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179 奴に お菓子を あげるのだ

好感度を稼ぐのだ。

特殊な毛玉。

 感動の再会と言うか、驚愕の邂逅と言うか、奇跡の対面と言うか。

 ……何とも表現に困る、普通はほぼ有り得ないかつての相棒との出会いに、見詰めると言うか半分睨み付ける様な形のジト目状態で、メェを目の前に硬直してしまいました。


 いやだって、普通に考えてココにいるのはおかしいですよね?

 私間違ってないですよね!?


 いや実は根本からプレイするゲームを間違ってしまいましたか!?

 実は私ってば今【ふわもこファーム】プレイしてたりしないよね?


 今一度自分の身に付けている装備を確認します。

 うん、何処からどう見ても違うゲームをプレイしていたというオチは無い筈。

 と言いますか、他のVRゲームは私のHMDには入っていない筈。


 ビックリしすぎて脱力感に見舞われた私は、ヘロヘロと怪しい動きでその場にへたり込む様に座り込みました。普通にビックリしすぎてどうしたら良いのか判断がつきませんよ!


 私が座り込んだのに反応してメェがミョン! と垂直に跳ねた後に、先ほどの私と同じ様にその場で硬直してしまいました。あー驚かせちゃったかな!? えっとこのままだと逃げちゃうかも!


 あーえーっとそうだ! 何か食べ物を贈り物として進呈する事にしましょう!


 激しく動くと再度驚かせてしまうかもしれませんので、ゆっくりとした動きで何かメェが美味しく食べてくれそうな物が残っていないか確かめます。


 えーっと……あーチョットだけですが、お店でカットして貰ったエピルが残ってますね!

 フルーツはメェに与えるご飯として『ふわもこファーム』で存在した選択肢の筈なので、これなら美味しく食べてくれるかも!


 流石に初対面では、私が手で持ったエピルを直接食べてくれなさそうだと思いますので、この場に置いて少し離れる事にしたのですが、流石にそのまま地面に置くのは申し訳無いですね。


 えーっとお皿代わりになる物……オクトパ焼きとかのお皿に果物載せるわけにも行かないよね……えーっとそうだ、ポコ豆の袋を敷いてその上に……よし、準備完了!


 アイテムボックスに数個残っていたカットエピルを、地面に潰して敷いた紙袋の上に置いて。


 傍らに置いておいた武器をさっと回収した私は、座った状態からグイっとお尻を上げて四つん這いの状態へ移行、そのまま手足をシャカシャカ動かしてお尻の方角へと数メートル程後ずさりします。


 その間も視線はメェに向ける感じで。

 相手をビックリさせない様に、緩やかで焦りを感じさせない動きを心がけます。


 さあさあ、どうぞどうぞゆっくり食べて行ってね! 私からの捧げ物でござる!


 再度首を傾げるように首を捻ったメェが、置いてあるカットエピルに気が付いて、私とエピルを交互に見つつ小さい足を動かして近寄ってきました。

 うむ、そのまま私を気にせずにどうぞ食べてやって下さい。


 大体10秒程そのまま待ったでしょうか。

 置いてあるカットエピルまで到達したメェがその場で匂いをかいで……食べても大丈夫な果物だと判ってくれたのか、モグモグとお食事を始めてくれました。


 やった、まずは第一段階は突破したのではありませんかね!


 さあお次は、この心の距離を表さんと言うばかりに離れた、今現在のメェと私の相対距離を如何にかしないといけません。色々と必要な物が足りなくて、最悪仲間になってくれなかったとしても……その身体をモコモコ触らせてもらいたいのです。


 心の癒しを欲している私のお疲れハートがビンビンです。


 ああーそうそう、ふわもこファームをプレイしていた頃もこんな感じでご飯をあげてたなー、何て思いに耽りつつ、モヨモヨと動くメェの身体を眺めておりますと。


 数個しか残っていなかったカットエピルは、あっという間にメェの胃袋に収まってしまいました。お食事を済ませたメェは、ムフゥと息を一つ吐いて口元をその短い前足でゴシゴシしております。

 うん可愛い。その動きもちゃんと昔どおりだね。


 さて、これでこのメェの警戒心はある程度は解れてくれましたでしょうか。


 ガサガサと四つん這いの体勢でメェに近寄ってみましたが、一目散に逃げていくような事も無く先ほどよりは近くによる事が出来ました。いや、まだ手が触れるほど近くに行こうとするのは早計……かな?


