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178 現れたのは あのフォルム!?

奇跡の再会。

クレヨン画と写真くらいの解像度差。

 余り姿勢を気にして身動きをすると空中で受ける制動が変になって、色々と危ない動きになってしまうかもしれませんので、空中に膝を抱えて座った格好の状態で、後は鳥さん達に全部お任せする事にします。そう、私は空中を飛び跳ねるボール。ボールなのだ。


 等と、無機物になりきろうと画策する私でしたが、湖との距離が縮まり徐々に近づいてくる地表をみて期待に胸を膨らませておりますと。

 なにやら、水面を揺らしつつ水の中で動く影を確認しました。


 ふむ、あれが噂の水生魔物という奴でしょうか。

 本で読んだ魚系の敵ですねきっと。


 情報によると、美味しいとか、旨いとか、味が良いとか、食べるのに最適とか、こう料理すると抜群とか、色々と詳しく書いてありましたよね。全体的に食事関係。


 釣竿でも所持していたのなら、初めての釣りに挑戦しても良かったのですが。

 まぁあれです、釣竿を準備するお金も考えも無かったので持っている訳も無く。


 その辺に自生している植物の茎か何かで、強引に釣り出来ませんかね。

 流石に折れちゃうかな? 普通の魚より大きそうですしね、お魚の魔物とか。


 そうこう考えているうちに湖から少し離れた場所にある、視界の開けた草地に座った体勢でモフリと着陸する私。


 ふー無事に怪我する様な事故被害も無くランディング完了!

 鳥くん達は非常に良い仕事をしてくださいました。


 クルクルと鳴き声を上げながら私の頭上をグルグル回る鳥さん達に、両手を頭上に上げて左右にブンブンと振りまくり、強い感謝の意を送っておきます。

 いやーどうもありがとうー! 君達のお陰で、普通に目指したら何時間掛かるか判らない場所まで、あっという間に移動完了させる事ができたよ!


 私の激しい、ありがとうボディランゲージを認識してくれたのかどうかは判りませんが、ブワッっと私の頭の上スレスレを編隊を組んで掠め飛んでいった鳥くん達、綺麗なUターンの経路を辿って山岳の方へと戻っていきました。


 いやー流石に鳥の魔物だけあってフットワークが軽いですね。

 そこの所は見習いたい所存。空を飛べたらですけれど。


 そのうちに、空を飛べるような装備や魔法が手に入ったりするのかなー? 何て考えつつ、徐々に小さい点になっていく鳥くん達を見送った私は、改めて周囲の状況を確認する為に辺りを見回します。


 私の膝下辺りまで伸びた草で覆われた草原っぽい場所ですね。

 遠くにチラホラと動く影を見かけたりもしますが、何が移動しているのか良く判りません。小さいサイズなので魔物じゃなくて普通の動物なのかな?


 いや、サイズだけで判断すると酷い目に遭うかもしれませんし、一応気をつけて探索する事にしましょう。例の岩虫君だってサイズは小さいけれど、非常に痛いスプレーを吹きかけてくる相手でしたし。


 おっと、そういえば標高が下がったから寒さも和らいだんじゃないかな?

 携帯できるような温度計が無いですから、ステータス画面に例の寒くなってきました! マークが出ているかどうかで確認しないと駄目ですね。


 敵が近寄ってきた際に対応できるよう、左手に一旦尾羽を持ち替え右手に棒武器を装備した私は、ぱぱっとメニュー画面を開いて、例の寒さによって表示される温度計マークが存在するか確認します。

 うん、どうやら私の予想通り表示は消えているみたいですね。


 燃料が勿体無いですので、今度はきっちりと暖房具のスイッチをオフにしておきます。

 また付けっぱなしで放置して燃料が枯渇したら大変ですからね。


 その後、その他の装備品がシッカリと装着されているか確認した私は、フードを後ろに跳ね除け、湖の方へと進んで見ることにしました。あっ? また何か動いてるものが視界の端に見えましたよ。


 草むらに隠れて良く見えないサイズだから、気が付いた時には確認できない状況になってるんですよね。突然空から出現した私に、恐怖を抱いている生き物か何かでしょうかね。


 多分私だって、空から鳥にまみれながら誰かが降臨したらビックリして距離をとりますし。


 というか、先ほどの移動方法を知らない誰かに見られていたら、色々誤解されていた可能性が高いですね。


 そのあたりは、想像して考え込んでも埒があきませんので、余り気にしない方向で行きましょうか。多分周囲に人影は有りませんでしたし、大丈夫だとは思うんだけど。


 ワッサワッサと草むらを踏みしめつつ湖の方向へ移動しておりますと、なにやら見覚えのあるフォルムの魔物が私の視界に入って来ました。あーあれは、始まりの町近辺で見かけたイモムシ君じゃないか。


 彼らはこういう感じの草原が住処なんでしょうかね。

 草をモグモグしつつ生活しているのでしょうか。


 とりあえず進行方向にデデーンと鎮座していらっしゃるので、倒す方向で行きましょう。


 何時も通り遠距離から【風の刃】を飛ばして先制攻撃を繰り出します。

 魔法の命中と共に、ビヨンビヨンとダメージを受けたのが良く判る動きを始めるイモムシ君。申し訳無いが君にやられる訳には行かないのでね! 大人しく七色の光になってくださいな!


