは身体を動かすアトラクションや、簡単なミニゲーム等で遊んでポイントを溜めて景品を貰う、という感じのイベントみたいです。遊園地みたいだね。
どちらも特設サーバーへと移動しての開催となります、という説明が書かれていますが。
ふむ……つまりあれでしょうか、普段冒険している世界で何かする訳じゃなくて、イベント用の世界へと移動してワイワイ楽しむって言う感じで正解なのかな?
ええええ、じゃあラティアちゃんと一緒にアトラクションとかミニゲーム遊んだり! とかは出来ないんだ……ちょっと残念です。
出来たら絶対楽しいのになぁ……うーむ。
でもまぁ、カイムさんはお留守番していてもらう事にしますけど。
いや待て、あのお爺ちゃんは無理矢理ついて来る可能性があったかも。
それはそれで困るね。いろんな意味でね。
その他にも、第一期プレイヤーと第二期プレイヤー、共にどちらのイベントに参加しても大丈夫です、という説明が書かれていますが……えっと? 選択式って事は片方しか選べないって事かな?
戦闘力皆無で生産職である私は、やっぱりアトラクションやミニゲームで安全に楽しく行動できる、遊園地方面のイベントを選択した方が良さそうかなぁ……あっ! 一人で寂しく遊園地で遊んでいる光景を脳内で想像したら、貧弱な私のハートにヒビが入ってきた。胸が痛い。
悲しみ津波が、フワモハートの海岸線を覆いつくしていますよ。被害甚大。
きっとポイントで交換できる賞品が目当ての強靭なプレイヤーさんなら、一人でキャッキャウフフしている光景を他の方に見られても、そのダメージに耐えうることが可能なのでしょうか。
ある意味で尊敬はしますが、ちょっと見習いたくは無いです。
ええい、どうするかはイベントで一体何が貰えるのかを確認してから決めよう、うんそうしよう!
嫌な想像を脳内から追いやるようにHMDをつけたままの頭を軽く振り、冒険イベントと遊園地イベントの説明詳細内に表示されている『特設ページはこちら』というリンクに指を伸ばします。
まず気になった遊園地の方から!
リンクをポチっと押して表示されたページには、何やら的当てゲームっぽい? 物や障害物競走のコース? みたいな場所がトップのページと同じ感じで立体映像モデルで表示されていました。
ふむふむぅ……大体こんな感じなのか。
感心しつつ表示を下へスクロールさせてみますと……えーと、ちょっと全然情報が載っていないのですけれども。どういう事なの。
事前情報はなるべく伏せて、当日ビックリさせるという手段を取っているの?
チョロっと情報とは言い難い感じで短く記載されていたのは『交換で貰えるアイテムはどれも便利なものばかり!』とか『色々な課金アイテムを無料で貰えるチャンス!』とかいう文章。
あー、そっか課金アイテムかぁ!
あれかー、きっと月曜日のメンテナンス後から開始してるんだね課金コンテンツ!
全然気にしていなかったから、プレイ中も全く気が付かなかったよ……何時も通りの迂闊。
集めたポイントを競う総合ランキングも開催! こちらも豪華賞品が! みたいな事も大々的に書いてありますね。こういうのをみてやる気に満ち溢れる人が沢山居そう。
うむぅ……なんというお祭り気分なイベントでしょうか。
それにしても……一体どういったアイテムが貰えるのか全然判明していない所が中々憎い。
否が応でも興味を惹かれますよね、こんなの! 情報を寄越すのだ。
最後に、新規プレイヤーさんにも安心して楽しんでいただけるコンテンツです! 見たいな締めくくりの言葉でもって、アトラクションイベント特設ページの表記は終わっておりました。
最後に残るのは『元のページへ戻る』のボタンのみ。
うわぁ……情報が少なすぎて凄く気になる。まんまと踊らされている感です。
あれです、お腹減ってる時にちょっとだけ食べたら逆に辛い、みたいな。
色々小出しに情報を脳に叩き込まれ、悶々とした心持ちになった私でしたが……もう一つの冒険イベントの方に関しての詳細を見てませんし、そちらを確認してからベッド上で悶絶する事にしました。悶絶する事は既に確定です。
くっ! やってくれるVRMMOめ! ぐぬぬぅ!
元のページへと戻った私は、素早く冒険イベントの特設ページへのリンクを選択します。
もう気になって仕方ないですよ。情報を! 情報をぷりーずですぅ!
読み込みを待つ事数秒、先ほどと同じ感じで眼前に表示されたのは……何やら自分が森の中に佇んで周囲を見回しているような、そんな位置取りに見える景色の立体映像。
これは……冒険する場所には森が広がっているという事でしょうか。
しかも大分鬱蒼と茂っていますので、見通し悪そうです。
この立体映像もグリグリと回転させたり出来ました。あっなにか動物っぽいのが居る!
