表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/256

186 出会って 話して 姦しい

0と1と4。

こうして増える知り合い(AI


 想定外の出来事にビックリして、思わずアインスさんの顔を見詰め返してしまいましたが。


 何やらお返事を待っている感じで首を傾げた体勢のまま、瞬きしつつジーッと此方を見詰めて来ていましたので、そりゃもう間違いなく私が『フワモ』である! と言うお返事をお返ししました。


 うん、釣りモドキやファーム跡地で有象無象の何か怪しい事件が起こったりして、何か違う存在にメタモルフォーゼした記憶はありませんし、確かに私はフワモで間違いないはず。


 今現在は、後ろに跳ね除けてあるポンチョのフードにスッポリと収まったメェが、後頭部あたりに吸着力を駆使してくっ付いているだけで。


 私の返答を聞いたアインスさん、パチパチと数回瞬きを繰り返した後に手の平をピタリと打ち合わせるようにくっ付け、口元を緩ませてニッコリと微笑んで下さいました。


 あー何だか儚げな感じがヒシヒシと伝わってきますね。

 空気の良い別荘へ療養の為に遊びに来てる、病弱なご令嬢みたいな?


 白いワンピースに赤いリボンの付いた麦わら帽子とか似合いそうです。

 あくまでも個人的な感想で申し訳無いですが。


 それにしても、私が『フワモ』だと何か不都合が有ったり無かったりするのでしょうかね? 前回フィーアさんと会話していた時の状況を思い出すに、もしかしたら【システマ】さんが関わっていたりするのでしょうか。


 でも、あからさまに私の名前を聞いて連絡を入れた後に、焦り始めて落ち着きを失っていたフィーアさんとは……私からの返答を聞いたその後の様子が、ちょっとと言うか大分違うというか。


 とりあえずフィーアさんの時の状況再現は無さそうですが、コレから何が起こるのか判りませんので、しっかりと意識を切り替えて姿勢を正し、迫り来る可能性のある事象についての対応パターンを脳内で考えましたが。


 特に私から能動的に行えそうな、上手い返しのパターンが思いつきません。


 これはあれですね、アインスさんの反応を聞いてから焦らずにしっかりと対応する形で進めましょう。


 GMさん専用の空間に来てしまっている事ですし『すみませーん!』と謝りつつ全力疾走で逃亡したりはできませんし。


 それをしても問題の先送りにしかならないんですけどね。

 落ち着く時間が欲しい。


 ビシリと椅子の上で不安要素により硬直した体勢で、特に役に立たなそうな対応シミュレートを展開しておりますと。


 笑顔で私の対面に座っていたアインスさん、なにやらメニューっぽい物を素早く操作して何かを表示させ、私の正面へとそのメニュー表示板を滑らせて来ました。


 うん? コレを見れば良いのかな?


 心を落ち着かせるために正面に置いてあったお茶を一口。

 それでは、目の前にあるメニュー板に記載された内容を確認して見ましょう!


 ……あれ、これって見覚えがあると言うか……あーあー!


 思い出しましたよ、コレは魔素迷宮を発見した時にお礼としてGMさんに送った筈の、私が書いたメールでは? 一言一句とは言えませんが大体書いた内容は覚えておりますよ!


 私がそこに書かれている、自分が生み出した文才の感じられない普通すぎるメール文章を確認しておりますと、何か確かめる様にゆっくりと……アインスさんから私に声が掛けられます。


「……そのメールに記載されている文章に……何か覚えはありますでしょうか?」

「あっはい、えっと、これは私が書いたメールだと思います!」


 私の返答を受けたアインスさん、右手を伸ばして私の正面にあったメール内容の記載されたメニュー板を指で突いて消去し……胸の前で両手をぎゅっと握り合わせてニッコリと微笑みます。


 えーっと……何といったらいいのか。

 両手を握って胸の前に押し付け、お空を見上げて神様にお祈りするポーズといったら良いのでしょうか。


 あのポーズを取って、何故か私をキラキラした眼差しで見詰めてくるではありませんか。

 えーっと? これは一体何事なのでしょうか。


「やっぱり……! お手紙とても嬉しかったです!」

「えっ!? ……あー! あの時プレゼントのメールを贈ってくれたのって確か!」


 そうだ、そうですよ!

 ぱっと脳内に出てこなかった! 迂闊!


