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002 ゲーム開始 アバター作成 01

色々と不慣れな部分が御座います、ご容赦の程を

 帰宅した私は自室のベッドに腰掛けた状態で、ゲームの機械をひざの上に抱えております。


 なにやら、側面の小さなディスプレイがチカチカと明滅していたので、何事かと弄繰り回していたのですが。装着してみればわかるだろう! と気が付いたのはちょっとしたハードカバーの小説ほどもある、ゲームの機械の取扱説明書を読んでいる最中でした。あせり過ぎだろう私。


 実は簡易VR機能によるオンライン説明書も完備されておりました。

 まぁその機能を使ったことはありませんが。


 そそくさと機械を装着した私は、どうせなにかのエラーだろう、と大して期待もせずに表示されているメニューを指でさわります。一体何事でしょうかね。

 そして目の前に表示される封筒のマークと一文。


 【メールが一通届いております。】


 思わず二度見です。


 とはいっても、ゲームの機械は頭にかぶるタイプの形状をしているので、首を振っても視線は外れませんから『二度見』というより『疲れ目の瞬き』というか『ん? 目の錯覚かな?』的な動きになったのですが。


 そう……それは男子クラスメート達がVRMMOとやらについて、熱く語らいあっていた日の夕方のことでした。


 彼らは昼休みも終了し、始まった午後の授業中もなにやら手元の端末をゴソゴソと弄っていたので、話に出ていたVRMMOとやらの情報収集をしていたのかもしれません。

 私? ちゃんと真面目に授業をうけていましたよ。


 外見上は。地味にそわそわ。


 その後滞りなくすべての授業を終わらせた私は、そそくさと帰り支度を終えて近くの席のクラスメートに帰宅の挨拶を済ませると、足早に自宅へと向かうのであった。ちょっと小走り。

 どうせ届いていないだろう。まさかそんな。いやしかし。まあまあ待ちなさい落ち着くんだ。


 ほんのりとした期待を胸に帰宅すると、待っていた状況がこれであったのでした。


 メールの内容はいたってシンプルなものでした。クラスメート達が話していた内容とほぼ合致。


 【ふわもこファーム】の運営会社の名前から始まり、新しいVRMMOがサービス開始されることや、このメールは、当社のサービスを長期にわたってご利用いただいた方に送らせていただきました、等の文章とともに一つのアドレスが記載されていたのです。情報どおりですね。


 一体どういった内容のゲームなのだろう、と思いつつアドレスをクリック。

 移動した先は簡素な入力フォームが設置されているだけ。

 説明文を目で追いつつゲーム開始に必要なログインIDとパスワードを入力設定しました。


 さて、勢いで登録してしまったのですがゲーム内容がまったくわかりません。


 ふわもこ要素はあるのでしょうか。あると信じたい。


 そんな思いを馳せつつ、入力が終了したページを閉じようと思っていたのですが。

 入力終了後にゲーム概要という四角いボタンが現れ、ピコピコと点滅を繰り返していました。ゲーム映像とかみれるのかな?

 ためらいなくボタンに指を伸ばすと、ゲーム画面と思われる簡単な画像と内容を説明する文章が色々と書いてあるだけでした。


 動いている映像はないのか。残念です。


『あなたはこの世界で暮らす冒険者となってさまざまな体験をするだろう』


『武器や防具、さまざまな道具など膨大なアイテムを作成可能!』


『ゲーム内NPCは最新AIを搭載! 会話も可能!』


『プレイする人によって千差万別の楽しみ方のできるゲーム』


 などなど、煽り文句が散りばめられた説明文をじっくりと読み込む。


 ふむふむ、要するにファンタジー世界にいって色々できる! ということですね。

 【ふわもこファーム】では果物の木を育てていましたし、植物を育てたり色々な物をつくったりしてみても楽しいかもしれません。とはいっても【ふわもこファーム】の植物育成は水をやって肥料をまくだけ、という簡単なものだったのですが。


 さて、そうこうしているうちに日は流れ、新VRMMOのサービス開始の日と相成りました。

 学校から戻った私は、いそいそとゲームの機械をかぶりベッドに横になります。


 そうそう、MMOというのは『大規模な多人数接続型のオンラインゲーム』という意味がある略語の様でした。なるほどなるほど。

 【ふわもこファーム】のように箱庭内のみで完結するようなゲームではなく、リアルタイムで他のプレイヤーとの接触や会話交流が可能、なゲームということですね。


 うん、難易度高い。


 年末の法事で、見たこともないような親戚連中に囲まれつつ、愛想笑いを振りまいていた胃袋マッハタイムを思い出して非常に、そして無駄に緊張。ゲームなんだからリラックスせねば。

