116 クッション買取 と キャンプ用品
乙女チック雑貨屋、だが男性。
安寧の女神様の神殿前から離れた私は、町の南側へと足を進めます。
そろそろ雑貨屋さんの開店時間が差し迫っている筈なので、もしも既にお店が開いていてお客さんが来店しているようでしたら、買取だけ簡単に済ませてもらう事にしましょうか。
噴水横を越えて進むと、見えてきました! エスメラルドさんの雑貨屋さん。
近づいて出入口に釣り下がっている看板を確認してみると『準備中』の表示になっております。良かった、まだお店の開店時間になっていないみたいですね!
出入口には小さい小窓の様なものが付いているので、そこから中を覗いて見ますと何かが動いているのが見えます。準備の最中でしょうか。とりあえず扉を開いてお声を掛けてみよう。
押して開くタイプの扉ですので、ぐいっと体重を掛けて扉をプッシュします。
カラカラン、と開閉部に取り付けられていたベルが店内に響きました。
相変わらずフローラルな香りが広がる店内です。心が落ち着きますね。
「エスメラルドさん、おはようございまーす」
「あらあら何方かしら? あらぁフワモさんいらっしゃい! こんな早くにどうしたの?」
扉を開きつつ朝のご挨拶を口にしますと、清算カウンターを布の様な物で磨いていたエスメラルドさんが、扉が開く時になるベルの音でこちらに気が付いて、クルリと振り向きニッコリ笑顔で朝のご挨拶を返して下さいました。
とりあえず、今日の予定やクッションの買い取りのお願いに来たと言う事をお伝えします。
「えっと、今日素材収集や魔物の観察をするために北の山岳地帯へ遠出するつもりなのですが、昨日クッションを作ったので出掛ける前に査定をお願いしたいなーと思いまして。お客さんがいる時間帯よりは早く来た方が良いかな、と思ってお伺いしました!」
「あら! クッションね! 大きさはどれ位なのかしら?」
「座った時にお尻の下へ敷く用途で作ったので、あまり大きくは無いです!」
アイテムボックスから昨日の夜に作ったクッション(自分で使用するの以外)を3個取り出して、綺麗に拭き掃除されたカウンターの上にモフモフと積み上げます。
取り出されたクッションを一個づつ手にとって、手触りを確認しているエスメラルドさん。数回頷くと右手の指で○の形を作ってニッコリ微笑みます。
「出来栄えは問題ないわ! そうねぇ……一つ500ゴールドでどうかしら?」
「はい! 問題ないです!」
材料費はメリアの毛購入費用である100ゴールドしか掛かっておりませんし、生産用スペースは大部屋を使用しましたので此方も100ゴールドです。合計200ゴールドで戻ってきたのが1500ゴールドなら十分では無いでしょうか。
カウンター向こうへと移動したエスメラルドさんが、例のワンタッチ清算メニューを出して下さいましたので、躊躇いなく『はい』のボタンを押します。
あっそうだ! 特殊な効果がついているのでそれも説明しておいた方が良いでしょう!
あまり凄いものでは無いですが、一つ一つに違った特殊効果がついている事を告げると、メモ帳くらいの大きさがある付箋を取り出したエスメラルドさん、どれにどの能力が付いているのかを書き記してクッションに添付してくれました。
コレで購入する人がいたら選んでもらえるかな? 需要があるといいけれど。
「よしよし、能力も記載したし、これでバッチリ売れるわね!」
「また何か作ったら是非お願いします!」
「ええ、何時でも来てちょうだいねぇ」
入り口前に設置されている小物が多くつまれている台の上に、手際よくクッションを陳列したエスメラルドさん、何時も通りのオトメチックなポーズでウフフと笑っておられます。
男性なのに中々絵になる感じなのは何故でしょうか。あれでしょうか、熟練度が高いのですか。
そうそう、この前水筒もココで購入しましたし、今回の遠出で必要そうなアイテムを購入させてもらいましょう! プロが目の前にいるんですから、良いのを選んで貰うのが一番ですよね!
