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138 お髭の騎士さん 落ち着いて!?

やっと麓につきました。

 とりあえず掲げられた武器を返却してもらった後、アレコレと私が心外に思ったり怒ったり憤慨したり、怒り方面の精神状態ではないですよ! という事をお髭の騎士さんに向かって必死にお伝えしますと、ようやくビシっと跪いた状態の騎士さんが顔を上げて下さいました。


 馬車に乗る私とお髭の騎士さんの、なんというかこの謎な構図はどうなのか。

 いま他のプレイヤーさんとかが通りがかった場合、非常ーに説明に困る状況です。


 あれ、でもこの武器が盗難品ではない、という事が判った理由は判明したけど。

 この武器がカイムさんの所持品だった! て言う事を知っていたのは何故でしょうかね?


 ひとまず、お髭の騎士さんが跪いた状態で此方に見上げる様な視線を向けた格好が、私の精神的プレッシャーになり過ぎるので、私の事は気にしないで立ち上がって会話して貰える様にお願いします。


 ブワァッとマントを翻して立ち上がったお髭の騎士さん、ビシっとアレイアさんがしていた様な胸に拳を当てるポーズを取ると、すっと頭を下げてこられました。

 うう、なんと言うか礼を尽くされている気がするのは確かなのですが、逆に困ると言うか。

 ええい、まぁいいや! とりあえず気になった事に付いて、ちょっと質問させてもらいましょう!


「あの、この武器がカイムさんの物だという事が何で判ったんでしょうか?」

「カ、カイムさん!? 名誉騎士様を愛称で御呼びなさる程の方に向かって……私は! 私はなんと言う無礼をっ!」


 直立不動の状態で胸に拳を当てていたお髭の騎士さん……右コブシがビキビキと握り締められる音と共に、ブルブルと微妙に震え始めました……ちょ!? ちょっと落ち着いてぇ!?


 こう、なんと言うか……猛獣を宥めすかしている様な気分を味わいながら、お髭の騎士さんに両手を向けて落ち着いてもらうことに専念します。


 愛称っていいますか、この『カイムさん』呼びの原因はですね? 本人の自己紹介がその呼び方だっただけでですね? 初対面時にフルネームなんて聞いてないんですよ。


 カイムさんが言うには今現在の私は一応弟子? の様な物みたいですが。喜ばしくない。


 とりあえずマークさんのビックリ許容量がパンクする前に、馬車移動を再開しないといけません。

 それに私の残り時間があまり無いので、この場所で長時間足止めされる訳にも行きませんので!


 私の落ち着いてください運動が功を奏したのか、深い深呼吸を数回繰り返したお髭の騎士さん、ようやくなんとか会話できる程度の状態になったようなので、先ほどの質問に対する答えを聞いてみる事に。


「名誉騎士様がその武器を所持なさっている姿を、この両目で拝見した事があるからです!」

「なるほど……確かこのあたりのエンブレムとかーこの辺の意匠とかが特徴的らしいですね?」

「はい! その通りであります!」


 アレイアさんやゲイルさんに説明してもらった『この武器のココが凄いよ!』ポイントをそれとなく指摘しみると、打てば響くという感じのタイミングで帰ってくるお返事。


 ……うん、すっかり私の方が上の立場っぽい会話風景になっちゃってますけど?

 ねぇどうしたら良いのコレ!?


 馬車周りでお待ちになっている他の若い騎士さん達からも、何やら尊敬の眼差しが私の全身に注がれている感じですよ!? くっ!? 謂れのない尊敬の視線が身に染みる! 心が痛い!


 ま、まぁアイテム盗難疑惑は解消されたみたいですし……これ以上騎士さん達のお役目を邪魔する訳にも行きませんでしょう。先を急ぎますのでーと若干棒読みな感じでお伝えしますと、ハッと気がついた様な表情を浮かべたお髭の騎士さん、素早い動きで自分の騎馬まで戻ると流れるような動きで騎乗しました。うん、絵になりますね。


「長時間のお引止め、誠に申し訳無い! この度の無礼はいずれ、何かの形でお詫び申し上げます!」

「いやいや!? 別にそのままお忘れ頂いても、問題ありませんデスヨ!?」


 私の返答が聞こえたのかどうかは定かではありませんが、待機していた他の若い騎士さん達に大きい声で出発の号令を掛けたお髭の騎士さん。もう一度此方に対してお辞儀をすると先ほどと同じように馬車とすれ違うルートで進んでいってしまいました。


 あああー……なんだか凄い疲れた。凄い疲れましたよ! 冒険の本番はまだこれからなのに!