 私の記憶が合っているか確かめるため、少々焦りつつ私もメニューを開いてコミュニティー欄からメールのメニューを選択、そこにあった『保存したメール』の項目を突きます。


 ……やっぱりそうです! 魔素迷宮の報酬の中にあったランダム箱を送ってくださったのが、この私の対面に座って嬉しそうにニコニコ笑顔になっている【GM アインス】さんだ!


 私の方も、自分が表示させた保存メールをアインスさんの視界に入るよう移動させ、内容を確認してもらいました。


 数秒で内容を確認し終えたアインスさん、笑顔で胸の中央で合わせていた両手を離し、ぎゅっと脇を締める感じでダブルガッツポーズみたいな状態に移行。


 フンスフンス言いながら、何だか小動物みたいな動きで数回コクコクと頷いていらっしゃいます。

 何だろう。可愛い。


 あと……豊かなお胸が両腕の挟み込みで寄せられて、非常にセクシィな状況ですね。


 そのうち、私の貧弱ボデーも成長してくれるのだろうか。

 17歳でコレだともう絶望的な可能性があるけど。


 いや、諦観の念を抱くのは二十歳になったらにしよう。そうしよう。めげるな自分。


 非常に嬉しそうに、その上半身をユラユラさせているアインスさんとは対象に、勝手に自分で自分に絶望して悲しげな表情を浮かべ始めた私自身に、自分で少々情けなさを感じる今日この頃。


 心のライフポイント最大値が余り成長していないので、とっても打たれ弱いのだ。

 求む心のライフポーション。


 そんなこっそりと悲嘆にくれている私の深層心情、何とかアインスさんにはばれなかった模様。良かった良かった。


 なにやら再度メニューを弄りつつ、すっかり柔和な感じの表情を浮かべているアインスさんが、お菓子の入った木製のボウルを私の正面へとススーっと滑らせつつ、その心境を語って下さいました。


「私はフワモ様に送った報酬メールの様な、システム関連の雑務を担当しています」

「なるほど……なんだか色々大変そうですねぇ」


 とりあえずどんな業務内容なのか詳しく判りませんが、システムと銘打っている部分を管理しているというその一言だけで、非常に難しくて大変なお仕事! という印象が私の脳内に浮かび上がります。


 様は骨組み部分と言うか大黒柱と言うか。

 根幹の部分をきっちりと運行させる為のお仕事! って事ですよね多分。


 VRゲームを舞台とすると、大事な裏方作業と言う表現でしょうか。


 私が適当に勝手な解釈を持って会話内容を適当に咀嚼しつつ、大変なお仕事お疲れ様です、と脳内でアインスさんを労わっておりますと。


「それでその……私のお仕事はプレイヤー様達との触れ合いが全く無くて……あのですね、やりがいと言いますかモチベーションの維持と言いますか」

「ひとりで黙々とお仕事し続ける感じですね……」


 そうだよね、こうやって会話できるくらいに高性能なAIだと、そういった感覚がうまれちゃうのかもしれません。逆に【システマ】さん位に出来る女性っぽい感じだと、そういったお仕事だって一人でも余裕で素早く淡々とこなしてしまいそう。


 やっぱり決められたお仕事とは言え、何か変化があった方が良さそうですよね。


 何となく判る様な気がして、うんうんと頷きながらアインスさんのお話に耳を傾けます。

 後頭部にくっ付いているメェは、このお話に対して余り興味が無いのか、フード部分にスッポリと嵌り込んだ状態でスヤスヤ眠ってしまっている様です。


 眠っていても、しっかりと私のうなじ辺りに吸着しているのは流石。


「そんな折、フワモ様からのメールが届いて、とても嬉しかったんです!」

「あーいやー、そんなに喜んで頂けたのなら私も書いた甲斐がありました!」


 簡単な労いのメールだったのですが、そこまで喜んでいただけていたとは!

 むしろこちらの方が恐縮ですよ!?

 そして嬉しさでハートがウォーミングしましたよ!


 これからも【GM アインス】さんからのシステムメールが届いたらお返事をお書きしましょう。これだけ嬉しいと言う反応があるなら、私も返信メールの書き甲斐があると言うものです!


 木製のボウルに入ったお菓子を二人で摘みつつ、笑顔で会話をしておりますと、アインスさんの背後になにやら光が集まり始め……何方かがココにいらっしゃった様ですね。


 ……あれ、あの姿は多分フィーアさんじゃないかな!?


