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127 装備 は 凄いよ 私は 普通

ドワーフホイホイ。

 ちょっと興味本位で寄らせて貰っただけなのに、色々と激しい事態に発展してしまった今現在。


 なんだか、突然お伺いした私に対して気さくに会話して下さった凄い良い人なアルさんに、なんと言うか申し訳無い気持ちがモリモリ沸き上がって来ました。ええい、こうなったら有り金を全部はたく事になったとしても、何か山岳地帯で活用できるアイテムを購入していかないと、申し訳ゲージが炸裂してハートにダメージ絶大です! 気になって眠れませんよ!


 でも今現在の所持金って確か……3000ゴールドちょっとだった気がします。

 この金額でどの程度お買い物が出来るのか……値切ったり出来るんでしょうか。ううむ。


 目の前でアレコレとアルさんに指示を出している親方さんを観察しつつ、自分の懐具合を再確認します。素材を集めて生産を頑張れば、お金を稼ぐ手段には全く事欠かないのですが。


 こうやって先立つ物が不足していくのですね……良いんです、使えるものなら無駄にはならない筈!


 等と心の中で無駄な決意を固めて一人頷いていると、親方さんの指示で建物の奥に行っていたアルさんが、何やら両手で抱えられるサイズの木箱を持って出てきました。


 すれ違い様に箱を覗き込んで中を見てみましたが、先ほど見せてもらった卓上ポットより一回り小さい物や、片手で持てるスマホ位のサイズしかない小さい金属製品等がゴチャっと沢山納められています。

 あの小さいのチョット可愛いかも。小物って何でだか好きなんですよね。


「親方! もって来ました!」

「おう、ご苦労! それでお嬢さん、個人で使うのかパーティーで使うのか。あと購入予算の方はどれ位を予定してる感じかの?」

「あ、えーっと、一応個人で使います! あと購入予算なんですけれど、ちょっと持ち合わせが無くて3000ゴールド位で……何とかなりませんでしょうか」


 私の返答に対してフムゥとヒゲを擦りつつ唸りを上げた親方さん。


 木箱の中身をゴソゴソと弄りつつ、小声で何か呟きながらアイテムを選り分けていきます。

 特に文字とか番号とか書いてない筈なのに、全部のアイテム効果を把握しているのでしょうか。

 流石親方さんですね。職人気質。


「うーむ、ふむふむ……他の装備との兼ね合いも確認したいんだが、大丈夫かのお嬢さん」

「兼ね合い……といいますと?」

「ああ、今身につけてる物や、出先で身につける予定の装備品を確認させて欲しいんじゃよ」

「ああ、はいはい! 了解です!」


 油と水は混ざらないーみたいなニュアンスの相性確認でしょうか。

 装備品の組み合わせを間違えると、効果を潰しあったりする可能性があるとかですねきっと!

 プラスとマイナスでゼロになっちゃうとか。そうなったら装備品を購入する意味が無くなっちゃいますよね。色々納得です。


 木箱のアイテムを選り分け終わった親方さんが、店先に置いてあった大きいタオルっぽい見た目の布で両手をゴシゴシ拭うと、何やらメモ帳を手に私の背後に回りこんで、今現在装備している服をペタペタと触り始めます。その際にガリガリとメモに何か記入しているのが視界の端に移りました。

 何だか本格的ですね。ちょっと緊張する。


 そんな風に真剣な目つきでメモに記入を続けている親方さんを、私の横でじーっと見ているアルさん。ああ、こうやって技術が伝わっていくのでしょうか。弟子と親方ってなんだか良いですね!


 私の装備を上から順番に確認していって最後に靴を確認した親方さん。

 今度は腰に巻いてあるベルトに視線を向けて……突然バサリとメモ帳とペンを石畳の上に落としました。


 ……んん? あれ? 何だか親方さんの目が……当社比2倍くらいの大きさに見開かれているんですが。

 

「こっこの金具部分にある槌と拳の意匠は……! お嬢さんこいつを何処で!?」

「ええ!? こ、このベルトですか!?」


 突然私の両手をその無骨な両手でガシっと掴んだ親方さんが、私の顔とベルトを交互に見ながら大声を上げられます。あー……これは先日あったアレイアさんが武器に反応したのと同じ感じでしょうか。

 特に隠す事でもないので、知り合いに譲ってもらったと普通に伝えます。


「タダで『鋼の申し子』ギルンダルグ大先生が手を加えた名品を!? しかも 名工傑作(マスター=グレード)じゃないかねコイツぁ! 直に触るのは初めてだ……おおぉ良い手触りだぁ」

