表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/256

020 公園と調薬 そして 出会い

フワモさんついにポーション作成。

 無事町へとたどり着いた私は、ガルドスさんへの挨拶と共に水場がどこかにないかお伺いを立ててみます。お話によると、町の色々な場所に共用の井戸や湧き水を利用した水汲み場が点在しているという事でした。

 でも、ポーション生産をしようとするとなると、機材をおいて作業出来る場所の確保も必要になりますよね。


 水の取得できる場所の情報を下さったガルドスさんへお礼を言いつつ、手を振ってお別れいたします。

 マップを眺めて調薬キットが置ける場所を確保出来て、ついでに水も手に入れられそうな、そんな便利な場所が無いか探しに掛かるとしましょうか。


 通行人の邪魔にならないよう、人通りの少ない路地に面した道端に座り込んだ私は、マップを拡大させてグリグリと動かしつつ、町の施設を確認します。


 町の南側に【生産用スペース】という広場があるようですが、使用するのに少量のお金が必要のようです。一文無しの私では使えない場所ですね。どうしたものか。


 他に何か良い手段がないか考えつつマップを見ていると、町の北東に公園があるのを発見しました。

 公園だったらスペースは有るだろうし、お水も手に入るんじゃないかな?

 水のみ場とかあるよねきっと!


 立ち上がって服に付いたほこりを叩くと、マップを確認しつつ公園のある場所へと歩みを進めます。マップ見ながらだと歩いてる人に衝突しそうになるので気をつけないとね。


 人気の少ない路地に入った私は周りを見ながら歩いて行きます。この辺りは民家のようですね。


 すこし坂道になっている路地を登り、大きく曲がったカーブを抜けますと。


 ありました、あまり大きい規模ではありませんが確かに公園です。

 古ぼけたブランコに滑り台などが設置されている横に、ありました! チョロチョロと湧き水っぽいものが流れ続けている、水飲み場を発見いたしました!


 ベンチに座ってゆったりと煙草を吸っているお爺さんの前をペコリと頭を下げつつ通り過ぎ、休憩場所として設置してあるのでしょう、据え付けのテーブルと椅子へ向かい【初心者用調薬キット】を設置いたします。


 普通に街中だけれどポーション作成しても大丈夫かな? 取り合えず、匂いとか煙とかが出たら即刻作成を中止して、お水だけ持って帰る手段を考えましょうか。


 【初心者用調薬キット】から水を汲めるビーカーの様なガラス容器を手に持って水を汲みに行きます。

 突然現れて不思議な機材を取り出し、水を汲み始めた私の事を砂場で遊んでいた子供さんが、興味深そうに見ているのが視界の端を掠めました。


 ううむ、ちょっと恥ずかしい。

 でも、お金もないし此処で【調薬】チャレンジしちゃいましょう!


 ベンチに座っているお爺さんの様子を窺ってみても、特にここで生産をする事に対して注意してくる様子もないので大胆に行きます。理科の実験みないな感じだから許されているのだろうか。


 でもわざわざ生産用スペースなんて作られているくらいだから、こういった公園みたいな場所でアイテム生産する事は一般的ではないのでしょうね。


 水を汲み終わった私は休憩用スペースへと戻ると【調薬】を宣言、ライフポーションの作成方法を確認しつつ作業に入る事とします。


 えーと、まずは薬草を白い容器の機材に入れて磨り潰す、と。


 ゴリゴリと薬草を磨り潰し用の棒で押しつぶしながら細かくして行きます。

 余り力を入れているつもりは無いのですが、みるみる薬草がペースト状になっていきますね。

 これもシステムの力か! 有り難いです。


 次は簡易魔道コンロ? のスイッチを入れて、薬草のペーストを煮込む、と。


 手順どおりにペースト状に磨り潰された薬草を水の入ったガラス容器に沈めると、丸くて魔方陣のようなものが描かれている機材の上に乗せます。えーと、このコンロの使い方は……

 あ、ちゃんと捻る部分が付いてる。ガスコンロだね。


 グリっと火力調節用だと思われるツマミを捻ると魔法陣が赤く光り輝きます。

 手を近づけてみましたが熱くはありませんね。


 IHみたいなタイプなのかな? と思っていたら、もうガラス容器から水蒸気が出始めたではありませんか! うわぁ凄い! お湯沸くのめちゃくちゃ早いよ!


