166 鉱石 集めと 光る床?
無事全滅。
そして悪あがき
叩いて、起こして、逃げて、避けて、殴る。
一見激しい運動と見紛うばかりの、超流れ作業ルーチンワーク。
部屋と通路を往復する命がけの単純作業を延々と繰り返す事、幾星霜……というには少々短時間過ぎる気もしますけれど、その辺はニュアンスで乗り切っていく所存です。
つまり沢山ミニゴーレム君を倒しましたよ、と言う事を言いたいだけで。
魔物を倒した後に七色の光になって消えない設定ですと、確実に辺り一面岩まみれになっているであろう数量を討伐いたしましたよ。
途中からはスタミナとマナのポーション総動員で、ガンガン戦闘行為を行っておりました。途中で何度も休憩を入れてしまいますと、なんと言いますか……私にも少量芽生えた戦闘に対しての命がけな緊張感みたいなモノといいますか、そう言うモチベーションの様な物が減衰してしまうかも、と思ったからです。
うまい具合に出来ているうちに、一気に最後まで駆け抜けて全滅終了させてしまいましょう、という微妙に危険度の高い目論見ですね。集中力の最大値が低い。
その甲斐あってか、部屋の中に転がっていた小型の岩はほぼ全滅、と言いますか……残っている岩は本物の岩のようで、叩いてみてもダメージ数字がポン! と飛び出すだけで反応が有りませんでした。
多分これは、普通の鉱石がゲットできる資源の飛び出す鉱石岩なのではないでしょうか。
とりあえず、ソコソコの時間を掛けて大部屋内部の物理的パワーお掃除作業を、無事に終了させる事に成功しましたので、この少量残っている鉱石岩も砕いていく方向で行きます。
先ほどアイテムボックスの中身を確認してみたのですが、物凄い量の鉱石が私の視界に飛び込んできましたよ。表示されているページの上から下まで、綺麗に全部鉱石で埋まっている状態に。
あと、あれだけの鉱石アイテムが詰め込まれたと言うのに、未だにアイテムボックスの容量上限に到達していない事もビックリですけれど。一体幾つのアイテムが収納できるんだろう。
これも誰か実験してくれている人が居るかも知れませんね。
覚えていたら後で調べて確認して見ましょう。
とりあえず今は鉱石岩を棒で叩いて砕く作業を進めていくのです。
木魚を叩いているノリで床に腰を下ろしてポコポコしましょう。
サイズの小さめな岩なので、正座で座ってエイヤーと叩く位が丁度良い感じですね。
飛び出すダメージ数字も相変わらず20の固定数値の様です。
多分大きさから逆算するに、先ほど頑張って叩いて破壊した大きい鉱石岩よりは、作業も短時間で済むのではないでしょうか。
そして不精して座りながら作業をすることによって、立ったまま作業するよりもスタミナの回復速度が向上するのではかなろうか! と言う地味ーに頭を使った採掘工程になっております。
まぁ座りながら攻撃をすると回復速度が本当に上がるのか、ソコの所は私には詳しく判らないんですけれど……でも休んでいる感じがしませんか。床に座っている状態ですし。
そんなの関係ねぇ! 武器を振っていたら同じだ! という風に、データ処理的には一緒くたに纏められているかもしれませんが。物は試しですし、気分的にこの状態で叩いていた方が楽なので良いのです。
と言う感じで、スタミナ回復についての深いのか浅いのか判らない微妙な考察を挟みつつ、木魚作業を繰り返しておりますと……結構呆気なく、小さい鉱石岩がバラバラに砕け散ってアイテムをばら撒きつつ、七色の光になって消え去りました。
おお、前回試した大きい鉱石岩破壊は10分は掛かりましたが。
この小さいのは数分で済みましたね。
そうだ、これ持ち上げて持って帰れないか試してみよう!
このサイズならば、私の筋肉質というには少々頼りない柔らかアームでも持ち上がるのでは?
資源岩テイクアウトなアイテムボックス悪用のお持ち帰りが出来るなら、こんな明かりが無いと真っ暗な怪しい穴倉で、ランタンの燃料を大量にモリモリ燃やしつつ木魚しなくても、町に帰った後に取り出して木魚出来るのでは?
ひとまず試して見ようと思い、次に叩こうと思っていた小型サイズの鉱石岩を両手で持ち上げ、ボックス収納を宣言してみます。すると意外と呆気なくアイテムボックスに収まる鉱石岩。
おお……試してみるものですね!
とりあえず、片っ端からその辺にゴロゴロと転がっている岩を、全部持ち上げてボックス収納してしまいましょうか!
