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191 とても 気さくな お三方

こんな所でこんにちわ。

 念の為に、リビングのテーブルの上に積みあがっているお手紙の束の横に『ゲームしています』という非常に判りやすい書置きを残しておきました。これでお父さんがお仕事から戻ってきても安心です。


 それでは念願の! と意気込んでHMDのチェックを済ませた私は、配線関連をしっかり確認した後にパパっと頭部へと装着、ベッドの上へと横になりすぐにでもゲーム世界へとログイン出来る準備が完了しました。


 えーっと、他にやっておくような事は無いよね?

 お腹は減っていないしー空調もいい感じに調節したし。

 おトイレも済ませたし。うん大丈夫かな。


 それではお待ちかねのVRゲーム開始と行きましょう。


 ちょっとだけドキドキしながらゲームを起動……したのですが、HMD内にダウンロードされているデータを更新するようで、暫くお待ち下さいという文字が表示され、その下には10%という数字が現れました。


 あーそうか、そうだよね。ちょっと待たないと駄目みたいです。


 完全にゲームをプレイする気持ちになっていたので、タイミングを外されてちょっと気が抜けてしまいました。でもまぁ時間が空いたとしても他にやる事も無いので、このままの体勢でノンビリ横になって待つ事にしましょう。


 そして待つこと数分程度でしょうか。

 HMDの表示に『データ更新完了』の文字が出現し、何時も通りの真っ白い空間へと意識が飛ばされます。


 あー、さっきの空き時間に公式サイトとかを覗いて、どういう変更があったのか確認しておけば良かったかな。いやでも公式サイトで文字ばっかり読んでいても仕方ないかな? とにかくプレイしてみればきっと何か判る筈! というかもう待てません。突撃です突撃。


 毎度お馴染みのパスワード入力を済ませ、もう毎度お馴染みになっている送受信データの確認とやらが終了した後に、今度はHMDクライアントデータの確認という文字が記載されたメニュー板と、その下にジリジリと伸びている棒ゲージの表示が続けて現れました。何でしょうかねコレ。


 今回のアップデートで追加された要素でしょうか。


 特に此方から何かアプローチを仕掛けるような物ではない様なので、暫く待っておりますと、表示された棒ゲージがニューっと伸びていって100%に到達しました。


 その後『確認が完了しました』という表示が……あっ、取り合えずこれでオッケーなのかな? 何だか良く判らないですが。きっと必要な事だから増えた作業でしょうし、問題はなさそうかな。


 確認完了って事は異常は認められなかったって事だよね、うんうん。

 ぱっと記載された文章が切り替わったので、目を通してみる事にします。


『HMDで他のプログラムが起動していると ゲームが正常に起動しませんので お気をつけ下さい』


 ふむふむ? 何がどうなってるんだか良く判らないです。

 平行して何かしちゃ駄目だよ? って事でしょうか。だよね多分。


 私的には全く問題ない状況なので、メニュー板の右下にある『閉じる』ボタンをおしてメッセージを終了させます。その後、何時も通り周囲の景色が切り替わっていくのが確認できましたので、普段通り両目を閉じてゲーム世界へと移動するのを待つ事にしました。


 数秒後、周囲からガヤガヤとプレイヤーさんの声と思われる会話が聞こえ始めました。

 うん、やっぱり私の予想通り魔素迷宮の入り口前は人だらけになっているっぽいですね。


 素早く両目を開いて周囲を確認、壁際に出現した私の方を見ている人は特に居ないようです。何か正面にメニュー板が表示されましたが、取り合えず後回しです!


 まずはメェを探さないと!

 えーっと!? メェは何処に居るのかな?


 周囲を見回し始めて数秒後、私の左側の床部分に光が集まって、毎度お馴染みな独特のフォルムをもつ相棒のメェが出現しました。その背中の毛に大量のマナポーションを突き刺した状態で。


 キョロキョロと周囲を見回したメェ、すぐ横に居る私に気が付いた様で『メ!』と鳴き声を上げて、挨拶する様に右前足を上げました。


 やったぁ! 成功だ! メェ式収納術の開発に成功したぞ!


 人目に付くと怪しい魔物が侵入したと思われ、攻撃されてしまう可能性がありますので、しゃがみ込んでメェを壁と私の体で挟み込む様に隠してから、両手でメェの毛に差し込んでおいたマナポーションを引っこ抜いて、適当に身体の何処かへ突っ込む感じで強引に収納します。


 うむぅー!? 収納できる場所が少ないぞー!?