「あー、この装備を私に譲ってくださった方曰く、昔使っていたものだけれど今は全く使用していないので活用してくれ、という感じでしたけれど……このベルトってどれ位の価値がある物なんでしょうか」


 そういえばこの装備を改造した方もドワーフさんだと、カイムさんが仰っていた覚えがあります。

 となると親方さんもドワーフですし、このベルトの価値が判るのではと思い立ったので、少々不安ですがお聞きしてみる事にしました。そして返って来たお答えが。


「そりゃお嬢さん、コレだけの代物だ。王都辺りの名品装備好きな好事家にでも売却したら……郊外の二等地あたりに簡素な家が一軒建つだろうなぁ」

「……えっ!?」


 親方さんは驚いた拍子に落としてしまったメモ帳を石畳の上から拾い上げつつ、そう私に告げたのでした。えーちょっとまって。

 親方さんの口から発せられた答えに、私の耳が拒絶反応を起こしたのですが。


 今現在普通ーに腰に装備しているベルトを眺めます。

 ああ、腰に巻ける一軒家ですか。

 んあー! やっぱりあの時カイムさんの頭をペチコンしておけば良かった!


 武器の時もそうですが、あのお爺様は私がオタオタする様をみて喜んでいる感じがするんですよ!

 山岳地帯から帰ったら頭をペチコンするだけではなく、布か何かでキュッキュしてやる!

 頭を洗って待っていてくださいカイムさん!


 親方さんからの話を聞き終わり、私が心の奥底で老人の頭部をアレコレするという、新たなる決意を抱いておりますと。ベルト確認の流れで私の腰に提げられている棒武器に親方さんの視線が行きました。


 あっ……嫌な予感がします。嫌な予感がしますよ! 2回言っちゃう位に!


「うん? ……おわぁ!? こ、こいつもギルンダルグ大先生の名品じゃないかね!?」

「えーっとはい、そうだとこの武器を下さった方に窺ってますハイ」


 やっぱりこういう反応が来ますよね。判ってました、判ってましたよ私。


 ベルトについて物凄い勢いでメモを開始していた親方さんの手から、再度メモ帳が取り落とされる事になるのは当然の結果なのでしょうか。


 私の横で見ているアルさんは何が起こっているのかよく判っていない様でしたが、何か私の装備がトンでもない物である、という点だけは把握されたようで。親方さんと一緒に私の装備を興味深く見詰めておられました。


 ブルブルと両手を震わせながら私の武器に手を伸ばしている親方さん。

 取りあえず見て貰わないことには話が進まなそうでしたので、革の鞘から棒武器を抜き取って親方さんに手渡します。


「おお……おおおおお……眼福じゃぁ! ほれ見てみろアル公! こいつが俺やお前が目指すべき高みよ!」

「この武器がですか!? 俺の目じゃ全く詳細が掴めません!」

「まーだまだ修行が足りんからな! これからだ、これから! がっははは!」


 物凄い楽しそうに会話していらっしゃるお二人。

 その間も親方さんは棒を撫でたり突いたりしてます。


 あれですね、一定以上の装備知識をお持ちの方に、このベルトや棒を見せたらある意味で危険だと言う事が凄く判りました。興奮剤の代わりになる程度には。


「良かったらこの武器の『銘』を教えてもらえると非常に嬉しいんだが……どうだろうかお嬢さん!」

「え!? 別に全く問題ないですよ? ちょっと棒を拝借しまして……」


 アイテム名が確認したいという事でしたので、一旦アイテムボックスへ仕舞って詳細を確認します。この武器って名前がやたら長いので正式名称忘れちゃうんですよねぇ……私の記憶力のせいじゃ無いと思いたい。


「えっと、この武器は【(ナンバー)03 懲戒必罰 ギランステルム】だそうです」

「ぬほぉ!? 『鋼の申し子』作の(ナンバー)装備!? しかも一桁と言う事は大先生の知り合いにしか配られなかった初期作品じゃないか!」

「親方! (ナンバー)装備なら俺も聞いたことありますよ! こっこれが!? こんな装備をポンと譲ってくれる知り合いが居るなんて、お嬢さんは凄いなぁ!」


 うん、とりあえず何だか凄いよ! という雰囲気はわかりました。


 まだ親方さんが装備の詳細確認を終えていませんし、銘の確認が済んだ武器をアイテムボックスから取り出して、取りあえず色々と感謝感激している親方さんへと手渡します。


 もう跪いて天に掲げそうな勢いのある親方さん、再度取り落としたメモ帳を拾い上げると物凄い勢いで書き込みを始めました。

 口元は歪み目も血走っています。こ、これは喜んでくれているん……だよね?

 よ、喜んでくれているなら良いのかな? 血圧上がりすぎで体調に悪そうだけど。

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