 仰け反って動きを止めていたイモムシ君を、容赦なく棒でボコボコと叩きます。

 あっさりとその動きを止めて七色の光になるイモムシ君。

 うむ、これ位の相手ならば私でも問題なく倒せますね。


 地面に何も落ちていない事を確認して再度先に進むことにします。


 その辺の視界に入らない場所にイモムシ君がいるかもしれませんので、ちゃんと確認しつつゆっくりと移動です。あのイモムシ君は色が緑色なので、遠くでジッとしてると草むらに完全に紛れてしまって、カモフラージュ率が高くなる傾向がありますからね。


 大きさが大きさなので、気が付かないで踏み付けたりはしないと思うのですが。


 ガサガサと武器で周囲の草をかき混ぜつつ、微妙にビビリながら進んでおりますと、またもや左前方で何か小さい生き物がカサカサと離れていくのを見かけます。あっ今回は視認出来ましたよ!


 あれは見覚えのある動物、普通の兎さんですね!

 ラビ君とは違ってサイズも普通で可愛らしい感じです。


 まぁ別段ラビ君が可愛くないと言う訳じゃないんですが。

 あの血走った魔物っぽい眼光が無ければ良い勝負だと思うし。


 っていうか、やっぱり普通の兎さんも存在してるんですね。

 町の近くではメリア以外の動物を見かけたことが無かったので、普通の動物がどの程度の量存在するのか把握できていなかったんですよ。


 町から離れた場所なら、普通に野生の動物達と遭遇できるっぽいです。

 野生動物と魔物の位置関係はどうなってるんでしょうか。


 やっぱり普通の動物は魔物に捕食されちゃう感じなのかなぁ……イモムシ君は草食魔物っぽいから大丈夫だろうけど、肉食系の魔物がいたら兎さんモグモグされちゃうのかな。自然界は弱肉強食だね。


 移動中、少しはなれた所にイモムシ君を発見、遠いので無理に倒しに行かないで先に進むことにします。

 ようやく湖のほとりが視界に入ってきた辺りで、見覚えのある植物が湖の周囲にモリモリと自生しているのに気が付きました。


 うひょー【薬草】と【魔力の花】が沢山あるぞー!

 やっぱりこういう自然が豊かな場所だと量も豊富ですね!


 でもあまり水辺に近づきすぎると危ないかも知れませんので、一応警戒しつつ毟る事にします。んーこれは町に帰って調合するのがますます楽しみになってきた!

 新素材の【薬効ゴケ】を使ったアイテム作成も試したいし、メンテナンス後にはやる事が沢山ですね!


 まぁとりあえず最初にやる事は、毎度お馴染みのポーション三点セットを作ってお金を調達する事なんですけどね! お財布空っぽですから私。


 時折バシャリと水面が波打つ音にビクビクしつつ、湖のほとりを歩き回って素材をたっぷりと回収します。コレだけあれば百本単位でポーション作れるんじゃないかな? 最高ですね!


 途中で進む先の地面でウゴウゴしているイモムシ君を数匹撃退しつつ、特に危険な魔物とも遭遇する事も無く採取を完了させました。水辺付近のもの以外は。


 さて……湖の水面に手が届く辺りにある見たことの無い植物をどうするか。

 そう、ココからが本番なんです。


 選択肢として……まず一つ目は、水辺の素材その他は諦めて周囲を探索し、何か私の心を癒してくれる柔らかい素材が見つからないか調べる。


 二つ目は、うひょー我慢できなーい! という勢いだけで危ないかもしれない水辺を強引に探索する。


 ……多分水の中に入らなければ、お魚系の魔物からの攻撃は来ないと思うんですけれど、もしかしたら両生類っぽい魔物が存在するかもしれないんですよね。


 定番で蛙とかでしょうか。

 流石に水辺だからと言ってワニみたいな危険度満点な、巨大爬虫類サンはいらっしゃらないですよね……いないですよね?


