188 メンテ告知 と 就寝時間
もうちょっとで冒頭。
長い冒険が、今終わる(誤解を招く表現
いやまぁ正直な所、物凄い大きなものでしたので、きっと巨大魚とかそんな感じのでっかいお魚から剥がれた物じゃないかな? 何ていう、軽ーい気分でアイテムボックスに表示されたアイテム名を確認したのですが。
こう、対ショック体勢に移行する前に、機体の横っ腹あたりに直撃を食らったと言うか。
思わず口から『ぬふぅ!?』という珍妙な声を出してしまう位には衝撃的事実。
いやいやいや! ちょっと!?
あの見た目凄い長閑な風景な湖に、そんな大物が鎮座していらっしゃるなんて兆候は、全く見受けられなかったんだけど!? 本気なのこれ? 誤植じゃなくて?
『魚竜』じゃなくて『竜魚』とかなら、ドラゴンっぽい見た目をしているだけの普通のお魚、という可能性が一つまみ程度あったと思うんです。でもこれはどう見てもアウトですよね?
何々なんですか、もしかして見えない場所に沈んで、私の事を観察してたりしたのドラゴンさん!? 釣りモドキを楽しんでいる様を、水底からこっそり眺められて居たりしたのでしょうか……!?
いやまぁ、そりゃ大分大きい湖だったしドラゴンの一匹や二匹居ても……いやいやいや! 居てもらったら困るんですが!
ファーム跡地にだってまた行く可能性もありますし、あの辺りをその巨大な体躯でもって踏み荒らされたりすると、とてもションボリなんですけど!?
脳内で私の貧弱な想像力とのコラボレーションによる『魚竜』という単語から連想、巨大な魚にドラゴンっぽい強靭な手足がくっ付いている、という怪しげな物体が脳内イメージに生成されましたが……これではドラゴンと言うよりは半漁人のビックバージョンのような。うーん?
色々と想像の中でパーツを組み合わせて、一体どんな相手なのかを考えてみましたが。
そもそも、この世界でのドラゴンがどの様な姿をしているのか、という知識を持ち合わせていない事に気が付きました。
むしろ今後も会いたくは無いのですが。
多分……カイムさんあたりに質問したら知ってそうですね。
むしろ私がドラゴンについて質問なんてした日には、物凄い勢いで嬉々として細かく説明を始めるのではないでしょうか。
という事で、鱗については保留、保留です。
脳内での胡散臭いドラゴン組み上げにも一旦幕を下ろす事にします。
どうやってもタダの魚人になりますし。後回し後回し!
急に知り合いが自宅へと訪ねて来た時に、自分の部屋の中に散乱していた邪魔な物体をクローゼットに無理やり詰め込んで封じ込め、何事も無かったかのように誤魔化すが如くです。
そのまま忘れて大変な事になるまでセットで。
えっ、そもそも知り合いが自宅に来るのかという点ですか?
えー……あっ、風邪をひいて休んだ時に、プリントを届けに来てくれたクラスメイトは居ましたよ!
あれを知り合いが訪ねて来た! と言って良いのかは少々疑問ですが。
いまは、そんな事を考えてハートのセルフ自傷行為に走っている場合ではありません。
たとえこうやって鱗を手に入れたとしても、出会った事のない魔物であるならば特に問題ないはず。入手方法を聞かれたら『水辺の石をさらいました本当です』と正直に答えればきっと大丈夫だ。うんうん。
さあて、こんな崖際で一喜一憂している時間は無いのです。
今はポーション、ポーションを作るのが先決なんですよ私!
さっさとその足を動かして湧き水の所まで戻るのです!
一人寂しく一人叱咤激励をした私は、一応崖下を覗き込んで確認をしておきます。ちょっと高さが有りすぎて下がどうなっているのか視認出来ませんが、多分大丈夫そうかな。
叫び声とか爆発とか水が噴出してるとか土煙が上がってるとか、異常な事態は発生していない様です。
それでは迅速に行動を開始しますよ!
