111 夢 と 水没 と イケメン?
赤面するオッサン。
目覚ましのアラームが鳴り響く音で意識がぼんやりと覚醒しました。
何だか変な夢を見ました……ゲームプレイのし過ぎでしょうか。
体調的には何ら不具合は発生しておりませんので、脳の使いすぎとかその辺を考慮した方が良いのだろうか。いや、別に普通に快眠出来た気がするし大丈夫かな?
それにしても、夢の中でラティアちゃんとお手手繋いで一緒に歩いていたら、突然飲みすぎ魚クンと胃酸魚クンが川に流れるように大量に地面を滑って現れて、地面でビチビチやり始めたのは何の暗示だったんだろう。
うん、特に意味は無かったのかな。夢だし。
何時も噴水前をログアウト場所に使ってるから、私の余り性能のよろしくない脳みそが無駄に何かを察して、変な魚群映像を見せたのだろうか。
まぁ見た感じの動きが凄い変なのにキッチリと揃っていて、映像作品として考えると妙で面白かったので良いのですが。陸に上がった魚。
夢ラティアちゃんもブニブニお魚のお腹を触って楽しんでいましたし。
私は何故か胃酸魚クンに背中を押されたりしましたが、別に生臭さとかは無かったですね。
もともとは石像だからでしょうか。
なんだろうか、私の精神が美味しい海の幸を求め彷徨い始めているのだろうか。魚介類を。
うん、夢に合理的な理由付けしようとしても私にはムリですね。まぁ気にせずに起床しよう。
目覚ましアラームの放置により、ピピピ音が一段階大きくなり始めたタイミングで時計上のボタンをプッシュ、ついでにアラームスイッチをオフにします。朝6時過ぎです。肌寒い事この上ない。
パジャマから部屋着へと着替える前に、そのままバスルームへ突入してささっとシャワーだけでも浴びてしまいましょうか。流れに沿ってやる事をどんどん済ませていくのですよ。
今日は大分長時間ゲームプレイするつもりですからね!
最初の勢いに乗って一気にやってしまわないと、面倒くさがってまた放置になる可能性が高いですので。まさに常習犯。
毎度お馴染みカラスの行水モードでササっとシャワーを浴び、そのタイミングで洗濯機も稼動させる事にします。髪を乾かして冷蔵庫からお茶を一杯胃袋に流し込み、昨日放置してしまったお皿の洗浄に着手しました。うへーお風呂上りだと余計に水が冷たい。お湯で洗おうお湯で。
一人でしか食事をしないので少なかった汚れ物を無事綺麗に洗い終わり、両手を拭いてほっと一息。
えーっと、コレで大体やる事終わったかな……? 洗濯物も干したし……うん大丈夫そう。
朝食はー……今はお腹空いてないから後で食べれば良いかな!
起きた直後はちょっと眠気が残っていましたが、シャワーを浴びたのとゲームプレイに向けてのテンションが高いためか、意識もはっきりしてきました。
時間は7時前ですね。ゲーム内だと良い具合に朝かな?
それでは早速HMDに配線を繋げ頭に装着して電源を入れます。起動を待っている間に寒くて風邪をひかないないようにお布団を被っておきます。うむ、身体の位置調整よし!
枕に頭部を落ち着けて待つこと数十秒、HMD内蔵の基本プログラムが起動し、何時も通り操作パネルが出現いたしましたので、ゲームのショートカットを選んで起動させます。
目を閉じてVR空間に意識が移動するのを待っていると、何時も通り意識が七色の光に包まれた後に移動したのを感じたのですが。何時も通りIDとパスワード入力を行う白い空間へ到達した直後に、何やら目の前に一枚のメッセージ板が表示されているのに気がつきました。
うん? 昨日ログインした時には出てこなかった物ですね。一体なんでしょうか。
覗きこんで内容を確認して見ますと。
『ただいまプレイヤーデータおよび送受信データの走査を行っておりますので、暫くお待ち下さい』
……うん? 一体何のお話でしょうか。文章を読んだだけだとちょっと内容が判らないですね?
何となく判るのは何かを調べているのでちょっと待ってね! という事でしょうか。
別に調べられるような偉業を成し遂げてしまった記憶はないのですが。
何かの仕様変更があったのでしょうか。
特に身体に変化がある様な感じはしませんので、そのまま大人しく立ったまま待つことにしました。
1分も掛からずにそのメッセージ表示が消え、何時も通りIDとパスワードを入力する石版状の入力フォームが、床を貫通する感じですすーっと出現しました。
IDとパスワードを打ち込みます。ここで間違った情報を入力したらどうなるのかな? とちょっとだけ好奇心が沸いたのですが、面倒な事になったら嫌だったので思いとどまりました。
そのうち素の状態で入力を間違う事もあるでしょう。その時に判明するし良いですよね。
違和感無く移動する為に両目を閉じて待っていますと、何度目かになるゲーム内へと移動する時のフワリと体が浮き上がる感覚を感じました。
何時も通り噴水横に復帰……したのは良かったのですが。
失敗しました。後悔先に立たずです。
以前に気を付けないと駄目だなー、とか自分で言っていたのにすっかり忘れていたのです。
そう、昨日カレーライスを食べた時に腰かけたのが噴水の縁だったのです。
つまりログイン直後の私は目を閉じた状態で、噴水の縁に直立した状態という事です。
はっはっは! やだー私のバカァ!
ええ! そりゃー見事に足を滑らせてドボンと噴水内部へお尻から突入いたしましたよ!
