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014 装備取得 楔の姫巫女 アグヘイリア

主人公、町への帰還。

なかなか執筆の時間が取れませぬ。

不定期更新ご容赦の程を。

「ふふっ、冗談よ冗談ー」


 ニヤリと口の両端を吊り上げながら、お姉さんが微妙に冗談に聞こえない声音で私に声をかけます。

 本当ですか? スープに毒とかはいってないですよね? イマイチ信用できない笑顔です。


「じゃあ、そろそろ【始まりの町】へ帰るのかな?」


 そんな私の不安もなんのその。私が食べ終わった食器を持ち上げ奥に持っていきながら、お姉さんが声をかけてきます。あっ、お片づけ忘れてた!


 慌てて立ち上がろうとした私を、お姉さんは左手で押し留めました。いやはやスイマセン。


「たっぷりと採取しましたので、町に戻ってどの生産スキルを習得するか吟味してみたいと思ってます!」


 キッチンから戻ったお姉さんに、私はアイテムボックスを開いて中身を見せるとそう答えます。

 ここで採取したアイテムは、大体同じもの十個単位で纏められているみたいですね。


 アイテム名は見えてるみたいだけど、どういった物なのかっていう詳細は確認出来ないのかな?

 町に戻った後で方法が無いか確かめよう。


「そっかー、また暇になるなぁ……あ、お茶のおかわり持ってきたよ。あとお茶請けのクッキー!」

「ははぁー! ありがたやー謹んで頂きますぅー」

「ちょ、そんなに平伏されても困るんだけど!?」


 テーブルの上に両手を投げ出し平伏すると、お姉さんの困惑声。いえいえ、本当に有り難い事です。

 顔を上げたタイミングで、目の前にお茶の入ったマグカップとお皿に盛り付けられた、何かツブツブが練りこまれているクッキーがドーンと設置されます。


 それで、先ほどお茶を飲んでいて気が付いた事が。


 スープを頂いた後お茶を飲んでマッタリしていたのですが、クッキーを前にしても、もう満腹で食べられない! というお腹事情になりません。


 胃袋の容量的には際限なく食事できる? ぽいのかな。現実の私の胃袋に対して、あからさまに容量オーバーする量を摂取している筈なのですが、お腹はまったく臨界点突破していないようです。


 これはやっぱり【ふわもこファーム】と同じで副作用もなく、延々と食事できるのかもしれません。

 ならば折角の美味しいお茶と新顔のクッキーです。

 謹んで頂かない訳には、行きませんよね! よね!


 現実でこんなに胃袋に入れたら、お腹パンパンで動けなくなっています。VR最高。


 三杯目のお茶を頂きつつクッキーをボリボリと頂きます。んー香ばしくて美味しい。アーモンドかな? などとクッキーの美味しさに頬を緩ませていると。


 正面に座っていたお姉さんから、とんでもないご提案が。


「そうだ! ここに来た祝福の冒険者、先着10パーティ様にプレゼントと言うか記念品? を授与してるんだけど欲しい? ほんのりと特殊能力の付与されてる武器防具アクセサリなんだけど」

「記念品!? 是非頂きたいです!」


 むしろ此方からお願いします! あ、このマグカップでも問題ないです! でっかい葉っぱの絵が描いてあって中々好みのデザインです。シンプルイズベスト。見た目より機能性で。


 でも、先着といわれてもこんなタイミング、しかもあんな理由でここに到達した私が貰って良いのか。

 などとちょっと申し訳なく思っているとお姉さんから提案。


「まぁキミは一人で此処まで来てるし、先着枠消費するのも勿体無いかな……とりあえず私の権限で適当に『ソロ特別賞』って感じにしとこう! そうすればまだ先着10パーティ分、他の皆にプレゼントできるし」