 ええぃ! メニュー板邪魔、消しとこう!

 いいや! もう取り合えず襟元から服の中に突っ込んでおこう!

 あとベルトの隙間に何本か……よし、コレでいい!


 ゴソゴソと壁際で怪しい動きをしている私でしたが、どうやら特に目立っている感じではなさそうです。というか、多分皆さんアップデート後にどういう変更があったのか、詳しく確認する作業をしているのかな?

 前回見かけた感じで壁際に露店を開いている方以外は、手元でメニューを開きつつ数人で会話しながらアレコレと意見を交わしている方々ばかりでした。


 私と同じ位の時間帯にログインしていると言う事は、皆さんも学生だったりするのかな。


 おっと、今はそんな事考えている場合じゃなかった。

 メェの所在と、この服の中でゴリゴリいってるマナポーションをどうにかしないと。


 今はとにかく、ちょっと落ち着いた所で一息つきたいので、このプレイヤー満載な魔素迷宮入り口前から脱出する事を最優先としましょう。


 メェに静かにしててねーと小声でお願いしつつ、両手で抱えて持ち上げ、そのまま外へと続く次元の裂け目へ身を投じます。


 その瞬間フワっと流れてくる空気と、頬っぺたに感じるヒンヤリとした肌の感触。

 あれ、空気が冷たい?


 もしかしてアップデートで寒さの感じ方が変わったのかな?

 雪山とか行ったら物凄い寒かったりするのかも!?

 いや、でもこれ判りやすくて丁度良いかもしれない。


 魔素迷宮へと続く次元の裂け目前にも、そこかしこで地面に座って楽しそうに会話しているプレイヤーさんが居るのを横目で確認しつつ、一旦人気の少ない場所へ移動しようと思い、次元の裂け目から壁伝いに人気の少なめな右の端へと向かいます。ついでに暖房具のスイッチもカチリ。


 んーっと? この辺りにもちょっと人が居ますけれど、湧き水に近い左側よりは人が少ないかな?


 私の両腕に抱えられて大人しく巨大な毛玉になっているメェを、しゃがみ込んでポヨンと地面へ下ろし、さてさて、このお腹の辺りでガラゴロいっているマナポーションの行く末を、どう決定するか決めねばなりません。


 このままでも一応大丈夫ではありますが……攻撃とかを受けてしまうと割れて大変な事になりそうでチョット怖いですね。痛くは無いのでしょうけれど。無駄に消費するのも勿体無い感じが。


 メェに差し込んだまま移動してもらうのが一番良いのかなぁー?

 なんて考えながら壁に向かってブツブツ呟きつつ思案しておりますと。


 ポンポン、と私の右肩が何かによって叩かれます……うんん!?


 ビックリしてオデコを壁にぶつけてしまいました。

 うぇぇー! 痛みは殆どないけど、ぶつけてしまったと言う事実で涙目!


 というか一体何事がどうなって私の右肩に打撃が!?

 オデコを擦りつつ振り返りますと……そこには数人の男性が立っておりました。


「うわぁ驚かせてスマン! オデコ大丈夫かお嬢ちゃん!?」

「おお! やっぱり何時もの嬢ちゃんじゃないか!」

「こんな所でなにやってるんだい!? 一人で来たのかい!?」

「うぇ!? あっえーっと!?」


 ワラワラと投げかけられる多数のお言葉に、思わずオデコを押さえたまま硬直していた私ですが……あれ、この声には何だか非常に聞き覚えがあるんですけれど。

 オデコを擦っていた右手を下げ、私に声をかけてた男性の顔をもう一度ジックリと確認します。


 ……あー! 串焼きお兄さんの露店の所によく居るお兄さん方じゃないですかー!

 こんな所で出会うなんて奇遇ですね……多分この魔素迷宮を攻略しに来たのでしょうかね?

 皆さんとても気さくで明るくて、凄い良い方々ばっかりなんですよ! 串焼きお兄さんのお店でお買い物するときにも、何度かお世話になりましたし!