先ほど確保しようと思っていた湧き水の左側辺りを陣取りまして、と。
皆さんみたいに何か台になる様な物を所持しておりませんので、とりあえず地面を簡単に両手ではたいて均し、器材をそこに置く事にします。
流石に調合のためだけに、例の折り畳み式テントを開放するわけにも行きませんし。
というか、一度も組み立てを試していないので、ここで展開してしまうと使用した後に折り畳んでしまえるか、全く判らないのでちょっと怖いんですよね。
一応警戒しつつ、アイテムボックスから器材を取り出して地面に設置します。
うーん、ガタガタしたりはしていないみたい。大丈夫そうだね。
折角メディカさんから譲って頂いた器材ですし、壊したりしたら大変な事になってしまいます。そうだ、壊れたりした場合って修理とかは如何したら良いんだろう?
調薬キット自体はギルドで販売しているとか聞いたような記憶がありますし、修理もあそこにもって行けば大丈夫なのかな。街中を移動している最中に、それっぽい店舗を見たことが無いですからね。
流石にゲイルさんだと畑違いじゃないかなーと思うんですよね。
何はともあれ、壊さないのが一番良いでしょう。
ちょっとした破損なら放って置けば回復するし、相当な事が起こらない限りは大丈夫な筈。
でもあれですねぇ……町から遠く離れた場所で冒険中に、こうやって現地調合したりする機会も、これからドンドン増えていくのでしょうね。
なんだか冒険者やってる! っていう心持ちになります。
プロの冒険者さんには、少々申し訳無い活動方針と内容ですけれども。
エンジョイ&セーフティで、今日も活動して生きたい所存であります。
体験した苦労に見合ったものが確実に手に入るのであれば、無理無茶で頑張ってしまうかもしれませんけれどね。今の所は『凄いモノ見つけた!』と言うよりは『なんだかよく判らない物体が多数』という心境ですし。
でもこれはこれで、リーナさんに鑑定をお願いするのが楽しみですよね。
今回の冒険で手に入れたアイテムの中だと、どれが目玉商品なのだろうか。
やっぱりボス鳥さんの尾羽かな?
鱗も地味に凄そうな雰囲気がありますが。
やっぱり実際目の前で出会ったボス鳥さんと比べてしまうと、微妙に現実味が薄くて実感がないですよね。
なんていう感じで、色々と考え事をしつつも……ご安心下さい!
ちゃんとポーション調合を開始しておりますよ!
ポーション調合中、お隣にラティアちゃんがいないのが少々寂しい感じがする今日この頃。そろそろラティアちゃん成分不足による禁断症状が云々。合法なのでセーフ。
今頃ラティアちゃんはきっと、カイムさんからもう怪しい奴については大丈夫じゃ! という報告を受けて公園で元気に遊んでいるでしょう。
あっそうか、折角GMさん達と会話できる機会があったんだから、公園でこっそり覗いていたプレイヤーさんがその後どうなったのか、軽くお伺いしてみたら良かった!
でもまぁ、あの時システマさんには手加減してあげてくださいね!? と一応お願いしておきましたし、大丈夫でしょうかね……多分。
コンロの火加減を調整しつつ、今度町に戻った際にカイムさんとラティアちゃんに事後経過を聞いてみようかなー? 何て考えておりますと。
何処からともなく……と言いますか、多分直上からだと思うのですが。
何やら、ピンポンパンポーン! という感じの何処かで聞いたことのある様な音が鳴り響いて。
その後に続いて、非常ーに聞き覚えのある声が聞こえてきました。
というかこの声、十中八九先ほど出会った、強烈な個性を放つGMのヌルさんのお声ですよね。
アレです、この辺り一体全域に響き渡る様な良く通った声で……なんといったら良いのか、耳元でなっている館内放送の様なイメージと言ったら判りますでしょうか。
何事だろうかと周囲を見回すと、皆さんの耳にもこの声は届いているようです。
良かった、私だけに発生している空耳ではなかった模様です。
遠くから響いてきているような音声なのに、しっかりとクリーンに聞こえてくるという、少々違和感のある感じのアナウンス音声ですね。
これはこの場所に響かせていると言うより、例のGMさんが話しかけてくる際の、例の口を動かさず直接脳内に語りかけてくる感じで、此方に声を届けているのでしょうか。果たしてその放送内容は、といいますと。
『ログイン中の全プレイヤーの皆様へお知らせします サーバーメンテナンス開始時刻が近づいております。メンテナンス開始時に強制回線切断が発生しますので、データの保護の為 早めのログアウトをお心がけ下さい』
ふむふむ、直接音声で警告と言うのは珍しいですね?