「私、どう考えても正規のルートと手段で此処まで到達してないですからね……」


お姉さんの提案を聞いて胸をなでおろします。これで後から来たプレイヤーさんから恨まれたりしないで済みそうです。

 ほっとしたのに気が付かれたのか、お姉さんは私の方に歩いて来ると、私の両肩をポンポン叩きながらこう仰ってくださいました。


「まぁまぁ、ココで採取したいって言ったキミの行動のもたらした結果だし、問題ないんじゃないかな? 気にせずに頂いちゃいなさいな」

「そう言って頂けると有り難いです……」


 よくよく考えると、初日に人数限定の貴重品貰えるなんて、贔屓だ! 不具合利用だ! ドサクサに紛れた越権行為だ! とか色々言われそうでしたし……


 一体ココに来るための正規ルートとはどの様な物なんでしょうね。お金掛かったりするのかな。うぐぐ。


「じゃ、何にしようかね? 採取目的でココにいるって事は生産職を目標にしてるんだよね?」

「はい、一応そうです。色々作ったり育てたりしてみようかなーって」

「じゃあ生産用の装備が良いかな? 武器も一応メジャーなのは一通りあるけど。どっちが良い?」


 お姉さんはそう言いながら立ち上がると、右手を何かに突っ込むように空中に突き出します。

 ん? 手が何も無い空間に突き刺さってる!? 魔法か! これも魔法なのか!?


 私がビックリしてお姉さんの手元を凝視していると、私の様子に気がついたお姉さんがニヤッと笑みを浮かべて此方を見ます。最高のドヤ顔です。


 お父さんがやるとちょっとウザイですが、お姉さんがやると、ドヤかわいい。

 お父さん差別とかではないですよ。


「これね、君たち祝福の冒険者が使えるアイテムボックスと似た様な物よ! カッコイイ?」

「SFとかファンタジーの映画でありそうなシーンです!」


 まぁプレイヤーの指を振ったら出てくるメニューも大概SFチックなものですが。

 見た目のインパクトは、空中腕突っ込みの方がありますね。


 とりあえず最初は生産を頑張りたいので、生産用の装備を頂くことにしました。

 

「はいはい了解、じゃあこの【緑石のペンダント】だねー」


 ズボっと壺から物を引っ張り出すかの如く右腕を空間から引っ張り出したお姉さんは、簡素な作りのペンダントを私の目の前に突き出しました。


 大きい緑色の石がペンダント本体部分にボコっとはめ込まれています。

 不透明なので宝石じゃなさそう。


 でも深い緑色でツヤツヤっとしてるので、趣きがあって良いです。抹茶みたい。

 お茶の飲みすぎ思考か。

 

 とりあえず、初の装備品入手です!

 

「そのペンダントはね、身に着けてると全系統の生産スキル成功率がほんのチョットだけ加算される効果があるんだよ。どんな生産スキルにも効果があるから、何か作ったり育てたりする時は身に付けておくと良いよ」

「今は他に装備するようなアイテム持って無いですから、絶対装備します!」

「あはは、気に入ってくれたみたいだね! 無くしたりしないように気をつけてね」


 私が鼻息も荒く何度も頷いていると、お姉さんはさも楽しそうに笑っております。

 

 このペンダント、少しだけ成功率が加算されると仰っていますが、どんな生産行動にも適応ってなにげに凄いんじゃないですか? 万能装備ってことですよね?


「大事にします! ありがとうございます!」


 言われたとおり紛失しないようにアイテムボックスへしっかり収納いたします。興奮してどこかにすっ飛ばしたりしたら後悔どころの騒ぎではありません。泣きます。

 

「……そうだ、自己紹介するのすっかり忘れてない? 私たち」


 メニューを閉じて、そろそろお暇しようかとマグカップに残っていたお茶を一気に飲み干したタイミングで、お姉さんが顎に手を当てて思い出したようにそう仰いました。


 ……ていうか、普通は訪ねて来たほうである私から自己紹介するもんじゃない!? 何やってるの私!

 あまりにもお姉さんの存在が自然に不自然(?)だったから、頭からスポーンと名前を告げるという事柄が吹き飛んでた!