「あー! ど、どうもこんにちわぁ! あっオデコは大丈夫ですハイ!」

「いやぁー本当にごめんよぉ、驚かせるつもりは無かったんだが……」


 私の右肩をポンポンしてきたと思われる、前に私の尻尾が粗相をしてしまった、確か串焼きお兄さんがカレーを販売していた時に声をかけてくれた男性が、頭をガシガシしつつ頭を下げておられます。


 いやいやいや、大袈裟に驚いてしまったのは私の方ですので大丈夫です!


「オマエの顔が凶悪だからじゃねぇのか?」

「んだとコンニャロ! オマエの顔だって似たようなもんだろうが!」

「喧嘩は良くないぜ! 一番凶悪なのは俺だから安心しろ」


 ガツンゴツンと相手をコブシで小突きつつ会話しているお兄さん二人の横で、ツルツルなスキンヘッドを左手で撫でつつ、ワイルドに生やしたアゴヒゲを右手で擦っているお兄さんが一言。


 その頬には何かで引っかいたような傷跡が数本あります。強そうな雰囲気満載。

 でもお三方を見てると何だか、とっても仲良しさんな感じがします。


 きっとこう言うのが、パーティの醍醐味という物なのでしょうか。見て納得。


 私が大人しく毛玉状態のメェを抱きかかえた状態で座り込み、そんな事を思いつつボケーっと眺めているのに気が付いたのか、表情を改めたカレーのお兄さんが、クイっと口角を上げる感じの照れたような笑顔で、私の正面にドッカリと胡坐で座り込んで声をかけてきました。


「いやーなんだその、一人で歩いてるのを見かけたもんだから、ちょっと声を掛けてみただけでな!? 下心とかまぁそういうのは無いんだ、いや本当だぜ!? 俺、お嬢ちゃんくらいの歳になる妹いるもんだからさ、ちょっと気になってさ」

「無駄に早口で捲くし立てるのは、こいつ怪しいって思われる原因になるんだぜ」

「うっせぇハゲ!」

「てめ! 俺ぁリアルじゃちゃんとフッサフサだつってんだろ!」

「いでで! 冗談だよ冗談!」

「あはは!」


 ハゲ呼ばわりされた、ツルツルなお兄さんが私の右横にドカンと座り込んで、カレーのお兄さんの頭にガッシリと右腕を回し、ギリギリと締め上げ始めました。思わず悲鳴を上げるカレーのお兄さん。


 そんな二人の会話を聞いて、思わず笑ってしまいました。

 あっ!? 笑っちゃ失礼だったかな!? 申し訳ない事をしました!


 急いで両手で口を塞いだのですが、私の前に座り込んで言い合っていた二人がピタリと動きを止めて、グルリと同時に私に顔を向け……何故か同時にニヤリと笑いました。


「おっ、笑ったなぁ!」

「そうそう大丈夫、俺達は怖ーいお兄さんじゃないから安心していいぜ! この見た目はロールプレイってやつだからな!」

「そうそう、ほら! この肩パットだって俺のお手製なんだぜ!」


 座り込んだ二人の後ろに立っていたもう一人のお兄さん……髪型が凄い特徴的な方です、何だっけこの髪型……ああそうそうモヒカンです!

 そのモヒカンお兄さんが、トゲトゲの付いた肩パットをグイっと右手親指で指し示してニヤリと笑います。ほわー凄いなぁー! 鎧装備とか作れる人なんですね!


 その頭にズバァ! っとそそり立つ髪の毛、しかも赤い!


 現実だと、セットとかに物凄い時間とヘアスプレーが消費されそうな形状ですけれど、このゲーム世界ならきっと問題ないのでしょう。素晴らしい直立っぷりで髪の毛が立ってます。


 そんな凄い見た目の髪型をじっくりと眺めつつ、あんな見た目の装備も自作できるんだなー、と感心してトゲトゲ肩パットを眺めておりますと。


 ツルツルお兄さんが『いやいやそうじゃなくてだな!』と言うと、カレーのお兄さんとモヒカンお兄さんを押し留めるように両手を二人に向けました。


「声をかけた目的は、装備自慢じゃないだろ!」

「ああそうだった! えっとな、さっき見かけたとき魔素迷宮から出てくる所だったみたいだけどさ……もし町に戻るなら俺達と一緒にどうかな、っていう提案をだな、いや下心は本当に無いんだぜ!?」

「そうそう、一人じゃココに来るのも大変だったんじゃないか? 俺達一旦町に戻ろうって相談してた所でさ!」


 座り込んだ私と視線を合わせる感じで、私の周囲に座り込んだお兄さん達が……何だかもの凄い提案を私に持ちかけてくださっているではありませんか!