「アインス姉様ー、お呼びでしょうかー?」

「あっフィーちゃん! ほら、フワモ様に会えたの!」

「あっフワモ様だ! こんにちわー!」

「フィーアさんこんにちわー!」


 ニッコリ笑顔で挨拶を交わす私とフィーアさん。

 やっぱりフィーアさんは会話していて馴染むと言いますか、何といいますか。


 気負いせずに挨拶を交わせる感じがします。


 失礼な考えとは言わないで頂きたい所では有りますが、フレンドリーな雰囲気があるという表現がピッタリな感じで。


 その後、パタパタと小走りしつつ素早い動きで私の右側の椅子に腰を下ろすフィーアさん。


 アインスさんが椅子から立ち上がって、フィーアさんの正面に光と共に出現した空のカップへお茶を注いでいると、私とアインスさんの顔を交互に見ながら、フィーアさんがヒョイっとお菓子を一つ口に放り込みます。


 やっぱり妹属性と言うか、可愛らしいという印象が大きいですね。

 多分、確実に私なんかより圧倒に高い知能指数を備えていそうなんですけどね。


「もーすぐ来て欲しいー早くきてぇー! なんて連絡だったから、一体何があったのかと思ったよーアインス姉様ー」

「だってフィーちゃんフワモ様とお知り合いみたいだったし、メールに関してのお礼も兼ねて一緒にと思って……あと一人だと緊張しちゃうし……」


 フィーアさんが、ジト目でニンマリと言う表現がピッタリの笑みを浮かべながら、私の方を見つつアインスさんに言葉を掛けますと、俯いてお茶のポットを静かにテーブルへと戻しながら、なにやら唇を尖らせてモニョモニョ返答し始めたアインスさん非常に可愛い。


 何だろう、最初のお仕事が出来そうなビシっとした女性と言う印象が溶け始め、慣れない事に対してはちょっとポンコツな、ちょっと抜けた所のある愛嬌があって親しみ易いお姉さんという印象に変化してきた。


 これはこれで良し。

 素晴らしきかなVRMMO、良いぞもっとやって下さい。


 二つ目のお菓子を開いた口にポイっと放り込みながら、フィーアさんが仕方がないなぁーといった感じの表情を浮かべて首を左右に振っています。何だか慣れている感じがしますので、普段からこういった感じで接し合っているお二人なのでしょう。ご姉妹? っぽいですし。


 二人の掛け合いを顔を緩ませつつ眺めておりましたが。


 はて、そういえば私はココに何をしに来たのでしたっけね?

 ああそうだ、ウェイポイントについて詳しく聞こうと思ってたんだっけ!


「それはそうと、フワモ様がGMコールをした理由ってもう聞いたの? 姉様」

「えっ? ……あっ!?」


 ココに来た理由を思い出して、私からお話の再開を切り出そうと思っていた矢先。


 私の右側の席でノンビリとお茶を飲みつつ、特に責めている様子もない感じでフィーアさんがサラっと口にした疑問に対して、お茶のカップに手を伸ばしていたアインスさんがビクリと痙攣するように動きを止めます。


 数秒間ピタリと停止したアインスさんが、油の切れた機械の様な動きを持って、ギギギと音がしそうな感じのぎこちない関節稼働をさせつつ、此方に顔を向けてきます。


 無言で目と目で通じ合う私とアインスさん。


「ご……ご報告内容の説明をお願い致します!」

「あっはい! 実はシステム面よく判らない部分があって質問したくて!」


 何故か判りませんが何だか気持ちが焦ってしまい、お互い微妙に早口で捲くし立てるように会話を再開しました。私の右でジト目に戻りつつ、ワタワタし始めたアインスさんの顔を眺めているフィーアさん。


「定型を外れる事態に陥ると、途端にポンコツになるよねーアインス姉様って」

「うう、頑張ります……駄目GMでゴメンナサイ……」

「いやいや、大丈夫ですよ!? 質問したいだけですからね!?」


 むしろ楽しいひと時でしたし、全く問題ないと思いますし?


 気になるのはメンテナンスの時間が迫っているという事実だけですし、焦らなくても全く問題御座いませんよ!? むしろGMさんの知り合いが増えたよーやったー! 位の感じですからね私!