 

 ほめ言葉ですよ? 近所にいたらうれしいタイプのお姉さんですもの。


「すみません、こちらから訪ねて来たのに名前も名乗らずに! 私の名前はフワモ、と申します!」


 そそくさと頭を下げ、私の自己紹介を終わらせますと。

 ウンウンと頷きながらお姉さんはグッっと右手を握り、親指を立てて正面に突き出します。


「フワモちゃんね、オッケー覚えたわ! じゃあ私の自己紹介と行きましょうか! さあご照覧あれ!」


 お姉さんは握っていた右手を開くと、指をパチッっと鳴らしました。

 

 前触れも無くお姉さんの左手に現れたのは、私の背丈ほども有る大きな白い木の杖。


 その杖の先端で、お姉さんは自分の側頭部をトンっと叩きます。

 すると美しい宝石がはめ込まれたティアラが頭上に出現しました。

 直後、その場でクルッと一回転するお姉さん。

 服がパッっと光に包まれ、若葉色のゆったりとした感じの、ふちの部分や襟元に綺麗な刺繍のはいった服へと変化しました。


 あまりにも唐突に起こった出来事に着いて行けない私を尻目に、どこからどう見てもファンタジー世界の女性! という格好に変化したお姉さんは、おもむろに右コブシを口に当て、声の調子を確認しています。何事!?


 ちなみに先ほどまでのお姉さんの服は、薄い緑色のワンピーススカート一丁というさわやかお姉さんスタイルです。


「ん゛ん゛っ……チョット待ってね……【祝福の冒険者よ 良くぞこの隠されし島へと参った 我はこの場 この楔を守護する姫巫女 名を【アグヘイリア】と申す 汝らに緑石の装備を授け 【楔の祝福】としましょう】」

「うわーカッコいいー!?」


 杖をカツンと床に当て、右手を正面に向けた状態でキリッとした表情のお姉さんが、綺麗な声でそう宣言しました。

 先ほどと声の調子まで変わっています。威厳に満ち溢れた素晴らしくカッコイイ声音。


 さっきまでの雰囲気は一体なんだったのでしょう、と思うほどの『それっぽさ』が醸し出されていました。こっちのお姉さん……いえ【アグヘイリア】さんも違う魅力で満ち溢れていますね!


 というか、どっちが本性なのでしょうか。


「ふっふっふ……どうよ! あ、私の事は『リア』って呼んでくれて良いからね、っていうか呼ぶのだ!」


 愛称で呼ぶことを強要されました!?


 い、いえ、異論は御座いませんが。どう見てもこっちの調子の時が本性っぽいですね? お気楽極楽。


「それじゃ、しばしのお別れかな?」


 クルリと左手の杖を回してどこへとも無く収納すると、リアさんが右手を差し出してきました。

 私はガッシリとその手を掴んで上下に振ります。


「今度は正規の手段で此処に来れるように頑張ります!」

「ふふふ、ここって実は結構見つけ辛い所にあるから頑張ってねー」


 今度会うときまでどうかお元気で。とは言っても、この分ですとマイペースでノンビリしてそうですね。

 別れを惜しみつつ、リアさんのお宅をお暇いたします。


 せっかくだから農園の野菜も持って帰る? と聞かれたのですが、たとえスキルがあったとしても、私がお料理を成功させているビジョンが全く見えないので、ご遠慮させていただきました。食べ物は大事に。


 この辺り一帯には今現在まったく魔物がいない、と帰り際にリアさんに聞いておりますので、足早に帰還のポータルへと向かいます。

 『今現在』という語句にそこはかとない危険を感じますが。


 アバター作成とチュートリアルだけで大分時間を使ってしまいましたし、早々に帰還いたしましょう。もう一時間以上は確実に経っているはずです。


 円形状の花壇まで戻った私は巨大石版の上へと足を踏み入れます。

 十秒くらい待てばいい、と立て札には書いてありましたが、どういった感じで戻るのでしょうか。などと思考していたら。


 もう噴水前に立っていました。


 早い、早すぎる! 余韻もへったくれも無いよ! 


 周りを見ると私と同じように一瞬の光とともに噴水周りに戻ってきている人が多数いました。

 この方たちはチュートリアル普通に終わらせた感じなのかな……


 横目でコッソリと見ていると、大多数のプレイヤーさんは戻った後にメニューを開いて、内容確認しているようでしたし。お金のチェックかな。


 それでは、早速生産系統のスキルを確認&吟味していきますか!

※ 食事摂取自体には制限はありませんが、食事効果に関しては持続時間がありますので、時間中にいっぱい食べても味を楽しむだけになります、はい。

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