107 毒が 出来たよ 用法注意
毒物は少女の嗜み(何
無事に、今から発生するであろうヤバイ匂いをどうにかする為の、薄っぺらい板の様な換気扇を作動させる事に成功いたしました。
というか……この場所に換気扇があるのは凄い使いづらいのですよ……うーむ。
私と同じような身長のプレイヤーさんだと、ちょっと手が届かないですよ? これも何かしら対応策を考えていただかねばなりません。私の平穏なプレイの為に!
毎回椅子を引っ張ってきてスイッチ紐を引く、というのも色々と面倒ですから。
設置する場所をちょっと変更するだけでオッケーだと思うんですよねコレ。
通路側につけなきゃいけない決まりとかあるのでしょうか。それなら出入口横につけるとか……あーでもあまり低い場所に取り付けても効果が薄いのかなぁ……悩ましい。
とりあえず換気扇考察は打ち切って、椅子の上にあがった時に脱いでいた革のブーツを履きなおし、椅子を両手で持ってテーブルへと戻ります。よいしょっと!
余り余計な事をしていると、作業途中で時間切れのアラームがなり始める可能性があります。
それに現実世界での時間経過も気になりますからね。
多分11時過ぎてるんじゃないかな……そろそろ横にならないと明日起きられなくなっちゃいます。
さて、早速赤キノコを白い容器に放り込んで、棒でゴリゴリと磨り潰す作業を開始しましょう。
今まで使っていた【初心者用調薬キット】に比べて、この磨り潰しに使う容器の大きさと深さが一回り大きくなっているので、一気に10個程キノコをゴリゴリしていけますね。
その分しっかりと磨り潰さないといけませんので、恐らくスタミナの消費が大きくなるのでは。
アイテムボックスからポイポイと赤キノコを取り出しつつ、白い容器へ順次投入して磨り潰していきます。一気に大量に入れると作業し辛いですからね。
……ん? なにやら妙な匂いがして来ましたね。
酸っぱいような……辛味を感じるような。喉や鼻腔の粘膜に余りよろしくない系統の匂いです。
磨り潰しただけではさほど匂ってはいないようですけれど、コレを煮込んで抽出すると結構きつめの匂いが充満するんでは……しっかりと警戒しつつ作業しましょう。
たぶん意味が無いかもしれませんけれど、何となく熱いスープを冷やすような感じでフーフーと口を尖らせて息を吹きかけ、磨り潰した赤キノコから発生している微妙な刺激臭を吹き飛ばせないか試してみましたが。
逆に変に息を吸い込んで咳き込んでしまいました。うぇー喉がイガイガする!
そんな事をしつつ、赤キノコがペースト状になるまで磨り潰します。うん、すっごい赤いよ!
お次はこのペーストにお水を入れつつ練りこむ作業です。事前にビーカーに汲んであった水を少しづつ注ぎ込みながら磨り潰し棒で赤キノコペーストを攪拌します。
んー怪しい薬を作っている魔女っぽい作業。
心なしか匂いが強くなってきました。直接吸い込まないように気をつけよう。
両手をグーッと伸ばして、なるべく遠くに磨り潰し用の容器が行くように心がけつつ、いい感じに固まるまで赤キノコペーストを混ぜ混ぜします。
その過程で赤い色から徐々に紫へと変化していく赤キノコペースト。
うん、個人的イメージですが凄い毒っぽい色。パッと見はグレープ味っぽい。食べたくないけど。
後はコレを暫く放置して水分と馴染ませると、赤キノコ毒液の素が完成です。
流石に手持ち全部の赤キノコを加工するのは無理っぽいので、20本分位で止めておこうかな。
後は流れ作業な感じで磨り潰して練ってーの繰り返しです。
こりゃ換気扇ついてなかったら刺激臭が凄い事になってるなー……おっと、2個めの毒液の元を馴染ませている最中に、スタミナが完全枯渇してしまいました。うぇー身体が重いです。
暫く練った赤キノコを放置しなければなりませんので、その時間を利用してスタミナ回復しましょう。とりあえずスタミナポーションを一本飲み干して。後はゆっくり休憩してればいいかな。
流石にこの酸っぱ辛い匂いの中で何か食べるのも何ですし……
さて、毒液の素がいい感じにシットリとしてきましたので、次はコレをグツグツ煮込んで成分抽出を行いましょう。なんとメディカさんから貰ったキットの簡易魔道コンロは、加熱する場所が2箇所ついてるんですよ!
一気に二つのビーカーを温める事ができます! 温度調節が難しそうだけど、何とかなるかな?
小さいパン生地みたいにポヨポヨになったキノコペーストを、水を満たしたビーカーに沈めて簡易魔道コンロに設置、加熱を開始します。
うん、あとはスタミナポーションの時と殆ど同じ作業なので、焦らずに落ち着いてやれば失敗する事はないでしょう……って、きたきたきたぁ! 煮込み始めたビーカーから……なんというかもう刺激臭です! っていう表現しか出てこない匂いが、モワモワと蒸気とともに湧き上がってきます!