 と、目を凝らしてビーカーを見ていると、コンロの横にうっすらと半透明の棒ゲージ? のようなものが出現して、ジリジリと上昇しているのが見えました。

 上の方が赤くて中央は緑、下のほうは黒くなっていますね。


 これは水の温度かな? 恐らく適温が真ん中という事でしょうか。火力調節は大事ですよね。


 ゲージが上に上がり過ぎないようにグリグリと火力調整をしつつ、備え付けのガラス棒で容器をグルグルとかき混ぜて見ます。うーん、作業してるって感じだ。意外と楽しいぞ!


 ゴミのようなものが浮いてきたので小さいオタマのような物で掬って……捨てる先を考えていませんでした。あー、これ地面にポイして良いのかな。


 流石に地面にポイは不味そうですので、水飲み場の排水溝へ向かってパシャっと廃棄してみたところ、空中で七色の光になって霧散してしまいました。おお!? どうなってるんだろう?


 それから、数度浮いてきたゴミを廃棄していますと……数分位で薬草ペーストが少量のカスを残して溶けて、お湯の色が赤くなりました。これは見覚えのある色です。例のスイカ味の色ですね!


 えーと次は、色が変わったら魔道コンロを停止させて冷ます、と。


 コンロのツマミを初期位置へと戻すと魔法陣の反応がピタリと止まります。レスポンス良いなぁ。

 ポーションの素が冷めるまで時間を潰さねばなりませんね。

 アイテムボックスでも整理しましょうか。


 そう思って顔を上げると、さっきまで砂場で遊んでいた子供さんが、何やら瞳を輝かせながらビーカーを覗いていました。

 うわぁびっくりしたぁ!?


「おねえちゃんなにしてるの? ジュースつくってるの?」


 珍しそうにガラス容器に入った赤い液体と私の顔を交互に眺めつつ、砂場で遊んでいた子……ピンクのワンピースを着た青色の髪の小さい女の子が、くりくりとした髪と同じ青色の瞳を此方に向けて声をかけてきました。


 耳と尻尾がありますし、この子は獣人さんですね。おそらく猫の獣人さんだと思います。

 ほんのりと首を傾げつつ私の言葉を待っている女の子の尻尾が、くねくねゆらり……と滑らかに動いています。触りたい。いやいやいかん事案になっちゃう。


「あ、えっとね、これは傷を治すお薬を作ってる途中なんだよ」

「へぇー、メディカおばあちゃんちみたいだねぇー」


 尻尾の動きを視界の端に収めつつ、女の子へ答えます。


 メディカさんと言うのは猫人さんのお婆様のお名前でしょうか。

【調薬】のスキルをお持ちなのかな。いろいろとお薬についてのお話を聞いてみたいですね。

 お年を召している方でしょうからきっと興味深いお話を沢山聞けるのではないでしょうか。


「あ、まだ熱いと思うのでそのガラスの入れ物に触らないようにして下さいね」

「はーい! ねえねえおねえちゃん! おくすりつくるのみてていい?」

「うぇ!?」


 ワタクシの様な【調薬】初心者のライフポーション作成など、見て面白いと思っていただけるのでしょうか。というか猫人さんのお婆様の方が確実に凄腕なのではなかろうか、と思うのですが!?


「えっと、あまり見てて楽しいものでは無いかも知れないですけど」

「だいじょうぶ! あかいおくすりはみたことあるけど、つくってるところみたことないもん!」


 左様で御座いますか。判りました、不肖ながらこの【調薬】初心者フワモ、全力でライフポーション作成を実行したいと思います。


 こうやって見ていただけたら猫人さんも【調薬】に目覚めていただける可能性が。あるかな?

 などと思考していた間にポーションの素から上がる湯気が消えていました。

 えええ冷めるのもはやっ! なんだろう、この容器に秘密があるのかな!?