いやいや違った、そうじゃなくて情報を確認せねば。
立体映像を回転させている最中、黒い狼っぽい生き物がこっそり茂みに隠れているのを見つけて喜んでいた私でしたが……そうじゃない、いま確認するのはそういう隠し要素ではなくて。
立体映像で遊ぶのを止めて表示を下へスクロールさせます。
というか……まさか冒険イベントでこの黒い狼と戦ったりするんだろうか。
あそこに表示されているという事は、十中八九そうだよね。恐ろしや。
自分が狼に飛びかかられている状況を想像して身震いしつつ、スクロールさせた先に表示されている文章を確認します。
こちらも遊園地イベントと似たような感じで、大分情報を絞っている印象を受けますね。
まぁ詳細を全部表示してしまったら、ある意味面白くないからなのかな?
特に、冒険心溢れる玄人なプレイヤーの皆様には。俺に任せておけば万事オッケー的なノリで行くんですよきっと。
このページも、先ほどと同じ様に少量だけ情報が記載されておりまして……例えば『未開の地での冒険をあなたに!』とか『貴重な素材や宝を手に入れろ!』という感じの煽り文があったりするだけで。
気になるのが、特別フィールドへ持ち込めるアイテムに制限があります、という一文が大きめの赤い文字で表示されている所。
ふむ、サバイバル感を演出する為の制限かなぁ……これは大変そうだ。
でも、貴重な素材という部分に少々惹かれるものがあります。
お薬の材料だって当然入手できますよねコレは。
アイテムの持込に制限って事は、回復アイテムも現地で補給しろって事だろうし。
そうだ、森だからキノコとか沢山あるかも。ちょっと楽しそう!
問題は私が生き残れる環境なのかと言う点で。はっはっは。
文章の最後は『プレイヤーの冒険進行状況によって、状況が随時変化するぞ!』という、何とも不穏な一文で締めくくられておりました。うわぁ何々!? 嫌な予感しかしないんですけれども!?
でも……こういう文章を見て、俄然やる気を充填させていくツワモノプレイヤーさんはやっぱり沢山居るんだろうなぁ……甘いな俺が状況を打開してやるぜ! みたいな感じで。
リーダーシップ最強。私は傍観する立場で良いです。
村人A位の雑さで。いや、この場合は冒険者Aか。たいして変わらないね。
平穏でありたい、という願いを籠めつつ両目を閉じた私でしたが、目を開いて特設ページの一番下へ視線を向けますと……『新規プレイヤー様でも参加できますが、難易度は高めですので是非パーティを組んでの参加をお勧めします』と米印付きで追記が書いてありました。
そりゃゲーム開始して間もない頃に、いきなり未開の地でサバイボゥ! 生活する訳だし、一人で突撃したら呆気なくやられちゃいそうだよね。
こっちのイベントも何やらランキング? があるみたいで……順位に応じて各種賞品が配布されるという事でした。うわぁ……これは、確実に凄腕なプレイヤーさん達の大活躍が見れるんじゃないですかね!
しかも各種ランキング、という表示があると言う事は何種類も競い合うポイントが存在するようなのです。
これって、複数入賞とかしたら凄い事になるんじゃ……まぁ私にとっては天空の領域の出来事ですね。見上げるだけで首が痛くなりそう。
どうしたものか……と考え込みつつ『元のページへ戻る』のボタンをポチリ。
一体どちらのイベントに参加したら良いものやら……と、HMDを装着したままベッドにボスリ! と横になって唸っておりますと……戻った先、トップページの一番最後の方にこんな一文が。
『未開の地でのイベント中に死に戻りしたプレイヤーは、未開の地フィールドから退出する事になりますが 残り時間を利用してアトラクションイベントへの途中参加が可能です!』という物。
あっ……そうなんだ!?
最初からアトラクションの方をプレイしている人には、恐らく稼いだポイントは追いつけないからランキングは絶望的っぽいけれど、未開の地へ行って開始5分でやられた! 私のイベント終了! とかじゃなくて、引き続き参加は出来るんだね!?
ならば欲張りさんな私がやる事は、もう一つじゃないですか!
お役立ちアイテムとか課金アイテムというお言葉にも少々心惹かれますけれど、ゲームプレイヤー、そして生産職のフワモとして頑張るのであれば冒険イベント、つまり未開の地へと珍しい素材を求めて探検へ繰り出すのが正解では! だよね!
改めてそう考えると、何だか自分でも非常に納得出来ます。説得力激高。
うむうむ、という事で!
恐らく、と言うかほぼ確実に魔物にやられてしまう事前提ですが!
冒険イベントで未開の地でサバイボゥ! する事に決定です!
冒険の方で失敗したら、その後はアトラクションで楽しみます!
初の【死に戻り】がイベントだなんて、一応プレミアム感しません? しないか。
よーし、まず一つ目の案件が無事解決、したのかな!?
次は攻略サイトとやらを探し出して、一応確認するのです。
※ 追記 ※
ご指摘の誤字等修正&全体的加筆と文字削除等の手を加えました。
微妙に眠いときに書いたので、少々おかしい所が多かった……読みやすくなっていたら幸いです。