 一応数メートル程離れた所で近寄るのを止め、ずっと四つん這いの格好だと腰が疲れそうなので、移動後に地面へと腰を下ろす事にします。


 右手でチョイチョイと手招きをしつつ『ダイジョウブダヨーコワクナイヨー』とメェに声を掛けつつ色々と表情を変更しつつ、メェが自発的に此方に近づいてくれないか試行錯誤してみたのですが。


 カットエピルを食べた地点で、此方とカットエピルが置いてあった紙袋を交互に見つつ、何をしているんだろうという雰囲気で不思議そうに此方を見るばかりで。

 もうちょっと、あと一息という所だとは思いますが、何か……何か一手足りない状況の様相を呈しております。ううむ。


 ココで無理やり飛び掛って捕獲しても仲良くなれないですよね。

 ふわもこファームだと追加メェは、ポイントを消費して購入する事でダンボール箱に入った状態で出現していたんですけど。


 あれです、よく漫画等で見かけるタイプで上蓋が開いた状態のダンボールに捨て猫が、という見た目の形で中に居るのが猫ではなく白い毛玉、という状態です。

 突如として空からフワリと地面に落下してくるので、一体何処からあのダンボールが送られてきていたのか未だに謎ですが。神様からかな? メェ隕石なのか。


 そうだ! ふわもこファームであったメェの好感度をアップさせる為のアイテム!

 ……えーっと確か何だっけ。


 あー思い出した、ケーキとかお団子とか、確かお菓子全般が好感度アップアイテムであったはず!

 ふわもこファームだとメェって、普段は牧草とか私が作った果物とか普通に食べてたし、なおかつイベントの時とか、ゆで卵とか肉まんとかもアイテムとしてあって普通に食べてたんだよね。


 草食っぽい感じの雑食なんだろうか。

 ふわもこファームをプレイしていた頃には気にしていなかった様々な事柄が、サービス終了した今になって凄い気になってきた!


 あの頃に詳しく調べてみたら良かったなぁ……後悔先に立たず。

 例の攻略サイトはもう閉鎖しちゃったんだよね確か。

 あそこになら何処かに書いてあったかも知れないね。ううん残念。


 でもケーキとか確実に用意できないよ……いや、チョット待ってね?


 なにやら此方に興味津々な感じで、逃げるような素振りを見せないメェにひとまず安心した私は、アイテムボックスから目当てのアイテムを探して取り出します。


 そう、それはリアさんの為に購入しておいたご進物の焼き菓子です。


 ごめんねリアさん、お金が出来たらもっと良い焼き菓子を買っておくから!

 今は許してください!


 という事でメェの好感度を稼ぐ為に、少々焦りつつ焼き菓子の箱を包んでいる包み紙を剥がしにかかります。むむ、紐とかピンとか色々豪華というかシッカリした梱包ですね。

 えーっとこうやって……こうかな?


 包装紙が綺麗だったので破らないように開封を進めつつ、綺麗に包まれていた質素な色合いの箱を取り出すのに1分少々掛かってしまいました。

 既に甘い香りが箱から漂ってきているのが判ります。

 んー美味しそう!


