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124 興奮エルフ で 悪目立ち

 私の前に並んでいる方々をのんびりと眺めつつ、順番待ちをします。

 何やら鑑定結果に一喜一憂しているプレイヤーさん達を見ていると、私もちょっと嬉しくなりますね。


 次々に出てくる鑑定内容に聞き耳を立てているだけでちょっとしたドラマが。無料の群像劇。


 煌びやかな短剣は何やら特殊効果のない宝飾武器だったようで、貴金属的な価値だけしかないという結果が出たようで、鑑定に来ていたプレイヤーの方々がちょっと悲しんでおられました。残念ですね。


 クネクネの杖は、あの見た目で殴り攻撃も強力なものだと言う結果に。

 魔法の強化にも使える便利な装備品みたいです。殴っても良し魔法しても良しですね。

 何より見た目が魔女っぽいのがグッドです。


 悪魔っぽい置物は完全に呪われたアイテムみたいです。

 浄化して潰して素材アイテムとして使えば中々の物だという鑑定結果が出てました。

 あの見た目はどう見たって邪悪オブ邪悪ですよね。完全に邪教像。


 それにしても鑑定している人はリーナさんじゃないのですね。それでも中々の鑑定成功率というか何と言うか。カウンターの奥に数人で作業している人たちがいます。多分あの方々が一つのアイテムに対して順番に鑑定を行って、そこから結果を導き出しているのでは? という予想です。


 一応注意事項として確実な鑑定結果では無い可能性があります、とカウンター横に表示板が出ているのですけれど。なるべく確実性を求めたアイテム鑑定結果が欲しい方は、一週間から十日程の期間品物を此方に預けて頂く事になります、という文章が赤い文字で書かれてます。


 何度も鑑定して誤差を埋めていく感じなのかな。十日で十回分鑑定すれば大体いい感じに鑑定結果が埋まる筈だし。その分費用もかかりそうではあります。あちらも商売でやっていると思いますからね。


 今の所は、その場での鑑定一発で皆さん納得してお帰りになっているみたいです。面倒ですからね。


 次の真っ黒な鎧は純粋にカチカチな鎧だったみたいです。

 あんな重そうな装備品を身に付けて動ける人とか居るんでしょうかね。

 見た目凄いカッコイイですけど。


 アレイアさんの白い鎧姿も好きですけれど、こういった真っ黒な何というかダークな雰囲気も良いですよね。ちゃんとつや消しがしてあって渋くて良い感じです。まぁ私はこんなの身に付けれないですけど。


 色々と面白い鑑定結果をコッソリと共有しつつ、ようやく私の番になったのでカウンターに座っている髪の長い女性に、リーナさんについて声をかける事にします。何時の間にか、私の後ろにも幾つかパーティっぽい方々が並び始めていますからね。さっさと用事を済ませてしまいましょう。


「はいお待たせしました、お次の方どうぞー」

「あ、えっとリーナさんはいらっしゃいますでしょうか?」

「リーナ……ノアスリーナ主任の事ですか?」


 受付の女性が妙なものを見る感じで私の顔と手に持っているボールを交互に見ています。あーうん、あからさまに怪しいよね私。納得の反応過ぎて思わず苦笑いです。


 カウンター奥で鑑定作業を進めている人達も、私の方を見て何か小声で話し合っていたりしています……私の後ろに並んでるプレイヤーさん達が、何事かといった感じで私の後頭部に熱い視線を送っているのが何となく判ります。うう、またもや無駄に目立っている気がする。


「あの、えっと、このボールを見せてくれれば判ると思いますので」

「はい、それではお預かりいたします」


 アレコレ説明するよりは、リーナさんに一番ボール君を見てもらえば一発だろうと思ったので、受付の女性へ両手で抱いていた一番ボール君を預けます。受付の女性は微妙に首を傾げつつ、少々お待ち下さいと私に告げた後、受け取った一番ボール君を後ろに控えていた男性に預けて、奥の扉を指差して小声で何やら告げておりました。


 一番ボール君を受け取った男性は一度頷くと、奥の扉に向かって行ってしまいました。

 あの部屋にリーナさんが居るのかな?

 普段は表に顔を出してないんでしょうか。サボってる訳じゃないですよね?


「えーお客様……つかぬ事をお聞きしますが……主任とお知り合いなのでしょうか?」


 何やら一番ボール君を受け取った男性がカウンター奥の扉を叩きつつ、扉越しに部屋の内部に向かって何かを言っている光景をボーっと眺めていたら、受付の女性が微妙に不安そうな顔をして私に質問なさって来ました。


「えーっと一応知り合い、という感じだとは思い……ます、はい」

「……王都の研究協会関連の方でしょうか? それともエルフ元老院の縁者の方とか」


 うん……うん!? 何だか凄そうな肩書きが出てきましたよ!?