 ツンツンとガラス容器をつついてみましたが、ちゃんと熱は飛んでいるようですね。

 猫人の女の子も真似をして容器をつんつんしています。かわいい。和みますね。


 えーと、次はろ過機を通して不純物を分離させる、と。


 容器を手に持って網状のろ過装置? っぽい機材にゆっくりとポーションの素である赤い液体を流し込んでいきます。下の容器に流れ落ちた液体は澄んだ赤色をしていました。

 これって途中でこし取られたゴミはどうなるんだろう? あとで洗ったら大丈夫かな?


 最後は、ポーション容器に液体を入れて封蝋で密封する、と。


 機材についていたポーション容器に赤い液体を流し込むと、白くて丸い蝋の塊を開口部分に押し込んで蓋をします。

 猫人の女の子も興味があったようなので、ポーションを流し込んだ容器と丸くかたまった封蝋を渡してあげました。嬉々として塊を容器にねじ込んでいます。


 これは【調薬】の才能ありですかね、うむ。


 と、一つ目のポーションを作り終わったからでしょうか、いつものピロリン♪という効果音が。

 とりあえず、クエスト完了は後にしましょう。小さなお客様もいらっしゃいますし。


 それにしても、このポーション容器と封をするための蝋の塊、どちらもケースから取り出した後に七色の光が収束して新しいのがケース内に補充されるんですが。スーパーテクノロジー。


 取り出した容器は、ポーションを注ぎ込まないと一定時間で消えてしまうようですけれど。

 これは有能すぎませんかね【初心者用調薬キット】さん。


 私がポーション容器を取り出しては消して【初心者用調薬キット】の性能を確かめていたら、猫人の女の子も真似をしてポーション容器を取り出しては消して遊び始めました。これガラスみたいに手切ったりしないかな? 身体に衝突させて割っても問題ないって【ガイド】さんが言ってたし危険はないのかな。


 そう思いつつ残りのポーションの素をビンに詰めていたら。


「ラティアちゃんや、そのビンは取り出すときに魔法の力を消費するでのぅ 遊びすぎると眠くなっちゃうぞぃ」

「あ! おじいちゃん! おたばこはもういいの?」

「ああ、しっかり一服つけてきたから大丈夫じゃよ」


 いつの間にか、先ほど公園のベンチで煙草を吸っていらっしゃったお爺さんが、女の子の後ろに立っておりました。

 魔法の力? マナを消費して作ってるのかこのポーション容器。一つ賢くなりました!


 一応ステータスを確認してみると、確かにマナを表すバーが減っています。同じくスタミナも減っていました。こちらは【調薬】の行使で減ったのかな。両方二割くらいの減少ですね。

 でも、マナを使いすぎると眠くなるのか……戦闘中に「うっ! 力を使いすぎたようだ……すまない」と言いつつバッタリ意識を失ったりするんでしょうね。魔法を覚えるときはマナの残量に気をつけましょう。


 とりあえず薬草十個消費でライフポーション十本出来ました。薬草1=ポーション1ですね。

 【初心者用調薬キット】の洗浄は後でやろうと思い、機材をアイテムボックスへ仕舞っていますとお爺さんが声をかけてきました。


「ラティアちゃんと遊んでくれて、どうも有難うの、お嬢さんや」

「いえいえそんな、気になさらないでください、なんだかリラックスして作業できました」


 非常に目の保養になりました。ふわふわの狐尻尾も良いけどゆらゆらと動く、猫さんの尻尾も魅力的ですよね。変な意味ではないですよ。


「それはそれは ほれラティアちゃんもちゃーんとお礼を言うんじゃよ?」

「おねえちゃん! ありがとうございました!」


 猫人の女の子、ラティアちゃんが両手を後ろにグワっと振りつつ、もの凄い勢いでお辞儀をします。頭クラクラしないのか心配です。

 その手には、先ほど封蝋をしてもらったライフポーションが握られていました。そうだ! 折角ですし記念にプレゼントしようかな!


「いえいえ、お粗末さまでした! そのポーションは仲良しになった記念にあげる!」

「いいの? わーい! やったぁ!」


 ラティアちゃんが嬉しそうにポーションビンをぶん回します。危ない危ない、危険が危ない。


 そんな光景をお爺さんはニコニコしながら眺めていました。

2019/06/06 追記

ご指摘のあった誤変換部分を修正致しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