 その後、私のメニュー画面を弄りつつ実践をする形で、例の『ウェイポイント』という物が一体どういった物なのかといった簡単な説明を受けました。


 私の大方の予想は間違っていなかったらしく、離れた場所から魔素迷宮の前まで一瞬で移動できる便利な機能、という物みたいです。

 例えば、普通に徒歩や馬車等を使って始まりの町から魔素迷宮のある山岳地帯まで移動する、となると大分時間を消費してしまいますが、この迷宮発見報告の特典で頂いたウェイポイントを活用する事によって、一瞬で魔素迷宮前へと移動し、すぐさま迷宮内の探索を開始するなんて事が可能になる! といった感じで。


 これで、湖のほとりから魔素迷宮の前まで一瞬で移動出来た理由が判明しましたね。


 そしてもう一つ、このウェイポイント利用の凄い所が……特典を頂いた時に出ていた説明の通り、パーティを結成していた場合は全員一緒に瞬間移動できる! という所ですが……活用できる場面はあるのでしょうか。うーむ。


 あと、魔素迷宮が完全攻略された後は利用不可になるという事でしたので、ずーっと利用できる訳ではないらしいです。なるほどなるほど。


 あと、ウェイポイント設定メニューに表示されていたマップをタッチすることで、簡単な位置情報等なら表示させる事が出来たとか? うむぅー、この辺りは慣れている人じゃないと判らないですね。


 なにやら『FSO』という略称の『ふわもこファーム』と同じく終了してしまったVRMMOで使用された基本転送移動システムを改変流用している、とか何とか説明を受けました。


 イマイチ良く判らなかったですが、そのゲームでは然程珍しいシステムじゃないのかな?


 ウェイポイントに付いての説明を大体聞き終わり、一服する為にお茶のおかわりを頂きながら……この辺のシステム系等に関する部分で、活用方法が判り辛い場所はどうにかならないのでしょうか? とアインスさんにお聞きした所……ある意味で予想外のお返事がきました。


「この後行われるメンテナンスのアップデートで、ある程度ですが改善される予定です」

「おおー! それは楽しみですね!」

「メンテナンス後から一週間かけて、外部プレイヤーの新規登録受付が開始されるんですよ! この世界もさらに賑わう感じになるんです! 申請者全員はプレイできませんので抽選になりますけれど!」


 アインスさんからの朗報の後、ついでと言わんばかりにフィーアさんのお口から衝撃の事実がポロリ。来週からプレイヤー数が増えるってことですね! というかその情報って、単なる1プレイヤーである所の私に漏洩してしまってもいい事柄なのか、物凄い不安になるんですけれど!?


 私の不安を他所にノンビリとお茶を飲んでいるフィーアさん。

 ふむ? ……この雰囲気だと話してしまっても大丈夫な情報なのかな? と思っていたのですが。


 フィーアさんに視線を向けたアインスさんの口から、あまり聴きたくなかった言葉が紡がれます。


「フィーちゃん駄目だよー? 大叔母様がゲーム外情報は余り口外しちゃいけないって言っていたでしょ?」

「あっそうだった! えへへ! ごめんなさーい!」


 やっぱり駄目な奴じゃ無いですかー!?


 これは不可抗力で内容を聞いてしまった私は、お咎め無しな感じでしょうかね!?

 大丈夫だよね!?


 非常に心臓に悪いお言葉を受けて、私の顔色が七色に光り輝きそうなんですが!?

 でも何だか軽い感じで受け流してるし、警告メールでいう所のホワイト辺り?

 オレンジとかレッド警告は来ないですよね?


 私が不安な表情を浮かべているのに気が付いたアインスさん、ちょっと苦笑いするような感じで口元を動かし、首をちょっとだけ傾げる様に動かすと私に声を掛けて下さいました。


「あっ大丈夫ですよ! メンテ後すぐに、公式サイトの方に情報が出る筈ですので」

「そ、そうですか……びっくりしましたぁ」


 アインスさんからの安心できる返答に、ほっと胸をなでおろしてお茶の残りを飲み干しますと、なにやら再度アインスさんの背後に光が集まってきました。


 あれ、追加で何方かいらっしゃる感じでしょうか?

