164 スネ を 擦られ 命がけ!?
その体は豆腐でできていた(誇張表現
取りあえず、七色の光になって消え去ったミニゴーレム君が居た場所に、一つだけ落ちていた魔石を拾い上げますと、後続が来ていないか確かめるために部屋の中を覗き込みます。
んーやっぱり、暗いから足元や周囲が良く確認出来ませんね。
あの床に転がっている岩って全部ミニゴーレム君なのでしょうか。
それにしてもスモールサイズのゴーレムだったからなのか、入手した魔石のサイズも普通のゴーレムと比べると格段に小さいですね。
大体ラビ君の魔石と同じくらいではないでしょうか。
価値の方も一緒くらいなのかな?
まぁ小さいものですし、これも燃料として使ってしまいましょうか。
ランタンは先ほど魔石を補充したばかりですので、これは暖房具のほうに投入しましょう。
私が燃料補給の為に、腰の辺りに付いている器材をワサワサ弄っておりますと、右の通路の奥の方から何処か違う場所を巡回していたと思われる、またもや色違いの岩虫君が此方に近寄ってきているのを確認しました。あーそりゃさっき倒した数匹しか居ないっていう訳は無いよね。
それにしても普通の生き物というか魔物と言うか、こう、何と表現したらいいのか……その、筋肉と言うか肉体っぽいものを持った魔物は、この迷宮には居ないのでしょうかね?
岩虫君は一応生き物? っぽい構造をしておりますけれど。
柔らかさとは無縁ですし、虫ですしワシャワシャですし……心が潤いません。
新手の変色岩虫君のスプレー攻撃を、何時も通りしっかりと【風の壁】で防御しつつ撃破します。相変わらず硬さだけは凄いので、毎度毎度攻撃の回数が嵩んで大変ですよ。
床を眺めて魔石が落ちていないのを確認し、追加の岩虫君が来ないか暫く左右の通路を眺めながら待機してみましたが……特になにか物音がすることもありません。さっきのでひとまずは戦闘終了かな?
改めて部屋の中にゆっくりと踏み込んでみましたが、転がっている岩は一向に反応を見せません。
うーん? この残っている岩達は、さっきのミニゴーレム君の存在をカモフラージュする為の迷彩岩なのかな? 試しに手頃なサイズの岩を一つ持ち上げてみよう。
入り口に一番近い場所に転がっていた岩を、貧弱な両手で持ち上げた後に、ガッチリと両腕でホールドしたタイミングで。私の腕の中で持ち上げた岩が激しいバイブレーションを開始し始めました。
アワワワワワ!? すっごいブルブルいってる! 何々!?
思わずゴツン! と大きい音がする勢いで床に岩を放り投げてしまった私は悪くありません。
急に振動する岩が悪いんです。
携帯端末のバイブ機能とは一線を画すほどの、そりゃもう強力なブルブルでしたよ。
等と、先ほどの岩石振動に対しての無駄な考察を思い浮かべておりますと、地面に放り投げた岩が、先ほど戦ったゴーレムとは少々形状の違うミニゴーレムとなって、私の居る方向に両手っぽい岩をグリグリ動かしながら勢い良く突っ込んできました。
うわっと!? やっぱり君も敵じゃないか!
あまりにも唐突にミニゴーレム君が突っ込んで来た為、スネのあたりをゴリっとその硬そうな手の部分で擦られてしまいました。あいたたた! ピリっと来た!
私の左スネを痛打していったミニゴーレム君は、攻撃の勢いのまま私の左側を通り抜けて、ゴリゴリと両足で床を擦って速度を落としています。
よし、今のうちにさっきと同じ様に弱点っぽい石を叩けば……あれ!?
さっきと同じ場所に弱点の光る石があるかな? と思ったのですが見当たりませんね?
個体によって着いている場所が違うのでしょうか。
あっ良く見ると、右の踵の辺りに光る石がくっ付いてますね!
殴られた左スネを擦りつつ弱点を発見したのは良いのですが、その後すぐに方向転換を済ませてしまったミニゴーレム君、再度私に向かって突進してきました。
今度はさっきのゴーレム戦闘で見た、体全体を使った体当たりをしてくるっぽいですね?
あの攻撃は、上手く回避できたら大きな隙を生み出すことが出来ますので、あえて手出しせずに相手の動きをしっかりと見て避ける事にします。
1メートル程の距離まで勢いをつけて走ってきたミニゴーレム君、その体全体を使った直撃したら凄く痛そうな体当たりを繰り出してきました! ソレを良い感じに回避する私!
さっと体を横にずらすだけで良いんですけどね。
来る事が判っている攻撃パターンなら安全に回避できますよ。うむ。
堅い床を擦りながら、全身を使ったスライディングを敢行後にダウンしている、第二ミニゴーレム君の弱点である右踵部分を思い切り叩き、今回も一撃で七色の光になってもらいました。
ふぃーこれは中々大変だなぁ!
あの場所に沢山鎮座している岩、全部この小さいゴーレムの材料っていうか、起き上がってないだけでバラバラになって散らばっている敵! っていう感じなんだよね多分?