 マークさんの号令で再び歩みを開始した、大きいお馬さんのフサフサ尻尾を眺めて癒されつつ、棒武器の柄から取り外されていた革紐を再び巻き付けなおします。


 ココを隠しておけば多分さっきみたいな騎士さんや、それ系の職人さん以外には気が付かれないみたいだからね。しっかりばっちりと隠蔽しなおしておきましょう。私の平穏な冒険の為に!


 その後、馬車で移動しつつマークさんに先ほどの問答が一体なんだったのか、という簡単な説明をしておきました。傍から見てたらいきなり騎士さんがいきり立って突っ込んできた後、いきなり跪いてお許しを求めるという、なんとも部外者には意味不明な事態でしたから。


 当事者である私でもちょっと大変だったくらいなので。


 マークさんには『名誉騎士』とか『カイムハイス』のお名前は通用しませんでしたが、例の『笑う鬼神』の名称をだして説明したら一発で理解して下さいました。

 うわー……この異名広がりすぎじゃないですかねカイムさん?


 そんな感じで、アレコレとカイムさんについてお話しつつ、途中で街道横に現れた大きいイノシシをアイテムボックスから取り出した、例のキノコ毒ビンをポイポイする事によって嫌がらせ&撃退する場面もありましたが。過程はカットです!

 だってちょっと馬車の速度を上げつつ5、6本のビンをブワっと撒いただけですので!


 その後、大体騎士さん達と別れて30分程で、約束の分かれ道まで到着しました。

 馬車に搭載されている時計を確認すると、現在時刻は……16時過ぎ位ですね。ああ、時計って便利。


「マークさん、ココまでどうもありがとう御座いました!」

「いえいえ! こちらこそ魔物を撃退してくださったり、色々と面白いお話が聞けまして!」


 御者台から勢いをつけて飛び降りた私は、感謝の気持ちを籠めてペコリとお辞儀します。

 本当に助かりました! 歩きだったら確実に、街道脇の適当な所で夜明かしかログアウトする羽目になっていましたね!


 笑顔で帽子を持った右手を振りつつ、分かれ道を左に進んでいくマークさんの馬車を、こちらからも手を振ってお見送りです! その後、なだらかな丘を越えて馬車が見えなくなるまで、その後姿を眺めます。


 ああ、ついにココからまた地獄の徒歩移動が始まるんですね……

 よーっし! 体力は十分にあります! さあ気合入れて行きましょう!


 ひとまず移動の指針とするため、メニューを開いてマップを確認します。


 えーっと……このあたりまで来ると疎らに存在していた林みたいなのは、全然無くなるみたいですね。このまま分かれ道を北に進むと、途中で街道が途切れて……山道みたいな余り舗装されていない感じの道に変化するみたいです。そのあたりからが山岳地帯の本番かな?


 周囲を見回しつつ進みますが、流石にココまで町から離れた場所になりますと、他のプレイヤーなんて全然見かけない状態になりました。逆に中途半端な場所だから居ないのかも?


 山岳地帯まで進んでしまえば、そこで活動しているプレイヤーが存在するかもしれません。

 山登りが好きな人とか? あと鉱石も沢山取れるという話ですし、金属の素材が必要な方なら山岳にいるかも。


 それにしても始まりの町からだとうっすら遠くに見えていた山岳が、今はばっちり視界に映る距離にあるのが中々感慨深いですね。


 よーし、頑張って先へ進みましょう! まずは山の麓に広がっている森を抜けないといけませんね!

 ついでに素材採取も忘れずにしていきますよー! ここならキノコもニョッキしていそうです!

※ 追記 ※ 誤字等を修正しました。

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