どんどんと柔らか度数が減少していくアイテムボックス内部ですが、この迷宮の名称を鑑みると、この岩の様な鉱石が特産品なのでしょうし仕方ないかな。
加工等は出来ませんので、売却時のお値段が少々気になる所ではありますが。
そのあたりはスキルと相談しないと解決しない為、今のところは我慢する事にします。
例えば自作で武器や鎧、盾みたいな金属製品を作るとしても……私の勝手な予想ですが恐らくポーション作成の時みたいな、小規模というか小さい器材で加工出来る様な気がしませんし。
アレですよね、鉱石って何か高温で溶かしたり不純物を取り除いたりしないと、金属として使ったり出来ないんですよね? VRゲーム内だと、ある程度楽が出来るようにルールが変更されていたりするのでしょうか。金属の事は良く判りませんね。難しい。
しかし、この小型な岩がお金の元に変化すると思うと、何やら愛おしく思えてくるのは……私が貧乏性だからでしょうか。守銭奴とは言わないで欲しいですが、何とも強く否定は出来ません。お金大事。
今現在の私ほど貧乏なプレイヤーはそうそう居ないだろう! と強く思えるくらいには懐事情がピンチですから。鉱石岩を一つ収納するたびに顔が笑顔になります。
あとで時間とスタミナとやる気が有るときに、粉々に砕いてあげるからね。
少々猟奇的な表現に聞こえる。
大分語弊はありますが語彙は間違っていない筈。いわゆる無罪です。
そうこうしている内に、周囲に転がっていた鉱石岩を全部収納する事に成功しました。大分数量があったのですが、アイテムボックスから漏れ出すことも無く作業完了です。
町に戻ったら適切なツールを使って砕きましょうね。
鉱石岩の上手な壊し方は、ゲイルさんあたりに聞いてみたら判るかな。
ドワーフってこう、採掘作業とかもしてるイメージが有るよね。
勝手な思い込みで少々申し訳無いですけれど。
私が広めた訳ではないので勘弁して欲しい所ではあります。
さて、あれほど岩が転がりまくっていた大部屋が、スッキリサッパリ何も無い部屋に変化してしまいました。うーむ、結局全部敵を倒しても何も出てこなかったですね?
こんな奥まった所&隠された通路というか、通常手順では進入出来ない場所にある部屋なのに、敵が山盛りで詰まっているだけで何も無い、って普通にあることなんでしょうか。
もしかしてこの部屋自体が壮大な罠部屋で、私のように釣られてウッヘッヘするタイプのプレイヤーを、大いにぬか喜びさせた後に、ガックリ意気消沈状態に追い込む卑劣な場所なのでしょうか。
何と言う酷いことを! するのですか!
勝手に来て勝手に凹んでいるのは、大いに私のせいですけれども!
結構な量を入手した、ミニゴーレム君の魔石をランタンに追加投入しつつ、諦め切れない私は室内をもう一度舐めるようにジックリ観察探索大解析することにします。
何かがあって欲しい! という切なる願いを籠めて。
つまり報酬は素材だけという状態でタダ働きした事にしたくなーい! という何とも無様な悪あがきです。
笑うならコッソリ壁の陰で笑ってください。見えなければノーカンです。
丸い形状になっている室内を、壁面を辿るようにぐるーりと一周しつつ、ペタペタと手を使って触感も確かめながら何か無いか探して見ましたが。隠し扉の様な場所も見つかりませんし、小さい穴が開いていたりもしません。これは本格的に魔物の住処を直撃しただけの可能性が。
ううむ、これ以上悪あがきしても仕方が無さそうですので、泣く泣く諦めてきた道を戻るしかなさそうですね……爆破貫通を期待して、何処かに残りの属性石を投入するのもアリかもしれませんが、壁の破壊に有効そうな効果の属性石がもう残っていないのですよね……残念。
一応頭上に高々とランタンを翳して天井をぐるりと眺め、特に何も無い丸い形状なのを確認して、諦めも付きましたのでこの部屋を脱出して戻る事にしました。何も無い、そう言う事だってありますよね。
でも新しい素材である【薬効ゴケ】が相当量入手できましたので、調薬スキルの展望イメージとしては一応満足です。
と言った感じに、ズラリとアイテムが並んでいるアイテムボックスを再度確認しつつ、部屋の中央を抜けて外に出ようと思ったその時。少々違和感を感じで立ち止まる私……あれ、この床何処かで見た様な。
……あー思い出した! これってリアさんが住んでいた所から町に戻る際に踏んづけて、何の余韻も無く呆気なく帰還転送された時の、怪しく黒光りする石版じゃない?