期せずして二度目の入浴(水ですけど)と相成りました! 全然嬉しくないー!
うぇー……完全に濡れ鼠ですよ。ああ、ゲーム内で水に濡れたりする事も可能なのがコレで判明しましたね、ははは……きっと泳いだりも可能でしょう。
検証が捗りましたね……出来ればもうちょっと穏便な方法で確かめたかった。
腰までドップリと水に漬かってしまった私は……急速に周囲から視線が集まるのを感じました。
あわわわ! これはマズイ悪目立ちが過ぎる! 逃亡せねば!
急いで噴水内から脱出した私は、濡れた身体で周りのプレイヤーさんに接触して迷惑をかけないように、俯いた状態で人が少ない路地方面へと超スピード(あくまでも自分的には)で逃亡するのです。
……あああああー! もー恥かしいよー! 顔から火が出ますよ!?
朝一でとんでもない事になってしまったぁ……と、とりあえず濡れた服を交換しよう!
アイテムボックスを開いて、仕舞っておいた一番最初に装備していた服である【普通の服 上】と【普通の服 下】に素早く着替えます。
その際にステータスメニューに水滴のマークが表示されておりました。
うん? 何だろうか。濡れてしまったから表示されてる、濡れちゃったよマークでしょうか。
指を伸ばして詳細を確認してみた所、やっぱり『水濡れ』状態を表すアイコンだった様です。アイコン下には何やら30%と言う表示が一緒に記載されております。
あ、今29%に減りました……どれ位濡れてるかを表わす表示かな?
29%分濡れてるって事でしょうか。放置で何とかなるなら問題は無さそうです。
水に濡れた事で何か起こってないのか確認しようと思って、あちこち身体を色々と動かしてみたのですが、ちょっと動きづらいかな? といった程度でそれ程酷い状態では無さそうではあります。
スタミナの量がちょっと減っているので、この辺りに影響がある感じでしょうか。
着替えた事によって殆ど濡れていると言う感覚は無くなったのですが、ステータス的にはまだ濡れている事になっているみたいですね。色々と難しい。
おっと、今日はやらなければならない事満載で忙しいのでした!
気持ちを切り替えて、まずは素材集めとポーション作成から始めねば!
決意を新たに誰に見せるでもないガッツポーズをグッっとした私は、気合を入れなおすと路地裏を経由する感じで北門へと足を進める事にします。先ほどの噴水ダイブ事件からあまり時間経過しておりませんので……中央通りに戻ると周囲の視線で私のガラスのハートが危険です。
メニューからマップを表示させ、迷わないようにゆっくりと周囲を確認しつつ足を進めます。
普段通った事のない路地を抜けた先は北門の右側辺りでした。
ガルドスさんらしい後姿が見受けられます。
今日はお仕事なんですね! ご挨拶しておこう!
「ガルドスさーん! お早う御座います!」
「おお、お嬢さんかい! お早うさん!」
私の声に反応して振り向いたガルドスさん、ニヤリと何時も通りに笑うと左手を上げてお返事して下さいます。あれ、ちょっと先日と様子が違う感じが……ああ! 無精ヒゲと髪の毛がサッパリしてる!
「髪の毛切ったんですか?」
「お、気が付いたか? 非番だったんでな! どうよ、男前があがっただろ?」
私の言葉に対してアゴに手を当て、顔に角度をつけてニヤっと笑うガルドスさん。ちょっと枯れた感じのシブイ雰囲気があって、そういうのが好きな人には人気があるのでは無かろうかと思います、はい。
私が曖昧な笑みを浮かべつつそんな事を考えていると、ガルドスさんが眉間をしかめて私の肩をポンポンと叩いてきました。
「そこはツッコミが入ってくる所だろ」
「え? ガルドスさん普通にカッコイイと思いますけど」
「なん……だと……?」
信じられないような表情を浮かべたガルドスさんが、口を開けた状態で固まります。
いやいや、うちのお父さんとはまた違ったタイプのカッコ良さがあると思うデス。
アレイアさんともまた違ったこう、なんと言いますか。
照れた笑いとかするとギャップが凄いあって良さそうなと言うか。
普段はマッタリしててもヤル時はヤル! っていう感じのする人物ですからねガルドスさんって。
「だから毎回言うように俺を褒めても何もでねぇぞ!?」
「えー! いつも助言いただいてるじゃないですか!」
「あれは、ほらその、なんだ! サービスみたいなもんだろ!?」
二人であーだこーだ、と言い合っていたら……ガルドスさんの背後で他の門番さん達が、わっはっはと笑っているのが視界の隅に映りました。あれ!? 何だかウケてるんですが!?
ああいけません、時間がないのにお喋りしまくっている場合ではなかった!
「まぁとりあえず、ガルドスさんがイケメンなのかどうかは置いておいてですね」
「そのまま忘れてくれても大丈夫だよ! オッサンは褒められる事に耐性ねぇんだよ!」
「えー……まぁ良いですけど」
ガルドスさんもお茶目さんな所があるんですね。
口に出して言ったら、また色々と突っ込まれそうですけど。
心の中だけに留めて置きましょう、うん。
気が付いたらまたブックマークがジリジリ伸びていてビックリ。
なんとも恐縮です。頑張ります。
鼻水ズビズビでしたが何とか投稿できました。
体調管理は大事ですね、気をつけます。
寒いこの季節、皆様もお体に気をつけて。