 脳内で水辺からワニの口が迫り、足の方からウワーという感じでモグモグされてしまう光景を思い浮かべ、少々ビビリハートのエネルギー量がチャージされてしまいましたが、ちょっとワニっぽいアレが湖に居るかどうか確認する方法を思いつきましたので、それを試してみる事にしました。


 まぁ簡単な方法で、餌を置いてみると言う方法です。


 唸るほど貯まっている【ラビの肉】を数個取り出して両手で持ち、お供え物をする面持ちで湖のほとりに転がっていた岩の上へと鎮座させます。


 さあ、食べたい子が居るならば、遠慮なく出てきてコレを美味しく食すると良い。

 私は、離れた所にある樹木の陰から観察させてもらいます。


 すっかり位置の高くなった太陽の光に照らされて、美味しそうな色合いを醸し出しているお肉を、木陰からジーっと見詰める事5分弱。

 そよそよと流れる風が周囲の草花を揺らしている位で、周囲からも湖からも何も出現しません。


 小形動物っぽい物がウロチョロしているのは確認できましたが。

 置いてあるお肉に反応している様な感じはしませんね?


 そして湖も先ほどまでと同じ様に、時々バシャリと魚か何かが動く気配を発する程度で、まったくもって静かなものです。うーむ。


 この湖の周辺は、お肉大好き生活万歳! の方々が活動する場所じゃないのかな?

 それならば安心なのですが。私の身の安全という観点で。


 もしかしたら、水の中に適当な紐を括ったお肉を投入したら、肉食系のお魚がいて食いついたりしてくれるかなー? なんて思いながら、一旦先ほど設置した罠お肉の回収に向かおうと木陰から立ち上がったその時。


 なにやら小さい白い塊が、その身体を揺らしながらお肉の場所に寄ってきました。


 ……なにあれ!? 凄い柔らかそうな外見!

 あれって多分というか確実にフワフワの毛ですよね!?


 立ち上がって移動しようとお尻を持ち上げた途中の、物凄い中途半端に中腰な格好で硬直したまま、木陰から顔を半分だしてジーっとその対象を注視します。


 なにやらお肉を食べる訳ではなく、不審なものが置いてあったので確認しに来た、という風な動きをしておりますね。匂いを嗅ぐような動きをした後に、ポヨポヨと身体を揺すって周囲を確認している様な感じで。

 あーまぁそりゃいきなり肉の塊がデデーン! って置いてあったら警戒しちゃうか。

 ちょっと考えが足りなかったかもしれません。


 ですが、ええ、今はそういう話をしたい訳では無いのです。

 あの物体がなんなのか、それが非常に気になる。


 ぱっと見た感じでは、多分一番ボール君くらいの大きさなのかな。

 丸くてフンワリとしていて綿毛っぽい見た目。


 恐らく草むらを掻き分けて移動してきたのかな、と思われます。

 んー、両手で抱えたら気持ち良さそう。


 そして魔物なのか動物なのか、ソコのところが良く判らない。


 そう、動物だと私が冒険出発前に覚えてきた【従魔】スキルが意味を成さないのです。

 動物さん相手は【調教】スキルでないと。


 いや、考えるのは後回しにしよう、とりあえず驚かさないように慎重な行動を心がけつつ匍匐前進でターゲットに近寄るのだ。匍匐前進とかこの世に生を受けてから始めて実行するけど。

 自宅の床をイモムシの様にウゴウゴ移動した事なら何度かあるけどね。


 確か、中学校の運動会を全力で頑張った次の日に、全身の筋肉たちが無言で悲鳴を上げ始めて、私に筋肉痛という猛抗議を繰り出してきたときに。


 ぬぉー! って言いながら移動しましたよ。

 普段から運動していないのは駄目ですよね、うん。


 いや、筋肉談義は良いんです、そうじゃない、そうじゃないよ。


 お肉への興味を失ったっぽい白い毛玉さんが、湖のほとりにある肉祭壇から移動してしまいそうです!


 思わず自分でも気持ち悪い動きだろうなー、と思われる匍匐移動をその場で取り止めて、立ち上がってしまう程には焦ってしまいました。ビクリと身体を震わせて硬直する白い毛玉さん。


 お互い大体5メートル程の距離を取った状態で、動きを止める事となりました。

 不安そうな動きで此方に振り向いた白い毛玉さん。


 どうやらヒツジと言うかヤギと言うか、そんな感じの見た目を丸っこくした……あれ!? ちょ、ちょっとまって!?


 とりあえず敵意は無いんですよー!? という気持ちを表すために、武器を地面にゆっくりと置いて……両目を閉じて脳内の記憶を掘り起こしに掛かります。


 えーっと、あの形とあの顔。丸いフォルム。

 見た目というか、解像度というか、画像処理技術が格段に向上して、見た目のフンワリ感が留まる所を知らないアルティメットフォームになってますけど、この生き物って……多分そうですよね!?


 私が唐突に動きを止めて唸り始めたのを不思議がってか、白い毛玉からピョコっと飛び出している顔がクリっと首を傾げています。


 うん、この動き! この子、絶対に『メェ』だよ!

 えええええ!? 何で!? 何でこの世界に『メェ』がいるの!?

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