ううーマスクっぽい物を準備した方が良かったかも!? こういう時に使うマスク系装備って何処で売ってるんだろ? キノコの加工について聞いた時、ついでにメディカさんに聞いとけば良かった。
右手をぐぐーっと伸ばして簡易魔道コンロの温度調節をしつつも、ビーカーからはぐいっと顔を背けつつの作業。微妙に無茶な体勢をとっているので、今にも首の筋が攣りそうです。というか現実だったら確実に攣ってた。
あと無茶体勢で作業していて気が付いたのですが、この簡易魔道コンロって右側の方が強火? というか強い加熱が出来るようになっているみたいです。左は大体つまみの位置が7割ほどの所が丁度いい熱量だったのですが、右は半分も捻ってない位でもう十分な熱量を生み出しておりました。
これは……この先強い加熱が必要になる感じの作成方法が出てくるフラグかな?
出来れば余り難しくない手順であって欲しい物です、うむ。
それにしても、ちゃーんと換気扇の方へ刺激たっぷりな湯気が吸い込まれていっている様なので、私の粘膜被害としては差ほど厳しい感じでないのが救いです。
ううむ、見た目は薄っぺらな板状物体がしっかり仕事をしてくれていますね……
頬っぺたに感じたあの強力な吸引は伊達ではなかったという事でしょうか。
そんな感じで一人きりでひぃひぃ言いながら作業を進めること数分。
スタミナポーションの時と同じように、溶液が澄んだ紫色に変化してきました。
よーし! あとは加熱を止めて冷ましたら、ろ過機を通して不純物を分離させ容器に密封、赤キノコ毒液入りビンの完成です!
赤青黄色に紫と4色ポーション(一つは毒)で色とりどりな感じになりました!
見た目は凄いきれいだなぁこの毒液。
ビンに詰める際の溶液からは、もうあの強い刺激臭を感じる事はありませんでした。
磨り潰しと煮込み作業の最中に、匂いの元になる成分は全部抜けてしまっているのでしょうか。
ある意味あのペースト状の物体を魔物に投げつけた方が効果が抜群だ! って感じになるかもしれないですけど。
でも……あの状態で持ち歩くのは流石に遠慮したいな。お肌にも絶対悪影響がありそう。
使い終わった器材に微妙ーな量で残っている毒液を……ちょっと躊躇いつつも【水湧きの魚像】君の口の中へ放り込んで廃棄します。お腹を壊すんじゃないぞ。
ついでにザバザバと器材を水洗いしつつ、ほんのりと残っているスパイシーすぎる匂いを、狐尻尾を振り回す事で換気扇のほうへと追いやります。うむ、腰の動きが重要なのですよ。
両手を使っている最中も動かせる尻尾は、やっぱり便利ですね。
早く思い通りに動かせるようになりたいなぁ。練習練習!
そんな事を考えつつ、洗った器材を一つ一つ【乾燥の壺】へ突っ込んで乾かして、綺麗になった調薬キットと完成した【赤キノコ毒液】をアイテムボックスへと収納します。
えーっと残り時間は……あと10分ですね! 良かった、事前に脳内で適当に見積もった作業時間で、何とか全工程を完了させる事に成功したようです!
この毒液は……流石に買い取りというわけにも行かないでしょうか。
自分で使おうかな? とはいっても棒にこれを塗っても余り効果が無さそうなのですが。
まぁ、まだアイテムボックスの容量はたっぷりあります。
持っていても邪魔になるわけでもありませんし、使い道はゆっくり考えていきましょう。
そう、スキルを使って物を作るという事自体に意味があったのです! スキル成長させる為に! という事にしておきましょう。
それでは折角ですので、久しぶりにスキルのレベルを確認して見ましょう! どれどれー?
【調薬】Lv20 【革細工】Lv14 【基礎 棒スキル】Lv7 【支援魔法 付与・劣化】Lv5 【魔法 風】Lv4
おお! 結構上がってきているじゃないですか! 【調薬】が一番高いLv20ですよ! きっと今頑張って作っていた毒キノコのパワーが漲ってきたのかな?
あと、確か魔法系統のスキルはレベルが上がってくると、使えるアクティブスキルの種類が増えるのでしたよね。一体どんな感じのスキル増えるのか今から楽しみです!
お次は【赤キノコ毒液】の出来栄えを確認! まぁどう考えても毒でしょうけれど!
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アイテム名 【赤キノコ毒液】
等級 上質
品質 ☆☆☆☆☆☆
破損度 問題無し
属性 ※毒『継続 小』 ※眩暈『小』 ※刺激『痛覚』
付加能力 ※色彩『紫』 ※『●●●●』
効果待機時間 40カウント
詳細 この世界の森に広く分布する赤色キノコから抽出された毒液。
服用すると毒と眩暈状態になり、ライフを継続的に減少させる効果を持つ。
この毒の効果でライフが0になる事は無い。
液体は無味無臭だが、皮膚や粘膜に付着すると痛みを発生させる。
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おお、またもや 上質の品物が完成しましたよ! コレはメディカさんから頂いた調薬キットのお陰かもしれません! 大事に使わないとね!
それにしても中々物騒な説明文ですね。流石毒物です。
ああ、匂いとかは全然無くなってしまった様ですけれど、あの匂いを発生させる素材から作った物として当然と言わんばかりに、凄い刺激が強い液体なんですね。
間違って目とか口に入れないよう気をつけないと……
『目が、目がぁー!』状態になりそうです。普通に洒落にならなそう……き、気をつけるんだぞ私!