 あーそっか、一応リーナさんって鑑定第一人者でこの世界有数の鑑定スキル保持者で、家族の方が何かエルフの偉い人なんでしたっけ。


 そっち方面の知り合いだと思われてるのかな……リーナさんとの出会いとか、雑貨屋さんの前で強引に止められて鑑定を強請られた、といったあまり人様にはお話出来なそうな感じなのですが?


「えっと、まぁ一応普通? の知り合いだと思います。私も普通ーの祝福の冒険者ですし」

「そ、そうなんですか!?」


 受付の女性がビックリした表情で私の顔を見ています。ついでに後ろに並んでいる人たちの視線が強くなってきました。あー早く出てきて下さいリーナさーん!


 奥の扉の方を再度確認すると、丁度扉が少し開いて中から右手らしいものがニュっと突き出されている場面が視界に入りました。あの手袋はリーナさんのだ!

 男性が一番ボール君をその手に持たせると、右手がスッっと扉の奥に消えます。


 ……大体10秒程経過したでしょうか。


 バタン! という扉が強く開かれる音と共に、綺麗にお化粧された状態なのに髪が微妙にボサボサなリーナさんが、勢い良く部屋から飛び出してきました。右手に一番ボール君を持った状態で。


 先日雑貨屋さんであった時の格好ではなく、何やら身体のラインがピッチリと出る、物凄いセクシーな黒いドレスっぽい物を身につけておられます。ああいう格好をみると綺麗な凄いエルフっていう印象を受けるのですが、いつもの状態というか本性を知っている私にとっては違和感の塊です。


 扉から出てきたセクシーリーナさんは右脇に大事そうに一番ボール君を抱えなおすと、髪の毛を手櫛で整えつつ周囲を見回し……カウンター前に居る私の方へ視線を向けた途端、ガチっと固まった様に動きを止めて数秒。


「わぁー! フワモさぁーん! 来てくれたのねー!」


 何やらリーナさん微妙にウルウルしてます。

 何だかいきなり凄い涙目状態ですね!? 何か大変な出来事でもあったんでしょうか。


 そんな状態にも関わらず、無駄に素早い動きでドレスを翻しつつカウンターまで近寄ってきたリーナさん。一番ボール君をカウンターにそっと置いて、私の両手をガッシリと掴むとブンブン上下に振ってきます。


 なんだろうかこのテンション。上下の起伏幅が激しすぎる。お疲れモードなのだろうか。


 というか目立ちすぎるので、あまり激しく私の存在をアピールするのは止めて頂けないだろうか。

 チラリと横目で、私の後ろに待機しているプレイヤーさん達を確認してみましたが。


 ビックリした表情で私とリーナさんを交互に見ている方や、面白そうな物を見たといった感じの笑顔で興味津々な表情の方、メニューを弄ってなにか打ち込んでいる方まで居ます……まさか掲示板!? 掲示板に書き込んでるんですか!? や、やめてぇー!?


「おおおお落ち着いてリーナさん!? あのほら、取りあえず邪魔になるので、場所を変えましょうそうしましょう!?」

「ああごめんなさいね! そっちの奥からカウンター内に入れるから!」


 ようやく私の両手を解放してくださったリーナさんが、人差し指でカウンター内に入れる場所を示して下さいました。とりあえずこの場所から逃亡しないと、私の平穏なゲームプレイが危険でデンジャラスになってしまう! 急ぐのだ私!


 一番ボール君を回収した私は、俯き加減で他プレイヤーさんからの視線を掻い潜り、素早くカウンター内へと進入してリーナさんの後について奥の部屋へと移動します。

 バタリと締められた扉を確認して……ホッと一息です。


 そうですよね、リーナさんのテンションがヤバくなる事は予想できたじゃないですか。

 前もって何かしらの対応策を講じていればこんな事態には……後悔先に立たずです。


 まぁ起こってしまった出来事は仕方がない。今度からは気をつけましょう。

 リーナさんの出方次第で対応が変わってしまうという、中々ハードな難易度の案件ですが。

 胃が痛くなりそう。VRだけど。

あけましておめでとう御座います。


ちょっとだけお正月休みを頂きたいと思います(何

次回更新は一回飛ばして金曜日になりますー

のんびり出来るのは元旦だけというこの状況。頑張れ自分。

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