普段通りならば、唐突なタイミングで眼前にメニュー板を飛び出させて、驚かせてくる所だと思うのですが。
あれでしょうか、メニュー板だと読まれずに閉じられてしまう可能性があったりするのを考慮したとか?
音声なら聞き逃しはほぼ無さそうですし。
でも魔物との戦闘中に、この声が聞こえてきたら結構気になって大変かもしれませんね。
その後、数回に渡って同じ文章をプレイヤーに伝えた後、ピンポンパンポーン……という締めの音と共に静かになりました。
アナウンス直後から周囲がザワザワとし始めました。
どうやらアナウンスが来たという事で、そろそろポーション作成を切り上げる人たちが出始めた様ですね。
ってチョット待って!
私まだ作り終わってないですよ!?
グニャグニャと脳内で変な事考えてないでお薬調合に集中せねば!
その後、どんどん周囲から消えていくプレイヤーさん達を焦りつつ見送りながら、例の3種ポーション作成に精を出す私だったのでした。
普段からこうやってマジメモードで調薬作業に取り組んでいれば、素早く正確にポーション作成も終わるのですけどね! 公園だとワイワイやっちゃうからね、仕方ないね!
なにせ公園調合は色々と誘惑が多いのですよ私にとっては。
大満足では有りますが。
久しぶりに集中して調薬スキルを行使し、一番最後のポーションを作成し終わった後、ついにアイテムボックスの容量が足りなくなって、容量の空いていた魔法のポーチにも捻じ込みました。
それでもマナポーションが十数本ほど収納しきれずに、溢れ出て残ってしまいました。
あぁぁー! これどうしようかな!?
これって……手にもった状態で強引にログアウトしたら、次回ログイン時にちゃんと手に持った状態で戻れるんだろうか。
そこの辺りは少々不安でしたが、他に手段が無さそうですので仕方が無いと割り切る事にしました。ポーション瓶は割りませんけどね?
足を引っ掛けて転んだりして薬液をブチ撒いてしまわない様に、ゆっくりと地面にポーション瓶を一つ一つ並べて置きまして。
調薬キットの状態を確認して収納しましてと……よし! 後片付けは完了かな?
入りきらなかったポーションを、何とか両手で挟み込む様に纏めて持って、湧き水前から魔素迷宮の入り口辺りまで移動する事にします。あそこならログアウトに1分掛かるとしても、結構安全にログアウトできますからね。
おっとそうだ!
ログアウト時に【従魔】スキルで仲間にしたメェが、どういう感じに眠りに付くのか確かめておかないと!
というかまぁ、メェは今現在でも……私の後頭部で気持ち良さそうに眠っている訳ですけどね。
動き回って消耗してしまうよりは全然良いのですけど。
後頭部もモフモフしていて気持ちが良いですし。
魔素迷宮に続く次元の歪みに足を踏み入れた私は、再び魔素迷宮入り口前へと到着しました。
最初の頃に比べると、魔素迷宮入り口前にいるプレイヤーさんの量は大分減っていますけれど、このタイミングでも露店を出している人がチラホラと見受けられますね。なんというゲーム魂の強靭な方々。
きっとギリギリまで頑張るのかな。
この危うい状態を愉しんでいらっしゃるのでしょうか。凄い。
周囲でアレコレと笑顔で会話しているプレイヤーさん達を眺めつつ、人気の少ない壁際に移動して正座で座り込みます。
一旦ポーション瓶を脇に置いてから、後頭部にくっ付いて熟睡しているメェを両手でモミモミして起こしに掛かります。おーいメェー起きなさーいなー?