 いや自分で食べる為に開封したんじゃなかった、とりあえず中に入っているお菓子を確認しないとね。購入した際にお店で見本の様な物は確認したけど、実物は初めて見るし。


 サラサラとした手触りの木箱を地面に置いて、蓋をゆっくりと持ち上げます。


 中には丸かったり四角かったりチョコっぽい色が付いていたりする、恐らくはクッキーの様なお菓子が数種類と、指先で摘める程度のサイズな長方形の棒っぽいお菓子が入っています。


 この長方形のヤツ見たことある様な気がする。

 なんていう名前だっけな。忘れちゃったよ。


 長方形お菓子を一つ摘み上げて眺めつつ、まずはメェがこの中にあるお菓子を一つでも気に入ってくれるかどうか、確認する事にしました。


 開封した箱の蓋を引っくり返し、ソコに全種類のお菓子を一つづつ置いてから、ぐぐーっと右腕を背伸びする様に伸ばして箱蓋を押し、地面を滑らせるようにしてメェに近づけます。


 ふわもこファームでは美味しそうにモグモグお菓子を食べていましたが、このゲームだとどういう感じになるでしょうか。緊張と期待で自然と姿勢が良くなり、思わず地面にビシリと正座してメェの動きを注視します。


 フンフンとお菓子の匂いをかいでいる感じで鼻先を動かしたメェが、お菓子の乗った蓋に興味を持ったようでゆっくりと此方に近づいてきました。さあ、お菓子作戦は功を奏してくれるのか!


 ぐぐっと腰を曲げて期待を籠めた視線をお菓子とメェに注ぎます。

 一度ペロリとクッキーを舌先で舐めたメェが、パクリとクッキーを一つ口に入れて咀嚼し始めました。おっこれは成功かな!


 思わずニンマリと口角が上がっていくのを止める事が出来ません。

 さぁドンドン召し上がって下さいな!


 そして完膚なきまでに私と仲良しになるのだ! もう逃がしはしませんよ!

 マイフェイバリットなファンシー毛玉!


 お菓子を一つ食べおわるタイミングで、両手を地面についてジリジリと草の上に膝を滑らせる感じでメェに近寄ります。正座した格好のままで、太ももの上にお菓子の箱を置いた状態です。


 メェがお菓子を食べる、私が移動する、という動作を数回繰り返し……大分近くまで寄ってみましたが、お菓子に舌鼓を打っている最中のメェは、特に逃げ去るような素振りを見せませんでした。


 そしてついに手が届く距離まで近づいた私の顔を見上げたメェは、私の膝に置いてある残りのお菓子に興味があるようで、フンフンと鼻先を動かしております。


 君ってばその体のサイズで随分食欲旺盛だね!?

 いやいや全部食べてくれても大丈夫だけど、お腹壊したりしないようにしてね?


 再度蓋の上に全種類のお菓子を一つづつ置いてあげると、嬉しそうにお菓子を食べ始めるメェ。モヨモヨと身体を揺すりながら食事をしているメェの背中に、そーっと右手を伸ばしてみます。


 フワリ、と右手とメェの背中が接触。

 グイっとメェが顔を上げて、私の右手と自分の背中を交互に見ていましたが。

 その後、特に気にしない様子でお菓子をやっつけるのに戻りました。


 やった! 警戒心を解くことに成功した! 程よくモフらせてもらうぞー!


 その後メェの背中をモフモフリと堪能しつつ、流しそうめんの様な勢いで消費されていくお菓子を補充していきます。もう完全にふわもこファームプレイな感じになってきましたよ!


 その後、お菓子を全部ペロリと平らげたメェが、満足げな表情で地面に突っ伏してゴロゴロし始めました。その頃には両手でモフっても気にしなくなってくれていたので、私も存分にフワニウム(柔軟的毛皮存在成分)を補充する事ができました!


 久しぶりのセルフ補充ではない成分補給ですよ!


 これで、好感度的な問題は解消できた、と思います。

 あとは、この子の種族が問題です。


 そう、ついに【従魔】スキルを試すときが来たのです。

 果たして結果はどうなるのか、全く予想がつきませんが実践あるのみ!


 草むらにめり込むように白い毛玉と化しているメェの背中を揉みつつ、意を決して【従魔】のスキル発動を宣言します。


 ゴロリとお腹を上に向けた状態に移行したメェが、何かした? と言った感じで私の顔を眺めていますが、何か変わった様子は見受けられません。やっぱり魔物判定じゃなくて動物判定なのかな?


 この場で【調教】覚えてつれて帰ろうかな! 等と思っていた矢先……音と共に見慣れたメニュー板が一枚出現しました。


 おっとと、またまた唐突に現れて!