無理して倒さないでもう戻った方が良いのかなぁ……どうしようコレ!?
ランタンの光しかない状態で確認しかしていないけれど、床の岩と岩虫君以外には、特に何も無さそうな部屋なんですよね……壁に全然【薬効ゴケ】も無いし。
……でも、もしかしたらここに居る敵を全部倒したら、隠し部屋の扉がギギギィ……って開放される、みたいな仕掛けがあるかもしれないですよね。よくRPGのゲームであったりするじゃないですか?
お部屋に居る敵を全部倒すと扉が開いたり。
光の中から宝箱が出現したり。
あと、ボーナスステージへ続くワープポイントが出てくるとか!
……まぁ魔物を全滅させた後に『ほほぅ ならば わしがあいて してやろう!』と言いつつ、凄い強そうなボスが姿をあらわしたりする可能性もあるんですけれどね?
ここはどちらのイメージを優先して冒険を続けたら良いのだろう。
楽観的にいくなら『全滅 お宝 大勝利!』な感じで頑張って戦闘を継続して、この部屋を物理的パワーで綺麗にお掃除する方向で。
最悪を想定するならば『こんな所に居られるか! 俺はもうココを出るぞ!』な感じで、ホラー映画だと一番最初に不審で不吉な死に方をほぼ確定でする! というイメージの行動を取る流れになるのですが。
……うん、あれだけ爆発物を使いまくってココまで来たのですから、これは一つ魔物全滅コースで頑張ってみようと思います。たとえ、隠し部屋や隠し宝箱や隠しボスが存在しなくても……敵を倒すことによって手に入る素材が有るじゃないですか。
今はソレを目的として行けば、一応モチベーションが保てるのでは。
きっと今現在、アイテムボックスの中身が鉱石だらけになっていると思いますし、後でしっかり確認しないと駄目ですね。魔石とか収納面倒だから即燃料にしたりしてますし! 色々と雑だね私!
とりあえず、先ほど一回攻撃を受けてしまいましたので、ライフの残り残量や他のステータスを確認する為にメニューを開きます。きっとライフが減っているでしょうから、ここで自作ポーションの出番です!
魔法のポーチに入っていたライフポーションを先に取り出しておいて、ステータスを見てみますと……うん!?
ちょっと、あれ!? まってくださいよ!?
ライフバーが1割程度しか残ってないんですけど!?
……アイテムボックスから水筒を取り出しまして。
一旦メニューを閉じて一口だけ水分補給。
両目を閉じて数回深呼吸して。
先ほど叩かれた左足を軽く動かす感じでストレッチ運動。
うん、異常等は見受けられませんね。
ついでに耳や尻尾の埃をポンポンと軽くはたきまして。
再度メニューを開いてライフ残量を確認します。
あははは、どう見ても1割をギリギリ切ってる量です。
ええええ!? だってミニゴーレム君の右手? っぽい岩部分が、私と擦れ違う際にスネ部分へゴリッ! て掠っただけですよ!? 痛みだって少しピリリと来た位なのに!
危なかった!
あやうく『フワモ 迷宮内で 左スネを擦られて町に戻る』ってなる所だったよ!
コレってあのミニゴーレム君が物凄い強い……訳じゃないよね?
多分というか恐らくと言うか、ほぼ確実に私が柔らかいのが理由だよね?
あっそうだ武器と服に魔法を掛けておかないと!
戦闘行動前に毎回使うように、ってちゃんと考えてるんだけど何時も忘れちゃう。
とりあえず付与魔法を使った後、取り出しておいたライフポーションを飲み干します。んーやっぱりこの赤い色の液体が無味無臭だとちょっと違和感が。
味付けしたいよねやっぱり。
フルーツ系等が良いかなぁ……でも味付けってなんでしないんだろうね?
ポーションの効果に影響が無い部分だからなのかな。
だって、作成時に必要なコストが増えるだけだろうし。
今度機会があったら、エピル風味のポーション作成にチャレンジしてみようかなー等と思いつつ、ライフバーの残量を再確認します。
大体4割無い程度まで回復していました。うわーお薬一本じゃ全快しないね。
ポーション再使用までの待ち時間があるし、その辺の石材の上に腰を下ろしてちょっと休みましょう。
……それにしても一度の攻撃命中で、もうギリギリなライフ量になってしまうのか。
このまま戦闘を継続しても大丈夫なのかな。
いや、そもそもどんな攻撃が私に命中したとしても、大体一発でレッドゾーン突入してしまうと考えれば……相手がたとえどんなモノであろうと、そんな事ぁ関係ねぇです! という強引な考え方も出来るのでは。
いやむしろ……一発命中するだけで、私の諸々が危険でデンジャラスな事になる位の強さを持つミニゴーレム君を、私の任意タイミングで一匹づつ起動させて倒せるこの状況ならば、逆にスキルのレベル的にも凄く美味しいシチュエーションである、と前向きに考えるべきでは!?
うん! いけるいける! きっといけるよ!
むしろ一人でダラダラ戦闘出来るこの状況だからこそ、このヒットアンド逃亡プレイ戦法は正解だと思う!
でも、戦闘開始するのはライフが満タンになってからね!