数秒後、モソモソとフードの中で身を揺らしたメェ。
その四肢から発生する脅威の吸着力で、私の後頭部から頭頂部までゆっくりと登ってきました。
私の狐耳の間を掻き分けて出現する白い毛玉! という構図になっているはず。
重くは無いけれど今現在の私の頭頂部って、物凄く怪しすぎる見た目になっているのでは!? と周囲の視線を気にしてしまいましたが、此方の方を見ている方は居ない様子でした。ふー良かった良かった。
とりあえず、ささっと頭頂部にくっ付いているメェのわき腹を両手で挟みこんで引っぺがし、クルリと向きを変えて正面に持ってきます。やあお早う。
パチパチと両目を瞬かせたメェが『メッ!』と小さい声で、目覚めの挨拶っぽい何かを私に投げかけてきました。あれだけクッション代わりにしても起きる様子が無かったメェですが、私からの目覚ましコールには気が付いてくれた模様です。
やっぱり絆的なあれのお陰で、私からのお願いは届きやすくなってるのかな?
これからログアウトするからねー? と一応メェに告げておきます。
メェの方からは、特に嫌がる素振りや緊張している様子等も感じられません。
確か眠りに付く、みたいな説明が本に記載されていましたし、これなら普通にログアウトしても大丈夫そうかな?
太ももの上にメェを置いてメニューを出し、ログアウトの体勢を整えた私は、脇に置いてあったポーション瓶を掴みなおしますが……ポーションの試験管瓶とメェをみて、唐突に思いついた事があったのでそれを試してみる事にしました。
それは、このフンワリなメェの毛に、このポーション瓶を挿入して立てておくという強引極まりない保管方法! 羊毛の固まりに試験管を立てるみたいな?
一応メェにポーションを一個だけ見せ、ゆっくりとその柔らかい毛にスポっと突っ込んでみました。半分ほどめり込んだポーションから手を離しますと。
……おお!? 何の問題も無く立ったぞ!? メェ凄すぎない!?
やっぱりメェは偉大な生命体だったのだ、多分!
一応ですが、大丈夫かどうかメェに聞いてみました。
本人的には、特になんの痛痒も受けていない感じです。
むしろドンと来い! 位の勢いが感じられる頷きを頂けました。
本当にボールサイズの癖に強靭すぎない君!?
全然大丈夫そうなので、残りのポーションを等間隔でスポスポと毛に突っ込んでおく事にしました。白い毛に刺さっている多数の青いポーション瓶。
これ怪しいよ!?
これ絶対に怪しいよ!?
新たなる敵だよ!?
私の心配を他所に、何故か誇らしげな表情を浮かべるメェ。
……何でそんなに得意げなの!? いや可愛いけどさ!?
周囲のプレイヤーさんに見つかると、本当に新たなる敵だと思われそうなので……目立たないように私の身体の影にメェを移動させます。うむ、とりあえず発見される前にログアウトしちゃおう!
メニュー画面を操作してログアウトを選択します。
何時も通り1分動かずにお待ち下さい、のメッセージが表示されました。
さて、このままメェにポーションがブスリ! された状態でログアウトしたら、どういう処理が施されるのかどうか!
ポーションだけこの場に残ってガッカリになるのか。
メェの身体に使用された事になって、メェのマナが無駄に回復するのか。
メェの装備品! という判定になって次回まで残るのか。
結果はメンテナンス後のお楽しみという所でしょうかね。
ログアウト成功まで残り10秒を切った辺りで、メェを抱きかかえてお疲れ様ーまたねー、と声を掛けておきます。器用に右前足を振ってまたねーを返してくれるメェ。
本当ーに君ってば器用だよね……見習いたいところだよ。
その後、ログアウト開始のタイミングになった瞬間、先にメェの方がすーっと光になって消えて行きました。あー先にそっちからなんだ!?
これなら、敵に発見されるような場所でメェだけ取り残されて大変な目に遭う! みたいな状況にはならないかな! なんて考えてながら無事ログアウトを済ませる事に成功した私。
その後、何時も通りHMDを片付けた私は、現在時刻が夜の11時である事を確認。
なるべく早く就寝するべく行動を開始するのでありました。
急げ私! 明日は普通に学校だ! お父さんも帰ってくるしね!
まーた書いている途中でエラーが出て3000文字消えたぁー!(死
というか、『おっと、そろそろ保存するか』……と思ったタイミングでエラーがでて、反応なくなるのは反則では?(もっと小まめに保存しろ
皆さんも執筆する際には、どうか気をつけてください(大きなお世話
やっぱりメモ帳なりに書いて、後でコピペしたほうが良いのだろうか……どうも感覚が違ってやり辛いのですよね。