 いや、私はコミュ障ではないとおもう。思いたい。


 クラスメートとは良好な関係だとそう思いたい。


 自室でベッドに横になりつつ唸り声を上げていた私の意識は、唐突に真っ白な空間へと飛ばされました。

 ゲームに関係ない思考に飛びまくっていた私は、公式サイトからダウンロード済みの新VRMMOソフトを起動しっぱなしで待機していたのをすっかり忘れ、あれこれと悩んでいる最中に意識をVR空間へと移すのであった。


 これからゲームだというのになんと言う思考。ワレながら天晴れ。褒められた事ではないですが。


 キョロキョロと辺りを見回していると、目の前に一人の女性が姿を現しました。

 うわー凄い綺麗ー見た目カクカクしてないよーわーぁ!


 などと【ふわもこファーム】の絵本的な朴訥とした環境を思い出し、感慨に耽っていたら女性がこちらに声をかけてきました。


「ここでは、このたびサービスを開始いたしましたcompound world onlineでのお客様の分身となるアバターの作成をいたします」


 そういって、手元から薄い透明な板のようなものを私のほうにスッっと滑らせてきた目の前の女性。

 黒髪ロングで服装はなんというかファンタジー! というか民族衣装! っていう見た目のすらっと背の高い、可愛いというよりカッコイイ! といった感じの方。


「そちらのコントロールパネルを操作することで、見た目や種族などを設定することが可能です」


 そう説明されたので、目の前に表示されているA4サイズ程の透明な板のメニューを確認することにしました。

 身体サイズは5センチ前後なら変更可能と。説明文によると、あまり大きく変更するとゲーム内で違和感があるため、2メートルの巨体や50センチの小人! みたいな極端な変更は無理だという事。


 とりあえず、身長はそのままで行きます。


 次に種族。『人間』はまぁそのまま人間のようです。

 何事も程よくこなせてさまざまなスタイルに対応可能と。


 次は『獣人』という種族。

 猫や犬のような耳とシッポが身体特徴で主に身体を動かすこと全般が得意で、基本的に魔法をつかうのがちょっと苦手、ということらしい。ふむふむ。


 魔法。楽しそうな響きです。


 最後は『精霊族』という種族。

 魔法が得意な個体や道具作成が得意な個体が存在するらしく、特色に関係するもの以外の能力は平均より少し下くらいになるそうです。

 映画などで見たことのあるエルフやドワーフ? っぽい映像がパネルに浮かんでおります。

 ふむふむなるほど?


 あとは『ランダム決定』なんていう、ギャンブラーの方々にはたまらないであろう種族が。

 一部通常選択できない種族が現れる、という一文が書き添えられています。

 うーん、まさしくカジノルーレット。


 私が右へ左へと首を捻りつつ種族の特色を吟味していると、黒髪の女性からお声が。


「なにかご質問等ございましたら、お伺いいたします」


 あっと、気を使わせてしまったかな? というかこの人AIなんですよね? 凄い性能だなぁ……


 中に人とか入ってないですよね? 着ぐるみ的な意味ではなくて操作的な意味ですよ。

 とりあえず中の人疑惑を解消するために、質問をしてみることにしました。


「お姉さんのお名前はなんというのでしょうか?」

「名前ですか? この世界での呼び名は持ち合わせておりませんが、開発ネームは『システマ』と呼ばれておりました」

「そうなんですか?」


 こんなに流暢に会話できるのにお名前がないとか、なんだか色々と勿体無いような。


「私がこうしてお客様の前に現れるのは、現在進行中のアバター作成時か、アバター消去及びゲーム権利を放棄なさるときしか御座いませんので」


 うわぁ、見た目凄い美人で『出来る女!』というオーラをかもし出しつつ笑った顔がチャーミングな、こんなお姉さんがゲーム内にはいないとか色々と勿体無いような。


 本当にこの最初のデータ作成のタイミングのみの登場なんだね。美人の無駄遣い。

 色々と容量とか大丈夫なのかな。AI凄いね。


「ゲームの世界ではお会いできないんですか?」

「はい、私にはcompound world onlineへの直接行使権は認められておりませんので……」

「あっゲームに関係ない質問ばかりすみません!」

「いえ、お客様との会話が私の使命です。問題御座いません」


 いかんいかん、受け答えが自然だから脱線しまくってしまいました。

 私の謝罪に対してにっこりと微笑み返してくれる『システマ』さん。うん、すごいねVRMMO。


 さて! 私の分身の作成と参りましょうか。

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