私は、今回のお出掛けは恐らく日帰りできないと思うので、外で休む際に何か便利な道具など無いでしょうかーとお聞きしたら、クイクイっと眉毛を上下させたエスメラルドさんが、非常に慣れた手つきと動きでお店の色々な場所からアイテムを取り出して持って来てくれました。
さ、流石はお店を一人で切り盛りしているだけはありますね!
商品を選ぶ動きに全く澱みが感じられませんよ!
でも動作はセクシーです。乙女が極まっていますね!
「とりあえず簡易キャンプセットと、寝袋代わりになるフード付きのポンチョよ! キャンプセットは中古品なんだけれど、性能と品質は私が保証するわ!」
「わぁー本格的! なんだか凄いですね!」
素早い動きで私の所まで戻ってきたエスメラルドさんが、厚みが数センチで一辺が50~60センチ程ある四角くい布の塊? みたいなアイテムと、濃いベージュ色でフードがついた腰の辺りまで丈があるポンチョをカウンターに並べてくれました。
ポンチョは短めのマントっぽい感じでしょうか。正面でボタン止め出来る形状になってます。
ボタンにはエスメラルドさんのエプロンに刺繍されている肉球のマークが。可愛い。
フードの部分に、ちゃんと私の頭頂部についている狐耳を収納できるトンガリもありますよ!
思わずニンマリ笑顔で二つの商品を交互に手に持って感触等を確かめていると、エスメラルドさんが計算機をパチパチし始めました。
「そうねぇ……フワモさん価格でー……うん、セットで12000ゴールドでどうかしら?」
「おお! 所持金で足ります!」
ここはお金の使いどころでしょう! 二つ返事でオッケーのサインを返してサクっとお勘定を済ませます。ごっそりと所持金が減りました。
うひゃー! 高い買い物しちゃった! でも絶対使いそうなアイテムだもん、悪くないよね!
その後、テントの組み立て方を軽く説明してもらいました。
というか地面に置いてカドっこにくっ付いている魔石に魔力を流し込めば、勝手にモコモコと組みあがるらしいですよ?
しまう時は手作業で折り畳む必要があるらしいので、そこだけ気をつければ大丈夫みたいです。
でもいざとなれば、組みあがった状態でヨイショと持ち上げてから、アイテムボックスにそのまま収納しちゃえば良いですよね。面倒臭がり極まる行為ですけど。
そんな事をエスメラルドさんと会話しつつ、あと何か山岳地帯に行く場合で必要な物はありますでしょうか、と聞いてみたところ。
「そうねぇ……なら図書館に行って山にどんな魔物が居るのか、下調べしてみたらどうかしら?」
「なるほど! カイムさんの説明じゃアバウトすぎてよく判らなかったんですよ!」
貴重なご意見を頂いた私は、色々と助けて頂いたお礼に、お店の開店準備をお手伝いすることにしました。とはいっても減っている商品を補充するために道具を運んだり、店の外で掃き掃除をしたくらいですけれど。申し訳ないくらいに地味地味です。
朝9時になったので、開店準備終了後にアイテム生産について色々お喋りしていたのを切り上げ、お別れのご挨拶をした後、国営図書館へと向かうことにします。
「それじゃ、道中気をつけてねフワモさん!」
「はい、それでは!」
わざわざ出入口までお見送りに出てきてくれた笑顔のエスメラルドさんに、此方も笑顔でブンブン手を振り返しつつ、中央通りを南下します。
確かカイムさんが教えてくれた魔物の種類は……狼とかイノシシとか熊、っていってたっけ。
地域の魔物分布とか確認できたりするかな? 図書館についたらまず司書さんに聞いてみよう!
非常に体調が微妙で困りますね。
空いてる時間は布団で横になってました(何
寒いですので皆様もお気をつけて。