 もうメンテナンス時間がやばいのでしょうか。

 あまりにもメェとの邂逅が奇跡的過ぎて、時間も忘れるほど熱中しちゃったかな!?


 まったくもって、野生のカケラも見受けられないゴロゴロっぷりを披露するメェのお腹をモフりつつ、表示されたメニュー板に記載されたメッセージを確認します。


『あなたがスキル対象に選んだ相手は 特殊出現ユニットです スキル効果により存在属性を固定すると二度と変更できませんが宜しいですか? この特殊出現ユニットのリポップ待機時間は ゲーム内で3日です【使用したスキル【従魔】】 はい いいえ』


 ……うん? えーっとちょっと良く判りませんね?


 もう一度、最初から記載されている文章をゆっくりとかみ締めるように読みます。

 多分ですが、私が今使用した【従魔】スキルに対して、何かしらの反応が来た内容だという事は判るのですが。


 『二度と変更できない』とか書いてあると凄い不安になるんですけど……大丈夫なのかな!?


 ゆっくりとメェの柔らかさを堪能しながら考え込む事1分程。


 このままメニュー板を出しっ放しにするわけにも行きません。

 ここはスキル効果を信じて『はい』を選んで見ることにします。


 こうやって仲良くワイワイ出来ただけでも価値はありましたし、結果がどうなろうとも……きっと後悔はしないはず。ここで別れる事になっても、この場所まで遊びに来ればきっとまた出会える筈。

 あいている手で『はい』の部分を突きます。


 待つ事、数秒程でしょうか。

 突然フワリとメェの体が発光し、その光が紐のように延びて私の鳩尾辺りに吸い込まれていきました。

 うん!? 今の現象は一体!?


 バフバフと胸の当たりを触ってみましたが、首に提げているペンダントの感触がある程度で、特に何も変化はないようです。うむぅ!? 謎の現象すぎる!


 私が焦って色々と身体を弄っておりますと、メェがコロリと体を転がして身を起こし、ミョンミョンと私の横で飛び跳ね始めます。わわっどうしたの!?


 突然動き始めたメェにビックリしておりますと、表示されっぱなしだったメニュー板から音が再度鳴り響き、記載されたメッセージが切り替わったのを確認しました。

 ええい! と、とりあえずメッセージだ! 何か判るかも!


 元気に動いているメェを横目で眺めつつ、書き換わった内容を確認します。


『特殊ユニットの属性が 『従魔』に固定されました。今後は【従魔】スキルの枠組みで活動します』


 うんうん……うん!? えーっと!?

 つまりはー? これでこのメェは私の【従魔】になったって事で良いのかな!?


 というかさっきの光が【従魔】スキルが発動した際の効果なのかな……初めて見たから良く判らないですね。こまったなぁ……うーむ。


 とりあえずメニューを開いて、なにか変化が無いか確認してみます。

 私のステータスは特に変わった様子が無いですが……あれ?


 なにやら、私のライフバーの横にもう一つ小さいライフバーが。

 スタミナやマナも隣にもう一つ表示が増えてますね?


 これもしかして、メェの体調表示って事で良いのかな。


 表示は全部100%な状態なので、メェは凄い元気みたいだね! 

 沢山お菓子食べたからかな?


 とりあえず簡単な確認を済ませた私は、横で元気にミョンミョンしているメェを両手でガシリと掴んでじーっと見詰めます。こちらを見つめ返してくるメェ。

 ……流石に相手が考えている事が判る、とかは無いみたいですね。


 でもこうやって掴んでも大丈夫って事は、私の事をパートナーとして認識してくれているのかな! 嬉しいなぁ!


 コレからよろしくねメェ! 貧弱ご主人様だけどね!

月曜日お休みさせていただきました。

最近ジリジリ暑くなり始めて大変ですね……皆様も体調にお気をつけてください。


あとキャラクターまとめっぽいブツを同時に投稿しております。

お暇があれば適当に目を通していただけると。

あまり役にたたなそうなものですが……(汗

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