 アインスさんとフィーアさんも、背後に収束する光に気が付いて後ろを振り返っています。


 アレ、お二人が呼んだんじゃないなら一体何事でしょうか。


 数秒後、そこに出現したのは……なんと言ったら良いか……えーっと、簡潔に言うと凄いラフな格好をした銀髪で眼鏡の女の人です。


 ぱっと見ではアインスさんに似ていますが、髪の毛の色がチョットだけ濃い感じがしますね。


 その女性は私達3人が座っているテーブルの方へ眉を顰めつつ視線を向け、ちょっと丈の長い袖から右手を出して、ポリポリと頭を掻いています。


 服装はといいますと……ダボっとした長袖のYシャツを着崩した感じで、着用している黒い色のロングスカートは、同じく黒い色のサスペンダーの様なベルトで固定されています。なんだろう、すごいだらしない格好ですけど立ち居振る舞いや雰囲気に合致している感じです。


 頭も微妙にボサボサしていて。

 イメージで言うと徹夜明けの女性作家さんみたいな? 表現に困りますね。


「んもー 二人ともぉー お仕事終了したらサクッと戻りゃんせー? あっ こんにちわぁーお騒がせしております、ご了承していただけると幸いー」

「あっはい大丈夫です!? こ、こんにちわ!」


 ペタペタと何故か素足の状態で真っ白な床を踏みしめ、私の横まできたボサ髪の眼鏡さんがペコリと頭を下げて、間延びした声でご挨拶してくれました。これまた特徴的な方がいらっしゃいましたね!?


「あっ姉様!」

「あれぇ!? ヌル姉どうしたの!?」

「メンテ前で忙しいからーお手伝いよろしゅー頼みもぉすー という心情でー 馳せ参じた次第ー」


 ……何だかこっちまでマッタリしそうな雰囲気が噴出していますね。嫌いじゃないです。


「了解しました、姉様」

「はぁーい、了解しましたー!」


 お返事を返したお二人の肩をポンポンと左右の手で叩いた眼鏡の女性……ヌルさん? は、キョロキョロと私の横で周囲を見回して、空いている私の左側にある椅子にドカっと腰を下ろしました。


 何だか、手触りヌルヌルしてそうなお名前ですけど普通ですよね?


 ……身体の動かし方はユックリでヌルヌルしている印象はあります。

 軟体動物っぽい感じで。

 いやそういう意味じゃないのかもしれないけど。


「どもども【GM ヌル】と申しますー えーっと この様にお手手がヌルヌルっとしている訳じゃないので ご期待に沿えずーご勘弁をー」

「いえいえ!? 別に問題ないですハイ!」


 ぎゅっと私の左手を両手で掴むヌルさん。私の想像は想定内だったようで。ニッっと歯を見せる感じで口元で笑ってくれましたが目が笑っていません。


 怒ってる……とかでもないのかな?


 あれです、国営図書館の受付に居る兎人のファルトゥラさんみたいな、独特な空気感が。

 でも全然嫌な感じはしないです。何だか孤高のマイペースという印象で。


「じゃあ私はそろそろお暇しますね! お仕事頑張ってください!」

「ごめんなさいねー 追い立てるみたいになっちゃってー」


 立ち上がって私の横に来つつ、ムニュっと眉毛を歪めた表情を浮かべて……何だか全然済まなそうな感じのしない声音で謝罪を私に告げるヌルさん。


 そして私に語りかけつつ、何故か私の左手を撫でたり揉んだりつねったりして『んーふぃーどばっくとー……速度が感度……ちょっと調整だなぁ……』みたいな謎の言葉を呟いております。


 えーなんだろう、やっぱり凄いマイペースな人ですね。

 あと、ちょっとくすぐったいので、お手柔らかにお願いします。


 何て思っていたら、私の横に来ていたアインスさんとフィーアさんが、ヌルさんの両肩を掴んで『ほら行くよ姉様』『ヌル姉お仕事お仕事!』と言いながら引っ張って剥がして下さいました。


 地味に助かりました。どうもありがとう。


「それでは通常領域へお送りしますね!」

「はい、お願いします!」


 右手を振ってお見送り状態のアインスさんと、ヌルさんのお尻の辺りを押して無理やり移動させているフィーアさんに向かって、此方からも手を振り返しておりますと。


 前回フィーアさんにご相談した際と同じ様に、周囲が光に包まれて何時もの浮遊感に襲われます。そして何時も通りあっという間に魔素迷宮入り口前まで戻ってきました。


 何だか一気にGMさんのお知り合い? が増えてしまいましたね。

 ああやって、日ごろから色々なお仕事頑張っているんですね……大変そうです。


 私の応援でも、仕事に対する活力になるというなら幸いですね!

 さて、疑問も解消しましたし、早めにログアウトする事にしましょうか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