しゃがみ込んでランタンを持った右手を床に近づけつつ、開いている左手で微妙に積もっている埃を左右に払います。うん、これこれ! 何やら怪しい文字がビッシリ書いてあります。
あの時に接地されていた石版にも、こんな感じの文字がビッシリ書いてあったよね。
となると……ここって何処かにワープ転送? 出来る場所なのかな。
でも今、私が上に乗っても何も反応が無いですよね。
っていうか、戦闘や鉱石岩採取の為に、何度かこの場所踏んだり蹴ったりしてますけれど……反応があった事は一度もありません。
何かエネルギー的なモノが必要?
いやでも前みた石版は、ドドーンと花壇の広場に無造作な感じで置いてあっただけだよね。
うむぅ? こんな所で謎解きゲームになるとは。侮りがたし!
一応ですが、床に填め込まれている石版の全体像を確認する為に、適当な場所に【つむじ風】を設置して埃を吹き飛ばす事にします。
あーもう本当に【扇風機】とか【換気扇】って言う魔法名に変更した方が良いんじゃない? って感じの使い方しかして無いですね【つむじ風】……いいのかなこれ。
まぁ千差万別のプレイスタイル!
ってゲームの公式さんが豪語していましたし、良いのかな、良いよね?
吹き散らされた埃を吸い込まないように、口元をポンチョの縁で覆いつつ……その全体像を現した石版にランタンの光を当て、見回します。ふむぅ、サイズはあまり大きいものではないですね。
これ持ち上げてもって帰ったり出来ないかな?
無理かなーサイズ凄いしなぁ……いや、鉱石岩の前例があるのだから一応試すだけでも!
ふんぬりゃー! 唸れ上腕二頭筋!
……結論! 密着している床から引っぺがすのがもう無理で、現実だと確実に爪が割れそうですコレ!
ランタンを床において、一応石版を棒でたたいて見ましたが、飛び出すダメージなんと1でしたよ! これ硬すぎじゃないですか? 材質なんだろう?
痛みは殆ど有りませんでしたが、強引に石版の隙間に捻じ込んで無理をさせた両手の指をフーフーしつつ、残量1割程度まで減ってしまったスタミナを回復させる為に、少しはなれた場所で床にクッションをだして座り込みます。
でもまぁ一応なにか怪しい物体を発見できただけでも良かったかな?
色々試して何も無かったら、今度こそ戻りましょう。
最後の一杯となる水筒の中身をVR胃袋に流し込みつつ、ゆったりと休憩しておりますと……んん!?
唐突に先ほどの床石版が光を放ち始めたと思ったら、何やら天井の各所が光りはじめ、周囲も普通に明るくなりましたよ!?
ちょ、え!? 何何!?
私のけしからん行動で何か古代の超文明が作動した!?
※ ある4人パーティの会話 その3※
ハンマー「ついに来たね……ボス部屋!」
魔法使い「我が前に立ちはだかる者は全て焼き尽くしてやろう!」
エルフ「付与魔法かけますねー」
ハンマー「ありがとう!」
ウサギ「いやー結構かかったねぇー、途中で上り階段があったのは驚いたー」
エルフ「あからさまに洞窟っぽい迷宮っていっても、形状は色々なのかもね」
魔法使い「おお……古なるエルフの加護により、魔力の高まりを感じる!」
ハンマー「支援ありがとう だってさ! よし、行きましょうか!」
エルフ「私は後方から援護と回復にまわりますね!」
ウサギ「うわー大きいゴーレムだねぇ! よーし頑張るぞぉ!」
ハンマー「先制ででかいの一発宜しく! ファーストアタック後に取り巻き呼ぶはずだから、まずボスの行動を見つつ取り巻き処理ね!」
エルフ&ウサギ「了解ー!」
魔法使い「破壊の言葉に導かれ顕現せよ炎、敵を討つべく我が手で燃え上がれ! 喰らいて爆ぜろ! 受けるがいい、この爆炎を! 【アニヒレート=デトネーション】!」
エルフ「何だか良く判らない感じですね?」
ハンマー「色々とパラメータ弄った【大火球】の魔法ね それっぽい名称に変更してるだけ」
魔法使い「ロマン」
ウサギ「それっぽいのは大事だよね!」
魔法使い「通じ合う心は素晴らしい」
ハンマー「ほら、ボスが反応した! 取り巻きが……あれ、こないね?」
エルフ「出るのと出ないのがあるとか? バグ……とかじゃないですよね?」
魔法使い「我が力に恐れをなしたか、力なき者たちよ」
ウサギ「ラッキーという事にしておいて、ボスに集中しましょう!」
ハンマー「そうだね、とりあえず取り巻きの影が見えたらそっちから処理で、いくよ! どっりゃぁ!」