 ええそりゃもう、ココに来るのも魔素迷宮内部でも大変な目に遭いましたよ! と身振り手振りを交えつつある程度簡略化して説明をします。ゴーレム君とか鳥の猛攻についても!

 その間、メェは身動きせずに私の太ももの上で大人しくしてくれています。


 ……というか、また寝てる可能性が高いですね? いやぁ良く寝るね君。


 私の説明に『だよなー大変だよなぁーでかくて硬い奴が多いしよぉ!』と賛同を示してくれるお三方。あーなんだろう、こうやって冒険について会話できるの楽しい!


 そうして地面に座り込んで円陣を組み、ワイワイと会話する事数分程……ご提案に乗る形で、町までお三方と一緒に移動し帰還する事になりました! 一人であの山道を戻るのは大変だろうと思っていましたので、コレは物凄い助かりますよ!


 そこで思いついて、移動のお礼になるか判りませんが、今現在絶賛でダブついているマナポーションをお三方に差し上げる事にしました! 余剰品の有効利用という奴です!


 上着の裾を捲ってお腹の辺りに突っ込んでおいたマナポーションをゴロゴロと取り出し、同じ数になる様に三等分して皆さんにお渡ししました。


 手渡しした際に、何だか『うっほやべぇプレミア物だぞこれ』とか『おまえ変態発言はやめろハゲ』とか小声で何故か言い合っていましたが。

 それ、特に特殊効果も無い普通のレシピ通りに作ったマナポーションですので、多分ご期待には添えないと思います……一応お店で売っても大丈夫なくらいの品質は確保出来ている物ですけれど。どうだろうか。


 あっ、ちなみに自己紹介もしっかりいたしましたよ!


 カレーのお兄さんが【イ=ヤッハー】さん。


 モヒカンのお兄さんが、なんとその外見の通り【モヒカーン】さん。


 ツルツルな頭のお兄さんが【ザコーダ】さん。


 しかも、皆さん装備も凄いんですよ!

 腕とかスネは獣の毛皮で作ったような脛当てとか篭手をつけてたり、肩パットにトゲが付いてたりするんです! 身体中にベルトっぽい締め具が付いていてガッチリした印象があります!

 身につけたマントも獣の毛皮で作られていて、手触りを確認させてもらったのですが、ちょっと硬めな毛の質感が雰囲気にとても合ってると思いました。


 統一感のあるコーディネイトな感じです!


 そしてなんと、モヒカーンさんと私は愛用武器の種類が一緒でした! 棒です棒!


 トゲトゲの付いた棒を武器にしているそうですよ!

 しかも防具作成の生産スキルを持っていて、生産と棒武器という点でもお揃いです!


 あと、ザコーダさんは防御系と魔法系のスキルを重視して育てていらしゃるらしく、なんと【召喚】スキルをお持ちと言う事! この目で【召喚】スキルを使っているところを見る機会に恵まれるなんて、なんという僥倖でしょうか! 気になっていたんですよ【召喚】スキルも!


 イ=ヤッハーさんは、遠距離武器と攻撃魔法に回復魔法スキルまでお持ちで、普段はクロスボウで遠距離からズバっと相手を打ち抜く感じで戦うらしいです!


 でもクロスボウ系武器は威力は高いんだけれど、弓の方が色々と応用が利いて使いやすかったりするんだよ! という話をしていらっしゃいました。

 でも、色々と拘りを持ってイメージに合うクロスボウを愛用しているんだ、と右手にクロスボウを構えつつニヤリと笑いながら仰っていました。


 拘りはやっぱり大事ですよね! フワモコ重視とかと一緒です!


 攻撃魔法は【魔法 火】スキルを取得していて、杖の先端から掛け声と共に勢いのある炎を噴射して相手を攻撃したりするんだ、といって、独特な形状をした杖に付いた取っ手の様になっている部分を掴んで腰溜めに構えつつ、こういう感じで攻撃するんだぜ! と見せてくださいました。うわぁ凄い強そうです。私もやっぱり魔法戦闘用の杖とか一つ位持った方が良いのかな?


 そしてイ=ヤッハーさんも、何と生産スキルをお持ちとの事!

 皆さん豊富なスキルを取得していて凄いですね。


 うむぅ、私もそのうち残っている習得Pを何に使うか決めないとね!

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